World Gone Strange 1991年発表

ジャズ/フュージョンに於けるギター・スタイルを確立した名作!

アルバム紹介:パラダイス&ランチ

先ずは名盤の誕生と一言で言っても良い作品の誕生だ。
前作『Charming Snakes』で示したジャズ指向に強い手応えを感じたのであろう。
更なるジャズへの接近を図るかの様に長年の良きパートナーだったデイビット・ヘンシェルに変わり、
ステップス・アヘットなどの活動で知られているマイク・マイニエリをプロデュースに迎えている。
参加しているミュージシャンもマイニエリ(ステップ・アヘット)関連の人脈からである。

前作でのジャズ/フュージョンへの接近はアンディーの経歴を振り返れば有る程度の予測は出来たが、
実際に耳にすると大いなる驚きであった。
うまへたギターでワン&オンリーなスタイルで語られてきた彼が流暢なメロディーを奏でているのだから!
豪華なメンバーに支えられながらアンディーが奏でているリード・ギターは力強く美しかった。
前作はハード・コア・フュージョンと称されていたが、
今作はワールド・ミュージックなどのエッセンスを多く取り入れて更に多彩に成っている。
個々の楽曲の完成度が非常に高くメロディーはどこまでも美しく、リズムはどこまでも心地よく波打っている。
ギターによるジャズ/フュージョン作のスタンダードになっても良いくらい素晴らしい作品だと心から感じる。

先ずはブラジル音楽のエッセンスを感じさせるタイトル曲「World Gone Strange」のオープニングで聴かれる、
アコースティック・ギターの美しいメロディーは、恰も心地よい朝の目覚めを彷彿とさせるし、
アコギに続き奏でられるイリアーヌのピアノの演奏も美しいの一言に尽きる。
心地よい目覚めの後にはライト・ウェイトなファンクのリズムでリラックスできる「ラフルド・フェザーズ」が奏でられ、
ボサ・ノバ風の「バッカンテ」と心地よいナンバーに続いていく。
4曲目に収録されているブラジル風のバラード「バット・シー」迄の楽曲の質の高さに耳を通すだけで、
このアルバムでアンディーのメロディー・メーカーとしての資質が存分に発揮されている事を再認識されるだろう。
本作の魅力はメロディーの美しさに尽きると言っても過言ではない。
ポリスの終焉とともにアンディーの元を去った多くのファンに聴いてもらいたい!
ポリスから遠く離れたジャズ・フォーマットの世界でアンディーはこの世の物とは思えない美しいメロディーを奏でているのだ!

この作品の魅力はメロディーである事は間違いないのだが、
トニー・レビン、ビクター・ベイリーといった実力派のベーシストが参加している点や、
前作から参加しているチャド・ワッカーマン(DS)、ナナ・バンスコンセロス(per)等の、
リズム隊の素晴らしさも魅力の一つである。
「ラフルド・フェザーズ」「リズム・スピリッツ」「ウードゥ・カンジャイラ」等の楽曲に於ける彼らの演奏が、
アルバムにメリハリをつけるかの様にファンキーだったり、ビートニクだったりする。
そして、アルバム全体が絶妙な統一感を持っているのは、
マイニエリのプロデュースの妙であり、ステップ・アヘットの布陣が絶妙に機能しているからか?

尚、「サムホエア・イン・ザ・ウェスト」は90年の来日時に見た富士山を思い描いた楽曲だそうです。
アルバム発表に伴うツアーにはスティングのアルバムにも参加している、
ビル・エバンス(sax)、ダリル・ジョーンズ(b)等が同行している。



収録曲

1 World Gone Strange
2 Ruffled Feathers
3 Bacchante
4 Song For M
5 Rhythm Spirits
6 Somewhere In The West
7 But She
8 The Blues Prior To Richard
9 Oudu Kanjaira
10 Dream Trains

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