春陽文庫の作家番号を調べてみよう

戸田和光


本稿について

 昨年(2022年)の末から、春陽文庫が再び動き始めた。最近の出版事情もあっては、実質的に時代小説専門の文庫となりそうで、個人的にどれだけ手にするか分からないが、ともかく、歴史ある文庫であるだけに、引き続いての刊行を期待したい。
 一方、昔ながらの春陽文庫を知っている人間からすると、今回の装丁には、ちょっとだけ物足りなさを感じてしまう。先に書いた通り、時代小説専門になりそうだから、ジャンル記号がないのは仕方ないにしても、作家番号と作家内通番がなくなってしまったためである。私なんかにとっては、これも一つの春陽文庫のアイデンティティにも思えたのだが、どうなのだろう。まあ、必要がなくなったから、と言われたら、それまでなのだけれど……。

 で、折角なので、これまでの作家番号を調べてみよう、と思った。手元で得られる資料だけでの確認なので、充分な結果はまるで得られていないのだが、ダラダラ続けるようなものでもないので、とりあえず今の時点での結果をまとめたのが、この雑文となります。
 ポコポコ穴が開いているので、埋めていただける方がいらっしゃれば、ご指摘ください。
 よろしくお願いいたします。


 まず、春陽文庫の作家番号について、私の認識をまとめておこう。
 戦前から、“日本小説文庫”や“春陽堂文庫”といった形で刊行されていたのが、改めて“春陽文庫”という名で刊行開始されたのは、昭和26年のようだ。白井喬二『喬二捕物集』あたりがスタートと思われる。当初は、本体に帯が巻かれた形だったが、昭和30年頃から、カバーに変わる。ただ、この時点ではまだ作家番号などは付されていない。改めて、よく知られた“A1−1”といった番号が付されるようになったのは、恐らく昭和33年の末か、昭和34年の正月あたりからではないか。それ以降は、必ずこの番号が付されるている。が、それまでに刊行された書籍には遡って番号はつけられていない。あくまで、この時点を出発点として、新たに番号をつけ始めたのだ。(それ以降は、基本的に刊行順に番号は付されている。ただ、刊行予定と実際の刊行にズレが生じることもあったせいか、多少の前後は見受けられるようだ)
 従って、それまでに刊行された本の中には番号がないものがあるし、作家としても作家番号を持たない作家はたくさんいる。ただ、そういった本であっても、この時点以降に再版された場合には、改めて番号が付与された。新たなカバーがかけられた際に、番号が採番されたのだ。言い換えれば、初期のものについては、作家番号や作品番号は、刊行順とは必ずしも一致しない。――これが、春陽文庫の作家番号の面白い点であり、謎を残している点にもなっている。
 また、春陽文庫ならではの特徴が、ジャンル毎に作家番号を振っていることだろう。この結果、複数のジャンルを手掛けていた作家については、ジャンル毎に別な作家番号を持っている。2つの作家はかなりな数に上るし、3つある作家もいる(柴田錬三郎だ)。他の文庫では見ないから、初見ではびっくりしたことを覚えている。
 これらは、歴史があるからこその歪み、とでも考えれば良いのだろうか……。
 それ以降は、基本的には、機械的に採番されていると思って良さそうだが、もう一つ二つ、留意するべき点がある。それは、辿ってゆく中で、改めて触れたい。


 では、各ジャンルごとに、順番に整理してみよう(但し、F(文芸小説)は行いません。1が夏目漱石、2が芥川竜之介――だけだと思うので)。
 それぞれ、作家番号をリスト化したあとで、そのジャンルについて、私自身が抱いている不明点についてあげてゆくことにする。
 収録書については、そのうちもう少し充実させたいと思っているが、迷ったら、とりあえずは基本的には作品番号1のものを入れるようにしてみた。

A 時代小説

作家番号作家名主な収録書
A1 山手樹一郎 桃太郎侍
A2 角田喜久雄 妖棋伝
A3 村上元三 次郎長三国志
A4 陣出達朗 たつまき奉行
A5 佐々木味津三 右門捕物帳、旗本退屈男
A6 横溝正史 人形佐七捕物帖
A7 直木三十五 黄門廻国記
A8 城 昌幸 若さま侍捕物手帖
A9 下村悦夫 松平長七郎青春記
A10
A11 南條範夫 傍若無人剣
A12 村松梢風 清水の次郎長
A13 山岡荘八 水戸黄門
A14
A15 鳴山草平 新説・柳生旅日記
A16 海音寺潮五郎 天正女合戦
A17 神坂次郎 花咲ける武士道
A18 司馬遼太郎 上方武士道
A19 尾崎士郎 真田幸村
A20 秋永芳郎 千葉の小天狗
A21 池波正太郎 仇討ち物語
A22 早乙女貢 うつせみ忍法帳
A23 佐竹申伍 濡れ髪剣士
A24 颯手達治 むらさき若殿
A25 江崎俊平 赤穂浪士
A26 童門冬二 異説新撰組
A27 柴英三郎 三匹の侍
A28 郡司次郎正 侍ニッポン
A29 井口朝生 鬼姫剣法
A30 木屋 進 忍者霧隠才蔵
A31 北園孝吉 剣風長七郎
A32 風巻絃一 青春坂本竜馬
A33 大塚雅春 柳生十兵衛
A34 村松駿吉 おしどり忍法
A35 戸部新十郎 忍法五三の桐
A36 大平陽介 満月秘文
A37 柴田錬三郎 血汐笛
A38 土師清二 大久保彦左衛門
A39
A40 野村敏雄 女犯地獄
A41 郡 順史 寛永御前試合
A42 一条 明 金太郎侍
A43 真鍋元之 恋染め街道
A44 大林 清 旅姿五十三次
A45 永岡慶之助 月下の若武者
A46 真下五一 情炎の美姫
A47 佐文字雄策 剣に賭ける
A48 名和弓雄 地獄草紙
A49 浅田晃彦 脱獄者
A50 多勢尚一郎 天国一刀流
A51 松永義弘 柳生無刀剣
A52 小山龍太郎 隠密変化
A53 相良俊輔 素浪人横丁
A54 生島治郎 さすらいの狼
A55 江本 清 恋花火
A56 左近 隆 かげろう伝奇
A57 和巻耿介 いろまち切絵図
A58 島田一男 風姫八天狗
A59 竹村 篤 浮世の風
A60 高木彬光 妖説地獄谷
A61 大栗丹後 裏隠密発つ
A62 左右田謙 南蛮秘宝伝
A63 新井英生 明治幻奇伝
A64 一色次郎 孤雁一刀流
A65 細島喜美 驍将武田信玄
A66 長谷圭剛 かるわざ殺法 
A67 武蔵野次郎 魔剣竜神丸
A68 風早恵介 緋ざくら浪人
A69 宮城賢秀 天保刺客群像
A70 田中満津夫 北斗の星
A71 菅野国春 夕映え剣士
A72 野町祥太郎 素浪人若殿
A73 松浦泉三郎 春秋絵双六
A74 川口松太郎 蛇姫様
A75
A76
A77
A78
A79 岡本綺堂 半七捕物帳
A80 志村有弘(編) 怪奇・伝奇時代小説選集


 作家数が多いこともあり、最も抜けが多いのが情けないが、手元の資料では、ここまでが精いっぱいだった。すぐにいくつか指摘されそうだが、一応これが現時点でのものになる。(A10は、子母沢寛の可能性が高いと思っているが、断定まではしにくいので、空欄にしている)
 だいたい、A17あたりからは時系列に作家番号が振られているようだ。それ以前は、再刊による番号付与もあり、なかなかハードルが高い。昭和34年以前に時代小説を刊行している作家には、前述の子母沢のほか、三上於菟吉(『雪之丞変化』)、岩下俊作(『無法松の一生』)、井上靖(『戦国無頼』)、長谷川伸(『国定忠次』)、沙羅双樹(『天下の糸平』)、檀一雄(『石川五右衛門』)らがいたから、これらのが入って来る可能性はありそうだ。

 あと、このジャンルでよく分からないのが、横溝正史と城昌幸の番号になる。この二人の作家の著書は、もともと次の「B」のジャンルで刊行されていたもので、そのジャンルが消滅しAに吸収されたために、新たに番号が付されたものだ。それなのに、こんな若い番号を持っている理由が分からない。不思議な気がして仕方がないのだ。実際、横溝のA6については、当初は川口松太郎のものだった気配もあるのだ(その番号が振られた『蛇姫様』があるようなので)。Aに移した際、余り番号が大きいのは体裁が悪いと考えたために、その時点で版が途切れていた番号に割り込んだのではないか、という気すらしてしまう。勘ぐり過ぎだろうか?(状況が似ているが、佐々木味津三については、『右門捕物帳』のほかに『旗本退屈男』も出していたので、この番号で不思議はない。が、横溝と城は、他に時代小説は出ていなかったようなのだ。佐々木がA5というのが象徴的で、それに合わせたのではないか、という気もしている)

 A74〜A79は、平成に入って、初期作品などを新装版として再刊した際のものだと思われる。この時期にどんな作品が出たのが追い切れず、中途半端な形になってしまった……。川口松太郎については、前述のとおり、A6だった可能性もあるが、ここではこちらに入れておくことにする。


B 捕物小説

作家番号作家名主な収録書
B1 城 昌幸 若さま侍捕物手帖
B2 横溝正史 人形佐七捕物帖
B3 陣出達朗 伝七捕物帳
B4 佐々木味津三 右門捕物帳
B5 和巻耿介 江戸犯科絵図
B6 多岐川恭 ゆっくり雨太郎捕物控
B7 森達二郎 相良一平捕物帳
B8 島田一男 菊太郎事件控、同心部屋御用帳
B9 早乙女貢 此村大吉無頼帖


 続いて、ジャンルとしては途中でなくなってしまった“捕物小説”のジャンルである。いつなくなったのかは分からなかったが、恐らくは昭和50年前後ではなかろうか。こちらは、該当する作家数が少なかったようで、上記の9人だけと思われる(高木彬光の文七ものの刊行が早ければ、ここに入れられたかも知れないが)。
 数が少ないだけに謎もほとんどないが、個人的に確認できていない点として、このジャンルで刊行された作品は、その後再版される際に、Aのジャンルに組み込まれ、そちらの作品番号が付与されている(従って、これらについては作品番号も2つあることになる)のだが、唯一、多岐川の2作品もAジャンルの番号も付されたのかが分かっていない。再刊されたのなら、当然番号は付与されるのだが……。Aにいくつもアナがあいているので、まだまだ不安である。


C 推理小説

作家番号作家名主な収録書
C1 江戸川乱歩 江戸川乱歩名作集
C2 大下宇陀児 奇蹟の扉
C3
C4 角田喜久雄 高木家の惨劇
C5 横溝正史 本陣殺人事件
C6 島田一男 昼なき男
C7 高木彬光 能面殺人事件
C8 甲賀三郎 姿なき怪盗
C9 鮎川哲也 誰の屍体か
C10 浜尾四郎 鉄鎖殺人事件
C11 長谷川公之 警視庁物語
C12 有馬頼義 悪夢の構図
C13 鷲尾三郎 裸女と拳銃
C14 樫原一郎 盗まれた拳銃
C15 多岐川恭 落ちる
C16 笹沢左保 結婚って何さ
C17 黒岩重吾 天の踊り
C18 楳本捨三 迷彩ある殺人
C19 水上 勉 若狭湾の惨劇
C20 佐賀 潜 黒の構図
C21 冨島健夫 二人が消えた夜
C22 邦光史郎 社外極秘
C23 西村京太郎 四つの終止符
C24 幾瀬勝彬 死を呼ぶクイズ
C25 柴田錬三郎 幽霊紳士
C26 草野唯雄 瀬戸内海殺人事件
C27 蒼井 雄 船富家の惨劇
C28 佐野 洋 秘密パーテイ
C29 斎藤 栄 勝海舟の殺人
C30 新橋遊吉 競走馬空輸殺人事件
C31 高原弘吉 消えた超人
C32 三橋一夫 ふしぎなふしぎな物語
C33 山村正夫 落日の墓標
C34 黒木曜之助 野望の接点
C35 生島治朗 あの墓を掘れ
C36 桜田忍・福田洋 月野佳郎探偵帖
C37 左右田謙 球魂の蹉趺
C38 南 英男 獣たちの謝肉祭
C39 野町祥太郎 易者ギャル桃花事件帳
C40 若山三郎 お嬢さんは名探偵
C41 城戸 禮
C42 岡崎 洋 比島・灼熱の追走
C43 山口 香 東京-宮崎殺人旅行
C44 荻原秀夫 福岡-東京殺人ルート
C45 龍 一京 戦闘刑事コブラ


 こちらは、初期のC3だけが特定できていない。昔からここが埋められず、全く手掛かりを見つけられていないのだ。気付いたときには、全く埋められなかった。昭和35年に『婦人警官捕物帳』が再版されているようなので、城昌幸なのかな、と考えたことはあるが、タイトルの関係もあり、この本がBに分類されていた可能性もありそうで、特定できる情報には辿りつけなかった。……情けない。
 このジャンルも、昭和34年以前に刊行している作家は多い。前述の城のほか、山田風太郎(『眼中の悪魔』)、香山滋(『美しき山猫』)、坂口安吾(『不連続殺人事件』)、小栗虫太郎(『完全犯罪』)、岡田鯱彦(『源氏物語殺人事件』)、永瀬三吾(『売国奴』)、楠田匡介(『地獄の同伴者』)といったところが該当する。これらの中にC3がいる可能性が高いが、再版による付与という意味では、境界作品とでも呼べそうな『噫無情』(黒岩涙香)や『魔子恐るべし』(宮本幹也)が入っていたかも知れない。

 面白いのが、最初は桜田忍名義で刊行していて、途中から福田洋名義に変わったのに、作家番号は踏襲されていることか。当たり前といえば当たり前なのだが、同じ作家の名義変更と知らないと、迷う人もいたかも知れない。
 一方、調査を放棄したのが、C41の城戸禮。この番号が城戸なのは確かなのだが、作品番号が全く追えないのだ。以前、かなり大きな作品番号を見たとき、(C41になってからそれ程沢山の新刊が出た記憶がないから、)以前はEジャンルで刊行したものを、Cに変えたのではないか、と思ったために、最初から断念したのである。城戸に対してそこまで関心がなかったためだが、誰か確認した人はいるのだろうか?


D 明朗小説

作家番号作家名主な収録書
D1 源氏鶏太 ひまわり娘
D2 佐々木邦 花嫁三国一
D3 中野 実 新婚リーグ戦
D4 笠原良三 サラリーマン出世太閤記
D5 城戸 禮 かけだし三四郎
D6 長沖 一 お父さんはお人よし
D7 鳴山草平 巌ちゃん先生行状記
D8 鹿島孝二 恋愛処方箋
D9 中村武志 目白三平のランデブー
D10 梁取三義 二等兵物語
D11 宇井無愁 恋愛パトロール
D12 宮本幹也 カマトト令嬢
D13 若山三郎 お嬢さんと腕力学生
D14 棟田 博 拝啓モサクレ様
D15 竹森一男 青春部長日記
D16 園生義人 腕まくり女高生
D17 樹下太郎 人生だなあ
D18 小川忠悳 無敵先生
D19 風早恵介 青春爆弾児
D20 三橋一夫 無敵ぼっちゃん
D21 萩原良彦 ハッスル列車
D21 河崎 洋 行くぞ金剛拳!
D22 中島さとこ 咲子さんちょっと


 あるいは“ユーモア小説”という名称の方が馴染があるのかも知れないが、漢字2字で揃えた方が分かり易いかと思ったので、ここでは“明朗小説”としてみた。実際、この顔ぶれを見ると、私にはこっちの方が相応しい気がするのだが……。
 私は、このジャンルも、(“捕物小説”よりは長かったにしても)割と早くジャンルが消滅した――と思っていたのだが、改めて調べて見ると、その辺がどうもはっきりしない。最後の作家番号が振られたのは昭和50年だったのは確かだが、それ以降もコンスタントに若山作品は刊行され続けるなど、Dジャンルの新刊が見られるからだ(城戸作品と三橋作品も少ないながら出ているし……)。つまり、他の作家の作品が(新刊・再版とも)出なくなったため、殆ど見かけなくなっていたに過ぎず、ジャンル消滅がされていたとしても、それはかなり遅かった気がし始めている。単に、明朗小説のピークは昭和30年代で、昭和50年頃には余り話題にならなくなっていたに過ぎず、それがそのジャンルが消滅したと思い込んだだけなのかも知れない……。
 このジャンルでの最大の謎は、見て分かる通り、E21の作家が2人いることである。つまり、昭和46年に萩原良彦作品が出たあと、新たにこのジャンルでの新人登場が途切れていた。そして、昭和50年に河崎洋作品が刊行する際に、萩原と同じ番号が付与されてしまったかのように見えるのだ(その後すぐ、中島が新刊を出す際には、番号続きのE22となっている)。
 私の確認ミスだったのだろうか。ご教示いただければ幸いである。


E 現代小説

作家番号作家名主な収録書
E1 岩下俊作 無法松の一生
E2 北条 誠 花を吹く風
E3 菊田一夫 君の名は
E4 川口松太郎 珠はくだけず
E5 大林 清 ただ君ゆえに
E6 小糸のぶ しあわせはどこに
E7 早乙女勝元 美しい橋
E8 村松梢風 両国の川風
E9 入江徳郎 泣虫記者
E10 白石実三 秘密情報
E11 田村泰次郎 地獄からきた女
E12 城山三郎 プロペラ機着陸待て
E13 楳本捨三 アジアの女王
E14 小山いと子 皇后さま
E15 園田てる子 銀座の踊り子
E16 藤原審爾 泥だらけの純情
E17 川内康範 恋にいのちを
E18 藤沢桓夫 大阪五人娘
E19 白川 渥 風来先生
E20 火野葦平 土と兵隊・麦と兵隊
E21 秋永芳郎 悪女時代
E22 立野信之 落陽
E23 今日出海 チョップ先生
E24 中村八朗 遠いこだま
E25 壷井 栄 あしたの風
E26 佐藤鉄章 若い魂
E27 田辺聖子 女の食卓
E28 小松君郎 いつでも君は
E29 久米正雄 月よりの使者
E30 榛葉英治 赤い雪
E31 藤井重夫
E32 富島健夫 七つの部屋
E33 山田克郎 海の廃園
E34 浅田晃彦 桂馬先生診療簿
E35 荻原秀夫 ずぶとい青春
E36 小泉 譲 女生徒男生徒
E37 高村暢児 屈辱の太陽
E38 西村京太郎 太陽と砂
E39 柴田錬三郎 チャンスは三度ある
E40 真下五一 地上の星 新島襄伝
E41 石浜恒夫 遠い星 早川徳次伝
E42 小川忠悳 月を裂く快男児
E43 邦光史郎 欲望の媒体
E44 新橋遊吉 競馬狂い
E45 一条 明 ひねくれ星の詩
E46 豊田行二 小説・示談書
E47 太田俊夫 国税査察官使途不明金
E48
E49
E50
E51
E52
E53 木屋 進 極道まっしぐら


 最後に、現代小説である。このジャンルは特に懸念点はなく、綺麗に埋まった――と思っていたのだけれど、とんでもない見落としがあり、最後の方が全く埋められていないことに今さら気付いた。ただ、手元の資料では、太田と木屋の間に、現代小説の新刊を刊行した作家が見当たらないのだ。これは、やはり“D:明朗小説”のジャンルが消滅した際に、そちらの作家をこちらに振り替えたとしか思えない(実際、城戸とか若山は再版されていたと思うから、5人程度は該当する作家がいても不思議はない)。ただ、これを調べるのは、至難の気がする。

 判明している中では、同じ現代小説というくくりでも、前半と後半とで若干顔ぶれが違っている気がするのが面白いところか。現在の感覚だと、壷井栄を現代小説というくくりに含める人は少ないかも知れない(今回吹っ飛ばした、F(文芸小説)に分類することはないだろうけれど)。



戻る

戸田和光