山村美紗 短篇リスト(仮作成版)

戸田和光 編


本リストについて

 例によって、私は山村美紗の著書を系統だって読んでいない。
 そんな私が、今回このリストを作ってみようと思ったのは、例によって、山村美紗ほどの作家に、単行本未収録の短編などあるのだろうか、という単純な興味からである。特に売れっ子になってからは、単行本にする前提ですべての作品が書かれていた印象があるし、初期の短編もその後ほぼ単行本にまとめられていたからだ。よく一緒に語られる西村京太郎と同じで、さすがに全部単行本になっているんだよね――ということを確認してみたかったのである。
 従って、例によって、今回のリストも先行のリストを継ぎ接ぎして纏め上げただけである。それで今回の目的は達せられるはず、と思っていたからだ。――が。
 予想に反して、山村名義の短編集に収録されていない作品がいくつかあることを知る。要するに、山村ほどの作家であっても、決して作品リストありきで短編集が作られてきた訳ではない、ということなのだろう。逆に云えば、これ以外にも、まだ単行本未収録の作品があるに違いない……。
 ――そのため、今回は、年代を辿ったリスト形式ではなく、短編集ありきでのリストにしてみた。あくまで、短編集から書誌を辿った結果のまとめ、という趣旨からである。ご了解いただきたい。

 誤記等のお粗末なミスがありましたら、ご指摘ください。


山村美紗 短篇作品リスト

短編集タイトルタイトル初出誌初出年月初出題 など
死体はクーラーが好き 殺意の河 小説推理 1975年1月
血の鎖 推理界 1970年7月
歪んだ相似形 別冊問題小説 1975年4月
憎しみの回路 小説推理 1975年4月
ストリーカーが死んだ 別冊小説宝石 1974年7月
死体はクーラーが好き 増刊小説サンデー毎日 1971年6月
殺意のまつり 残酷な旅路 小説宝石 1974年11月
恐怖の賀状 小説宝石 1975年3月
五〇パーセントの幸福 小説推理 1976年3月
黒枠の写真 別冊問題小説 1976年7月
死者の掌 別冊小説宝石 1976年2月
孤独な証言 別冊小説クラブ 1976年6月
殺意のまつり 小説推理 1974年2月
幻の指定席 幻の指定席 小説宝石 1976年6月
死人が夜ピアノを弾く 月刊小説 1977年5月
密会のアリバイ 月刊小説 1978年6月
新幹線ジャック 月刊小説 1978年1月
不用家族 小説推理 1977年9月
小さな密室 別冊小説現代 1976年10月
危険な忘れ物 オール讀物 1978年2月
京都殺人地図 少女は密室で死んだ 問題小説 1977年9月
偽装の殺人現場 問題小説 1978年1月
消えた配偶者 問題小説 1978年9月
水仙の花言葉は死 問題小説 1979年4月
几帳面な殺人者 問題小説 1979年9月
溺れた女 問題小説 1980年4月
首のない死体 問題小説 1980年7月
骨の証言 問題小説 1980年10月
京都の祭に人が死ぬ 華やかな殺意 週刊小説 1979年5月
祇園祭殺人事件 週刊小説 1980年7月
くらやみ祭に人が死ぬ 小説推理 1978年6月
鞍馬の火祭 週刊小説 1979年9月
なぜにあなたは京都で死ぬの? 週刊小説 1977年6月
鬼法楽殺人事件 週刊小説 1980年2月
節分殺人事件 小説推理 1981年2月 ※1
時代祭りに人が死ぬ 週刊小説 1978年8月
目撃者ご一報下さい 偽装の回路 小説推理 1982年2月
その日、あなたは死亡し… 小説推理 1981年2月
虹への疾走 小説現代 1978年12月
人気作家の秘密 小説宝石 1980年10月
京都・映画村殺人事件 小説現代 1980年3月
人形寺殺人事件 週刊小説 1980年11月
尼僧殺人事件 問題小説 1980年12月
椅子とりゲーム 問題小説 1977年3月
青い札束 小説宝石 1977年7月
死ぬ前に電話を! 推理文学 1973年12月
目撃者ご一報下さい 推理界 1967年9月
花の寺殺人事件 棺の中に藤の花を 週刊小説 1982年4月
芙蓉の花は血の色 週刊小説 1982年8月
彼岸花が死を招く 週刊小説 1981年11月
桜の寺殺人事件 週刊小説 1981年4月
死化粧は菊の花 週刊小説 1982年12月
石楠花の咲く寺 週刊小説 1983年4月 不倫の信号
月下美人殺人事件 週刊小説 1983年8月
桔梗寺の殺人 週刊小説 1983年10月
花嫁は容疑者 竜神祭りの殺人 問題小説 1981年6月
冷泉家の羽子板 問題小説 1982年2月
黒髪殺人事件 問題小説 1982年11月
花嫁は容疑者 問題小説 1982年8月
三千万円の花束 小説推理 1983年2月
愛のメッセージ 問題小説 1983年4月
埋葬された都 問題小説 1983年7月
テレビモニター殺人事件 問題小説 1983年11月
京友禅の秘密 京友禅の秘密 書き下ろし 1983年11月
哲学の小径の少女 別冊小説宝石 1983年5月
謎の新聞広告 小説新潮 1982年10月
エアロビクスは死の匂い 小説現代 1983年8月
十条家の惨劇 別冊小説宝石 1983年9月
華やかな密室 華やかな密室 別冊婦人公論 1983年7月
夜の不死蝶 別冊婦人公論 1983年10月
死の同伴者 別冊婦人公論 1984年1月
花のアリバイ 別冊婦人公論 1984年4月
三十三間堂の矢殺人事件 三十三間堂の矢殺人事件 小説現代 1982年1月 三十三間堂の矢
偽装の棺 小説宝石 1983年4月
危険すぎた浮気 別冊小説宝石 1982年12月
長い髪の女 小説現代 1983年4月
ハートの指輪 別冊婦人公論 1982年7月
聰明な殺意 別冊婦人公論 1980年7月
凶悪なスペア 小説新潮 1980年8月
こちら殺人現場ですが 猿を抱いた少女 小説宝石 1980年3月
獣医殺人事件 小説宝石 1982年2月
真紅のマニキュア 別冊小説宝石 1979年5月
愛の罠 別冊婦人公論 1982年10月
三通の遺言状 小説推理 1984年1月
消えた脅迫者 小説宝石 1981年1月
こちら殺人現場ですが 小説新潮 1981年6月
乳房のない死体 新幹線プレイ 小説春秋 1979年3月
麻美のB地点 小説春秋 1981年4月
甘美な罠 週刊小説 1982年1月 女の罠
愛の誤算 素敵な女性 1979年8月
危険な遊び 小説春秋 1978年8月
愛のキャンセル待ち 月刊カドカワ 1983年5月
乳房のない死体 小説宝石 1979年9月
ミス振袖殺人事件 京絵皿の秘密 別冊小説宝石 1983年12月
呪われた密室 小説現代 1984年1月
ミス振袖殺人事件 小説現代 1984年5月
針供養殺人事件 小説宝石 1984年2月
割りこんだ殺人 オール讀物 1984年4月
京菓子殺人事件 別冊小説宝石 1984年5月
都おどり殺人事件 舞妓殺人事件 小説新潮 1983年2月
夏の密室殺人事件 小説新潮 1983年10月 熱い密室
都おどり殺人事件 小説新潮 1984年3月
舞妓水揚げ殺人事件 小説新潮 1985年2月
浮舟殺人事件 小説新潮 1985年6月
京都旅行殺人事件(共著) 京都旅行殺人事件 小説宝石 1982年3月〜5月 ※2
悪魔の賭 小説宝石 1978年2月〜4月 ※3
京都絵馬堂殺人事件 京都顔見世殺人事件 小説宝石 1985年2月
豪邸の相続人 小説宝石 1986年8月
京料理殺人事件 小説宝石 1986年2月
ベストドレッサー殺人事件 小説新潮 1986年4月
ツタンカーメン王のえんどう豆 増刊小説新潮 1986年8月
四〇一号室の女 問題小説 1985年2月
京都絵馬堂殺人事件 別冊小説宝石 1986年5月
愛人旅行殺人事件 愛人旅行殺人事件 小説現代 1986年3月
京都受胎旅行殺人事件 小説現代 1986年6月
京都見合旅行殺人事件 小説現代 1986年1月
京都婚前旅行殺人事件 小説現代 1986年7月
妻たちのパスポート 妻たちのパスポート 増刊週刊大衆 1984年7月
死者の贈り物 カッパまがじん 1976年11月
変身 別冊問題小説 1976年4月
教科書 小説推理 1976年6月
眼には眼を! 小説推理 1976年9月
豪邸の不用品 週刊小説 1977年9月
痣のある死体 月刊小説 1979年5月
札束の罠 ルパン 1981年7月
京都深泥ヶ池の殺人 小説宝石 1981年9月
女の罠 小説宝石 1982年9月
華やかな復讐 週刊小説 1984年1月
大阪国際空港殺人事件 大阪国際空港殺人事件 小説現代 1987年3月
偽ダイヤ殺人事件 小説現代 1987年5月
二重底殺人事件 小説現代 1987年7月
京都紅葉寺殺人事件 京都紅葉寺殺人事件 増刊婦人公論 1985年11月
柚子の寺殺人事件 増刊婦人公論 1986年12月
夕顔の寺殺人事件 別冊婦人公論 1987年7月
山茶花寺殺人事件 増刊婦人公論 1987年11月
胡蝶蘭殺人事件 胡蝶蘭殺人事件 増刊小説新潮 1987年7月
宵桜殺人事件 小説新潮 1987年5月
恋人形殺人事件 恋人形殺人事件 別冊小説宝石 1987年9月
京都小犬土鈴殺人事件 別冊小説宝石 1987年5月
泳ぐ宝石殺人事件 小説宝石 1987年7月
誕生パーティ殺人事件 小説City 1987年8月
花嫁衣裳殺人事件 小説宝石 1987年2月
グルメ列車殺人事件 グルメ列車殺人事件 小説現代 1988年8月
アメリカ人の遺書 小説現代 1988年2月
ディーラー殺人事件 小説現代 1988年4月
キャピタルゲイン殺人事件 小説現代 1988年6月
恋の寺殺人事件 割りこんだ殺人 <再録>
一流ブランド殺人事件 オール讀物 1985年1月
京都観光旅行殺人事件 オール讀物 1985年9月 京都観光殺人事件
恋の寺殺人事件 オール讀物 1986年2月
京都白梅寺殺人事件 小説新潮 1986年1月
華やかな復讐 <再録>
京都・十二単衣殺人事件 女富豪密室殺人 別冊小説宝石 1989年5月
京都堀川陣屋の殺人 増刊小説新潮 1988年8月 京都二条陣屋の謎
特急列車は死を乗せて 小説宝石 1988年9月
高瀬川旅情の死 別冊小説宝石 1988年5月
新聞広告の殺人 小説宝石 1988年4月
京都・十二単衣殺人事件 小説NON 1988年6月 ジュウニヒトエ殺人事件
シンガポール蜜月旅行殺人事件 シンガポール蜜月旅行殺人事件 小説現代 1989年5月
バンコク熟年旅行殺人事件 小説現代 1989年7月
香港三角関係殺人事件 小説現代 1989年9月 香港トライアングル殺人事件
京都貴船川殺人事件 京都貴船川殺人事件 別冊婦人公論 1988年7月 貴船川殺人事件
京都保津川殺人事件 別冊婦人公論 1989年7月 保津川殺人事件
京都鴨川殺人事件 別冊婦人公論 1989年10月
赤い霊柩車 赤い霊柩車 小説新潮 1990年4月
燃える棺 小説新潮 1990年6月
黒衣の結婚式 小説新潮 1990年8月
ラベンダー殺人事件 ラベンダー殺人事件 ミセス 1990年10月〜12月
紅梅屋敷の殺人 小説宝石 1990年3月
秋海棠の殺人 小説宝石 1990年10月
薔薇のアリバイ 書き下ろし 1991年4月
スターガザールの殺人 別冊小説宝石 1990年9月
紫水晶殺人事件 紫水晶殺人事件 小説現代 1990年6月
琥珀ブローチの謎 小説現代 1990年12月
呪われたルビー 小説現代 1990年8月
偽サファイアの謎 小説現代 1990年10月 偽サファイアの秘密
流れ橋殺人事件 流れ橋殺人事件 オール讀物 1991年1月
竜の寺殺人事件 オール讀物 1990年10月
閉ざされた声 オール讀物 1991年4月
不倫の代償 オール讀物 1991年6月
京都詩仙堂殺人事件 京都詩仙堂殺人事件 週刊小説 1984年8月
恐怖の賀状 <再録>
その日、あなたは死亡し… <再録>
偽装の棺 <再録>
残酷な恋人 増刊婦人公論 1984年11月
ブラックオパールの秘密 ブラックオパールの秘密 小説現代 1991年6月
盗まれたエメラルド 小説現代 1991年8月
飾りじゃないのよ真珠は 小説現代 1991年10月
トパーズの伝言 小説現代 1991年12月
殺人予告はリダイヤル 殺人予告はリダイヤル オール讀物 1991年8月
死の誕生パーティ オール讀物 1991年10月
新春鳥取旅行の殺人 オール讀物 1992年1月
雛祭り殺人事件 オール讀物 1992年3月
向日葵は死のメッセージ 向日葵は死のメッセージ 小説宝石 1991年7月
枝垂れ桜殺人事件 小説宝石 1992年5月
福寿草の殺意 小説宝石 1992年1月
弟切草の秘密 小説宝石 1992年7月
華やかな誤算 二つの墓標 小説新潮 1991年3月
見知らぬ招待客 小説新潮 1991年11月
婚約者は死者 小説新潮 1991年8月
華やかな誤算 小説新潮 1992年4月
伊良湖岬の殺人 越前岬の殺人 小説すばる 1990年6月
足摺岬の殺人 小説すばる 1991年10月 ※4
襟裳岬殺人事件 小説すばる 1990年12月
伊良湖岬の殺人 小説すばる 1992年7月
故人の縊死により 故人の縊死により 問題小説 1984年6月
不自然な溺死体 問題小説 1992年7月
テレホンカード殺人事件 問題小説 1986年2月
名神高速殺人事件 問題小説 1986年11月
告発の手紙 問題小説 1992年10月
レンタル家族殺人事件 レンタル家族殺人事件 オール讀物 1992年8月
ポールポジション オール讀物 1992年10月
代理母殺人事件 オール讀物 1992年6月
冷凍された殺意 オール讀物 1993年1月
卒都婆小町が死んだ 卒都婆小町が死んだ 小説現代 1992年12月
京都清閑寺殺人事件 小説現代 1992年6月
楊貴妃殺人事件 小説現代 1993年2月
一条戻り橋殺人事件 小説現代 1992年10月
猫を抱いた死体 猫を抱いた死体 小説新潮 1992年6月
消えた配偶者 小説新潮 1992年8月
血の鎮魂歌 小説新潮 1992年12月
死を呼ぶカーディガン 小説新潮 1993年4月
札幌雪まつりの殺人 札幌雪まつりの殺人 オール讀物 1993年3月
博多どんたくの殺人 オール讀物 1993年5月
恐山大祭の殺人 オール讀物 1993年7月
阿波おどりの殺人 オール讀物 1993年9月
十二秒の誤算 十二秒の誤算 小説現代 1993年4月 不倫殺人十二秒の誤算
鳥取旅行の罠 小説現代 1993年11月
家出した死体 小説現代 1994年1月
初恋の人を探して 小説現代 1994年3月
長良川鵜飼殺人事件 長良川鵜飼殺人事件 野性時代 1993年7月
嵯峨野トロッコ列車殺人事件 野性時代 1993年11月
小京都酒田殺人事件 野性時代 1994年3月
足摺岬の殺人 野性時代 1994年6月 ※4
毎月の脅迫者 毎月の脅迫者 小説新潮 1993年6月
殺しの乱数表 小説新潮 1993年10月
偽りの遺留品 小説新潮 1993年12月
灰色の容疑者 小説新潮 1994年4月
殺人を見た九官鳥 盗聴できない殺人 小説宝石 1994年8月
松山旅行のアリバイ 小説宝石 1994年1月
京都やすらい祭の殺人 小説宝石 1994年5月
殺人を見た九官鳥 小説宝石 1994年3月
寒がりの死体 寒がりの死体 問題小説 1993年8月
謎の焼死体 問題小説 1994年2月
都井岬の殺人 問題小説 1994年6月
殺された婚約者 問題小説 1994年8月
博多絞殺死体の謎 問題小説 1994年4月
ポケットベルに死の予告 ポケットベルに死の予告 オール讀物 1994年5月
姫路ロケの密室 オール讀物 1994年1月
チャリティ・オークションの殺人 オール讀物 1995年4月
新幹線からの手紙 オール讀物 1994年7月
仮装パーティ殺人事件 オール讀物 1996年7月
京都・函館殺人事件 オール讀物 1996年1月
大江山鬼伝説殺人事件 多すぎる容疑者 小説新潮 1994年7月
赤ん坊は他人 小説新潮 1995年8月
大江山鬼伝説殺人事件 小説新潮 1995年12月
化粧した死体 小説新潮 1996年4月
双子の棺 小説新潮 1996年8月
竜飛岬殺人事件 竜飛岬殺人事件 小説すばる 1994年1月
向日葵は死のメッセージ <再録>
京都観光旅行殺人事件 <再録>
京都見合旅行殺人事件 <再録>
長い髪の女 <再録>
単行本未収録? かんにんして 週刊文春 1976年12月
高価な花瓶 Delica 1977年5月
本当の子どもはだーれ? 北国新聞 1984年1月
業平祭りの殺人 増刊婦人公論 1990年12月
高齢の使用人 小説新潮 1996年1月
輪島朝市の殺人 小説宝石 1996年9月

 ※1:初出題は「その日、あなたは死亡し…」。このタイトルに改題されて単行本に収録後、初出題で『目撃者ご一報ください』に再収録された。このため、本書の文庫本版ではカットされている。編集ミスか分からないが、「節分殺人事件」というタイトルの作品を無理して読む必要がないのは間違いない。
 ※2:西村京太郎とのリレー小説。
 ※3:斎藤栄、小林久三とのリレー小説。
 ※4:同タイトルの別作品か未確認。初出誌も別なので、ここでは別作品としている。普通は、初出では同タイトルであっても、単行本収録時に改題するものだとは思うのだが……(山村にも「女の罠」という例がある。片方は、リストにもある通り「甘美な罠」と改題された)。

 単行本初収録の作品が収録された短編集のみを掲げた。従って、再編集である『愛のキャンセル待ち』、『三千万円の花束』、『五〇パーセントの幸福』の3冊は、含んでいない。また、再収録作品については、作品リストとしての分かりやすさを優先して、初出誌の項に“<再録> ”と入れた。

 その上で、改めて未収録と思われる作品を眺めてみる(私が確認不十分の可能性はあるので、表中では“単行本未収録?”としてみた)。
 急逝した年に発表された2作は、一冊にまとめる分量がなく、短編集にならなかったもの――とも考えられるが、同じようなコンセプトで『竜飛岬殺人事件』がまとめられているので、他に理由があるのかも知れない。むしろ、「高齢の使用人」は、ショートショートであるため、とするべきか。
 新聞の元旦号に掲載された「本当の子どもはだーれ?」は挿絵を見て真相を当てる推理クイズなので、短編集に入らなかった可能性が高い。良くも悪くも、山村は長編型の作家で、ショートショート作品が殆どなかったのは間違いなかろう。(とはいえ、今後見つかるとしたらショートショートの可能性が高そうだが)
 そういった意味で、実際に単行本未収録と呼べるのは、3編というべきか。「かんにんして」は、作品内容もあわせて、初期の官能色の濃い未単行本化作品を集めた『乳房のない死体』に収められても不思議はなさそうだが、洩れてしまったようだ。「高価な花瓶」は、発表誌からして、忘れられてしまった作品なのかも知れない。一方の「業平祭りの殺人」は、掲載誌が中絶し(厳密には変な表現だが、《婦人公論》の推理小説特集としての増刊は、この年が最後だったようだ)、続編を書くタイミングを失してしまったものだろうか……(念のために、補記。読み比べてはいないが、本編は狩矢警部ものなので、長編の『在原業平殺人事件』とは無関係の作品とみて、ここに並べている)。

 さて、これらの作品が刊行される日は来るのだろうか?


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