岡田有希子さんのシナリオ


タイトル:岡田有希子(佐藤佳代)千年前から見つめていた       黒澤哲二 


 1986年4月6日福山哲(15歳)は、名古屋市民会館で行なわれた岡田有希子さんのコンサート「Heart Jack」のコンサートを見ていた。岡田有希子さんの生前に行われた最後のコンサートである。福山哲は4月8日に高校の入学式を迎える。大の岡田有希子さんファンで、2泊3日で中学卒業の卒業旅行として、岡田有希子さんの育った名古屋見物に来て、そしてチケットが取れた岡田有希子さんのコンサートを見に来たのである。

 今日は、名古屋城と名古屋テレビ塔を見学し、お昼に岡田有希子さんの好きな山本屋総本家の味噌煮込みうどんを食べ、14:30分開演のコンサートに来たのである。

 コンサートの最後の曲を岡田有希子さんが歌い始めた。哲の好きな曲である。精一杯声援を送り、そしてコンサートは終わった。

 福山哲は時計をチラッと見た。時計は、17:35分を指していた。その後、会場の最寄駅のJR金山駅から名古屋駅に向かった。

 

 1986年4月8日福山哲は、高校の入学式を終え、自宅でテレビを見ていた。午後5時のニュースが始まり、何とはなしに見ていた。「5時のニュースです。歌手の岡田有希子さんが、今日自殺しました。」「マジで。」

 哲は、血の気が引く音を聞いた。「信じられない。」チャンネルを回し、岡田有希子さんの情報を探す。他のチャンネルで、岡田有希子さんのニュースをやっているところはなかった。

 哲は、すぐにテレビ局に電話した。「あの、岡田有希子さんが自殺したって、本当なんでしょうか?」「ええ、今日の午後12:15分にサンミュージックの入っているビルの屋上から岡田有希子さんは飛び降り自殺をしました。」「そうですか。」

 哲はあっけに取られた。「どうしよう。」哲は「そっと手を合わせた。」不思議と涙は出なかった。

 

時は過ぎ、福山哲は38歳になっていた。芸能事務所の『東京新社』でマネージャーをやっていた。大学を卒業後の22歳からこの芸能事務所で働いていた。「哲さん、この高校生の女の子、哲さんの好きだった岡田有希子に似てないですか。」「誰?」「最近スカウトした子ですよ。」後輩のマネージャーの佐藤徹である。「佐藤ちゃんが、スカウトしたの。」「そうなんですけど。」「名前何て言うの?」「塩屋佳奈って言うんですよ。」「ふーん」「どれどれ」「そっくりじゃないの。」「今日、これから来ますよ。」「ふーん」

午後3時になり、塩屋佳奈がやって来た。「おはようございます、塩屋佳奈です。」「福山哲です。」「いいねー」「本当に岡田有希子さんにそっくりだね。」「佳奈ちゃん、岡田有希子さんって知ってる?」「ええ、一応は。」「歌ってみようか。」「はい」「得意な曲は何かあるの?」「松田聖子さんの曲とか。」「なるほどね。」「佐藤ちゃん、松田聖子さんのカラオケ何かあったっけ?」「赤いスイートピーだったら」

塩屋佳奈は、歌い始めた。「びっくりした。君うまいね。」「すぐ、いけそうだね。」「佐藤ちゃん、いいじゃない。」3ヵ月後、塩屋佳奈は『恋は虹色』でデビューすることになる。

 福山哲は、デビューした塩屋佳奈とテレビ局の生放送の歌番組に来ていた。先週、始めてテレビに出演して歌い、人気が少し出てきた。今日は、さらに始めての生放送である。「佳奈、緊張してるか?」「はい」「生だって、収録と変わらないさ。」「レッスンどおりにやれば、いいんだよ。」「この番組は影響力があるからね。」「きっと、CDがもっと売れるよ。」

 収録が始まった。佳奈の衣装は、哲が選んだマリンルックだ。佳奈の顔が緊張していた。哲がスマイル、スマイルとポーズを送った。佳奈の番になり、司会者に話を振られる。「佳奈ちゃん、デビューしてから始めての生放送だって。」「どう緊張してる?」「ええ」「もう心臓バクバクです。」「全国のみんなが見ているからね」司会者のいじわるである。アシスタントの女子アナウンサーが、「では、歌ってもらいます。塩屋佳奈さん。恋は虹色。」

 佳奈の歌が始まった。舞台に立った佳奈は、大したものである。完璧に歌いきった。「佳奈どうだった?」「歌が始まったら、無心で出来ました。」「売れるぞ、さっき言ったけど、この番組は影響力あるからね。」

 次の週のオリコンで塩屋佳奈の『恋は虹色』は8位になった。テレビの力である。塩屋佳奈が所属事務所の東京新社にやってきた。佐藤徹は、佳奈を見つけると「佳奈ちゃん、恋は虹色がオリコン8位になったよ。」と言った。佳奈は「ありがとうございます」と、おじぎをして言い、次の仕事に向かって行った。

福山哲は、テレビ局で打ち合わせが終わり、事務所の東京新社に戻ってきた。「哲さん、佳奈がオリコン8位ですよ。」佐藤である。「知ってるよ。」「次の新曲はどうしましょうか?」「考えてある。」哲は新曲を用意していた。今度の曲は『恋は虹色』がスローテンポだったので、アップテンポの夏らしい曲を用意していた。しかも、CMのタイアップをつけようと思っている。

 佳奈が仕事から戻って来た。哲は佳奈に新曲を聞かせてみた。「どう?」「今度の曲の方が好きですね。」「そうか、気に入ってくれたか。」「さっそく、レコーディングをしよう。」「明日、午前10:00からAスタジオでね。」「分かりました。おつかれさまでした。」佳奈は帰っていった。

 新曲の『サマースタイル』は、清涼飲料水の大手企業のCMタイアップがついた。しかも、オリコン初登場1位になった。哲は軽くガッツポーズをした。佳奈の人気は、日に日に上がっていった。そして、出す曲出す曲が、オリコン上位をしめるまでになった。

10月、11月になり、賞レースの行方が気になる時期になる。塩屋佳奈は、前評判どおり、次々と歌謡祭の新人賞を取っていく。「佳奈、NHK紅白歌合戦の出場が決まりそうだよ。」「よかったね。」「すいません。その仕事出来ません。」「何で?」「実は私、岡田有希子なんです。」「どういうこと。」「今は、弁才天グループに所属している成り立ての神なんです。」「実は、あなた福山哲さんを迎えに来ました。」「私は、12月31日の23時59分59秒までに福山さんを連れて神の世界に戻らなくてはいけません。」「分かった。分かった。」「じゃ、紅白だけは出ておこうよ。」「私の話を信じてませんね。」「冗談だろう。」「本当です。」「今年中に帰らなくてはいけないんです。」「紅白は、出られません。」「12月31日までなんだろう。」「紅白出られるじゃない。」「そうも行かないんです。」「神の世界の入口がNHKのある東京の渋谷から遠いんです。」「どこ?」「茨城県常総市にある一言主(ひとことぬし)神社の御神木のスダジイの木の中なんです。」「ですから、紅白に最後まで出演したら、間に合いません。」「本当なんだね。」「本当です。」「そうか。NHKは、ずいぶん佳奈ことを押しているんだよ。」

次の日、福山哲はNHKと打ち合わせが終わり、携帯電話で佳奈に電話をした。「佳奈、NHKがね、紅白では新人歌手の歌の順番が最初の方だから、用事があるのなら、それだけの出演でいいって言っているんだけど。」「だめかな。」「福山さんは神の国に一緒に来てくれるんですか?」「俺」「そういえば、何で俺が?」「あなたはヤマトタケルノミコトの直系の子孫なんです。」「俺が、うそだろ。」「本当です。」「あなたは神の国で10年間勉強するそうです。言うなれば、昔の遣唐使、遣隋使と言ったところです。」「福山さんは、独身ですよね。」「そうだけど。」「私は岡田有希子ですよ。」「好きだったんでしょ。」「私と一緒に神の国で勉強しましょうよ。」「分かった、じゃ紅白で歌って、それで途中で抜けて、一緒に一言主(ひとことぬし)神社に向かおう。」「ということは、福山さん、神の国に行ってくれるんですね。」「分かった。俺も男だ。」「ところで、神の国で学んだあとは、今の世界に戻れるの?」「卒業が認められたら戻れます。」「あなたは日本の総理大臣になるんです。」「そして、地球温暖化や世界の食糧問題などの諸問題をあなたがリーダーとなって解決していくんです。」「出来ますか?」「そんなスゴイ事出来るの。」「とにかく、神の国で学んでください。」「あなたに近づくために東京新社の佐藤徹マネージャーにスカウトされるように仕組んだんです。」「私、岡田有希子の本名は佐藤佳代でしょ。」「佐藤徹マネージャーは、私の遠い親戚だったんです。」「調べたら、偶然あなたの会社に佐藤マネージャーがいたんです。」「ですから、スカウトされるために、佐藤マネージャーに近づいていったんです。」「スカウトされなかったら、親戚ですけど、あなたの芸能事務所に入れてくださいって頼もうと思ったんです。」「そうだったんだ。」「分かった。じゃ、紅白の出番が終わったら、すぐ一言主神社に向かおう。」「このことは、福山さんと私の内緒ですよ。」「うん、わかったよ。秘密にする。」

12月31日になった。塩屋佳奈は、紅白歌合戦のリハーサルをしている。佳奈がリハーサルを終え、福山哲のところに来た。「社長に辞表を出してきたよ。びっくりしてたよ。今日でマネージャーの仕事とも、おさらばか。」「打ち合わせどおり頼みましたよ。」「今日を逃すと、私も神の世界に戻れなくなってしまうんですから。」「分かってるって。」

紅白歌合戦の本番がスタートした。佳奈の出番は、紅組の1番最初である。佳奈の歌が始まった。相変わらず、うまいもんである。佳奈の歌が終わり、出演者全員にあいさつしている。佳奈は、福山を見つけると、目配せをして示し合わせたように会場の出口で合流し、外へ出た。そして、すぐにタクシーを拾った。「運転手さん、茨城県常総市の一言主神社まで行ってください。」「分かりました。」

「佳奈、うまくいったな。」「あの1つ、いいですか。」「もう塩屋佳奈は終わったんです。」「これからは岡田有希子でもなく、本名の佐藤佳代って呼んでください。」「それじゃ、佳代って言ってみてください。」「分かったよ。」「佳代。」「はい、何ですか?」「言えって言ったから。」「そうですね。」

バン、キイーン。「お客さん、すいません。タイヤがパンクしました。」「もしかしたら、敵かもしれません。」「敵?」「この世界には、悪い神様もいるんです。」「佳代の妨害をしているのかもしれません。」「考え過ぎでしょ。」「お客さん、タイヤの交換が終わりました。すいませんねぇ。」車が再び動き出した。すぐに首都高速に入り、しばらく走って常磐高速道路まで来た。「福山さん、いま22:30分です。間に合いそうですね。」「お客さん、もうすぐ谷和原(やわら)インターですよ。谷和原で下りたら、神社はすぐですよ。」「運転手さん、急いでください。」車は常磐高速道路の谷和原インターを下りた。「福山さん、伏せて。」「何?」「やっぱり、敵がいるようです。」「本当なのか。」「気を付けてください。」「最後まで気を抜いては、いけません。」「でも、車が動いているから、まだ大丈夫です。」「福山さん、一言主神社の大鳥居が見えました。」「着いたんだね。」「最後まで、気を抜いてはいけません。」「お客さん、着きましたよ。」福山哲は、お金を払い、タクシーを降りた。続いて、佐藤佳代が車を降りた。

「人がいっぱいいる。」「大晦日ですから。」「あれが御神木のスダジイの木です。」「佳代の魔法でみんなを瞬間的に眠らせます。」「私たちが、神の世界の入口の空間のゆがみに入るところを人に見られる訳には行きませんから。」「ハー、ヤー。」そこにいる人が完全に眠った。「福山さん、今です。御神木のスダジイの木に飛び込んで。」「先に行ってください。」「早く。」福山哲は尻込みをしていたが、意を決してスダジイの木に飛び込んだ。



 気が付くと佳代と一緒に真っ暗な空間にいた。「福山さん、どうやら間に合ったみたいです。このまま、私の後を付いて来てください。」「分かった。」どれだけ歩いただろうか。1時間は経過した。しばらくすると、だんだん回りの様子が明るくなってきた。どんどん光が強くなっていく。福山哲は、佐藤佳代の後を付いて行くしかなかった。3時間ほど歩いて、佳代の足が止まった。ここが、神の国の入口です。そこには、大きな扉とその両側に番人が2人いた。「佐藤佳代、弁才天大学校の魔法科1組です。福山哲を連れてきました。」「よし、通っていいぞ。」大きな扉が開いた。神々しい光があふれてきた。

中に入ると、福山哲は書類を書かされた。それと、神の世界のお金を頂いた。扱いは、特待留学生らしい。「お金は、あなたのご先祖様からです。あなたは特待生ですから、授業料はかかりません。10年間頑張りなさい。佐藤佳代と同じクラスで学ぶように。」「福山さん、弁才天大学校魔法科1組、佳代と一緒のクラスみたいです。」「そうか。何か足がすくんできた。」「しっかりしてください。」「福山さん、私のご先祖と福山さんのご先祖様が話し合って、福山さんは佳代と同じ家で住んでもらうんです。」「分からないことがあったら、何でも私に聞いてください。」「でも福山さん、私と同じクラスで良かったですね。」

佐藤佳代の家に到着した。「ここが、私の家です。」「お邪魔します。」「私の家族です。おじいちゃんとおばあちゃんです。3人で暮らしています。」「あなたが福山君か。人間の世界では佳代がお世話になったんだってねぇ。まあ、気楽に過ごしなさい。」佳代の祖父である。「よく来たねぇ。佳代と仲良くしてくださいね。」佳代の祖母である。「福山さん、福山さんの部屋を案内します。」「こっちです。2階のこの部屋を使ってください。」「食事にしましょう。」「今日は、おばあちゃんが御ちそうを作ってくれたみたいです。」「福山君、酒の方はどうかな。」「人間の世界では、芸能事務所に勤めていたので、結構飲める方です。」「じゃ、一杯。」佳代の祖父は、酒を注いだ。「これ、何ですか?」「こっちの世界の酒じゃよ。」「おいしいですね。」「福山さん、程々にお願いしますよ。おじいさんもあまり飲ませちゃだめですよ。」「おばあさん、分かっておるよ。」食事は、終わった。福山哲は、神の国の食事も食べられそうだなと思った。

「福山さん、佳代の部屋に来てください。」「どうでした、食事は?」「おいしかったよ。あの酒は不思議な味がしたね。」佳代は自分の部屋で写真を福山哲に見せた。「佳代が人間の世界で死んで、こっちの世界に来てからの写真を見てください。」「これは、学校の友達と撮った写真です。」「弁才天大学校の魔法科の1組だっけ。」「そうです。」「学校はいつからなんだ?」「明日からです。」「ウソですよ。福山さんは来週の月曜日からです。」「あと3日後です。」「それまで、ゆっくり休んでください。」「佳代は、いつから学校行くの?」「佳代は明日から行きます。約1年ぶりですよ。」「明日、佳代が学校から帰ってきたら、福山さんのご先祖様に会いに行きましょう。」「分かった。」

次の朝になり佐藤佳代は学校の仕度をしていた。「福山さん、ゆっくりしててくださいね。帰ってきたら、福山さんのご先祖様の家に案内しますね。」佳代は学校へ行った。

午後4時になり佳代が学校から帰ってきた。「福山さん、ゆっくり出来ました?」「ああ。」「じゃ、福山さんのご先祖様に会いに行きましょう。」「おじいちゃんが送ってくれるそうです。」「車で?」「車ですけど、ガソリン燃料ではありません。」「いわゆる超能力で動かしているんです。」「さすが、神の国だな。」「福山君、佳代、行こうかね。」「お願いします。」

30分後、福山哲のご先祖の家に到着する。佳代は呼び鈴を鳴らした。「ああ、佳代ちゃん、元気だった。」「はい。」「哲か。」「こちらは、福山さんのおじいちゃんとおばあちゃんです。」「じいちゃん、ばあちゃん。こっちの世界で生きてたんだ。」「哲、りっぱになったな。」「お金のことは、心配ないですよ。」「ばあちゃん、ありがとう。」「佳代ちゃん、よろしくね。」「おばさんも元気で。」「哲、頑張るんだぞ。」「じいちゃんも元気で。」「じゃ、帰りましょう。」「私のおじいちゃんが車で待ってますから。」「じいちゃん、ばあちゃん、元気でね。」



 そして、福山哲が始めて学校に行く朝になった。「福山さんおはようございます。昨日はよく眠れました?」「あまり、眠れなかったよ。学校ってどんなところなんだ。」「人間の世界のハーバード大学やケンブリッジ大学を足して2で割ったような感じです。」「ちょー優秀なんじゃないの。」「福山さんなら大丈夫ですよ。すぐ慣れますよ。」「おばあちゃん行って来ます。」「福山さん、学校がんばってくださいね。」「おばあさんありがとう。」「では、福山さん行きましょう。」「学校は歩いて10分くらいです。」「佳代ちゃん、おはよう!」「福山さん、友達の里美ちゃんです。」「こんにちは、鈴木里美です。」「佳代ちゃん、先行くね。私当番なんだ。」鈴木里美は走って行ってしまった。

「ここが学校です。」「でかいなー。」「敷地は東京ドーム3つ分以上です。」「へえー、すごいね。」「職員室に行きましょう。」「あなたが福山君ね。私が担任の教師の松尾早苗です。校長先生に挨拶に行きましょう。」

「ここが校長室です。」「さあ、福山君入って、佳代ちゃんも一緒にね。」「私が弁才天大学校の校長山田英二です。久し振りの人間界からの特待留学生ですね。100年ぶりくらいです。がんばるんですよ。」「松尾先生に何でも相談するといいですね。」「分かりました。よろしくお願いします。」「福山君、あなたは佳代ちゃんと一緒の魔法科1組ですよ。」「それでは、教室の方へ行きましょう。」

「ここが教室です。」「福山君の席は佳代ちゃんのとなりにしましょう。」「そこに座って。」「はい。」「何かあったら佳代ちゃんや担任の私に相談するといいですよ。」

「ホームルームを始めます。」「今日から人間界から留学生が来ています。」「留学期間は10年です。名前は福山哲君です。」「仲良くしてあげてくださいね。」「福山君、挨拶して。」「福山哲です。38歳です。人間の世界では、芸能マネージャーをしていました。よろしくお願いします。」「何か福山君に質問はありますか?」「はい。」「後藤君。」「佳代ちゃんと福山さんは付き合っているんですか。」「後藤君、もっとマシな質問をするように。」「答えなくていいですよ。」「他には?」「・・・・・」「じゃ、そのまま授業を始めます。」「福山君、1時間目の魔法の授業は担任の松尾が担当します。」「あなたは魔法科ですから、特に魔法の授業はがんばってね。」

「では、1時間目の授業を始めます。まず最も基本のエネルギー技術トリートメントについて説明します。」「トリートメントは、体にエネルギーを十分に流すことによって体のエネルギー状態を整え、心身を活性化することを目的にしたエネルギー技術です。トリートメントを受けると、とっても気持いいですよ。」

「では、2人一組になって。」「トリートメントを受ける人は椅子に座ってリラックスしてください。手のひらを上に向けて膝の上に置いてね。トリートメントをする人は、される人の後ろに回って背中側からトリートメントします。」「頭の上に両手をかざし、ゆっくり100位数えます。次に手を頭の側面にかざし、同じように数えます。今度は頭の前と後ろに手をかざし、同じように数えます。」

「ここからちょっと難しいですからね。」「頭の中に残っているマイナスエネルギーを抜きます。手を首から上に頭の側面に沿って持ち上げるようにして、マイナスエネルギーを3回程度抜きます。これで頭に溜まったマイナスエネルギーを除いたことになります。」

「今度は肩に両手をかざし、ゆっくり60位数えます。数え終わったら手の位置を変えます。肩から腰までまんべんなく手を移動しながら、1ヵ所60ずつ手をかざしてゆきます。背中側で手をかざしていない場所がないようにしてね。」「トリートメントが進み、腰まで終わったら,仙骨に片手をかざしてエネルギーを送り込み、ゆっくり60位数えます。空いた手を頭の上にかざすと、頭から何かが出ているのを感じ取ることができますよ。溜まっているマイナスエネルギーが出ているのです。」

「そしたら、もう一度頭の上に両手をかざし、100位ゆっくり数えます。最後に、頭の中に残っているマイナスエネルギーを抜きます。5回以上、ゆっくり、じっくりと抜いてください。」

「みなさん、出来ましたか?」「返事は。」「先生、出来ましたー。」「福山君、トリートメントは出来ましたか?」「先生、難しいです。」「佳代ちゃんは、以前にも何度かやったから出来るでしょ。」「はい、出来ます。」「福山君によく教えといてね。」「はーい。」「では、今日の授業は終わりにします。」

「福山さん今日のこの後の予定は、2時間目が体育でその後昼食です。午後は3時間目が政治・経済の授業で、4時間目が芸能の授業です。それで帰りです。」「それから1コマ90分授業です。」「じゃ、次は体育か。着替えなんて持ってないよ。」「今日は、しょうがないですね。」「今度から準備した方がいいですよ。」「じゃあ、グラウンドに行きましょう。」

「では、授業を始めるぞ。」「まず、体操をします。」「1,2,3,4・・・」「じゃ、今日は学校の周りを走ります。」「だいたい距離は10kmです。」「みんな、60分以内で走ること。」「いいね。」「では、用意、スタート!」

「・・・58分、59分・・・」最後の一人がゴールした。「よーし、最後の一人、59分35秒。」「全員60分以内だ。」「福山さん、何分でした。」「50分25秒だったよ。」「佳代は?」「私、43分39秒でした。」「佳代、結構早いんだね。」

「じゃ、整理体操やるぞ。」「1,2,3,4・・・」「じゃ、今日の授業は終わり。」「福山さん、ご飯にしましょう。」「学食がありますから。」「佳代ちゃん、食事行こう。」友達の里美である。「福山さんも一緒でいい。」「いいよ。」

食堂である。「この券売機で食券を買ってください。」「ラーメンにしよっと。」「里美ちゃん、あそこにしよ。」「うん。」「福山さん、午後1時から3時間目の授業が始まるんですよ。」「そうなんだ。」「里美さんは何歳なの。」「私、25歳です。」「そう。」「おいしかった。」「佳代この学食安くておいしいね。」「じゃ、教室に戻りましょうか。」

教室で。「佳代ちゃんと福山さんって付き合ってるの。」「いいえ、ねえ福山さん。」「ああ。」「でも、佳代ちゃんと福山さんって似合ってるよねぇ。」「もう・・・」「福山さんも何か言ってください。」「俺は別に。」「佳代に興味がないんですか。」「いや、そういうわけじゃないけど。」「そういうわけじゃないけど、何なんですか?」「・・・。」

「では授業始めますよ。みんな席に座って」「今日は物価と景気の話をします。」「まず、インフレーションですが、簡単に言えば、ものの価値が上がってお金の価値が下がってしまう状態をいいます。物価が上がっても、それによって景気が良くなり、仕事が増えて賃金が上がればいいんだけどね。問題なのは、物価の上昇の押さえがきかなくなって暴走したときですね。」

 「続いてデフレーションについてです。簡単に言えばデフレとは、物価が下がり不況が進むことで、さらに物価が下がり不況が悪化することです。また、不況のときは、値段を下げても商品はあまり売れません。そうすると、売上全体が下がります。そこで、もっと安くする、それでも売れない。つまり会社の利益が減る。すると給料が上がらない。生活が苦しくなる。さらに物が売れない。という悪循環が生まれます。これを、デフレスパイラルと言います。」「いいですか。」

 「最後にスタグフレーションについてです。スタグフレーションは、スタグネーション(停滞)とインフレーション(物価の上昇)の合成語です。簡単にいえば、景気が停滞しているのに、物価上昇率が高い状態のことを言います。普通は、景気が落ち込めば物価も下落し、景気が過熱すれば物価上昇率が高くなります。ところが、景気が落ち込んでいるのにもかかわらず、物価上昇率だけ高くなることもまれに出てきます。例えば原油価格が高騰したような場合、原油の輸入依存度の高い日本は、たちまち景気が落ち込みますが、原油の価格が他の物価に跳ね返って物価はさらに上昇してしまいます。」「分かりましたか、じゃ、今日の授業はこれで終わりにします。」

「福山さん4時間目は芸能の授業ですよ。」「芸能の授業?芸能の授業ってどんなことやるの?」「お芝居や歌や楽器の授業です。」「面白いね、神様の学校って。」

「では、授業を始めます。まずは発声練習からやります。」「水馬(アメンボ)赤いな。アイウエオ。浮藻(うきも)に小蝦(こえび)もおよいでる。柿の木、栗の木。カキクケコ。・・・」「それじゃ、これから渡すプリントのセリフを男女に別れて言ってもらいます。「では、最初は佐藤と福山やってみて。」「私だって子供じゃないもの。」「・・・」「変な事はしてないわよ。」「僕には病院に行くって・・・。」「だって本当の事言ったらいやでしょう。」「本当もウソもあの男と映画へ行ったのは事実じゃないか!」「映画へ行っただけよ!」「・・・。」「・・・。」「今日は先に帰るよ!」「いいわよッ!」「佐藤はいいけど、福山セリフ棒読みじゃないか。もっと、感情を込めて言うように。いいね。」「はい。」「じゃ、次、鈴木と松尾。」・・・・・「ようし、これで全員終わったね。」「じゃ、これから歌のレッスンをするから。音楽室に移動して。」

「発声からやります。」「あー、えー、いー、おー、うー。かー、けー、きー、こー、くー。・・・」「じゃ、みんなで課題曲の『翼をください』を歌います。」「♪いま私の願いごとが・・・」「では、最後にエレクトーンを弾いてもらいます。」「C,G7、Fのコードに気を付けて課題曲の『ふるさと』を弾いてもらいます。」「♪〜♪」「全員弾きましたね。じゃ、今日の授業は終わります。」「福山さん、今日はもう帰りですよ。」「じゃ、帰りましょう。」「福山さん、3ヵ月後に魔法大会っていうイベントがあるんです。」「学校で魔法の一番強い人を決めるんです。」「佳代は今まで2回優勝したことがあるんですよ。」「すごいね。」「毎年4月にやるんです。」「俺も出るの。」「全員参加です。」

 

3ヵ月後の4月8日魔法大会の日がやってきた。「福山さん、起きてください。今日は、魔法大会ですね。」「テンション低いんだよね。」「そんな事言わず、がんばってください。」「佳代は優勝をねらっています。」「さすがだね。佳代は優等生だものね。」「早く、ご飯食べましょう。」「いただきます。」「福山さん、今日は魔法大会なんですってねぇ。自信はありますか。」「やりたくないです。」「佳代は、2回優勝した事があるんですよ。」「知ってます。」「がんばってくださいね。」「じゃ、福山さん学校行きましょう。行ってきます。」「行ってらっしゃい。」

「佳代ちゃんおはよう。」「里美ちゃん、おはよう。」「とうとう、魔法大会の日が来たね。」「佳代ちゃん、強いんだよね。」「佳代ちゃんに勝ったら、私にもチャンスがあるかもね。」「佳代ちゃんには、負けないわよ。」「里美ちゃん、お手やわらかにね。」

「皆さん、おはようございます。この学校伝統の魔法大会の日がやってきました。日頃のせいかを精一杯出してください。」「では、ルールを説明します。土俵の中に二人が向かい合い、魔法の力だけで相手を土俵の中から押し出してください。地面に着いても負けです。相手に決して触ってはいけません。いいですね。」「はーい。」「じゃ、1回戦を始めます。」「福山哲と鈴木里美、土俵に上がりなさい。」「用意はいいですか。はっけよい、のこった。」「福山さん、容赦しませんよ。負けるわけには、いかないんです。『スラスト』ハー。」「うわー。」福山哲は、鈴木里美の攻撃呪文で飛ばされた。『スラスト』は強く押す呪文である。「はい。鈴木里美の勝ち。」「あちゃー、福山さんしっかりしてください。」「佳代、里美さん強すぎるよ。」「里美ちゃん、やっぱり強敵だな。」

佐藤佳代も1回戦を突破した。佳代も里美も順調に勝ち続け、準決勝で顔を合わせた。「では、準決勝を始めます。佐藤佳代と鈴木里美、土俵に上がりなさい。」「はっけよい、のこった。」「佳代ちゃん、行くわよ。『スラスト』ハー。」「『ホールド』、何の何の。」「今度は佳代から行くわよ。「『コールド』『スラスト』。」「うわー。佳代ちゃん。まだ、まだよ。」「『ブリザード』。」「『ホールド』そろそろ佳代スペシャル、行くわよ。『タイフーン』。」「キャー。うわー。」鈴木里美は佳代の呪文で吹き飛ばされた。「佐藤佳代の勝ち。」「今年も佳代ちゃんに負けたか。」「もう!」

「では決勝戦を始めます。」「佐藤佳代と宮崎生斗(みやざきせいと)、土俵に上がって。」「では、はっけよい、のこった。」「佐藤さん、負けませんよ。」「私だって。」「『スラスト』。」「『ホールド』。」「『タイフーン』。」「『ホールド』。佐藤さん、余裕です。」「佐藤さん、この辺で決めさせてもらいます。「『サンダー』。」「キャー。」佳代は、倒れそうになる。『サンダー』は雷を起こす呪文である。佳代は、何とかこらえた。宮崎生斗も、5回の優勝歴があった。「佐藤さん、よく耐えましたね。でも、この次で終わりです。」「『ブリザード』。」ここで、佳代はまだ使ったことのない。攻撃呪文を捨て身で使うことにした。「『トルネードタイフーン』。」「『ホールド』。うわー。おわー。」『トルネードタイフーン』の呪文で竜巻と嵐が起こった。宮崎生斗は吹き飛ばされた。「はい、佐藤佳代の勝ち。」「佐藤佳代、優勝。」「やったな、佳代。」「福山さん。」「佳代ちゃん、おめでとう。」「ありがとう、里美ちゃん。」「閉会式を始めます。」「優勝、佐藤佳代、前に来なさい。金メダルを授与する。」「これで、魔法大会を終わりにします。」

 

その後、9年半の月日が過ぎ、福山哲の卒業試験が行なわれた。「福山さん、がんばってくださいね。」「では、福山君、試験会場に入って、これから筆記試験を行ないます。」「では、始め。」試験問題は全部で50問あった。合格ラインは80点以上である。福山は、魔法の分野は苦手であったが、政治経済には自信があった。「あと、5分です。よく見直して。」「では、やめ。」結果は今日中にお知らせします。福山哲は74点だった。「福山君、惜しかったね。あと、6点だったのに。でも、福山君は特待留学生だから、追試を受けてもらって。それが合格なら。魔法の実技試験に進んでもらいます。1週間後に追試をします。」「福山さん、惜しかったですね。」「でも、大丈夫です。佳代が1週間家庭教師をしてあげます。」その後1週間が経ち、追試の日がやってきた。「では、福山君、追試を始めます。」「用意、始め。」試験問題は、本試験と同じ50問であった。佳代に1週間みっちり教えてもらったので、手が全くつけられない問題はなかった。「では、やめ。」「福山君、今日中に結果はわかるから。」「福山さん、受かるといいですね。」「佳代、特にわからない問題はなかったよ。」「福山君、来なさい。結果は90点。合格。明日、魔法の実技試験を行なうから。」

そして、次の日になり福山哲の魔法の実技試験がやって来た。「では、福山君、試験の説明をします。試験監の先生の魔法で作り出した怪獣を倒してください。制限時間は30分です。では、試験を始めます。『ペイント』ハー。」怪獣が現われた。「ようし『ファイアー』、『ブリザード』、『サンダー』、駄目だ。全然効かない。そうだ『ファイアーブリザード』。」『ファイアーブリザード』で怪獣は少しダメージを受けた。「そうだ、『ファイアータイフーン』。」怪獣に火がつき始めた。怪獣が火を吹き出した。「うわー。この怪獣火を吹くのか。」「よしトドメ。『サンダー』。駄目か。」怪獣が火を消した。「よし、『サンダーファイアータイフーン』。」怪獣に雷鳴と炎と強風が襲った。怪獣は倒れ、燃え上がった。「やった。」しばらくして怪獣は爆発した。「はい、いいでしょう。時間は18分、合格です。」「12月24日に福山君に卒業証書を渡します。少し休んで12月31日までの今年中に人間界に帰るといいでしょう。帰り方は説明します。」

「福山さんやりましたね。」「『サンダーファイアータイフーン』の呪文は佳代もすごいと思いましたよ。」「12月24日に卒業証書くれるって。」「聞いていました。これで福山さんともお別れか。」「もう10年が経つんだな。俺も魔法が出来るようになったな。」

そして、12月24日がやってきた。福山哲が卒業証書をもらう日である。「福山さん、おはようございます。」「佳代おはよう。」「とうとう福山さん卒業か。人間界行ったら総理大臣になるんですか?」「まだ、俺誰にも何も聞いてないよ。」「今日、その話が学校からあるんじゃないですか。」「朝飯にしましょうよ。」「うん。」「福山さん、卒業ですね。よくがんばりましたね。」「福山君よくやった。で、福山君いつ人間界に帰るんだ。」「ご先祖様に挨拶に行って、少し休んだら帰るつもりです。」「そうか、寂しくなるな。」「そうですね。」「福山さん学校行きましょう。じゃ、行ってきます。」

「佳代ちゃん、おはよう。」「里美ちゃん。」「福山さん、今日で卒業なんだって。」「うん。」「寂しくなるね。」「佳代ちゃん、いいの」「えー。」

「福山君、おはようございます。校長室に行ってください。校長先生から卒業証書を渡すそうです。」「福山君よく来た。校長の山田です。それでは、卒業おめでとう。」福山哲は卒業証書をもらった。「これからのことを説明します。まず、人間界についての帰り方ですが、神の国の出口の扉をくぐって、そのまましばらく歩くんです。そのうち、空間の歪みがいくつか出てきます。そこで、魔法を使って外に出てください。それと、人間界にもどったら総理大臣を目指しなさい。今のあなたなら出来るはずです。今の人間界は産業革命からの化石燃料の使い過ぎで環境が崩れています。それと、アメリカ的な文化が世界中に浸透し、住みにくくなっています。資源には限りがあるんですよ。わかりますね。それが、これからのあなたの仕事です。10年間日本の神の国で学んだんですから福山君なら出来るはずです。いいですね。卒業おめでとう。」「ありがとうございます。精一杯がんばります。」「じゃ、教室に戻っていいよ。」

「皆さん、福山君が今日で卒業です。福山君挨拶して。」「皆さん、ありがとうございました。とうとうこの日がやって来てしまいました。皆さんとの思い出は、決して忘れません。本当にありがとうございました。」「それでは皆さん、これから成績表を渡します。受け取った人から帰っていいですよ。」「福山さん帰りましょう。」「福山君、元気でね。」「福山君、がんばってね。」「みんなもがんばってね。」

「福山さんのご先祖様に挨拶に行くんでしょ。」「そうだね。生活費出してもらってるからね。」「じゃ、すぐ行きましょうよ。」「わかった。」「おじいちゃんに送ってもらえるように頼んで来るね。」「福山さん、おじいちゃん送ってくれるって。」「福山君、行くかのう。」「お願いします。」30分後福山哲のご先祖の家に到着した。佳代は呼び鈴を鳴らす。「佳代ちゃん、よく来たね。」「哲、卒業だって。」「うん。」「じいちゃん、ばあちゃん、お金ありがとう。本当に助かったよ。」「哲、人間界に戻ったら何をするんだ。」「校長先生が、総理大臣を目指せって。」「そうか、がんばるんだぞ。」「じゃ、佳代帰ろうか。」「じいちゃん、ばあちゃん、元気でね。」

「福山さん、あの佳代ね、実は話があるんです。ちょっと、公園までいいですか。」「何、急に改まって。」「いいよ。」公園に到着した。「実はね、あのね。佳代ね、福山さんが、その。」「何だよ。はっきりしろよ。」「あの、福山さん。佳代のことをどう思いますか?」「え、何。」「ああ、そうか。」「あの、佳代、福山さんが好きになっちゃったんです。」「佳代のこと、きらいですか?」「いや、佳代って可愛いし、頼りになるし。」「じゃ、人間の世界で寿命をまっとうして、神の世界に戻ってきたら、福山さん、佳代と結婚してください。」「駄目ですか?」「いいよ。佳代のこと好きだし。」「約束ですよ。千年一緒にいましょう。」「ああ。そうだな。」「安心しました。」「家にもどりましょうよ。あ・な・た。」「ああ。」

「おばあちゃん、私ね、福山さんが神の世界に戻ってきたら結婚するの。」「あんまり福山さんを困らせたら、いけませんよ。」「福山さんもいいって。」「そうおう。」「佳代、よかったわね。」「福山さん、いつ人間界に戻るんですか。」「明日、帰ろうと思うんだ。」「そうですか。」「じゃ、佳代が、神の国の出口の扉まで送っていきますね。」「ありがとう。」「私は将来の奥さんですよ。」「そうだったな。」「福山さん、人間界に戻る前に説明して置きます。」「神の国にいる間は、年を取りません。ですから、人間の世界に戻ったら、福山さんは38歳から始まります。」「わかった。」

福山哲の人間界に帰る日になった。「福山君、乾杯しよう。」「おじいさん、朝からですか。」「いいじゃないか、今日でさよならだ。」「シャンパンがあるだろう。」「今後の福山君の前途を祝って軽く乾杯しよう。」「みんなグラスを持って。」「乾杯!」

「じゃ、そろそろ行きます。」「福山さん行きましょう。」「福山君、がんばるんじゃぞ。」「福山さん、本当にがんばるんですよ。元気でね。」神の国の出口で福山哲は書類を書かされた。手続きが終わり、佳代との別れの時を迎える。「佳代、いろいろありがとう。」「福山さん、私待ってます。約束ですよ。千年一緒にいましょうね。」「そうだな。」「じゃ、佳代、俺行くから。」福山と佳代は握手した。「福山さん、さよなら。」「佳代も元気でね。」福山哲は、神の国を出て行った。

人間の世界に戻った福山哲は40歳で衆議院議員に初当選し、55歳で内閣総理大臣になった。



 参考文献:TDEを使ったあそび



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