![]() Strings Of Desire / A.S.& Victor Biglione 1998年発表 |
ビクター・ビグリオーネとのアコースティック・ギターデュオ!美しいワールド・ミュージックの世界。 |
アルバム紹介:パラダイス&ランチ アコースティック・ギターによるデュオ・アルバムとしては’93年に発表された、 ジョン・エサリッジとのデュエット・アルバム『Invisible Threads』に続く作品となる。 『Invisible Threads』でも今作同様にジャズ、ブルーズ、フォーク、トラッド、ボサノバ、ロック、ポップスと、 幅広いスタイルの楽曲に取り組んでいたが、全体としてはリード・ギターとサイド・ギター(カッティング・ベースの演奏)を、 それぞれが交互に担当してアンサンブルを重視した作品がアルバムを占めていた。 又、数曲のジャズ・スタンダードを取り上げている物の、収録曲の多くはアンディーのペンによる物であった。 全体としては静的な作風であったように思う。 今作はそれとは対照的な作風に仕上がっていると言っても良いだろう。 今作でアンディーと共演しているヴィクター・ビグリオーネはブラジル人のギタリストである。 彼の過去の作品は耳にした事がないが、 ビーボップやサンバ、ボサノバなどの要素を取り入れたジャズ・スタイルで知られているらしい。 色々なジャンルの要素を折衷させたハイブリットな音作りの他に、ブルースの演奏などもこなす様である。 ギターに関してもアコースティックのみ成らずエレキまで弾きこなすテクニシャンらしい。 今作を聴くと彼の演奏技術が如何に高いか実感できる。 さすがのアンディーも彼に触発されたかの様に技巧的なリードを披露している。 互いのテクニックを全面に出しながら優雅で起伏のある美しいメロディーの楽曲を奏でている。 『Invisible Threads』を静的な作品とすれば『Invisible Threads』は動的な作品であり。 アンディーがこれまで発表してきた作品群の中でも、 取り分け色彩豊かで確かなギターのテクニックに裏打ちされた作品と呼んでも過言ではないだろう。 ウネウネ系ギタリストとか、ウマヘタ・ギター、ワン・アンド・オンリーのスタイルとか称され続けてきたアンディーだが、 クラシカルな演奏を勉強したり、ジャズへの傾倒をしたりと、 技術的な裏打ちもしっかりあると確信させる演奏が収録されている。 今作の特徴はブラジル色が強い点、ジャズのスタンダードを数多く取り上げている点とも言える。 アンディーのオリジナルは9曲目に収録されている「サンバ・フォ・カウンティング・デイズ」のみである。 ジャズ・トリビュート的な作風になっているのは二人の共通項が50年代から60年代のジャズだからだろう。 かと言って、ジャズ色を強く感じさせないのはサンバ、ボサノバ、などのトラッド音楽の要素を織り交ぜながら、 二人が繰り広げる個性的で素晴らしいアドリブの数々のせいだろう。 収録曲に簡単に触れていくと、ボサノバの生みの親と呼ばれている大御所の二人、 アントニオ・カルロス・ジョビンの曲が2曲目に、 そしてジョビンの良き友でありボサノバのアイデンティティーに拘り続けたジョアン・ジルベルトの曲が4曲目に収録されている。 また、民族音楽をベースにロック、クラシック、ジャズを取り入れた壮大な作風で知られる、 ブラジル人ジャズマンのエグベルト・ジスモンチの曲がアルバムの冒頭に。 チャーリー・パーカーと共にビー・バップの象徴的な人物として語られることの多いディジー・ガレスピーの曲が5曲目に。 アヴァンギャルドな現代音楽やクラシック音楽理論や冒険的な拍子記号をジャズに用いて、 「テイク・ファイヴ」のヒットで知られるデイブ・ブルーベックの曲が3曲目に。 その他ジョン・マクラフリンと並んでジャズ・フュージョン・ギタリストの巨匠ラリー・コリエル。 MJQのメンバーとして知られるジョン・ルイスの曲なども取り上げている。 この作品はニュー・エイジやヒーリング・ミュージックの範疇でも語られるだろう。 そして、もしかしたらアンディーの作品群の中で最も万人にアピールできる作品なのかも知れない。 日頃クラシック・ギターの作品に耳を通している方にも十分アピールするだろう。 二人のインプロビゼーションというかアドリブ・プレイにはきらっと輝く美しさと繊細さが備わっているのだから。 お勧めできる作品です。 |
収録曲 1 Frevo エグベルト・ジスモンチ作 2 Stone Flower アントニオ・カルロス・ジョビン作 3 In Your Own Sweet Way デイブ・ブルーベック作 4 Um Abraco no Bonfa ジョアン・ジルベルト作 5 Night In Tunisia ディジー・ガレスピー作 6 1+2 Blues ラリー・コリエル作 7 Django ジョン・ルイス作 8 Stolen Moments オリヴァー・ネルソン作 9 My Favourite Things リチャード・ロジャース作 10 Samba for Counting the Days アンディー・サマーズ作 |