アルバム紹介 : パラダイス&ランチ
80年代後期は<ニュー・エイジ・ムーブメント>の最盛期で、
この作品もニュー・エイジ・ミュージック、環境音楽、
そしてムード・ミュージックの範疇で語られる事が多かった様です。
私個人としてはロキシー・ミュージックの初期メンバーであり、
U2等のプロデューサー業で若い世代にも広く知られてるブライアン・イーノを回想したりします。
ブライアンが取り組んだアンビエントの世界がベースに有る様にも感じられます。
リズム・パートを完全に排除してシンセサイザーとエレキ・ギターがメインの楽曲が収録されています。
ニュー・エイジ・ミュージックの中でも異色な作品として注目された様ですが、
それらの範疇で語られて終わる様な一過性の淡泊な作品ではありません!
このアルバムのテーマの一つが<癒し>である事を踏まえるとヒーリング・ミュージックであるが、
私個人としてはポジティブ・ヒーリングという新たな音楽であると力説したい!
すなわち、非常にパーソナルな感情、思考に根幹を持って創造された音であり、
自ら紡ぎだした音に癒しを求め、精神の活性化を見いだそうとしている。
単に美しいメロディー、キャッチーなフレーズの羅列ではないのだ。
デイヴィット・ヘンチェルの奏でる浮遊感の有るシンセサイザーのモノトーンな音が漂う中、
アンディーは思慮深げで恰も何かを追い求めているかの様に一音一音を紡いでいる。
二人の対話(シンセサイザー&ギター)に耳を傾けるのが良いでしょう。
そして、このアルバムの最大のテーマは<旅>と言えるでしょう。
それは自らを癒す為、そして自分を再発見する為の旅と言っても良いでしょう。
アルバム冒頭を飾る「Red Balloon」がアルバムのテーマを見事に表現している。
ヘンチェルが奏でている浮遊感の強いシンセサイザーのメロディーは天空(大海原)そのものだ!
時に雲一つ無く澄み渡り、半透明な薄雲が霞んで掛かり、大きな積乱雲があったりする。
そしてアンディーの奏でるアンニュイなギターの調べは小さな赤い気球だ!
目的地は遙か彼方で、風もコンパスも頼りになっていない感じだが、
何らかの力に呼び寄せられるかの様に赤い気球は雲間をすり抜けて進んでいきます。
時折、風が止み気球がポツンと宙に浮いているのはアンディーの思念深さの為か?
この旅は無事に目的地に到着しのだろうか?
彼の心は癒され、新たなステージに向かう創作意欲を得る事が出来たのであろうか?
アルバムの最後に集録されている「How
Can I
Forget」は非常に意味深なタイトルである。
前作『XYZ』の失敗を暗示しているのであろうか?
きっとこの旅は無事に目的地に到着できたのであろう。
次作『The Golden Wire』の完成度の高さがそれを物語っている。
この作品は名作を生み出す前のプロローグ(過渡期)として捉えてもいいでしょう。
『Mysterious Barricades』そして『The
Golden
Wire』を聴きなさい!
アンディーが常に創造的なミュージシャンでありたいと
切望している事をヒシヒシと感じる事が出来ます。
私個人としては、
このアルバムはアンディーにとって非常に重要な意味を持っていると考えている。
リズムを排除したモノトーンな世界である為に退屈感を感じる人もきっと多いだろうが、
彼の紡ぎ出すギターの一音一音に耳を傾けて頂きたい。
癒されるだけではない!貴方の精神を活性化して次なる扉を開く糧となるだろう。
最後に、私は『Mysterious Barricades』が大好きじゃ!!
Playboy Magazine 1989 By VIC GARBARINI
元ポリスのギタリストであるアンディー・サマーズの『ミステリアス・バリケーズ』は、
単に個人的な欲望や快楽に耽溺して漠然とした音世界の住人と化している、
すべてのニューエイジ・ミュージックの演奏家達を放逐するほどの
とても愉快なショックを彼らに与える作品として位置付けられるべきでしょう。
サマーズのギターとキーボードによるこの作品は、
抽象的であるにも関わらずブライアン・イーノが示した
来世のサウンドスケープよりもより精神的なヴァイブレーションを呼び起こします。
優しいアルペジオの調べはポリス時代に彼が手掛けた「サハラ砂漠でお茶を」を彷彿とさせる
色彩豊かで幻想的に霞み架かっているかの様に作品全体に漂っており
一種の天空のジオメトリーを作り上げています。その結果は禅絵画の如く芸術的で優美です。
その一方でアンディーは現実よりもリアルに思えてしまうほど神秘的で
夢の様な光景を紡ぎだしている美しいコードで素晴らしいホログラフィーの空間を作りだしています。
この作品は動と静が完璧なバランスを保っている音楽
(あなたが感じる夜間特有の喧噪や安息といった感情のたぐいの)です。
純粋なヒーリング・ミュージックを体験できるでしょう。
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