翔んでる警視 作品書誌(試作品)

戸田和光 編


はじめに

 例によって、私は、下記に挙げる作品を一編も読んだことがない。胡桃沢耕史の翔んでる警視・翔んでる警視正<Vリーズについて、全くの門外漢がまとめた資料であることを、予め、御諒解しておいていただきたい。
 まとめた理由は、これはもう、単なる好奇心である。ある意味で、無茶な刊行ペースに見えたので、これらはいったいどんな初出だったのか、ちょっと興味に駆られただけだ。せっかく調べたものだから、一応、まとめてみただけである。
 そのつもりで、お読みいただきたい。

本リストについて

 翔んでる警視・翔んでる警視正<Vリーズは、何も知らないと、著書だけでも複雑に見える。ただ、これは、異なる出版社からそれぞれのシリーズが刊行され、しかもそれらのタイトルが皆似通っているということが最大の理由で、整理すると、それほど難しくはない。全部で28冊(他に、ベストとされる1冊がある)あるが、内容の重複もなく、作品リストを作ることも容易だろう。
 リスト作成が容易なら、では初出も加えておこう、と思うのは、書誌マニアの習癖である。で、実際にそのバージョンを作ってみたら……いや、これはこれで面白いかも、と思った次第だ。
 もちろん、面白いと思ったのは私だけかも知れないが、まずは、一回見てもらえれば、と思う。


翔んでる警視 作品書誌

タイトル雑誌・新聞名掲載月終了月収録書
私も犯人です 小説推理 1980年5月 『翔んでる警視』
コノオトコガハンニンデス 小説推理 1980年7月 『翔んでる警視』
恨みですか愛ですか 小説推理 1980年11月 『翔んでる警視』
被害者が犯人です 小説推理 1981年2月 『翔んでる警視』
全員が犯人です 小説推理 1981年6月 『翔んでる警視』
五人の容疑者 小説推理 1981年9月 『翔んでる警視』
「白昼夢」の殺人 書き下ろし 1981年9月 『翔んでる警視』
翔んでる警視2(長編) 書き下ろし 1981年12月 『翔んでる警視2』
犯人はアンケートで決めろ 小説推理 1982年1月 『翔んでる警視3』
主犯立たねば従犯立たず 小説推理 1982年4月 『翔んでる警視3』
アリバイ・ドミノ倒し 小説推理 1982年7月 『翔んでる警視3』
大統領の司法取引 小説推理 1982年10月 『翔んでる警視3』
なぜか新大久保 小説推理 1983年1月 『翔んでる警視3』
死因は三転する 小説推理 1983年4月 『翔んでる警視3』
お上手な殺人 小説推理 1983年7月 『翔んでる警視3』
哀しき殺人 まんが笑アップ 1984年1月 『新・翔んでる警視T』
幻の誘拐事件 まんが笑アップ 1984年2月 『新・翔んでる警視T』
共犯供述合わず まんが笑アップ 1984年3月 『新・翔んでる警視T』
殺し屋カルロスが来た まんが笑アップ 1984年4月 『新・翔んでる警視T』
逮捕できない犯人 まんが笑アップ 1984年5月 『新・翔んでる警視T』
尿と政権 まんが笑アップ 1984年6月 『新・翔んでる警視T』
パソコンが殺した まんが笑アップ 1984年7月 『新・翔んでる警視U』
東方紅は二度鳴る まんが笑アップ 1984年8月 『新・翔んでる警視U』
アラブからの密使 まんが笑アップ 1984年9月 『新・翔んでる警視U』
八月十五日の殺人 まんが笑アップ 1984年10月 『新・翔んでる警視U』
美しき娘の殺人に乾杯 まんが笑アップ 1984年11月 『新・翔んでる警視U』
哀しきカッターナイフ まんが笑アップ 1984年12月 『新・翔んでる警視U』
モンブランに散った花 まんが笑アップ 1985年1月 『新・翔んでる警視V』
哀しきまでに青い海よ まんが笑アップ 1985年2月 『新・翔んでる警視V』
○暴事始め まんが笑アップ 1985年3月 『新・翔んでる警視V』
殺人の原価計算 まんが笑アップ 1985年4月 『新・翔んでる警視V』
ああ芸術院賞 まんが笑アップ 1985年5月 『新・翔んでる警視V』
水面下の犯罪 まんが笑アップ 1985年6月 『新・翔んでる警視V』
警視出動せず まんが笑アップ 1985年7月 『新・翔んでる警視W』
パーフェクトなパフォーマンス殺人 まんが笑アップ 1985年8月 『新・翔んでる警視W』
二人のシンを探せ まんが笑アップ 1985年9月 『新・翔んでる警視W』
翔んでる新婚旅行 別冊小説宝石 1985年9月 『新・翔んでる警視W』
犯人アリバイに死す まんが笑アップ 1985年10月 『新・翔んでる警視W』
青春の終わりの日に まんが笑アップ 1985年11月 『新・翔んでる警視W』
成立しない殺人 まんが笑アップ 1985年12月 『新・翔んでる警視X』
夕子へ まんが笑アップ 1986年1月 『新・翔んでる警視X』
できぬ捜査するが捜査 まんが笑アップ 1986年2月 『新・翔んでる警視X』
ぶら下がり族教祖の死 まんが笑アップ 1986年3月 『新・翔んでる警視X』
断じて他殺です まんが笑アップ 1986年4月 『新・翔んでる警視X』
春は殺人と共にきた まんが笑アップ 1986年5月 『新・翔んでる警視X』
警視タキシードを着る まんが笑アップ 1986年6月 『新・翔んでる警視Y』
見逃しの殺人 まんが笑アップ 1986年7月 『新・翔んでる警視Y』
殺人には死刑が似合う まんが笑アップ 1986年8月 『新・翔んでる警視Y』
哀しき遺留品 まんが笑アップ 1986年9月 『新・翔んでる警視Y』
翔んでる紙婚旅行 別冊小説宝石 1986年9月 『新・翔んでる警視Y』
殺人信号が出た まんが笑アップ 1986年10月 『新・翔んでる警視Y』
真犯人に罪は届かず 小説City 1987年1月 『新・翔んでる警視Z』
警視、マフィアと対決する まんが笑アップ 1986年11月 『新・翔んでる警視Z』
期待される殺人 小説City 1987年2月 『新・翔んでる警視Z』
完全な犯罪と完全な証拠 小説City 1987年3月 『新・翔んでる警視Z』
香港無料招待旅行 小説City 1987年4月 『新・翔んでる警視Z』
犯人でない方が犯人だ 小説City 1987年5月 『新・翔んでる警視[』
ラム・ステーキをどうぞ 小説City 1987年6月 『新・翔んでる警視[』
警視南太平洋へ翔ぶ 小説City 1987年7月 1987年8月 『新・翔んでる警視[』
警視法律に挑戦する 小説City 1987年9月 『新・翔んでる警視[』
少し憂鬱な綿婚旅行 別冊小説宝石 1987年9月 『新・翔んでる警視[』
文豪日暮里に死す 小説City 1987年10月 『翔んでる警視正1』
九月一日までの戦い 小説City 1987年11月 『翔んでる警視正1』
誘拐犯罪を衝く レディスコミックルージュ 1987年11月 『翔んでる警視正1』
女は本当に弱いのか レディスコミックルージュ 1987年12月 『翔んでる警視正1』
子を持って知る子の有難さ レディスコミックルージュ 1988年1月 『翔んでる警視正1』
女警視正の目的 レディスコミックルージュ 1988年2月 『翔んでる警視正1』
死体が並ぶお正月 レディスコミックルージュ 1988年3月 『翔んでる警視正2』
犯人は皆さんです レディスコミックルージュ 1988年4月 『翔んでる警視正2』
東京機密報告 レディスコミックルージュ 1988年5月 『翔んでる警視正2』
捜一に迷宮はない レディスコミックルージュ 1988年6月 『翔んでる警視正2』
コンピュータの反抗 レディスコミックルージュ 1988年7月 『翔んでる警視正2』
犯人が必要ですか レディスコミックルージュ 1988年8月 『翔んでる警視正2』
殺人犯を死刑にするには レディスコミックルージュ 1988年9月 『翔んでる警視正3』
逮捕状が哭く レディスコミックルージュ 1988年10月 『翔んでる警視正3』
根雪の下に春まで眠れ 別冊小説宝石 1988年12月 『翔んでる警視正3』
酒とカラオケと殺人と コットン 1988年12月 『翔んでる警視正3』
新人のお土産は殺人 コットン 1989年1月 『翔んでる警視正3』
四つのバカとは コットン 1989年2月 『翔んでる警視正3』
殺してなくても殺人だ コットン 1989年3月 『Best of 翔んでる警視正』
誰がために人を殺すや オール讀物 1988年3月 『翔んでる警視事件簿 国際謀略篇』
下請けは悲しからずや オール讀物 1988年6月 『翔んでる警視事件簿 国際謀略篇』
小便小僧で又逢おう オール讀物 1988年9月 『翔んでる警視事件簿 国際謀略篇』
革婚旅行は海底で 別冊小説宝石 1988年9月 『翔んでる警視事件簿 国際謀略篇』
新宿黒社会 オール讀物 1988年12月 『翔んでる警視事件簿 国際謀略篇』
警視正天山南路を行く(長篇) 書下ろし 1989年12月 『翔んでる警視正 平成篇1』
敢えて犯人を求めず オール讀物 1989年4月 『翔んでる警視正 平成篇2』
殺人者はL.S.D オール讀物 1989年6月 『翔んでる警視正 平成篇2』
ゴンドラの花嫁 オール讀物 1989年8月 『翔んでる警視正 平成篇2』
真犯人は伯爵令嬢 オール讀物 1989年10月 『翔んでる警視正 平成篇2』
殺し屋のお値段 オール讀物 1989年12月 『翔んでる警視正 平成篇2』
花嫁御寮はなぜ殺されたのだろう クオリティ 1990年1月 1990年2月 『翔んでる警視正 平成篇2』
悲しき殺し屋 夕刊フジ 1989年12月5日 1989年12月29日 『翔んでる警視正 平成篇3』
十字架は語らず 夕刊フジ 1990年1月5日 1990年2月3日 『翔んでる警視正 平成篇3』
キャリアウーマン 夕刊フジ 1990年2月6日 1990年3月3日 『翔んでる警視正 平成篇3』
哀しみは美しさの故 夕刊フジ 1990年3月6日 1990年3月31日 『翔んでる警視正 平成篇3』
アンダースコート 夕刊フジ 1990年4月3日 1990年5月3日 『翔んでる警視正 平成篇3』
空飛ぶ大根 夕刊フジ 1990年5月8日 1990年6月2日 『翔んでる警視正 平成篇3』
殺し屋の最後の仕事 オール讀物 1990年2月 『翔んでる警視正 平成篇4』
美女の受けた秘命 クオリティ 1990年3月 1990年4月 『翔んでる警視正 平成篇4』
ザ・ゴクドウ クオリティ 1990年5月 1990年6月 『翔んでる警視正 平成篇4』
ランバダに酔いしれて オール讀物 1990年5月 『翔んでる警視正 平成篇4』
一日早い殺人 クオリティ 1990年7月 1990年8月 『翔んでる警視正 平成篇4』
花金八公パルコ坂 クオリティ 1990年9月 1990年10月 『翔んでる警視正 平成篇4』
薔薇族の名前 クオリティ 1990年11月 1990年12月 『翔んでる警視正 平成篇4』
犯人は潜像中 週刊文春 1990年5月24日 1990年6月14日 『翔んでる警視正 平成篇5』
羽後の盆歌 週刊文春 1990年6月21日 1990年7月12日 『翔んでる警視正 平成篇5』
三日月型親爺娘 週刊文春 1990年7月19日 1990年8月9日 『翔んでる警視正 平成篇5』
記号論アハハーン 週刊文春 1990年8月16日 1990年9月13日 『翔んでる警視正 平成篇5』
ああ濡れ落葉幾年ぞ 週刊文春 1990年9月20日 1990年10月11日 『翔んでる警視正 平成篇5』
涙のポンポコリン 週刊文春 1990年10月18日 1990年11月8日 『翔んでる警視正 平成篇5』
枢密顧問官 週刊文春 1990年11月15日 1990年12月6日
C・Dロムはかく語りき 週刊文春 1990年12月13日 1991年1月3日
愛させない理由 週刊文春 1991年1月17日 1991年2月7日
フセインの密使 クオリティ 2991年2月 1991年3月 『翔んでる警視正 平成篇6』
究極のビデオ オール讀物 1991年3月 『翔んでる警視正 平成篇6』
メデジンからのメッセージ クオリティ 1991年4月 1991年5月 『翔んでる警視正 平成篇6』
爆薬と大臣 オール讀物 1991年6月 『翔んでる警視正 平成篇6』
夜間執行可 クオリティ 1991年8月 1991年9月 『翔んでる警視正 平成篇6』
舞浜のディオリッシモ オール讀物 1991年9月 『翔んでる警視正 平成篇6』
悪魔の乳首 クオリティ 1991年10月 1991年11月 『翔んでる警視正 平成篇7』
刑訴法第三一七條 オール讀物 1991年12月 『翔んでる警視正 平成篇7』
ジュリヤお立ち台 クオリティ 1991年12月 1992年1月 『翔んでる警視正 平成篇7』
バイヨンの甘い響き クオリティ 1992年2月 1992年3月 『翔んでる警視正 平成篇7』
犯人は犯人でない オール讀物 1992年5月 『翔んでる警視正 平成篇7』
桜とイラン人 別册文藝春秋 1992年7月 『翔んでる警視正 平成篇7』
氷雪の下に眠れ クオリティ 1992年4月 1992年5月 『翔んでる警視正 平成篇8』
巨大なる密室 クオリティ 1992年6月 1992年7月 『翔んでる警視正 平成篇8』
刑法三十九条に挑む クオリティ 1992年8月 1992年9月 『翔んでる警視正 平成篇8』
捜一必殺の刑訴法 別册文藝春秋 1992年10月 『翔んでる警視正 平成篇8』
夜明けのコンビニエンス クオリティ 1992年10月 1992年11月 『翔んでる警視正 平成篇8』
煩悩灰になるまで オール讀物 1992年11月 『翔んでる警視正 平成篇8』
文民警察 別册文藝春秋 1993年1月 『翔んでる警視正 平成篇9』
鬼刑事の目にも涙 クオリティ 1992年12月 1993年1月 『翔んでる警視正 平成篇9』
山の釣橋 クオリティ 1993年2月 1993年3月 『翔んでる警視正 平成篇9』
公安蟻地獄 別册文藝春秋 1993年4月 『翔んでる警視正 平成篇9』
校長vs教頭 クオリティ 1993年4月 1993年5月 『翔んでる警視正 平成篇9』
ある正当防衛 オール讀物 1993年5月 『翔んでる警視正 平成篇9』
ほらぼくちゃんだよ! クオリティ 1993年6月 1993年7月 『翔んでる警視正 平成篇10』
マニラのマリア 別册文藝春秋 1993年7月 『翔んでる警視正 平成篇10』
誘拐事件の裏庭 クオリティ 1993年8月 1993年9月 『翔んでる警視正 平成篇10』
伝聞が三つ揃っても クオリティ 1993年10月 1993年11月 『翔んでる警視正 平成篇10』
カルテルの生贄 オール讀物 1993年11月 『翔んでる警視正 平成篇10』
哀しきTバック クオリティ 1993年12月 1994年1月 『翔んでる警視正 平成篇10』
証拠なければ無罪 クオリティ 1994年2月 1994年3月
最後の翔んでる警視正(長篇) 東京中日スポーツ 1993年6月1日 1994年2月17日 『翔んでる警視正 平成篇11』
真夏の正月 アサヒゴルフ 1993年2月2日 1993年2月23日 『翔んでる警視正 新世紀篇1』
共通語が憎い アサヒゴルフ 1993年3月2日 1993年3月23日 『翔んでる警視正 新世紀篇1』
ローマの週日 アサヒゴルフ 1993年3月30日 1993年4月20日 『翔んでる警視正 新世紀篇1』
極道冬の時代 アサヒゴルフ 1993年4月27日 1993年5月25日 『翔んでる警視正 新世紀篇1』
エイズ哀しや アサヒゴルフ 1993年6月1日 1993年6月22日 『翔んでる警視正 新世紀篇1』
俺の値は アサヒゴルフ 1993年6月29日 1993年7月20日 『翔んでる警視正 新世紀篇1』
裏定款は殺人 アサヒゴルフ 1993年7月27日 1993年8月17日 『翔んでる警視正 新世紀篇2』
無い筈の殺人 アサヒゴルフ 1993年8月24日・31日合併 1993年9月21日 『翔んでる警視正 新世紀篇2』
ワープロが教えた犯人 アサヒゴルフ 1993年9月28日 1993年10月19日 『翔んでる警視正 新世紀篇2』
特進組の責任 アサヒゴルフ 1993年10月26日 1993年11月16日 『翔んでる警視正 新世紀篇2』
ブルセラ娘 アサヒゴルフ 1993年11月23日 1993年12月14日 『翔んでる警視正 新世紀篇2』
九本指が語る アサヒゴルフ 1993年12月21日 1994年1月11日・18日合併 『翔んでる警視正 新世紀篇2』

 整理を兼ねて、簡単に、跡を辿っておこう。
 最初に《小説推理》に掲載されたものは、分かり易い。断続的に掲載されたものを短編集にまとめ、その他に長編書き下ろしが1冊入っただけだからだ。従って、この最初の部分だけは、刊行ペースが1年に1冊以下、という極めて常識的なものである。
 ややこしくなりだすのは、廣済堂出版からの刊行に移ってからである。シリーズの好評を受けてか、毎月1編の読切連作が始まる。ただ、その媒体が《まんが笑アップ》というのは、ちょっと予想外である。同誌に3年に渡って連載され、《小説City》の創刊を受けて、そちらに移った、と読めばいいだろう。この間、年に2冊とややペースアップした形になる。
 その後、天山出版に移るとともに、主人公も警視正に昇格するが、この前後は、書誌的に見れば大きな変化はない。《レディスコミックルージュ》のあと、小説誌の《コットン》に移るのも、先の繰り返しを見ているかのようだ。刊行ペースも、同じなのである。また、この昇格の前後も、媒体は同じなのも面白いところだ。
 書誌がぐちゃぐちゃになるのは、また文芸春秋に版元が移ってからである。(初出時期が天山出版と重なっている)『国際謀略篇』は、《オール読物》に断続連載されたものをまとめたもの、ということでシンプルなのだが、書下ろし長編をはさんだ『平成篇2』からは、いろいろな媒体に掲載されたものを、数が揃うたびに出版してゆく。ついに、年に2冊のペースも微妙ではあるが超えてしまったほどである。媒体も、《週刊文春》から《別冊文芸春秋》まであるなど、同時に幾つ書いていたのだろう、と考えたくなってくるくらいだ。もっとも、この期間の中心は、2号完結で読切連載された《クオリティ》になるかも知れない。体調の不良などで、掲載が休んだ回がある、ということは、作者自身、この連載を基準にして考えていた気もしてくるほどだ。
 最後に、廣済堂出版に戻って刊行された『新世紀篇』。これも、文芸春秋と時期が重なって出ていることからも推測できそうだが、全く違った媒体に掲載されたものをまとめたものになる。それが《アサヒゴルフ》というのも面白いところだ。こちらは、1年間の連載ということで、刊行ペースも標準の年2冊となる。
 なお、このように、ほぼ固定した媒体が並ぶ中で、一年に一作ほどのペースで《別冊小説宝石》初出のものが混じるのが楽しいが、これらは短編集収録にあたっては、その時のメイン媒体の作品群に収まっているので、分かり易いだろう。

 さて、こうして並べた結果、本シリーズにも単行本未収録の作品があることを知る。最終作となった「証拠なければ無罪」は、作者急逝によるものだろうが、週刊文春に載った3編が入っていないのは、よく分からない。週刊文春掲載のものだけで二冊はならなかったのは分かるが、(版元が同じ)文芸春秋からの刊行はまだ続いていたのだから、機械的にまとめても良かった気がするのだが、どうなのだろう。
 また、ベストに載ったままその他の短編集に入らなかった「殺してなくても殺人だ」も、短編集未収録として良いだろう。これは、連載期間的にも、短編集刊行出版社の面でも中ぶらりんのタイミングであり、むしろ、ベストに入れることで、曖昧なままの地位を確保した、と見るべきなのかも知れない。
 これらは、その初出時期が伝わりやすい場所に入れてみた。さて、私の妄想は納得してもらえるものだろうか……。


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