和久峻三 長編リスト(仮作成版)

戸田和光 編


本リストについて

 例によって、私は和久峻三の著書を系統だって読んでいない。
 そんな私が、今回このリストを作ってみようと思ったのは、和久には、どれくらいの書き下ろし(文庫書き下ろし)があるのか、ちょっと気になったからだ。現在では当たり前になった文庫書き下ろしだが、これが普通になったのは、個人的な感覚でいえば、光文社文庫が創刊された頃(1984年夏)ではないか。それ以前から、和久には文庫書き下ろしがあったような印象があり、更には後期は文庫書き下ろしだらけになったような印象があったから、その実態を確認してみたいと思ったのである。
 例によって、あちこちから資料を切り貼っただけなので、間違いがあるかも知れない。あくまで、上記の点が実際はどんなものだったのか――を確認してみたかったものなので、確認が不十分な可能性があることを、予めお詫びしておきたい。

 誤記等のお粗末なミスがありましたら、ご指摘ください。


和久峻三 長編リスト

通番タイトル改題シリーズ 初出誌連載開始年月連載終了年月初出題備考
1 仮面法廷 書き下ろし
2 多国籍企業殺人事件 書き下ろし
3 死体の指にダイヤ 京都殺人案内 京都新聞(夕刊) 1975年9月3日 1976年7月31日 蜘蛛の家
4 裁判官の陰謀 書き下ろし
5 時効 京都民報 1977年3月6日 1978年2月19日 時効成立せず
6 権力の朝 書き下ろし
7 迷走法廷 猪狩文助 書き下ろし
8 裁かれた銀行 滋賀銀行九億円横領事件 現代 1977年11月 1978年1月 九億円の女
9 円高の陰謀 小鬼たちの熱い眼 週刊サンケイ 1978年1月1日 1978年8月1日
10 デノミの陰謀 クレイジー・マネー 書き下ろし
11 パリ遺言特急 小説推理 1978年10月 1978年11月
12 沈黙の裁き 猪狩文助 文庫書き下ろし
13 シュリーマンの財宝 赤かぶ検事 野性時代 1978年9月 プリアモスの財宝
14 亡命機101便応答せよ 逃亡空路 書き下ろし
15 沈め屋と引揚げ屋 捜査不能 沈め屋と引揚げ屋 日下文雄 野性時代 1979年8月
16 悪女の泪 研修 1978年7月 1980年1月 悪女
17 代言人落合源太郎の推理 鏡のなかの殺人者 落合源太郎 別冊小説新潮 1980年4月 1980年7月
18 時の剣 猪狩文助 野性時代 1980年7月 鮮血の刺
19 自白 公明新聞 1980年8月9日 1981年6月1日
20 肌絵の女 代言人落合源太郎 落合源太郎 週刊新潮 1981年1月 1981年7月
21 誤判 私は殺していない! 猪狩文助 書き下ろし
22 鬼太鼓は殺しのリズム 野性時代 1982年8月
23 逆転法廷 長編ペスト菌大量殺人事件 日下文雄 小説現代 1982年10月 1983年6月 ザ・ペスト
24 憑かれた女 野性時代 1983年10月 1983年11月
25 闇からの一撃 小説新潮 1983年7月 1983年8月
26 断罪 別冊小説現代 1984年4月
27 偽証法廷 小説宝石 1984年3月 1984年5月
28 悪を駆け抜ける男 オール讀物 1984年1月 1984年3月
29 明治番外地 代言人落合源太郎 神戸異人街スキャンダル 落合源太郎 月刊カドカワ 1983年5月 1984年3月 明治番外地
30 午前三時の訪問者 赤かぶ検事 書き下ろし
31 愛よ、ファラウェイ 野性時代 1984年12月
32 法廷の魔術師 週刊小説 1984年7月27日 1984年10月19日
33 離婚 日下文雄 婦人公論 1984年1月 1985年1月
34 悪の扉 猪狩文助 京都民報 1983年1月2日 1984年7月8日 泥鰌と柳
35 悪魔の骰子 野性時代 1981年3月 鼠となり、蠅となりても  第二部は書き下ろし
36 パソコン博士の犯罪 悪魔のパスワード 週刊小説 1985年6月7日 1985年11月8日 怪人ハイテク・ギャング
37 失踪宣告 日下文雄 増刊小説現代 1986年8月
38 一億分の一秒の侵入者 小説現代 1986年1月 1986年3月
39 ハレー彗星殺人行 妖星のいけにえ・明智光秀の謎殺人事件 京都殺人案内 書き下ろし
40 宝くじ百発百中プログラム 愛すべく、ハッカーたち 野性時代 1986年2月
41 死のハイテクビル・パニック 小説推理 1986年2月 1986年5月
42 山田長政の秘宝 東京-バンコク生首殺人事件 野性時代 1986年8月 1986年11月 夢ちがい
43 新幹線多重衝突セヨ 小説宝石 1986年7月 1986年12月
44 エイズ街の連続殺人 殺人者の緋文字 増刊小説現代 1987年7月
45 逃亡弁護士 悪夢 逃亡弁護士 オール読物 1986年5月 1987年2月
46 凶器のように愛 朝岡彩子 小説NON 1986年12月 1987年3月 殺人カメラトリック旅行
47 東京インフェル 首都圏パニック 小説現代 1987年4月 1987年6月
48 超妖獣Ψの逆襲 小説推理 1987年1月 1987年4月 夏目大介名義
49 蝮のようなレディ 野性時代 1987年5月 1987年10月
50 撮された死角 朝岡彩子 小説NON 1987年9月 1987年12月
51 幽界戦士 小説City 1987年9月 1987年12月 鬼公子 夏目大介名義
52 超妖獣Ψの逆襲 part2 小説推理 1987年8月 1987年4月 夏目大介名義
53 新宿25時の戦慄 増刊小説現代 1988年4月
54 雨月荘殺人事件 書き下ろし
55 楊貴妃幻想殺人旅行 野性時代 1988年1月 1988年5月
56 血と罪の法廷 朝岡彩子 小説NON 1988年9月 1988年12月 闇の結社
57 【ロス発】第一級殺人の女
58 裁判長のたくらみ 文庫書き下ろし
59 幽界戦士 ファントム迎撃篇 小説City 1988年7月 1988年11月 幽界戦士 PART2 夏目大介名義
60 陪審15号法廷 小説推理 1988年7月 1988年11月
61 血の眠り 赤かぶ検事 野性時代 1988年9月 1989年2月
62 あやつり証人
63 新・逃亡弁護士 逃亡弁護士 死闘編 逃亡弁護士 野性時代 1989年5月 1989年7月
64 女検事に涙はいらない コットン 1989年8月 1989年12月
65 不在証明は女たちのゲーム 文庫書き下ろし
66 密室の利権 小説推理 1989年10月 1990年2月
67 逃亡弁護士 脱獄編 脱獄 逃亡弁護士 野性時代 1990年2月 1990年6月
68 妖女の芽ばえ 小説City 1989年11月 1990年3月
69 悪魔のように憎いあなた 文庫書き下ろし
70 密室法廷 書き下ろし
71 眠らない目撃者 増刊小説現代 1990年5月
72 葡萄色の血の女 コットン 1990年6月 1990年10月
73 死体を跨いで進む女 精神鑑定の女 文庫書き下ろし
74 許せない男 京都民報 1990年1月1日 1991年3月10日
75 復讐法廷 文庫書き下ろし
76 裏切りの朝 小説City 1990年8月 1991年2月
77 逃亡弁護士 変身編 変身 逃亡弁護士 野性時代 1990年12月 1991年6月 逃亡弁護士 激闘編
78 信州あんずの里殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
79 殺人者の愛しい唇 コットン 1991年4月 1991年8月
80 「弁護士アルカポネ」と呼ばれる男 増刊小説現代 1991年4月 1991年10月
81 朝霧高原殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
82 嵯峨野光源氏の里殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
83 密室の毒薬 赤かぶ検事 小説推理 1991年10月 1992年4月
84 京都鞍馬火祭りの里殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
85 京都東山「哲学の道」殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
86 木曽路妻籠宿殺人事件 赤かぶ検事 コットン 1992年3月 1992年8月 中絶・加筆
87 京人形の館殺人事件 赤かぶ検事 増刊小説現代 1992年4月 1992年8月
88 京都疏水迷路殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
89 飛騨高山からくり人形殺人事件 赤かぶ検事 小説City 1992年1月 1992年7月 高山祭・からくり人形殺人事件
90 青森ねぶた火祭りの里殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
91 伊豆修善寺能面殺人事件 修善寺能面殺人事件 赤かぶ検事 小説NON 1992年11月 1993年11月
92 嵯峨野かぐや姫の里殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
93 光源氏「隠れ遊びの里」殺人事件 赤かぶ検事 小説フェミナ 1992年5月 1992年11月
94 密封法廷 赤かぶ検事 小説推理 1992年7月 1993年4月
95 伊賀・甲賀忍者の里殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
96 血ぬられた鏡像 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
97 あやつり法廷 赤かぶ検事 小説現代臨時増刊 1993年5月 1993年8月
98 伊豆恋人岬の首縊り 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
99 大和路鬼の雪隠殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
100 日本三大水仙郷殺人ライン 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
101 京都奥嵯峨柚子の里殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
102 琵琶湖慕情殺しの旅路 赤かぶ検事 東京中日スポーツ 1992年9月14日 1993年5月31日
103 阿波おどり殺人事件 赤かぶ検事 小説フェミナ 1994年2月
104 伊豆死刑台の吊り橋 赤かぶ検事 書き下ろし
105 京都時代祭り殺人事件 赤かぶ検事 アサヒカメラ 1992年4月 1994年4月
106 祇園小唄殺人事件 赤かぶ検事
107 大原・貴船街道殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
108 京都先斗町殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
109 秋田湯沢七夕美人絵灯ろう殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
110 京都冬の旅殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
111 鴨川をどり殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
112 倉敷殺人案内 赤かぶ検事 メフィスト 1994年4月 倉敷殺人事件
113 銭形砂絵殺人事件 赤かぶ検事 小説NON 1994年5月 1994年12月 瀬戸内銭形砂絵殺人事件
114 遠野・京都橋姫鬼女伝説の旅殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
115 大和路首切り地蔵殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
116 富士周遊殺人事件 赤かぶ検事 小説NON 1995年4月 1995年7月
117 京都・鎌倉・大和あじさい古都の寺殺人ライン 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
118 吉野山千本桜殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
119 五芒星桔梗の寺殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
120 南紀白浜安珍清姫殺人事件 熊野路安珍清姫殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
121 赤かぶ検事辞任す 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
122 濡れ髪明神殺人事件 赤かぶ検事 メフィスト 1995年8月 1995年11月
123 アルプス魔の山殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
124 奥日光殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
125 飛騨白川郷メルヘン街道殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
126 箱根古道殺しの宴 赤かぶ検事 書き下ろし
127 しゃくなげの里殺人事件 赤かぶ検事 書き下ろし
128 赤かぶ検事、辞表の行方 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
129 悪魔のファインダー 朝岡彩子 書き下ろし
130 奥嵯峨古道吸血マドンナ 文庫書き下ろし
131 「縛り首の館」殺人事件 朝岡彩子 文庫書き下ろし
132 飛騨高山春祭りの殺人 けん玉判事補 文庫書き下ろし
133 殺人者が目覚める朝 猪狩文助 文庫書き下ろし
134 魔弾の射手 けん玉判事補 文庫書き下ろし
135 水琴の宿殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
136 三人の酒呑童子 赤かぶ検事 京都新聞(夕刊) 1996年8月15日 1997年7月26日
137 牡丹屋敷の殺人 京都上賀茂牡丹屋敷の殺人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
138 二度殺された三人の女 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
139 夢の浮橋殺人事件 あんみつ検事 文庫書き下ろし
140 夜泣峠雪女の柩 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
141 女検事の涙は乾く あんみつ検事 文庫書き下ろし
142 三つ首荘殺人事件 あんみつ検事 文庫書き下ろし
143 罪を逃れて笑う奴 猪狩文助 文庫書き下ろし
144 桜月夜の殺人 あんみつ検事 文庫書き下ろし
145 悪夢の女相続人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
146 京都紅葉街道の殺人 けん玉判事補 文庫書き下ろし
147 蝋人形館の殺人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
148 冬の奥嵯峨殺人事件 新・京都殺人案内 文庫書き下ろし
149 禁断の館殺人事件 猪狩文助 文庫書き下ろし
150 白骨夫人の遺言書 あんみつ検事 文庫書き下ろし
151 京都嵐山三船まつりの殺人 芸者弁護士藤波清香 文庫書き下ろし
152 あやかし法廷 法廷の可憐な魔女 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
153 法廷殺人の証人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
154 不倫判事 京都のテミス女裁判官 文庫書き下ろし
155 25時13分の首縊り 新・京都殺人案内 文庫書き下ろし
156 古井戸の死神 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
157 二重の危険 猪狩文助 文庫書き下ろし
158 ひまわり時計の殺人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
159 京都大原花散る里の殺人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
160 悪女の玉手箱 猪狩文助 文庫書き下ろし
161 京都祇園祭宵山の殺人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
162 南山城古代ロマンの里殺人事件 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
163 首吊り判事 京都のテミス女裁判官 文庫書き下ろし
164 北嵯峨竹林の亡霊 新・京都殺人案内 文庫書き下ろし
165 危険な依頼人 猪狩文助 文庫書き下ろし
166 密会判事補のだまし絵 京都のテミス女裁判官 文庫書き下ろし
167 Okinawa宮古島の悪魔祓い ひまわり公設弁護士 文庫書き下ろし
168 祗園花街小路の惨劇 新・京都殺人案内 文庫書き下ろし
169 Zの悲劇 猪狩文助 文庫書き下ろし
170 淫楽館の殺人 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
171 魔性の女に涙 新・京都殺人案内 文庫書き下ろし
172 ラスベガスから来たジゴロ 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
173 五番目の裁判員 文庫書き下ろし
174 涙は血よりも濃し 赤かぶ検事 文庫書き下ろし
175 恐るべし少年弁護士団 赤かぶ検事 文庫書き下ろし

 ここでは、雑誌・新聞連載を全く経ていないものを書き下ろしとした。従って、後半を書き加えたと思われる『悪魔の骰子』や『木曽路妻籠宿殺人事件』は、書き下ろしとはしていない。また、『【ロス発】第一級殺人の女』はほぼ書き下ろしだと思われるが断定しにくかったので、ここでは初出不明とした。また、『あやつり証人』と『祇園小唄殺人事件』は、書き下ろしかどうかも全く分からなかったので、同じく初出不明としている。

 数えてみると、書き下ろしが23冊、文庫書き下ろしが74冊。さすがに、後期が文庫書き下ろし一色となっているので目立つが、半分以上を占めるかと思っていたので、それよりは少なかったかな、という感じだろうか。
 一方、文庫書き下ろしは、『沈黙の裁き』だけはやや早かったが、それ以外は、案外スタートが遅かったな、という印象だった。記憶とはあてにならないものである。何でだろう、と思ってみて、思いついたのが、“文庫オリジナル”と混同している可能性――ということだった。うーむ、だとすると、もうちょっと調べてみないといけないのかも知れない……。

 おまけ。  和久は文庫書き下ろしも多いが、文庫の再刊も多い。文庫書き下ろし作品が、他の文庫から再刊されるのである。だから、より丁寧に書こうと思うと、どの文庫に書き下ろされたのか、にも触れるべきかも、とも思ったのだが、さすがにそこまで行くと今回の目的からはずれるので、やめておいた。
 まあ、和久の書誌にそこまで望む人もいないだろうし。


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戸田和光