Metal Dog

 2015年発表
 
新たなる高みへの葛藤を感じさせる実験的な作品にして集大成的な作品

ん?ワンちゃん犬かきで泳いでる?

 ソロ名義の作品としては2003年に発表した『Earth + Sky』以来となる。
その後、Victor Biglione、Ben Verdery、Fernanda Takaiとの共演作を3作品発表後、
ロック・バンドCirca Zeroの結成と続くが、ソロ名義の作品としては12年ぶり。
近々の作品を振り返るとジャズ/フュージョン的な作風からセロニアス、チャールズ・ミンガスのトリビュート作品、
そして前作『Earth + Sky』はアンディー流のオリジナルジャズ作品で素晴らしい内容だった。
これらを踏まえて今作を聴くとジャズ路線からの脱却であり、さらなる自分探しの模索とも言える。
この背景にはポリスのリユニオン、Circa Zeroの結成等が影響しているようにも思う。
今作を実験的かつ集大成的作品と感じる理由は箇条書きにすると3つあるように感じます。

1 全ての楽器をアンディー一人で演奏してオーバーダブしている事

2 歴代の作品の中で最も歪んで分厚いギターを演奏している事
  彼のギター・エフェクトの妙を垣間見える様に感じる。

3 ロバート・フリップとの共演作、ニューエイジ時代及びBen Verderyとの共演作などで聴く事の出来る、
  アンディーの過去の音片が多く散りばめられているように感じること。

元々アンディーは引き出しが多いギタリストと称されるが、これらの引き出しはすべて開け放ち、
今作の特徴ともいえる厚ぼったく歪んだキターをニューエイジ的音片と対峙させたり融合させたり。
私はギターに関して素人だが音色を歪ませるエフェクターとして、
エッジの効かせた歪みはディストーション、オーバードライブなどで、
分厚い歪みで倍音効果をもたらすのがファズ・エフェクトではないだろうか?
ファズは60年代から70年代にジミー・ヘンドリックスやツェッペリンの作品で聴く事が出来るように思うが、
アンディーのイメージじゃないような気がします。

冒頭の「Metal Dog」、「Animal Chatter」で今作の特徴を見ることができるように感じます。
厚ぼったいギターエフェクトの音が現れては消えるというか・・・。
「Vortex Street」、「Vortex Street」、「Qualia」では更に今作の特徴が明確に表れているように感じます。
厚ぼったいギターサウンドとニューエイジ的音片が交互に現れて、これらを対峙させている感じ。
今作に実験的なものを感じるのは、これらの過去と現在を対峙させているかのような作風かな。

しかしながら、「Vortex Street」、「Harmonograph」においては、
これらが一体となって一つのメロディー&リズムをなし美しい作品に仕上がっている。
実験的作品と言いながら、この2曲を聴くと実験の成果は既に得ているなと感じます。
この2曲がアルバム収録曲の中では白眉と呼べるかなぁ。
’98年リリースの名作『The Golde Wire』を彷彿とさせる楽曲のように感じます。

アルバムの終盤を飾る2曲「Oceans of Enceladus」、「Mare Imbrium」の、
モノトーンで霞がかかったような作品を聴くと、アンディーいまだ瞑想中とも感じるが・・・。

とても実験的かつ意欲的な作品で次作への期待が高まります。
ふっとアルバム・ジャケットを見返すと、
水に飛び込んだ犬は対岸に渡ろうと必死に泳いでいる姿で、正にアンディー自身そのもの。
裏ジャケでアスファルトを彷徨っている犬も、自身を模索するアンディー自身そのものか…。

 収録曲リスト

 Metal Dog
 Animal Chatter
 Ishango Bone
 Vortex Street
 Bitter Honey
 Qualia
 How Long Is Now?
 Harmonograph
 Oceans of Enceladus
 Mare Imbrium

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