![]() 音楽以外の芸術に傾倒し影響を受ける事などあまり無く、音の世界に身も心も捧げたと云われるブルックナー。 ロマン派の中でも、他の作曲家とは相容れない独自の音世界を作り上げています。 |
データ・ファイル 1824年 : オーストリアのアンスフェルデンに生まれる 1850年 : 聖フロリアン修道院のオルガニストになる 1866年 : 交響曲第一番作曲 1880年 : 交響曲第四番「ロマンティック」作曲 1884年 : 交響曲第七番作曲 1892年 : ウィーン・フィルの定期公演で、交響曲第8番が初演される 1896年 : 72年の生涯を閉じる |
ブルックナーへのメッセイージ ♪私にとって、ブルックナーの存在自体が神からのすばらしい贈り物といえる♪ セルジュ・チェリビダッケ |
作品の紹介〜それぞれの曲の感想、所有盤の紹介、お薦め度、等々を掲載しています〜 ・ 交響曲 第6番 ・ 交響曲 第3番 「ワーグナー・シンフォニー」 ・ 交響曲 第7番 ・ 交響曲 第4番 「ロマンティック」 ・ 交響曲 第5番 ・ 交響曲 第8番 ・ 交響曲 第9番 |
交響曲 第6番 お薦め度 ★★★★☆ 所有盤 指揮:セルジュ・チェリビダッケ ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 他 この曲が紹介される時によく言われることは、ブルックナーらしい曲ではない、感情の高揚を見せる場がほとんどない、 歓びへの高まりやその絶頂は冷静で威厳を感じさせる、といった場合がほとんどの様である。 そのためか私もあまりすすんでこの曲を聴こうとしなかったのである。 以前は、4番、7番ばかり聴いていました。基本的に私はミーハーですから、売れ線の曲が大好きなのです。 それに、ブルックナーと云うよりマーラー的な作品の様に感じていた時期もありました。 この頃は彼の交響曲を聴くときはだいたいこの曲を聴いています。 もっとも聴き易く馴染みやすい曲なのではないでしょうか? いわゆる<ブルックナー停止>なども無く、彼の作品の中でもっとも流麗な流れを感じさせます。 この曲を「青春交響曲」と呼ぶ人もいる様ですが、その例を用いて簡単に私の思いを云うと、 恥ずかしがり屋な彼はおそらく青春を謳歌したと云うよりは、自分の殻に閉じこもりがちだったのではないでしょうか。 すなわち、この曲は彼の<青春への憧憬>を綴った作品ではないかと思うのです。 目を閉じて<青春の輝き>に思いを馳せる年老いたブルックナーの姿が目に見える様です。 ただし、第4楽章では現実に立ち返ろうとする巨匠の強い意志をビシビシと感じさせますが・・・。 こうした見方をすると、ある意味もっともブルックナーらしい曲と云う事になりますね。とにかく名曲です!! 5番、9番、等々に疲れた人はこの曲を聴いてリラックスするのも良いかも。 |
交響曲 第3番 「ワーグナー・シンフォニー」 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 指揮:セルジュ・チェリビダッケ ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 「ワーグナー・シンフォニー」とある様に、ブルックナーが尊敬していたワーグナーに献呈された曲です。 <原始霧>と称されるブルックナー得意のトレモロ・ライクな曲調で始まります。 いわゆる<ブルックナー開始>で幕を開けます。 彼の作品の中でもかなり叙情的な響き、憂いのある響きをしており、 ワーグナーに捧げると称してブルックナーが自身の心の内を赤裸々に吐露している様に思います。 「神の音楽」と云われることもある彼の交響曲の中でも強く人間性を感じさせる、愛すべき作品です。 印象的なトランペットの音色がワーグナーの英雄性を表しています。まさにワーグナー賛歌! ワーグナーに対する想いを<ブルックナー・トーン>で表現した傑作ですね。 非常に聴きやすい、取り組みやすい曲の様に思います。 チェリビダッケもこの曲をいたく気に入っていたそうです。 |
交響曲 第7番 この曲から聴き始めましょう。 お薦め度 ★★★★☆ 所有盤 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 この曲は「神秘的、重厚で壮麗な響き、美しいロマン的な情感の有る作品」と紹介される事が多い様です。 ヴァイオリンのトレモロを背景に、息の長い第1主題がチェロを中心に示された途端、 軽い胸騒ぎの様なものを覚え、心は既に幻想の世界に招き入れられている感じがします。 そして心の中に深く沈潜してゆき、深遠な心象世界の中に投げ出されて漂っている様な感覚に陥ります。 管弦楽が澄んだ音色で、まるで繊細なガラス細工の様に、輝く光を心の中の深い森へ幾重にも伸ばしているかの様です。 神秘的であり、幻想的、繊細、そして激しいほどの力強さが混在しており、 それら全てのエッセンスが一つの憧憬に向かって集約していく感じでしょうか・・・。 あまり多くない管弦楽の響きを丹念に紡ぎ合わせて、艶のある音世界を作り出しています。 彼の作品は、非常に強くイメージを喚起する不思議な力を持っている様に思います。 この曲はヒーリング・ミュージックとしても良い効果が有るのではないかと思います。 ブルックナーをこれから聞き始める人にはこの曲がお薦めです。 |
交響曲 第4番 「ロマンティック」 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 指揮:クラウディオ・アバド ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナー自身が「中世の夜明け、城門から白馬に乗った騎士が狩りにでかける」と説明している様に、 ドイツの広大な森林や雄大な山を連想させる、豊かな幻想と神秘的な美しさを持っています。 導入部のホルンの音色をはじめとして、シンボリックな主題が次から次へと現れてきます。 幻想的、神秘的、と呼ばれるゆえんはそんな所にある様に思います。 簡潔な表現の各主題中に、イメージのエッセンスを凝縮しているさまには、ため息が漏れるくらいの美しさを感じます。 この曲はいつ聴いてもキュンとしますね。当然、この曲もお薦めです。 |
交響曲 第5番 お薦め度 ★★☆☆☆ 所有盤 指揮:ベルナルト・ハイティンク ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ブルックナーの場合、いわゆる「版」の問題が盛んに取り上げられておりますが、 それに加えて「書法」という言葉もよく持ち出される様に思います。 この作品も「卓越した対位法の書法に則り、壮大なスケールと堅固な構成を持っている」と紹介されることが多い様です。 私の場合、このような堅い話題にはついていけないので、純粋に「音」を楽しむようにしております・・・。 この曲には非常に厳粛、ストイックな印象を受けます。 何かしら大きな命題を背負わされた「神父のさま」とでも言いますか・・・。 非常に力強い主題を呈したかと思うと、今にも消え入りそうな内省的とも思わせる主題が姿を現します。 重々しい作りながら強い波と弱い波が交互に現れ、徐々に徐々に心を引き寄せていきます。 「カトリック的」「信仰告白」とよく解釈されている様ですが、私のイメージもかなりこれに近いです。 シンボリックな音が多くちりばめられており、 幻想的というか、イメージを喚起する力が非常に強いと思います。 ブルックナーの作品はやはり「幻想的」「神秘的「中世的」という言葉につきるんですかね〜。 この曲は音楽と対峙できるくらい元気な時、集中力がある時に聴く様にしています。 |
交響曲 第8番 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 指揮:サー・ゲオルグ・ショルティー ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 この曲はとりあえずとても長いです。ブラームスは彼の交響曲を当時「巨大な蛇のような交響曲」と言ったそうです。 日々忙しく生活に追われている僕には1曲を通して聴く機会はあまりありません・・・。 彼の残したメモにそれぞれの楽章の標題が書き示してあります。 第一楽章 : 死の予告と諦観〜死がもたらす様々な感情の起伏を表す〜 第二楽章 : ドイツの田舎もの〜野人が夢見る〜 第三楽章 : 特に言及なし 第四楽章 : オーストリア皇帝とロシア皇帝との会談 さらに「この作品は後世にこそ相応しいもの」とも述べています。標題を見る限りでは非常に難解な感じがします。 音に耳を傾けると、思考や感情の起伏をそのまま音に写し出した様な、 歩みを止めて心象風景の中に佇んでいる様な箇所が多く、非常に内省的、そして告白的な作りをしている様に思います。 澄んだ心で自己の中に深く沈潜していき、 結晶化したものを外の世界にゆっくりと吹き出している感じがするとでも言いますか・・・。 自分という「個」そして自分を取り巻く世全体が、現在の苦悩を乗り越えて近い将来には明るい新世代を迎えるだろうという、 「救済〜約束の地〜」を求めている様な気がしてなりません。それを「彼岸への憧れ」と喩える人もいる様です。 第三楽章の悠然とした美しいメロディーにはとても心惹かれます。 ドンとステレオの前に陣取り、この作品と対峙する時間を持つのも非常に有意義な事だと思います。 ぜひ時間を作ってこの曲を一曲通して聴いてみて下さい。この作品は彼の交響曲の中でも最高傑作と呼ばれている様です。 |
交響曲第9番 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 指揮:レナード・バーンスタイン ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 交響曲第8番は「救済」「約束の地への憧憬」と云った印象を与える曲でしたが、 この第9番はブルックナー最晩年の曲であり、健康を著しく悪化させていた最中に書かれたこともあり、 第8番の延長線上にあり、さらに凝縮された作りになっていると思います。より厳粛に、そして神秘的な響きをしています。 なおブルックナーはこの曲を彼の「愛する神に」捧げた、と伝えられています。 第一楽章は、ブルックナーがこれまでの波瀾万丈の自身の人生を振り返って作ったような感じを受けます。 激しい力を持って、そして時に慈しみを持って奏でられています。 いろいろな音がちりばめられており、彼の72年の生涯全てが凝縮されている感じもします。 第二楽章ではブルックナーには珍しく野太く力強いリズムが使われており、野性的で原始的な世界を示しています。 あたかも「約束の地」に一歩足を踏み出す際の荒ぶる心の高鳴りを表しているかの様です。 第三楽章は一転して、眼前に現れた真新しい世界を超然として受け止めている様な、 安らかで、とても澄んでいる心の様を感じさせるというか、「悟りの境地」さえも感じさせます。 この時ブルックナーは初めてありありと、そしてハッキリと彼の中の心象世界を目の当たりにしたのだと感じます。 そこには揺るぎのない、確固たる音の世界が存在していたのでしょう。 ブルックナーの交響曲の最後を飾るに相応しい、洗練された精神世界に言葉を失ってしまうほどです。 彼の交響曲は傑作揃いですが、この作品はぜひ聴いてみて下さい。 |