春陽文庫の作家番号を調べてみよう
戸田和光
本稿について
 2022年の末頃から、春陽文庫が再び動き始めた。当初は時代小説専門だったが、途中から探偵小説の刊行も始まり、以前のようならしさ≠燒゚りつつあるようだ。基本的に昭和期のものを中心とした復刊専門の文庫として刊行が続いているが、さて、これはずっと続いてくれるのだろうか。興味を持って、見守っていきたい。
 また、刊行が始まって暫くは、作家番号と作家内通番の表記がなかったのだが、暫くして採番付与が始まったようだ。ただ、当初は表記されてなかったこともあり、最新の作家番号がよく分からないままになってしまっている気がする。しっかりと確認いている訳ではないけれど、作家番号が重複してない? と思ってしまったこともある。個人的には、これも一つの春陽文庫のアイデンティティだと思ってしまうところもあって、何とも落ちつかない気がするのだが、最近では、必要性を感じない人の方が多いのかも知れない……。
 で、折角なので、これまでの作家番号を調べてみよう、と思った。手元で得られる資料だけでの確認なので、充分な結果はまるで得られていないのだが、ダラダラ続けるようなものでもないので、とりあえず今の時点での結果をまとめたのが、この雑文となります。
 ポコポコ穴が開いているので、埋めていただける方がいらっしゃれば、ご指摘ください。
 よろしくお願いいたします。
 ちょっと間があいたせいで、前文に書いていた内容が変わってしまいました。そこを修正することを兼ねて、ちょっとだけ内容を訂正しました。とはいえ、まだまだ穴だらけですので、埋めていただける方は引き続き募集します。(25年5月)
 まず、春陽文庫の作家番号について、私の認識をまとめておこう。
 戦前から、“日本小説文庫”や“春陽堂文庫”といった形で刊行されていたのが、改めて“春陽文庫”という名で刊行開始されたのは、昭和26年のようだ。白井喬二『喬二捕物集』あたりがスタートと思われる。当初は、本体に帯が巻かれた形だったが、昭和30年頃から、カバーに変わる。ただ、この時点ではまだ作家番号などは付されていない。改めて、よく知られた“A1−1”といった番号が付されるようになったのは、恐らく昭和33年の末か、昭和34年の正月あたりからではないか。それ以降は、必ずこの番号が付されるている。が、それまでに刊行された書籍には遡って番号はつけられていない。あくまで、この時点を出発点として、新たに番号をつけ始めたのだ。(それ以降は、基本的に刊行順に番号は付されている。ただ、刊行予定と実際の刊行にズレが生じることもあったせいか、多少の前後は見受けられるようだ)
 従って、それまでに刊行された本の中には番号がないものがあるし、作家としても作家番号を持たない作家はたくさんいる。ただ、そういった本であっても、この時点以降に再版された場合には、改めて番号が付与された。新たなカバーがかけられた際に、番号が採番されたのだ。言い換えれば、初期のものについては、作家番号や作品番号は、刊行順とは必ずしも一致しない。――これが、春陽文庫の作家番号の面白い点であり、謎を残している点にもなっている。
 また、春陽文庫ならではの特徴が、ジャンル毎に作家番号を振っていることだろう。この結果、複数のジャンルを手掛けていた作家については、ジャンル毎に別な作家番号を持っている。2つの作家はかなりな数に上るし、3つある作家もいる(柴田錬三郎だ)。他の文庫では見ないから、初見ではびっくりしたことを覚えている。
 これらは、歴史があるからこその歪み、とでも考えれば良いのだろうか……。
 それ以降は、基本的には、機械的に採番されていると思って良さそうだが、もう一つ二つ、留意するべき点がある。それは、辿ってゆく中で、改めて触れたい。
 では、各ジャンルごとに、順番に整理してみよう(但し、F(文芸小説)は行いません。1が夏目漱石、2が芥川竜之介――だけだと思うので)。
 それぞれ、作家番号をリスト化したあとで、そのジャンルについて、私自身が抱いている不明点についてあげてゆくことにする。
 収録書については、そのうちもう少し充実させたいと思っているが、迷ったら、とりあえずは基本的には作品番号1のものを入れるようにしてみた。
A 時代小説
| 作家番号 | 作家名 | 主な収録書 | 
| A1 | 山手樹一郎 | 桃太郎侍 | 
| A2 | 角田喜久雄 | 妖棋伝 | 
| A3 | 村上元三 | 次郎長三国志 | 
| A4 | 陣出達朗 | たつまき奉行 | 
| A5 | 佐々木味津三 | 右門捕物帳、旗本退屈男 | 
| 旧A6 | 川口松太郎 | 蛇姫様 | 
| A6 | 横溝正史 | 人形佐七捕物帖 | 
| A7 | 直木三十五 | 黄門廻国記 | 
| 旧A8 | 子母沢寛 | 弥太郎笠 | 
| A8 | 城 昌幸 | 若さま侍捕物手帖 | 
| A9 | 下村悦夫 | 松平長七郎青春記 | 
| A10 |  |  | 
| A11 | 南條範夫 | 傍若無人剣 | 
| A12 | 村松梢風 | 清水の次郎長 | 
| A13 | 山岡荘八 | 水戸黄門 | 
| A14 |  |  | 
| A15 | 鳴山草平 | 新説・柳生旅日記 | 
| A16 | 海音寺潮五郎 | 天正女合戦 | 
| A17 | 神坂次郎 | 花咲ける武士道 | 
| A18 | 司馬遼太郎 | 上方武士道 | 
| A19 | 尾崎士郎 | 真田幸村 | 
| A20 | 秋永芳郎 | 千葉の小天狗 | 
| A21 | 池波正太郎 | 仇討ち物語 | 
| A22 | 早乙女貢 | うつせみ忍法帳 | 
| A23 | 佐竹申伍 | 濡れ髪剣士 | 
| A24 | 颯手達治 | むらさき若殿 | 
| A25 | 江崎俊平 | 赤穂浪士 | 
| A26 | 童門冬二 | 異説新撰組 | 
| A27 | 柴英三郎 | 三匹の侍 | 
| A28 | 郡司次郎正 | 侍ニッポン | 
| A29 | 井口朝生 | 鬼姫剣法 | 
| A30 | 木屋 進 | 忍者霧隠才蔵 | 
| A31 | 北園孝吉 | 剣風長七郎 | 
| A32 | 風巻絃一 | 青春坂本竜馬 | 
| A33 | 大塚雅春 | 柳生十兵衛 | 
| A34 | 村松駿吉 | おしどり忍法 | 
| A35 | 戸部新十郎 | 忍法五三の桐 | 
| A36 | 大平陽介 | 満月秘文 | 
| A37 | 柴田錬三郎 | 血汐笛 | 
| A38 | 土師清二 | 大久保彦左衛門 | 
| A39 | 和巻耿介★ | 稲妻浪人 | 
| A40 | 野村敏雄 | 女犯地獄 | 
| A41 | 郡 順史 | 寛永御前試合 | 
| A42 | 一条 明 | 金太郎侍 | 
| A43 | 真鍋元之 | 恋染め街道 | 
| A44 | 大林 清 | 旅姿五十三次 | 
| A45 | 永岡慶之助 | 月下の若武者 | 
| A46 | 真下五一 | 情炎の美姫 | 
| A47 | 佐文字雄策 | 剣に賭ける | 
| A48 | 名和弓雄 | 地獄草紙 | 
| A49 | 浅田晃彦 | 脱獄者 | 
| A50 | 多勢尚一郎 | 天国一刀流 | 
| A51 | 松永義弘 | 柳生無刀剣 | 
| A52 | 小山龍太郎 | 隠密変化 | 
| A53 | 相良俊輔 | 素浪人横丁 | 
| A54 | 生島治郎 | さすらいの狼 | 
| A55 | 江本 清 | 恋花火 | 
| A56 | 左近 隆 | かげろう伝奇 | 
| A57 | 和巻耿介 | いろまち切絵図 | 
| A58 | 島田一男 | 風姫八天狗 | 
| A59 | 竹村 篤 | 浮世の風 | 
| A60 | 高木彬光 | 妖説地獄谷 | 
| A61 | 大栗丹後 | 裏隠密発つ | 
| A62 | 左右田謙 | 南蛮秘宝伝 | 
| A63 | 新井英生 | 明治幻奇伝 | 
| A64 | 一色次郎 | 孤雁一刀流 | 
| A65 | 細島喜美 | 驍将武田信玄 | 
| A66 | 長谷圭剛 | かるわざ殺法 | 
| A67 | 武蔵野次郎 | 魔剣竜神丸 | 
| A68 | 風早恵介 | 緋ざくら浪人 | 
| A69 | 宮城賢秀 | 天保刺客群像 | 
| A70 | 田中満津夫 | 北斗の星 | 
| A71 | 菅野国春 | 夕映え剣士 | 
| A72 | 野町祥太郎 | 素浪人若殿 | 
| A73 | 松浦泉三郎 | 春秋絵双六 | 
| A74 | 川口松太郎 | 蛇姫様 | 
| A75 |  |  | 
| A76 |  |  | 
| A77 |  |  | 
| A78 |  |  | 
| A79 | 岡本綺堂 | 半七捕物帳 | 
| A80 | 志村有弘(編) | 怪奇・伝奇時代小説選集 | 
 作家数が多いこともあり、最も抜けが多いのが情けないが、手元の資料では、ここまでが精いっぱいだった。すぐにいくつか指摘されそうだが、一応これが現時点でのものになる。
 だいたい、A17あたりからは時系列に作家番号が振られているようだ。それ以前は、再刊による番号付与もあり、なかなかハードルが高い。昭和34年以前に時代小説を刊行している作家には、三上於菟吉(『雪之丞変化』)、岩下俊作(『無法松の一生』)、井上靖(『戦国無頼』)、長谷川伸(『国定忠次』)、沙羅双樹(『天下の糸平』)、檀一雄(『石川五右衛門』)らがいたから、これらが入って来る可能性はありそうだ。
 A6とA8に「旧」の文字をつけたものがある。これは、横溝正史と城昌幸にAの作家番号を付与する際(後述しているが、この二人の作家の著書は、もともと次の「B」のジャンルで刊行されていたもので、そのジャンルが消滅しAに吸収された際に、新たに番号が付されたものだ)に、その時点で春陽文庫で絶版になっていた作家の作家番号を転用したために生じたものである。だからこそ、こんな若い番号になっているのである。
 恐らく、Aに移した際に、余り番号が大きいのでは体裁が悪いと考えたために、借用してしまったのだろう。BのジャンルがなくなりAに変わった、という意味では、佐々木味津三の『右門捕物帳』なども同じなのだが、佐々木の場合は、既に『旗本退屈男』も出していたので、A5という番号で不思議はない。で、この佐々木のA5に合わせる形で、6と8を付けたのではないか、と考えている。
 で、横溝にA6を取られた川口松太郎の著書を改めて新装刊行した際に、川口には新たに74という大きな数字を付与するしかなかったのだろう。
 この、A74〜A79は、平成に入って、初期作品などを新装版として再刊した際のものだと思われる。川口松太郎以外に、この時期にどんな作品が出たのが追い切れず、中途半端な形になってしまった……。
 また、和巻耿介が二箇所にいるが、これは誤りではない。もともと和巻は『江戸犯科絵図』を刊行してBでスタートを切ったのだが、その翌年には『稲妻浪人』を刊行して、A39の作家番号も付与されていた。その後、暫く時代小説の刊行がなく、約10年後に『いろまち切絵図』を刊行する際に、既に番号付与されていることが忘れられてしまったようで、改めてA57が付与されてしまったのである。その後、新刊が続き、またBジャンル作品がAに組み込まれた際も、すべてA57の番号の中で順にカウントアップされた。(なお、『稲妻浪人』はその後復刊・新装刊されなかったため、この本はA57の番号は持っていない)
 一連の番号を見ると、和巻の作家番号は間違いなくA57としかいいようがないが、これだとA39が欠番に見えてしまうので、★を付記して記載していることを、ご理解いただきたい。
B 捕物小説
| 作家番号 | 作家名 | 主な収録書 | 
| B1 | 城 昌幸 | 若さま侍捕物手帖 | 
| B2 | 横溝正史 | 人形佐七捕物帖 | 
| B3 | 陣出達朗 | 伝七捕物帳 | 
| B4 | 佐々木味津三 | 右門捕物帳 | 
| B5 | 和巻耿介 | 江戸犯科絵図 | 
| B6 | 多岐川恭 | ゆっくり雨太郎捕物控 | 
| B7 | 森達二郎 | 相良一平捕物帳 | 
| B8 | 島田一男 | 菊太郎事件控、同心部屋御用帳 | 
| B9 | 早乙女貢 | 此村大吉無頼帖 | 
 続いて、ジャンルとしては途中でなくなってしまった“捕物小説”のジャンルである。いつなくなったのかは分からなかったが、恐らくは昭和50年前後ではなかろうか。こちらは、該当する作家数が少なかったようで、上記の9人だけと思われる(高木彬光の文七ものの刊行が早ければ、ここに入れられたかも知れないが)。
 数が少ないだけに謎もほとんどないが、個人的に確認できていない点として、このジャンルで刊行された作品は、その後再版される際に、Aのジャンルに組み込まれ、そちらの作品番号が付与されている(従って、これらについては作品番号も2つあることになる)のだが、唯一、多岐川の2作品もAジャンルの番号も付されたのかが分かっていない。再刊されたのなら、当然番号は付与されるのだが……。Aにいくつもアナがあいているので、まだまだ不安である。
C 推理小説
| 作家番号 | 作家名 | 主な収録書 | 
| C1 | 江戸川乱歩 | 江戸川乱歩名作集 | 
| C2 | 大下宇陀児 | 奇蹟の扉 | 
| C3 |  |  | 
| C4 | 角田喜久雄 | 高木家の惨劇 | 
| C5 | 横溝正史 | 本陣殺人事件 | 
| C6 | 島田一男 | 昼なき男 | 
| C7 | 高木彬光 | 能面殺人事件 | 
| C8 | 甲賀三郎 | 姿なき怪盗 | 
| C9 | 鮎川哲也 | 誰の屍体か | 
| C10 | 浜尾四郎 | 鉄鎖殺人事件 | 
| C11 | 長谷川公之 | 警視庁物語 | 
| C12 | 有馬頼義 | 悪夢の構図 | 
| C13 | 鷲尾三郎 | 裸女と拳銃 | 
| C14 | 樫原一郎 | 盗まれた拳銃 | 
| C15 | 多岐川恭 | 落ちる | 
| C16 | 笹沢左保 | 結婚って何さ | 
| C17 | 黒岩重吾 | 天の踊り | 
| C18 | 楳本捨三 | 迷彩ある殺人 | 
| C19 | 水上 勉 | 若狭湾の惨劇 | 
| C20 | 佐賀 潜 | 黒の構図 | 
| C21 | 冨島健夫 | 二人が消えた夜 | 
| C22 | 邦光史郎 | 社外極秘 | 
| C23 | 西村京太郎 | 四つの終止符 | 
| C24 | 幾瀬勝彬 | 死を呼ぶクイズ | 
| C25 | 柴田錬三郎 | 幽霊紳士 | 
| C26 | 草野唯雄 | 瀬戸内海殺人事件 | 
| C27 | 蒼井 雄 | 船富家の惨劇 | 
| C28 | 佐野 洋 | 秘密パーテイ | 
| C29 | 斎藤 栄 | 勝海舟の殺人 | 
| C30 | 新橋遊吉 | 競走馬空輸殺人事件 | 
| C31 | 高原弘吉 | 消えた超人 | 
| C32 | 三橋一夫 | ふしぎなふしぎな物語 | 
| C33 | 山村正夫 | 落日の墓標 | 
| C34 | 黒木曜之助 | 野望の接点 | 
| C35 | 生島治朗 | あの墓を掘れ | 
| C36 | 桜田忍・福田洋 | 月野佳郎探偵帖 | 
| C37 | 左右田謙 | 球魂の蹉趺 | 
| C38 | 南 英男 | 獣たちの謝肉祭 | 
| C39 | 野町祥太郎 | 易者ギャル桃花事件帳 | 
| C40 | 若山三郎 | お嬢さんは名探偵 | 
| C41 | 城戸 禮 |  | 
| C42 | 岡崎 洋 | 比島・灼熱の追走 | 
| C43 | 山口 香 | 東京-宮崎殺人旅行 | 
| C44 | 荻原秀夫 | 福岡-東京殺人ルート | 
| C45 | 龍 一京 | 戦闘刑事コブラ | 
 こちらは、初期のC3だけが特定できていない。昔からここが埋められず、全く手掛かりを見つけられていないのだ。気付いたときには、全く埋められなかった。昭和35年に『婦人警官捕物帳』が再版されているようなので、城昌幸なのかな、と考えたことはあるが、タイトルの関係もあり、この本がBに分類されていた可能性もありそうで、特定できる情報には辿りつけなかった。……情けない。
 このジャンルも、昭和34年以前に刊行している作家は多い。前述の城のほか、山田風太郎(『眼中の悪魔』)、香山滋(『美しき山猫』)、坂口安吾(『不連続殺人事件』)、小栗虫太郎(『完全犯罪』)、岡田鯱彦(『源氏物語殺人事件』)、永瀬三吾(『売国奴』)、楠田匡介(『地獄の同伴者』)といったところが該当する。これらの中にC3がいる可能性が高いが、再版による付与という意味では、境界作品とでも呼べそうな『噫無情』(黒岩涙香)や『魔子恐るべし』(宮本幹也)が入っていたかも知れない。
 面白いのが、最初は桜田忍名義で刊行していて、途中から福田洋名義に変わったのに、作家番号は踏襲されていることか。当たり前といえば当たり前なのだが、同じ作家の名義変更と知らないと、迷う人もいたかも知れない。
 一方、調査を放棄したのが、C41の城戸禮。城戸に関しては、1980年に刊行された『拳銃刑事三四郎』がC41−1を付与されていることは確認している。それまでも、広義のアクション小説をD(E)ジャンルで刊行していたから、急にここでCとして刊行された理由が全く分からない。実際、C40(若山三郎=1988年付与)と42(岡崎洋=1992年付与)の作家から類推すれば、『拳銃刑事三四郎』は最初D5−58として刊行され、ジャンル廃止に伴いE51−58に変わったが、その後の再版の際に、新たにC41−1になったとしか思えないのである(実際、これらの三種が存在することは、ネット等で確認できる)。決して、Dのジャンルを廃止するから代わりにCに組み込んだ、という流れとは思えないのである。実際、城戸の春陽文庫での最終作と思われる『ガッツ武装刑事』は、Cしか確認出来ていないのだ。つまり、末期には、城戸はCジャンルの作家になったようにしか見えないのだ。
 とはいえ、城戸に対してそこまで関心がないため、これ以上の考察も難しい。誰か確認した人はいるのだろうか?
D 明朗小説
| 作家番号 | 作家名 | 主な収録書 | 
| D1 | 源氏鶏太 | ひまわり娘 | 
| D2 | 佐々木邦 | 花嫁三国一 | 
| D3 | 中野 実 | 新婚リーグ戦 | 
| D4 | 笠原良三 | サラリーマン出世太閤記 | 
| D5 | 城戸 禮 | かけだし三四郎 | 
| D6 | 長沖 一 | お父さんはお人よし | 
| D7 | 鳴山草平 | 巌ちゃん先生行状記 | 
| D8 | 鹿島孝二 | 恋愛処方箋 | 
| D9 | 中村武志 | 目白三平のランデブー | 
| D10 | 梁取三義 | 二等兵物語 | 
| D11 | 宇井無愁 | 恋愛パトロール | 
| D12 | 宮本幹也 | カマトト令嬢 | 
| D13 | 若山三郎 | お嬢さんと腕力学生 | 
| D14 | 棟田 博 | 拝啓モサクレ様 | 
| D15 | 竹森一男 | 青春部長日記 | 
| D16 | 園生義人 | 腕まくり女高生 | 
| D17 | 樹下太郎 | 人生だなあ | 
| D18 | 小川忠悳 | 無敵先生 | 
| D19 | 風早恵介 | 青春爆弾児 | 
| D20 | 三橋一夫 | 無敵ぼっちゃん | 
| D21 | 萩原良彦 | ハッスル列車 | 
| D21 | 河崎 洋 | 行くぞ金剛拳! | 
| D22 | 中島さとこ | 咲子さんちょっと | 
 あるいは“ユーモア小説”という名称の方が馴染があるのかも知れないが、漢字2字で揃えた方が分かり易いかと思ったので、ここでは“明朗小説”としてみた。実際、この顔ぶれを見ると、私にはこっちの方が相応しい気がするのだが……。
 私は、このジャンルも、(“捕物小説”よりは長かったにしても)それなりの時期にジャンルが消滅した――と思っていたのだが、改めて調べて見ると、その辺がどうもはっきりしない。最後の作家番号が振られたのは昭和50年だったのは確かだが、それ以降もコンスタントに若山作品は刊行され続けるなど、Dジャンルの新刊が見られるからだ(城戸作品と三橋作品も少ないながら出ているし……)。つまり、他の作家の作品が(新刊・再版とも)出なくなったため、殆ど見かけなくなっていたに過ぎず、Dジャンルは若山がしっかり守っていた――だけなのかも知れない。結局、ジャンル消滅がされていたとしても、それはかなり遅かった気がし始めている。単に、明朗小説のピークは昭和30年代で、昭和50年頃には余り話題にならなくなっていたに過ぎず、それがそのジャンルが消滅したと思い込んだだけなのかも知れない……。
 このジャンルでの最大の謎は、見て分かる通り、E21の作家が2人いることである。つまり、昭和46年に萩原良彦作品が出たあと、新たにこのジャンルでの新人登場が途切れていた。そして、昭和50年に河崎洋作品が刊行する際に、萩原と同じ番号が付与されてしまったかのように見えるのだ(その後すぐ、中島が新刊を出す際には、番号続きのE22となっている)。
 私の確認ミスだったのだろうか。ご教示いただければ幸いである。
E 現代小説
| 作家番号 | 作家名 | 主な収録書 | 
| E1 | 岩下俊作 | 無法松の一生 | 
| E2 | 北条 誠 | 花を吹く風 | 
| E3 | 菊田一夫 | 君の名は | 
| E4 | 川口松太郎 | 珠はくだけず | 
| E5 | 大林 清 | ただ君ゆえに | 
| E6 | 小糸のぶ | しあわせはどこに | 
| E7 | 早乙女勝元 | 美しい橋 | 
| E8 | 村松梢風 | 両国の川風 | 
| E9 | 入江徳郎 | 泣虫記者 | 
| E10 | 白石実三 | 秘密情報 | 
| E11 | 田村泰次郎 | 地獄からきた女 | 
| E12 | 城山三郎 | プロペラ機着陸待て | 
| E13 | 楳本捨三 | アジアの女王 | 
| E14 | 小山いと子 | 皇后さま | 
| E15 | 園田てる子 | 銀座の踊り子 | 
| E16 | 藤原審爾 | 泥だらけの純情 | 
| E17 | 川内康範 | 恋にいのちを | 
| E18 | 藤沢桓夫 | 大阪五人娘 | 
| E19 | 白川 渥 | 風来先生 | 
| E20 | 火野葦平 | 土と兵隊・麦と兵隊 | 
| E21 | 秋永芳郎 | 悪女時代 | 
| E22 | 立野信之 | 落陽 | 
| E23 | 今日出海 | チョップ先生 | 
| E24 | 中村八朗 | 遠いこだま | 
| E25 | 壷井 栄 | あしたの風 | 
| E26 | 佐藤鉄章 | 若い魂 | 
| E27 | 田辺聖子 | 女の食卓 | 
| E28 | 小松君郎 | いつでも君は | 
| E29 | 久米正雄 | 月よりの使者 | 
| E30 | 榛葉英治 | 赤い雪 | 
| E31 | 藤井重夫 | 虹 | 
| E32 | 富島健夫 | 七つの部屋 | 
| E33 | 山田克郎 | 海の廃園 | 
| E34 | 浅田晃彦 | 桂馬先生診療簿 | 
| E35 | 荻原秀夫 | ずぶとい青春 | 
| E36 | 小泉 譲 | 女生徒男生徒 | 
| E37 | 高村暢児 | 屈辱の太陽 | 
| E38 | 西村京太郎 | 太陽と砂 | 
| E39 | 柴田錬三郎 | チャンスは三度ある | 
| E40 | 真下五一 | 地上の星 新島襄伝 | 
| E41 | 石浜恒夫 | 遠い星 早川徳次伝 | 
| E42 | 小川忠悳 | 月を裂く快男児 | 
| E43 | 邦光史郎 | 欲望の媒体 | 
| E44 | 新橋遊吉 | 競馬狂い | 
| E45 | 一条 明 | ひねくれ星の詩 | 
| E46 | 豊田行二 | 小説・示談書 | 
| E47 | 太田俊夫 | 国税査察官使途不明金 | 
| E48 |  |  | 
| E49 |  |  | 
| E50 |  |  | 
| E51 | 城戸 禮 | かけだし三四郎 | 
| E52 | 若山三郎 | お嬢さんと腕力学生 | 
| E53 | 木屋 進 | 極道まっしぐら | 
 最後に、現代小説である。このジャンルは特に懸念点はなく、綺麗に埋まった――と思っていたのだけれど、とんでもない見落としがあり、最後の方が全く埋められていないことに今さら気付いた。とはいえ、太田と城戸の間に、現代小説の新刊を刊行した作家が見当たらない。これは、やはり“D:明朗小説”のジャンルが消滅した際に、そちらの作家をこちらに振り替えたとしか思えない。(城戸、若山の並びを考えれば、)源氏、佐々木、中野、笠原のうちの3人が48〜50を占める、という気はするのだが、これを調べるのは、至難の気がする。
 判明している中では、同じ現代小説というくくりでも、前半と後半とで若干顔ぶれが違っている気がするのが面白いところか。現在の感覚だと、壷井栄を現代小説というくくりに含める人は少ないかも知れない(今回吹っ飛ばした、F(文芸小説)に分類することはないだろうけれど)。
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