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 70 入れ替わり


 ある森の中に鳥の巣が一つありました。もうすぐ孵化しそうな卵が二つと孵ったばかりのヒナが一羽、親鳥の帰りを待っています。
「ねえ、僕たち入れ替わろうよ」
 卵の中のヒナが卵の殻をコツコツ叩くのに飽きてもう一つの卵の中の兄弟にそう言いました。
「入れ替わってどうするの?」
「お父さんとお母さんが帰ってきたら僕たちが入れ替わっているのがわかるかどうか聞いてみるの。きっとわからないと思うんだ」
「面白そうだね。本当にわからないと思う?」
「わからないと思うよ。僕たちまだ卵だもの」
「僕たち動けないのにどうやって入れ替わるの?」
「兄さんに頼もうよ」
 お兄さんのヒナは迷惑そうにしましたが、二つの卵が熱心に頼んだので、しょうがなく二つの卵の位置を入れ替えてくれました。
「兄さん、兄さん。僕たちが入れ替わったのお母さんとお父さんわかると思う?」
 兄さん鳥は卵をよく見てみました。そっくりに見えます。でも何となくお母さんにはバレてしまうように思いました。
「多分、わかると思うよ」
 二つの卵は兄さんの答えが不満で、絶対にわからないよと騒ぎました。
 バサバサバサッ。
 お母さん鳥が巣に戻ってきました。巣の様子がいつもと違うのでちょっと警戒しましたが、ヒナと卵の様子を見てすぐに何かいたずらをしたとわかりました。
 注意深く見てみると卵の位置が違っています。兄さんのヒナもちょっともじもじしています。
 お母さんは嘴で軽くコツン、コツンとヒナと卵を軽くつっつくと、卵の位置を直しました。そして、兄さんにとってきた餌をあげました。
 お母さん鳥は卵とヒナを眺めながら安心してゆっくりと羽を休めました。また明日も忙しいのです。

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