Charming Snakes 1990年発表

豪華メンバーを引っさげてジャズ/フュージョンの方向性を示した力作

アルバム紹介 : パラダイス&ランチ

前作『 Golden Wire 』でロバート・フリップ(ex:キング・クリムゾン)とのコラボから始まった,
ソロ・ワークの集大成をしたアンディーが次なるステージに踏み出した傑作と言えるだろう。
これまでの彼はいわゆる泣きのギターや、楽曲の中枢を担うリードをひたすら引き続ける、
ロック界の典型的なギター・スタイルとは一線を画す独自スタイルで語られる事が多かった。
実際ギター・インストゥルメンタル作品を作り続けてきているが、
彼がやってきた事は楽曲が欲している印象的で思慮深いフレーズを奏で続けていた様に思う。
キャンバスに描かれている無数の対象物全てをギターで語ろうとするのではなく、
描かれている絵画の中枢を担う要素をより引き立てる事で、
より多くを読みとらせ様とするギター・スタイルだ。
多くを語るのではなく、少ない言葉で行間を読ませようとしているギター・スタイルだ。

ポリス時代からエフェクト処理の妙や、シャリシャリ音のカッティング・スタイル、
そして独自のアルペジオ演奏などを例にとって<個性派>の一言で語られる事が多かったが、
今回の作品では演奏スタイルを云々語るよりは、
流れるように流暢で力強い演奏が奏でられている表情豊かな!楽曲に注目しよう。
ソング・ライターとしてのアンディーの充実振りが非常に素晴らしいと言えるでしょう。
「ハード・コア・フュージョン」と称されてアンディーは追い風に乗っていると言える。

加えてそう言った意味に於いては、
このアルバムでアンディーは過去に築き上げてきた演奏スタイルと決別したとも言えるだろう。
豪華なミュージシャンをゲストに迎えて、これまでにないほど贅沢な音作りをしている。
多くを語ろうとしなかった彼が入魂のリードを全面にフューチャーして、
ギター・インストゥルメンタルのメイン・ストリームに踊り出そうとしている。
次々と湧き出てくるメロディーの奔流をダイレクトに楽曲の中に流し込んでいる。
ポリス時代からギター・インストの作品を作り続けているが、
ジャズ/フュージョン風のスタイルの中に新たな可能性を見つけた作品と言っても良いだろう。

この作品で一番の話題と言えばスティングがベースでゲスト参加している点であろう。
タイトル曲に於いてポリス時代を彷彿とさせるレゲエ・タッチの演奏をしている。
しかしながら、ポリス時代を振り返る未練たらしい物ではない。
アンディーの充実振りを示すかの様に前半のレゲエ調のリズムから、
リード・ギターが楽曲全体を引っ張っていく力強い展開が成されている。

スティング以外の参加ミュージシャンもとても贅沢だ。
ジャズからファンク、スクラッチ、ヒップなど幅広い音楽性が魅力のハービー・ハンコック(p)、
マイルス・バンドでの活躍で知られるビル・エバンス(tp)、
スティングのブルー・タートル・バンドに参加しているダリル・ジョーンズ(b)等々。
彼らの参加により、前作までのアンディーのプライベート色が強いモノトーンな作風が一変して、
表情が豊かで色彩に溢れる躍動感に充ちている作品に仕上がっている。

このアルバムは多くのアンディー・ファンに好意的に受け入れられるだろう。
自らのルーツと言っても良いジャズ/フュージョンの世界に身を投じる事で、
彼の瑞々しい感性、充実している精神が解放されているかの様に作品の中に溶け込んでいる。
まさしくアンディー・サマーズのセカンド・ステージの始まりと言っても過言ではないだろう!


収録曲

1 Mexico 1920
2 Charming Snakes
3 Big Thing
4 Rainmaker
5 Charis
6 Mickey Goes To Africa
7 Innocence Falls Prey
8 Passion Of The Shadow
9 Monk Gets Ripped
10 Easy On The Ice
11 The Strong And The Beautiful

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