Synaesthesia 1995年発表

最もロック色の強いアルバム、音楽的バック・ボーンを全て注ぎ込んだ情熱の名作

アルバム紹介 : パラダイス&ランチ

<これまでのアンディーの活動を一掃するかの様なエモーショナルな作品>と称したメディアも有る様に、
衝撃的と言って良いほど彼の熱い情熱が注ぎ込まれている。
彼も”これは自分にとって最もポピュラーな存在になり得るアルバムだ!”と発言している。
加えて、”Teenage Vampire”と言う表現を用いて、
少年期からの音楽、ギターに対する純粋で熱い情熱について語っている。
アルバム・タイトルSynaesthesia(シンエスシィージア)は、
芸術や美術などに於ける演出技法を指す制作上の感覚や意識、
更にはもう一つの刺激的要素の事を意味しているらしい。
彼が歩んできたブリティッシュ裏街道30年の経験と足跡の全てを注ぎ込んだ、
とても大胆で斬新さを感じさせる作品である。
ロック的な演奏をベースにワールド・ミュージックに取り組んでいるアグレッシブな作品だ。

今作の最大の特徴と言えば、取りも直さずアンディーのギターがこれまでにない位に歪んでいることだろう。
彼の長いキャリアーの中でもこれほどロック色の強い作品は無いのではないだろうか?
これまでも彼の作品はビジュアルな物が多かったが、原色と言って良いほど力強く鮮明なリズムを奏でられるのは、
ゲスト・プレーヤーとしてドラムを叩いているジンジャー・ベーカーの存在が大きいだろう。
9曲中8曲でドラムをプレイしている。

冒頭に収録されている「キューバン・リバップ」からアット驚くようなアプローチが展開されている。
そのタイトルからも分かるようにジンジャー・ベーカーが柱となって叩き出される強烈なキュー版・リズムをバックに、
アンディーが強烈なフィード・バック・ギターを炸裂させている。(←山田氏のレビューから引用)
「キューバン・リバップ」〜「メッシュズ・オブ・ザ・アフタニューン」までの流れが、
今作の核をなすアンディー&ジンジャー・ベーカー流のロック・フュージョンと言っても良いだろう。

又、1990年の『Cherming Snakes』において初めてモンクを題材にした楽曲「Monk Gets Ripped
」以降、
モンクの楽曲を数多く取り上げ続けているが(少年期からのヒーローの一人がセロニアス・モンクである)、
今作に収録されている「モンク・ハングズ・テン」は最もチャーミングな作品と言えるだろう。
西海岸を連想させるような軽快なリズムにノリながらもアンディーのギターは相も変わらず歪んでいる。
この手の遊び心のある楽曲を聴くと、
アンディーの充実した精神状態や音作りの環境が整っていることが見て取れる。

これに続く「アンブレラズ・オーヴァー・ジャヴァ」、「ロウ・フライング・ダヴズ」の2曲に於いては、
プライベート・ミュージック時代に取り組んだ『The Golden Wire』、『Mysterious Barricades』のテイストを、
よりロック的?!バンド的?!に再アプローチし直した趣を感じる。
取り分け「ロウ・フライング・ダヴズ」は『Mysterious Barricades』におけるニュー・エイジ・ミュージック的なテイストを、
バンド形式を取ることでより鮮明な音像として顕在化されている様に感じる。
エキゾチックと言ってしまうと平板だが異国の地を連想させるメロディー・ラインが魅力的である。
この楽曲に於いてもキーボードが効果的にフューチャリングされている。
個人的にはアンディーのネオ・アコースティク、ネオ・ニュー・エイジと呼ぶべき作品群がとても好きである。
ちなみに「アンブレラズ・オーヴァー・ジャヴァ」ではアンディーがベースの演奏を披露している。

これに続く2曲「インヴィジブル・シティーズ」、「シンエスティージア」(アンディーがピアノを弾いている)が、
アルバム・タイトルでもあるシンエスティージア的な作品と言えるだろう。
今作ではジンジャー・ベーカーのドラムを例に出すまでもなくロック色が強く表れている点が特徴であるが、
楽曲の多様性(ワールド・ミュージック的、ロック・フュージョン的、現代音楽的、フリー・ジャズ的)も忘れては成るまい。
この2曲ではピアノが効果的に用いられている。(アンディーのキーボード類の取り入れ方はセンスが良いですね。)
いかにも現代音楽的、はたまたフリー・ジャズ的な構築美とインプロビゼーションが取り入れられており、
全く対照的な取り組みが為されている2曲では有るが、
アンディーの新たな楽曲に取り組もうとする尽きることのない音楽への愛情を強く感じる秀作である。
またまた個人的なことを言うと、
この2曲が今作で最も注目すべきアンディーのニュー・スタイルと言っても過言ではないであろう。
色々なジャンルを取り込んでアンディーが作り上げたハイブリットなサウンドと言えるだろう。

アルバムの最後を飾るのは「アイ・リメンバー」である。
タイトルに込められている意味を深読みしたくなるんですが(笑)、
アコースティク・ギターが優しく奏でるアルペジオ・タッチのメロディーは実に美しい!!
やはり音楽に取り憑かれていた少年期にでも思いを馳せているのでしょうか?
楽曲の持つ色彩はパステル・カラー、ギターの調べはとても切ない感じですね。

ソロ活動を初めてからの作品群の中では異色な作品かも知れませんが、
素晴らしい楽曲が収録されている秀作のように感じます。お勧めしますよ。


収録曲

1 Cubano Rebop
2 
Chocolate Of The Desperate
3 Meshes Of The Afternoon
4 Monk Hangs Ten
5
 Umbrellas Over Java
6
 Low Flying Doves
7 Invisible Cities
8
 Synaesthesia
9
 I Remember

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