![]() 学校の音楽室に飾っている髪を振り乱したしかめっ面の肖像画、ダ・ダ・ダ・ダーンの交響曲第5番「運命」、 彼との出会いは誰にとってもこんな感じだと思います。 しかし、そんなイメージに捕らわれているだけではいけません! 古典派からロマン派への扉を開けた、彼の表情豊かな音楽にもっと耳を傾けましょう。 きっと、あなたの心にも彼の澄んだ音の世界が響いてくると思います。 |
データ・ファイル 1770年 : 12月16日、ドイツのボンに生まれる。 1787年 : ウィーンでモーツァルトに出会いピアノの演奏を披露。 1792年 : ボンでハイドンに出会う。 1795年 : ウィーンのブルグ劇場で最初の演奏会を開く。 1798年 : 難聴の兆しが現れる。 1802年 : ハイリゲンシュタットに滞在。「遺書」をしたためる。 1803年 : 交響曲3番<英雄>作曲 1808年 : 交響曲5番<運命>作曲 交響曲6番<田園>作曲 1823年 : 交響曲9番「合唱付き」作曲 1827年 : 3月26日、ウィーンで死去。 |
ベートーヴェンへのメッセージ ♪この若き天才は、このままいけば、第二のモーツァルトに成るであろう♪ クリスチャン・ゴットリーブ・ネーフェ ♪ベートーヴェンはその精神力によって、宇宙を抱擁した♪ フレドリック・ショパン ♪ベートーヴェンの交響曲第5番はかつて人類が聴いた事の無い、もっとも崇高な騒音である♪ E・M・フォースター ♪シェークスピアが詩の新しい宇宙を見せたように、 ベートーヴェンの交響曲は私の目の前に新しい音楽の世界を開いてくれた♪ ベルリオーズ ♪あれほど独立的で、精力に満ち、しかも誠実な芸術家には会ったことがない♪ ゲーテ |
作品の紹介〜それぞれの曲の感想、所有盤の紹介、お薦め度、等々を掲載しています〜 ・ エリーゼのために ・ 交響曲 第3番 「英雄」 ・ ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 ・ ロマンス ヘ長調 ・ 交響曲 第4番 ・ 交響曲 第1番 ・ ピアノソナタ 第14番 「月光」 ・ ピアノソナタ 第8番 「悲愴」 ・ ピアノソナタ 再23番 「情熱」 ・ 交響曲 第7番 ・ 交響曲 第9番 「合唱付き」 |
エリーゼのために お薦め度 ★★☆☆☆ 所有盤 ピアノ:ヒューゴ・スチューナー この曲を知らない人はいないでしょうが、とりあえず紹介します。彼の作品の中で最も親しまれているピアノ曲です。 短いながらシンプルで控え目なこの作品からはベートーヴェンの最も繊細な面をかいま見ることが出来ます。 <エリーゼのために>という標題について、ベートーヴェンの伝記作家の間には、 「写譜者の誤りであり、テレーゼに捧げられたものである」とする説があります。もしこの説が正しいとすれば、 この作品がベートーヴェンの生徒テレーゼ・マルファッティに献呈されたのはほぼ確実の様に思います。 事実、作曲当時ベートーヴェンはこの若き女生徒に恋をしており、彼女の演奏技量を考慮し作曲したと考えられます。 ベートーヴェンはかなりの面食いだったようで、美しい女性に心惹かれ、その時々に恋する女性に作品を捧げていました。 |
交響曲 第3番 「英雄」 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 指揮:ヘンリー・アドルフ 南ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団 この作品が作曲された1803年から翌年にかけての時代背景はみなさんもよく御存知だと思います。 この時代に生きた芸術家や知識人たち同様、ベートーヴェンもフランス革命のスローガン、 ”自由・平等・博愛”に共鳴し、その理想を推進する共和主義の象徴として、ナポレオンを高く評価していました。 耳の病に冒され、一時は死の淵まで追いやられながらも立ち直り、 新たな創作意欲をみなぎらせて臨んだこの交響曲を彼はナポレオンに献呈するつもりでした。 ところが1804年12月、平民の諸権利の擁護者であったナポレオンが自らフランス皇帝になることを宣言するや否や、 ベートーヴェンにとってのナポレオンは英雄から暴君へと化してしまいました。 「あの男も平凡な人間にすぎなかったのだ」と叫び、この曲をナポレオンに献呈するのを取りやめました。 1806年この作品は、”偉大なる人物の思い出のために”という言葉が添えられ、 <英雄交響曲>あるいは<エロイカ交響曲>として発表されました。 この曲はベートーヴェンのパトロンのひとり、ロプコヴィッツ公爵に献呈されました。 非常に規模が大きく、複雑な構造を取りながらも激烈な感情を見事に頭脳的に融合させている名作です。 |
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 この曲から聴き始めましょう。 お薦め度 ★★★★☆ 所有盤 フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン) 指揮:ジェフリー・テイト イギリス室内管弦楽団 いわゆる中期の「傑作の森」と呼ばれる時期に書かれた名曲です。この時期に書かれた数多くの作品の中でも、 際だって光り輝いている作品だと思います。ティンバニの静かな5連打のリズムに導かれて、 管弦楽が第1主題、第2主題と気品を持って壮大に進んでいきます。そこに独奏ヴァイオリンが華やかにそして 時に切なく甘い旋律を紡いでいきます。管弦楽と独奏ヴァイオリンが交互にそして共に奏でられていきますが、 両者が、光る色糸を丹念に折り合わせてゆくタペストリーの様に響き合い、叙情豊かな音世界を描いています。 独奏ヴァイオリンが当時の恋人への思いを切なく、しかも品のある抑揚を持って悠然と奏でていく様は、 この曲で一番心を惹かれているところです。何を聞くか選曲に悩む時、この曲を選ぶ事が多い様に思います。 追伸、この曲のカデンツァを聞いて感動して以来、ベートーヴェンを聞くようになりました。 これからクラシックでも聴いてみようかと考えている人にもお薦めの1曲です。 |
ロマンス ヘ長調 お薦め度 ★★☆☆☆ 所有盤 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 約9分足らずの小作品ですが、ベートーヴェンの穏和な性格、そして繊細な心を感じ取れる名曲です。 普段クラシックを聴かない人でも一度は耳にしたことのあるメロディーではないでしょうか。 独奏ヴァイオリンが彼の恋心を華やかに、そして心地よい抑揚を持って奏でています。 |
交響曲 第4番 お薦め度 ★★★★☆ 所有盤 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 彼の交響曲の中で一番好きですね。この曲が話題になることはあまりありませんが・・・。とにかく大好きです! まるで彼が瞑想の中で見たかの様な心象世界、研ぎ澄まされた精神世界ですね。 これから訪れる事態を感じ胸が高鳴り震えを覚える様な、黎明期の静寂さ、射し込む一筋の光、とでも言うか・・・ そんなイメージを喚起するゆっくりとした序奏部で曲は幕を開けます。 そして畏れ、高鳴り、安らぎ、といった心模様を美しく時に力強い管弦楽で奏しながら曲は進みます。 非常に内省的に感じられますが、、外へ外へと溢れ出す躍動感も強い意志の力も感じられます。 澄み渡った世界というか、透明な世界というか・・・そんなイメージを強烈に与える彼特有の音世界です。 彼の音楽の重要な断片がこの曲に凝縮している様な気がしてなりません。 ちなみにシューマンは「ギリシャのほっそりとした乙女」とこの曲を呼びましたね。 私の思い入れがもっとも多い曲の一つです。みなさんにも是非聞いて貰いたい1曲です。 |
交響曲 第1番 お薦め度 ★★☆☆☆ 所有盤 指揮:オイゲン・ドゥヴィエ 北ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団 同じウイーン古典派のハイドン、モーツアルトといった巨匠たちと彼の音楽の決定的な違いはやはり、 作品の中に個性(パーソナリティー)を感じさせるところではないでしょうか。 いわゆる献上音楽としての宮廷音楽とは違い、生身の人間が作り上げる人間賛歌の様に思います。 モーツアルトに至っては自身の境遇、感情といったものと作品の中に反映させることを極端に嫌ったとききます。 絶対音楽的なものを重視し普遍的人間性を追求したとされる巨匠ハイドン、モーツアルトとは違い、 絶対音楽と云う雛形を守りつつ、ロマン派への架け橋となる「個」の自覚、解放をしたとでも云うか、 確固たる個としての人間を歌い上げていると云うか、我有りて音楽有りといった印象を非常に強く受けます。 この作品も、艶があり伸び伸びとし、彼の作品特有の躍動感も盛り込まれ、すばらしい作品だと思います。 こんなにも艶やかな管弦楽の響きを作り上げるのは彼ぐらいではないでしょうか。勝手な思いこみですが・・・。 |
ピアノ・ソナタ 第14番 「月光」 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ その他 クラシックを聴き始めた頃、ロマン派のショパン、リスト、シューマン等々のピアノ小作品集なる物を買って聴きましたが、 そこにはただ甘味なメロディーの羅列がそこに有るだけの様に感じて、それ以来ピアノ曲を避けていました。 ピアノ曲を再び聴き始めたのはこの作品を聴いてからです。第1楽章のメロディーはあまりにも有名。 イメージ的にはやはり青々とした満月が夜空に輝いている風景の移りゆく様なのでしょうが、 当時の”不滅の恋人”ジュリエッタ・グィッチャルディに対する激しい恋心の揺れ動きを表していると言っていいでしょう。 事実、この曲は彼女に献呈されています。しかしながら、彼女への求婚は成就しませんでした・・・。 彼の繊細な心の内を感じ取ることの出来る名曲です。私は特に第3楽章が大好きです。 話は変わって、ドビュッシーの「月の光」も美しい名曲です。こちらも私のお薦めです。 |
ピアノ・ソナタ 第8番 「悲愴」 お薦め度 ★★☆☆☆ 所有盤 ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ その他 第1楽章、第3楽章はまさに「悲愴」と言った感じの音世界。言葉にならないぐらいの美しく物悲しいメロディー。 頭をもたげてピアノに向かっているベートーヴェンの姿が目に浮かんできます。 第2楽章は「悲愴」と言うよりも「叙情的」といった音世界。 ビリー・ジョエルのアルバム「イノセント・マン」の中に<ディス・ナイト>という曲がありますが、 まさに第2楽章のメロディーをそのまま用いた作品。こちらは心の温まるラブ・ソングに仕上げられています。 ビリーの「イノセント・マン」は60年代のモータウン・サウンドを彷彿させる名作。こちらも私のお薦めです。 |
ピアノ・ソナタ 第23番 「情熱」 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ その他 上記の「月光」「悲愴」と併せてこの3曲はベートーヴェンの3大ピアノ・ソナタと呼ばれています。 この3曲がもっとも完成度の高い作品と言うわけではなく、もっとも親しまれている作品と言った方が良い様ですが。 然しながら、この「情熱」は彼のピアノ・ソナタの最高傑作と呼ばれている様です。 情熱!情熱!まさにこの言葉こそ彼のイメージにふさわしい言葉の様に思います。 ピアノ曲を聴くときは、だいたいこの3大ピアノ・ソナタを繰り返し聴いています。 |
交響曲 第7番 お薦め度 ★★★★☆ 所有盤 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 いわゆる「傑作の森」と呼ばれている充実した時期を過ごした彼が、 第6番「田園」を作曲後、4年という長いブランクを経て書き上げた作品。 難聴を苦にして死を覚悟していた時期があったことを微塵も感じさせない「喜び」に満ち溢れた世界です。 「生の喜び」を感じ、前へ前へと進もうとする強い意志を感じます。 強く包み込むような躍動感あるリズムが、悲しみ、苦しみ、孤独などと云った業を凌駕して、 慰め、抱擁、希望と云った「現世肯定」の観念を呼び起こす迄の過程が描かれています。 「ハイリゲンシュタットの遺書」当時の自分を葬る、決別するという意味も込められている様です。 この曲にタイトルを付けるとしたら、「決別」、「告別」、「復活」、と云った感じに成るんですかね。 それはまさに、堂々とした強い足取りを一歩一歩と前に踏み出していく作者の様をも連想させます。 この曲は第4番と同様にあまり話題にされる事が有りませんが、私の大好きな曲です。 |
交響曲 第9番 「合唱付き」 お薦め度 ★★★☆☆ 所有盤 指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 この曲はベートーヴェンの最後の交響曲であり、もっとも壮大な規模の作品です。 世界中の人々に対して人類愛のメッセージを伝えるために、 終楽章においてシラーの詩「歓喜に奇す」をテキストとする合唱と独唱を導入するなど、 情熱的、意欲的、そして交響曲史の上でも画期的な意味を持つ作品です。 あれこれと言いたい事は有るのですが、「Oh!ベートーヴェン!!」の一言に尽きると思います。 声楽部の終曲は誰でも聴いたことのある曲だと思いますが、 何を歌っているか分からない人が意外と多いと思いますので、日本語訳を掲載したいと思います。 「歓喜に奇す」 おお友よ!このような音ではない! もっと快いもっと歓びに満ちたものを歌いだそうではないか! 歓びよ、美しき神々の火花よ、それは楽園から来た乙女なのだ、 われらは火の如く酔いしれて、天にもまがう汝の聖堂に踏み入るのだ! 世俗の習慣が強引に引きはなしたものを、汝の魔力は再び結びつけてくれる。 汝の優しい翼のとどまるところ、すべての人々は兄弟となる。 一人の友を真の友にするという、難事を克服した者や、 優しい心の女性を妻にした者は、歓びの声をともに挙げるのだ! そうだ、この世界の中で、たとえ一つでも人の心をかち得た者はともに歓ぶのだ! しかしこれらに失敗した人は涙しつつこの同盟から去らねばならぬ。 生きとし生ける者は自然の乳房から歓びを飲む。 すべての善なる者も、悪なる者も、自然が開いたばらの道をたどって行く。 その自然はひとしく我らにくちづけとブドウの房と、 そして、死の試練をくぐりぬけた一人の友を与えた。 情欲的快楽は虫けらに与えられたのだ、そして神の御前には智の天使ケルビムが立ち給う! |