本資料は、新聞の縮刷版をもとに作成したリストである。それ以上の情報による確認はできておらず、当日の急な番組変更等によって放送中止になったものもあり得るかも知れない。このため、特に放送日等は参考情報として考えた方が良いだろう。
ただ、民放ラジオでの、ラジオドラマ・ミステリを語る際に欠かせないシリーズとして、触れておきたかったものである。
「水曜日の秘密」は、MBSラジオ(現:毎日放送)、及び、ラジオ東京(現:TBSラジオ)で放送された、ラジオドラマのシリーズである。毎週水曜日の夜に放送されたため、このシリーズ名となっている。
まず、MBSラジオで放送開始された。同局は、昭和26年9月1日に放送を開始しているが、本番組の第1回は、9月5日であり、放送開始と同時に始まった番組であることが分かる。一方、翌27年4月2日からは、ラジオ東京でも放送開始された。同局の開始は前年末であり、期の再編を契機に、東京でも放送が開始されたことになる。
MBSラジオの放送終了は、昭和28年4月8日。その後も、約3ヶ月、ラジオ東京のみでの放送が続くが、こちらも7月1日に放送終了した。期間は約1年半で、決して長寿の番組ではない。
なお、両局で並行して放送している間は、原則として同日に放送されていたが、特別番組等で放送がなかった回もあった関係で、MBSラジオの方が1週間放送が早い回もある。また、MBSラジオでは放送されたが、ラジオ東京では放送されなかった回もあり(従って、本リストでは、この間はMBSラジオのみのリストとしている)、両局で放送されていたにしても、主に作成していたのはMBSラジオだったと考えるべきだろう。
原作のある回も半分程度あったが、残りの半分は、オリジナルの作品が多かった。これが、本シリーズをミステリ史として見た時の、最大の特徴だと私は考える。勿論、その多くは放送作家の手によるものだったが、中には、探偵作家のオリジナルと見られるものもあり、気になる作品がいくつもある。個人的には、丘美丈二郎作などという記述を見て、驚いてしまった。
また、香住春吾作品が多いのが目につく。香住が放送作家に転進するきっかけを作った番組、といえるのかも知れない。
なお、“原作”と表記したのは、原作となる小説が存在するものである。一方、“作”と表記したのは、ラジオドラマ・オリジナルと考えられるものである。ただ、新聞の記載を優先しているため、間違いがある可能性もある。この点を、予め頭に入れておいていただきたい。
放送開始年月日 | 放送終了年月日 | 放送タイトル | 作者 | 原作名 など | |
昭和26年9月5日 | 終電車 | 作 | 木々高太郎 | ||
昭和26年9月12日 | 昭和26年10月31日 | 十二の傷の物語 | 原作 | 木々高太郎 | |
昭和26年11月7日 | 猫と泥棒 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和26年11月14日 | 裏切者 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和26年11月21日 | 深夜の貨物列車 | 作 | 油十兵衛 | ||
昭和26年11月28日 | 雪の夜の客 | ||||
昭和26年12月5日 | 昭和26年12月19日 | ある新聞記者のメモ | 作 | 油十兵衛 | |
昭和26年12月26日 | 終電車 | 作 | 油十兵衛 | ||
昭和27年1月2日 | 第五の見方 | 作 | 木々高太郎 | ||
昭和27年1月9日 | 女の手 | 原作 | 高木彬光 | ||
昭和27年1月16日 | 切支丹詮議 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和27年1月23日 | 燈台 | 作 | 東条 明 | ||
昭和27年1月30日 | 松葉杖の男 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和27年2月6日 | 海賊と唖娘 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和27年2月13日 | 昭和27年2月20日 | 私は殺される | 原作 | 高木彬光 | |
昭和27年2月27日 | 白鷺城怪異 | 原作 | 行友李風 | ||
昭和27年3月5日 | 魔笛 | 原作 | 高木彬光 | ||
昭和27年3月12日 | 消えた花嫁 | 作 | 佐々木杜太郎 | ||
昭和27年3月19日 | 特急二十三時発 | 原作 | 島田一男 | ||
昭和27年3月26日 | 焼けた鍵 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和27年4月2日 | 死体を運んだ女 | 作 | 鴇田忠元 | *ラジオ東京 放送開始 | |
昭和27年4月9日 | 私刑 | 作 | 香住春吾 | ||
昭和27年4月16日 | 狂ってますよ貴方の時計は | 作 | 茂木草介 | ||
昭和27年4月23日 | 夜霧 | 作 | 山田一夫 | ||
昭和27年4月30日 | 昭和27年5月7日 | 地熱の恐怖 | |||
昭和27年5月14日 | 石の棺桶 | 作 | 郷田 惠 | ||
昭和27年5月21日 | 昭和27年5月28日 | 私は見た | 作 | 香住春吾 | |
昭和27年6月4日 | 濁流 | 作 | 鴇田忠元 | ||
昭和27年6月11日 | 雷雨 | 作 | 小田和生 | ||
昭和27年6月18日 | わが名は風太郎 | 作 | 古川良範 | ||
昭和27年6月25日 | 青い影 | 作 | 小田和生 | ||
昭和27年7月2日 | 霧の中 | *ラジオ東京 では放送されていない | |||
昭和27年7月9日 | 昭和27年7月16日 | 旅芝居 | 作 | 郷田 惠 | |
昭和27年7月23日 | 源五郎池 | 作 | 小田和生 | ||
昭和27年7月30日 | おつな懺悔 | 作 | 城 昌幸 | ||
昭和27年8月6日 | 昭和27年8月13日 | 原子爆弾 | 作 | 鴇田忠元 | |
昭和27年8月20日 | 夢の便り | 作 | 竹田邦雄 | ||
昭和27年8月27日 | 白鷺の更衣 | 作 | 山村正夫 | ||
昭和27年9月3日 | 昭和27年9月24日 | 怪人対巨人 | 原作 | モーリス・ルブラン | |
昭和27年10月1日 | 昭和27年10月29日 | 二つ靨の女 | 原作 | モーリス・ルブラン | |
昭和27年11月5日 | 死神の宝石 | 作 | 小田和生 | ||
昭和27年11月12日 | 昭和27年11月19日 | 獄門帳 | 原作 | 沙羅双樹 | |
昭和27年11月26日 | 昭和27年12月3日 | 猫と良人 | 原作 | 角田喜久雄 | |
昭和27年12月10日 | 波の涯 | 作 | 佐藤 勉 | ||
昭和27年12月17日 | 闇 | 作 | 小山いと子 | ||
昭和27年12月24日 | クリスマス殺人事件 | *ラジオ東京 では放送されていない | |||
昭和28年1月7日 | お年貢金五百両 | 原作 | 城 昌幸 | ||
昭和28年1月14日 | 昭和28年1月21日 | 鈴木主水 | 原作 | 久生十蘭 | |
昭和28年1月28日 | 斑猫 | 作 | 鴇田忠元 | ||
昭和28年2月4日 | 鬼少尉 | 作 | 城 英輔 | ||
昭和28年2月11日 | 幻の馬車 | 作 | 丘美丈二郎 | ||
昭和28年2月18日 | 復讐 | 作 | 角田喜久雄 | ||
昭和28年2月25日 | 記憶の乱れ | 作 | 大森 実 | ||
昭和28年3月4日 | 猪の牙 | 作 | 東条 明 | ||
昭和28年3月11日 | スパイの死 | 作 | 鴇田忠元 | ||
昭和28年3月18日 | 昭和28年4月1日 | 地獄の鼓 | 作 | 郷田 惠 | |
昭和28年4月8日 | えてもの | 原作 | 岡本綺堂 | *ラジオ東京でのタイトルは、木曽の旅人 |
放送開始年月日 | 放送終了年月日 | 放送タイトル | 作者 | ||
昭和28年4月15日 | 黒猫 | 原作 | E・A・ポー | ||
昭和28年6月17日 | 水死人の歌 | 作 | 郷田 惠 | ||
昭和28年6月24日 | 血の指紋 | 作 | 渡辺啓助 | ||
昭和28年7月1日 | バラの間の惨劇 |
作家欄が空欄のものは、作者(原作者)が特定できなかったもの。
なお、ラジオ東京リスト中、「黒猫」と「水死人の歌」の間には、「十二の傷の物語」が放送されているが、重複のために省いた。
戸田和光