本資料は、新聞の縮刷版をもとに作成したリストである。それ以上の情報による確認はできておらず、当日の急な番組変更等によって放送中止になったものもあり得るかも知れない。
ただ、民放ラジオでの、ラジオドラマ・ミステリを語る際に欠かせないシリーズ群と考え、リスト化してみたものである。
ここに挙げる3シリーズは、昭和20年代に民放ラジオ局で放送された、犯人当てラジオドラマ番組である。恐らく、ラジオドラマファンには全く関心がないだろうシリーズだが、ミステリマニアにとっては、多少の興味を覚えるだろう内容ではないか、と考え、リスト化してみたものだ。
NHKラジオでは、既に昭和26年5月に『犯人は誰だ』が放送開始されており、犯人当てドラマという形式自体は決して珍しいものではなかった。ただ、後の放送日を見て分かるが、民放ラジオ局の放送開始と時期を合わせるように犯人当てドラマが企画され、放送されたのは興味深いことではないか、と考える。このことを指摘された文章を見たことがなかったので、敢えて、書いておく。
ただ、悲しいことに、いずれも短命で終わった。『犯人は誰だ』が比較的長く続いたことを考えると意外だが、どうやら、スポンサーが定着しなかったらしい。普通のミステリードラマは長寿になる傾向があったが、問題編を聞いて犯人を推理し、ハガキ等で解答する――という形式は、民放ラジオとは相性が良くなかったのかも知れない。今となっては、推測しかできないことではあるが……。
タイトル名や作家欄が空欄のものが多いが、これは詳細が不明のものである。
当時は、ラジオ放送局が増えて間もない時期で、新聞のラジオ欄のスペースが小さかった。このため、シリーズ名しか掲載されないことも多かったためである。さて、これ以上の情報を確認することは、出来るのだろうか……。
中部日本放送(一般に、CBCラジオ)で、昭和26年9月から翌年にかけて放送されたシリーズである。CBCは、同年9月1日に放送開始されており、放送開始の一週間後にスタートした番組であることが分かる。短命とはいえ半年以上続いたシリーズだが、これについては、犯人当て形式は最初の数回で終わり、途中からは普通のラジオドラマに変わった可能性もありそうだ。
更に、ご覧の通り、放送日や放送時間が一定していない。放送開始間もない時期で、番組編成が整理されていなかったためかと思われる。このため、番組の見落としもあるかも知れない。その点は、御諒解いただきたい。
作者は、名古屋在住の推理作家2名が交互に担当していた。いずれも戦前デビューしていた中堅で、戦後も名古屋の推理作家の中心を努めている。なお、若松の担当回は望月弁護士シリーズ、岡戸の担当回は稲妻半次シリーズであり、いずれも、小説でも使用していたキャラクターをそのまま利用したことになる。
放送年月日 | 放送タイトル | 作者 |
昭和26年9月10日 | 悪魔の影法師 | 若松秀雄 |
昭和26年9月17日 | 岡戸武平 | |
昭和26年9月24日 | 動いた死体 | 若松秀雄 |
昭和26年10月1日 | 死の千羽鶴 | 岡戸武平 |
昭和26年10月8日 | 暗い夜 | 若松秀雄 |
昭和26年10月15日 | カキの種ぎれ | 岡戸武平 |
昭和26年11月1日 | 幽霊犯人 | 若松秀雄 |
昭和26年11月8日 | 狸の恋 | 岡戸武平 |
昭和26年11月15日 | 裸体画の秘密 | 若松秀雄 |
昭和26年11月22日 | 岡戸武平 | |
昭和26年11月29日 | 惨劇を告げる電話 | 若松秀雄 |
昭和26年12月5日 | 死のまとい | 岡戸武平 |
昭和26年12月12日 | 謎の脅迫状 | 若松秀雄 |
昭和26年12月23日 | 岡戸武平 | |
昭和26年12月30日 | ダイヤののろい | 若松秀雄 |
昭和27年1月6日 | 吉原つなぎ | 岡戸武平 |
昭和27年1月13日 | 完全証拠 | 若松秀雄 |
昭和27年1月20日 | 雪だるま | 岡戸武平 |
昭和27年2月3日 | 古井戸の秘密 | 若松秀雄 |
昭和27年2月16日 | 鳩の死 | 岡戸武平 |
昭和27年2月23日 | 浴槽の恐怖 | 若松秀雄 |
昭和27年3月1日 | 岡戸武平 | |
昭和27年3月8日 | 脅迫者 | 若松秀雄 |
昭和27年3月15日 | 春の星 | 岡戸武平 |
昭和27年3月22日 | 殺人を買う男 | 若松秀雄 |
昭和27年3月29日 | 土蔵の中 | 岡戸武平 |
昭和27年4月6日 | チョコレート | 若松秀雄 |
昭和27年4月13日 | 天狗の恋 | 岡戸武平 |
昭和27年5月31日 | 夢の中の恋人 | 若松秀雄 |
中部日本放送で、昭和29年から約4ヶ月に渡って放送されたシリーズである。上記のシリーズが終った2年後、改めて仕切り直されて企画・放送されたシリーズで、オーソドックスな犯人当て形式のものらしい。
作者が不明な回が多く、判明している回はすべて、上記シリーズと同じく、若松の作品だった。とはいえ、すべてが若松作品とも考えにくいので、谿渓太郎や服部元正といったメンバーが執筆していた気もする。
なお、このシリーズは、CBCだけでなく、別な日にラジオ福井でも放送していた。福井地域では好評だったようで、CBCでの放送が終了した後も、2ヶ月余り、独自に番組を作成して放送を続けている。ただ、無名な作家によるものに変わってしまっており、ミステリ的な興味は全くなくなってしまうため、ここには挙げなかった。御諒解いただきたい。
放送年月日 | 放送タイトル | 作者 |
昭和29年4月2日 | 花をふまぬ足跡 | |
昭和29年4月9日 | 数を探す男 | |
昭和29年4月16日 | 港の女 | |
昭和29年4月23日 | 兄と妹 | |
昭和29年4月30日 | 四人の仲間 | |
昭和29年5月7日 | 逝く春 | 若松秀雄 |
昭和29年5月14日 | 恋愛戦術 | |
昭和29年5月21日 | 愛すればこそ、恋すればこそ | |
昭和29年5月28日 | 誕生日の贈物 | |
昭和29年6月4日 | 罪の後に | |
昭和29年6月11日 | 夜の往診 | 若松秀雄 |
昭和29年6月18日 | 祭りの後 | 若松秀雄 |
昭和29年6月25日 | たくらみ | |
昭和29年7月2日 | 小夜嵐 | |
昭和29年7月9日 | 密告 | 若松秀雄 |
昭和29年7月16日 | 梅雨の後 | 若松秀雄 |
昭和29年7月23日 | いさかい |
朝日放送(一般に、ABCラジオ)で、昭和26年11月から約3ヶ月間放送されたシリーズである。ABCは、同年11月11日に放送開始されており、CBCと同様、放送開始直後にスタートした番組であることが分かる。こちらは本当に短命に終わったシリーズと言えるだろう。
全12回ではあるが、大阪の放送局であったせいか、香住、島、という極めてメジャーな名前が並ぶ。作者不明な回も担当していた可能性があり、この中では、一番全貌を確認したかったシリーズだった。さて、夢は叶うのだろうか。
放送年月日 | 放送タイトル | 作者 |
昭和26年11月16日 | 幽霊は見た | 香住春吾 |
昭和26年11月23日 | 地下鉄三太 | 香住春吾 |
昭和26年11月30日 | 脱獄者 | 香住春吾 |
昭和26年12月7日 | 暗黒の殺人 | 香住春吾 |
昭和26年12月14日 | 暁の銃声 | 島 久平 |
昭和26年12月21日 | 撮影所の二十五時 | |
昭和26年12月28日 | のろいの家 | 香住春吾 |
昭和27年1月4日 | 地獄小僧 | 島本春雄 |
昭和27年1月11日 | 悪魔再び | 桂 三朗 |
昭和27年1月18日 | 魔弾の球場 | |
昭和27年1月25日 | 崖 | 三上 哲 |
昭和27年2月1日 | 夜光時計 |
戸田和光