Brahms
ロマン派の中にあって、古典的傾向を示し、絶対音楽の信奉を守り続けたブラームス。
ベートーヴェンの正統的な後継者と呼ばれています。
                                        

データ・ファイル

1833年 : 5月7日、ドイツのハンブルクにて誕生。
1850年 : エドゥアルト・レメーニと出会う。最初の作品「スケルツォ編ホ短調」作曲。
1852年 : ヨーゼフ・ヨアヒムと出会う。リストと知り合う。デュッセルドルフにシューマンを訪問。
1857年 : デトモルトの宮廷音楽監督の就任。
1862年 : ウィーンに移住
1865年 : 母親死去。「ドイツ・レクイエム」作曲。
1872年 : ウィーン学友協会の芸術監督に就任。
1876年 : 交響曲第一番ハ短調完成
1885年 : 交響曲第四番ホ短調完成。
1887年 : 最後の管弦楽曲「ヴァイオリンとチェロのための協奏曲」作曲。
1879年 : 4月3日、ウィーンにて死去

作品の紹介
〜それぞれの作品の感想、所有盤の紹介、お薦め度、等々を掲載しています〜

               ・ 交響曲債二番
               ・ 交響曲第三番
               ・ 交響曲第四番
               ・ 交響曲第一番

交響曲第二番
   お薦め度 ★★★☆☆


所有盤 指揮:カール・ベーム ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

この交響曲はブラームスの「田園」とよく喩えられる様です。
ベートーヴェンが耳の療養の為に訪れたハイリゲンシュタットの田園風景を回想して第六番を作曲した様に、
ブラームスはこの交響曲を南オーストリアのケルンテン地方にあるウェルター湖の畔で過ごし作曲しました。
自然、そして其処に暮らす人々たちが、彼に多くのインスピレーションを与えた様です。

この避暑地で過ごした日々は彼の心にそれまで得ることの無かった安息をもたらした様ですね。
此処にいると、旋律があまりにも多く生まれてくるので、散歩の時など踏み潰さない様に気を付けなくてはならないほどです
といった事柄が、彼が友人に送った手紙の中に書かれていたそうです。
彼がそれまで感じていた交響曲を書くことへのプレッシャーが此の地を訪れたことで取り除かれた様です。

全楽章を通して美しい旋律と叙情的でさわやかな感じを与える作品に仕上がっていると思います。

繊細な音を積み重ねつつ、ゆっくりと爽やかに音楽が流れていくといった感じです。
彼の交響曲の中では唯一、非常に無邪気で、陽気な作品に思います。お薦めです。

交響曲第三番
   お薦め度 ★★★☆☆


所有盤 指揮:ウィルヘルム・フルトベングラー ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ブラームスの作品は発表当時よくベートーヴェンの作品に喩えられる事が多かった様です。
第1番がベートーヴェンの第9番に続くものとして第10番と呼ばれ、第2番は”田園”と喩えられました。
そしてこの第3番はブラームスの「英雄交響曲」と喩えられた様です。
これは、もちろん、ベートーヴェンの第3交響曲が「英雄」と呼ばれている先例にならったものですが、
また同時に、この曲の持つブラームス的な男性的な健全さと強固さ、雄大さ重厚さによるものの様です。
ベートーヴェンの英雄が超人的あるいは全人類的な英雄であるとすれば、
ブラームスの英雄はもっと人間的で孤高な英雄だと云えると思います。
かれ特有の魂の奥深くに沈潜していく様な重厚な音世界が、ベート−ヴェンのそれとは異質な音世界を作り上げています。
鋭角的で、攻撃的なベートーヴェンの音と比べると、悠然として、憂いがあり、強い包容力がある様に思います。
英雄の、情熱、苦悩、安らぎ、孤独と云った心中を切々と歌い上げています。これぞ、ロマン派!

交響曲第四番
  この曲から聴き始めましょう。  お薦め度 ★★★★☆


所有盤 指揮:ブルーノ・ワルター コロンビア交響楽団

この交響曲は、既に50歳を過ぎた感傷的なフラームスの孤独感と情熱を底に流した力強い意志がある様に思います。
又、古典派以前の音楽にも興味と共感を持っていたと云われるブラームスの、
音楽的指向が高い次元で結晶化した作品でもあります。
彼特有の耽美な音の世界が美しく、力強い存在感をもって奏でられています。

大仰さ、厳めしさを感じることもありますが音によく耳を傾けると、
彼の根底に流れている
ロマンティックな精神の息づかいを感じ取ることが出来ます。
第一楽章:第一主題で管弦楽が切ないメロディーを胸が押しつぶされるくらいに切々と訴えかける様に奏で始めると、
心は既にブラームスの世界に引き込まれてしまっています。
圧倒的な存在感を感じさせる数々の主題の中に自分の感情のすべてをぶつけているような様を見ると、
彼が敬愛してやまなかったベートーヴェンの姿を思い浮かべずにはいられません。
そのピント張りつめた緊張感は最終楽章まで続き、聴く者の心ぎゅっと掴んだまま離しません。
この曲は、彼が交響曲の作品の中で具現化できた一つの「理想郷」の様に思います。
彼の作品は耳になじみやすい美しいメロディーの作品が多いので、これからクラシックを聴き始める人にはお薦めします。

交響曲第1番
  お薦め度 ★★☆☆☆


所有盤 指揮:アルフレート・ショルツ 南ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団

この曲は発表当時「これこそベートーヴェンの第10交響曲である」と評されたそうです。
個人的にはベートーヴェンとブラームスでは音の鋭さ、質感、密度、若しくは音の透明度が全く異なるように思いますが。

序奏部は、聴いた途端胸騒ぎを覚える様な、悲劇の幕開けを連想させる陰鬱な響きで幕を開けます。
それはまさしく彼の心の葛藤。それから心の安らぎ、歓び、そしてさらなる躍動へと向かって進んでいきます。
初めて交響曲の世界に足を踏み入れた彼の心模様をそのまま音に表しているかの様です。
第4楽章でベートーヴェンの「歓喜の合唱」に似た主題が現れる所はご愛嬌ということで・・・。

ブラームスの作品はあくまで濃厚で、魂の中に深く深く沈潜してゆきその奥底で手に入れることの出来るイメージの結晶は、

ベートーヴェンのそれと劣らないくらい光り輝いていると思います。まさしくロマン派の貴公子!