戸田和光 編
昭和30年代デビュー作家の作品リスト。今回は、新章文子である。光文社文庫から久しぶりの単著が出る――というタイミングに合わせて、作成してみた。
敢えて、この作家を手掛けてみたのは、この頃にデビューした作家の別なパターンの代表例にあたるのではないか――という思いがあったためだ。新人賞(新章の場合は、特に江戸川乱歩賞という名門である)を受賞して華々しくデビューし、特に短編については、当時から昭和が終わるまで断続的ではあっても相当数を発表しているのに、著書には恵まれず、殆どの作品が本にまとまっていない――というケースの典型的な例ではないか、と思ったのである。少なくとも、こんなに作品を書いていたのか――と感じる人は、案外と多いのではなかろうか。
誤記や誤り等のお粗末なミスがありましたら、ご指摘ください。
作品名 | 収録誌紙 | 掲載年月 | 連載終了年月 | 収録短編集 | 備考 |
併殺 | 宝石 | 1959年11月 | こわい女/名も知らぬ夫 | ||
ある老婆の死 | 増刊宝石 | 1959年12月 | こわい女/名も知らぬ夫 | ||
かくれんぼ | 別冊週刊サンケイ | 1960年2月 | |||
掌編・春夏秋冬 | 宝石 | 1960年4月 | こわい女 | ||
こわい女 | 小説新潮 | 1960年5月 | こわい女/『沈黙の家』 | ||
銹びた恋 | 別冊クイーンマガジン | 1960年5月 | こわい女 | ||
死にたがる女 | 中日新聞 | 1960年5月29日 | |||
そしてみんないなくなった | 講談倶楽部 | 1960年7月 | |||
永すぎた雨期 | 別冊小説新潮 | 1960年7月 | こわい女 | ||
殺すひと殺されるひと | 宝石 | 1960年8月 | |||
ある殺人 | 別冊小説新潮 | 1961年1月 | こわい女 | ||
奥さまに毒薬を | ヒッチコックマガジン | 1961年1月 | |||
悪い峠 | 宝石 | 1961年2月 | 名も知らぬ夫 | ||
愛の渦潮 | 講談倶楽部 | 1961年3月 | |||
奥さまは今日も | 宝石 | 1961年4月 | 名も知らぬ夫 | ||
不吉な恋人 | みわく | 1961年6月 | |||
いのちをかけた女 | 別冊週刊漫画 | 1961年7月20日 | |||
殺意の影 | 宝石 | 1961年9月 | 狂った海 | ||
効果ある殺人 | 別冊小説新潮 | 1961年10月 | |||
復讐 | 別冊週刊漫画 | 1961年10月19日 | |||
八幡製鉄と花輪と女 | 週刊新潮 | 1961年11月6日 | |||
名も知らぬ夫 | 宝石 | 1961年12月 | 名も知らぬ夫 | ||
あざの華 | 別冊小説新潮 | 1962年1月 | |||
嫉ける | 週刊現代 | 1962年1月1日 | 1962年4月29日 | 嫉ける(長編) | |
名馬 | 日本経済新聞 | 1962年1月1日 | 轟夕起子との合作 | ||
気味の悪い客 | 別冊週刊漫画 | 1962年2月1日 | |||
ある女たらしと四人の女 | 推理ストーリー | 1962年3月 | |||
それは他殺だった | 漫画読本 | 1962年4月 | |||
家のない女 | 別冊小説新潮 | 1962年4月 | |||
乱れた絵具 | スリラー街 | 1962年4月19日 | 狂った海 | ||
雨の日の敬子 | 講談倶楽部 | 1962年6月 | |||
恋の終り | 小説新潮 | 1962年7月 | |||
奥さまと推理小説 | エロチックミステリー | 1962年8月 | パリの罠 | ||
三人目の女 | 別冊週刊漫画 | 1962年8月21日 | |||
セールスマンと奥様 | 宝石 | 1962年8月 | |||
ある笑い | 文芸朝日 | 1962年10月 | |||
醜い才女 | 別冊週刊漫画 | 1962年10月16日 | |||
少女と血 | 宝石 | 1962年11月 | 名も知らぬ夫 | ||
哀れな女 | 別冊週刊漫画 | 1963年2月5日 | |||
冬の女 | 週刊新潮 | 1963年2月11日 | |||
屈辱の手 | 別冊小説新潮 | 1963年4月 | |||
年下の亭主 | 宝石 | 1963年4月 | 名も知らぬ夫 | ||
五月の恋 | 週刊女性 | 1963年5月8日 | |||
殺人手帳 | 週刊現代 | 1963年5月9日 | 1963年6月6日 | 狂った海 | |
時ちがい | 家の光 | 1963年6月 | |||
白猫マシロ | 宝石 | 1963年7月 | |||
幻の少年 | マドモアゼル | 1963年8月 | |||
死神と親しい女 | 首都高速 | 1963年8月 | |||
五円の剃刀 | 宝石 | 1963年9月 | パリの罠 | ||
九月の恋 | 週刊女性 | 1963年9月18日 | |||
狂った海 | 別冊小説新潮 | 1963年10月 | 狂った海 | ||
あるキー・パンチャーの死 | 小説現代 | 1963年11月 | |||
ビルの谷間に消えた恋 | ヤングレディ | 1963年11月4日 | |||
眠りの時 | 別冊小説新潮 | 1964年1月 | パリの罠 | ||
ある女と男 | 別冊宝石 | 1964年2月 | |||
遺失物 | 小説現代 | 1964年4月 | |||
不安の庭 | 小説新潮 | 1964年4月 | 名も知らぬ夫 | ||
令嬢 津軽華子 | マドモアゼル | 1964年4月 | |||
若い季節 | 週刊女性 | 1964年4月1日 | |||
実らない恋 | 週刊女性 | 1964年4月8日 | |||
春の突風 | 週刊女性 | 1964年4月15日 | |||
愛のまわり道 | 週刊女性 | 1964年4月22日 | |||
ある愛のかたち | 週刊女性 | 1964年4月29日 | |||
魅惑の部屋 | 別冊小説新潮 | 1964年7月 | |||
倦怠期挽回 | PL青年 | 1964年7月 | |||
みだらな貞女 | 新刊ニュース | 1964年7月15日 | |||
二つの死 | 東海テレビ | 1964年8月 | |||
九月の女 | 月星マンスリー | 1964年9月 | |||
稚い欲情 | 週刊現代 | 1964年9月3日 | |||
女 | 漫画文芸 | 1964年12月 | |||
或る死まで | 別冊小説新潮 | 1965年1月 | |||
ある女と男 | 小説倶楽部増刊 | 1965年2月 | |||
遅すぎた愛 | 週刊女性 | 1965年2月3日 | |||
赤信号 | 小説現代 | 1965年3月 | |||
青い恋の遺書 | 女性自身 | 1965年3月8日 | |||
愛して!恋して! | 漫画読本 | 1965年5月 | |||
明日には明日の | 別冊小説新潮 | 1965年7月 | パリの罠 | ||
ルーム・フレンド | 新刊ニュース | 1965年7月1日 | |||
顔のない訪問者 | 小説現代 | 1965年8月 | |||
影の記録 | 別冊小説新潮 | 1965年9月 | |||
眼には眼を | 小説新潮 | 1965年12月 | |||
マルが啼く | 小説新潮 | 1966年6月 | |||
針と棘 | 別冊小説新潮 | 1966年10月 | |||
企む | 小説新潮 | 1966年12月 | |||
落ちていた手紙 | 別冊宝石 | 1967年1月 | パリの罠/『沈黙の家』 | ||
憤りのあと | 女性自身 | 1967年1月23日 | |||
黒いベールの女 | 女性セブン | 1967年3月22日 | |||
女の虹 | 小説新潮 | 1967年4月 | |||
混血のマリ | 小説現代 | 1967年4月 | |||
優雅な獣たち | 別冊宝石 | 1967年6月 | |||
夜それぞれ | 別冊小説新潮 | 1967年6月 | |||
梅雨の女 | 推理界 | 1967年8月 | |||
女、その恋 | 小説宝石 | 1967年9月 | |||
山荘の愛 | 女性自身 | 1967年9月11日 | |||
孤独なエレベーター | 小説現代 | 1967年10月 | |||
幻の娘 | 新婦人 | 1967年10月 | |||
夜間飛行 | 小説新潮 | 1967年11月 | |||
盗作の周辺 | 小説現代 | 1968年1月 | パリの罠/『沈黙の家』 | 初出題:盗作の問題 | |
トルコ石の女 | 小説宝石 | 1968年1月 | |||
殺意と殺意 | 推理界 | 1968年2月 | |||
あなたの恋がほしいの | 小説新潮 | 1968年3月 | |||
狂った夜 | 小説新潮 | 1968年4月 | |||
揺れる女 | 勝利 | 1968年4月 | |||
罪の季節 | 女性自身 | 1968年6月10日 | |||
夢見る女 | 別冊小説新潮 | 1968年7月 | |||
黒い死の匂い | 小説現代 | 1968年8月 | |||
受胎志願 | 小説宝石 | 1968年9月 | |||
毀れたサングラス | 小説現代 | 1968年10月 | |||
黒子のあるヌード | 小説新潮 | 1968年10月 | |||
恵まれた赤ん坊 | 推理界 | 1968年10月 | |||
女の四季 | 小説新潮 | 1968年12月 | |||
華やかな週末 | 小説エース | 1968年12月 | |||
アリサの手記 | 別冊小説現代 | 1969年1月 | |||
尾長鶏 | 別冊小説新潮 | 1969年1月 | |||
世にも哀れな…… | 推理界 | 1969年1月 | |||
密通 | 小説セブン | 1969年2月 | |||
いっそ死にたい | 週刊サンケイ | 1969年2月3日 | |||
ふたたびの恋 | 小説女性 | 1969年2月 | |||
夜に落ちる | 小説宝石 | 1969年3月 | |||
不意の奈落 | 小説新潮 | 1969年3月 | |||
苦い乱舞 | オール読物 | 1969年4月 | |||
受胎のとき | 別冊小説新潮 | 1969年7月 | |||
二十歳の遺書 | 小説エース | 1969年7月 | |||
不在証明 | 女性自身 | 1969年8月16日 | |||
いいじゃないの | 小説宝石 | 1970年2月 | |||
蚕 | 小説新潮 | 1970年4月 | |||
重い闇の中に | 小説現代 | 1970年4月 | |||
とぎれた声 | 小説サンデー毎日 | 1970年4月 | パリの罠 | ||
残酷な鎮魂歌 | 小説セブン | 1970年5月 | |||
ふくしゅう | 別冊小説新潮 | 1970年7月 | |||
ある不能 | 小説宝石 | 1970年9月 | |||
疑惑 | 小説サンデー毎日 | 1970年10月 | パリの罠 | ||
パリの罠 | 小説現代 | 1971年1月 | パリの罠 | ||
こてんぱん | 小説宝石 | 1971年1月 | |||
喪失の午後 | 別冊小説新潮 | 1971年1月 | |||
牝と牝との間で | 別冊小説宝石 | 1971年2月 | |||
共有亭主 | 小説宝石 | 1971年3月 | |||
嫦娥仮装 | 小説サンデー毎日 | 1973年5月 | |||
梅の咲く家 | 小説新潮 | 1973年10月 | |||
おそえ!エリッヒ! | 小説新潮 | 1973年12月 | |||
沈丁花 | 小説宝石 | 1974年5月 | |||
ある訣別 | 週刊小説 | 1974年5月3日 | |||
お母さま、いっちゃいや! | 別冊小説新潮 | 1974年7月 | |||
ベランダ | 小説新潮 | 1974年10月 | |||
したたかな夫婦たち | 小説新潮 | 1975年10月 | |||
破滅 | 別冊小説新潮 | 1975年10月 | |||
乱反射 | 別冊小説新潮 | 1976年1月 | |||
ブランコ | 小説新潮 | 1976年4月 | |||
相殺 | 小説現代 | 1977年10月 | |||
終局 | 小説新潮 | 1978年1月 | |||
こうもり傘の女 | 別冊小説新潮 | 1978年7月 | |||
烟との対話 | 別冊婦人公論 | 1980年7月 | |||
残夢のあと | 小説新潮 | 1983年6月 | |||
あなたの息子 | 小説現代 | 1983年7月 | |||
密かな裏切り | 小説宝石 | 1983年8月 | |||
うたかた抄 | 増刊小説新潮 | 1987年7月 | |||
二つの季節 | 小説宝石 | 1987年8月 | |||
独りうた | 小説宝石 | 1989年10月 | |||
夕立が去ったあと | 中学一年コース増刊 | 1960年8月 | |||
文字のない遺書 | 中学一年コース | 1961年4月 | 1961年9月 | ||
ひとりの思い ひとりの悔い | 女学生の友 | 1961年7月 | |||
どこにいるのママ | りぼん | 1963年1月 | 1963年8月 | ||
入江は遠く | 小説ジュニア | 1966年9月 | |||
きのう会ったばかりなのに | ジュニア文芸 | 1966年9月 | |||
前髪と少年 | 女学生の友 | 1966年10月 | |||
すてきなクロちゃん | ジュニア文芸 | 1966年11月 | |||
影と光の谷間 | ジュニア文芸 | 1967年2月 | |||
犬を抱いた少女 | ジュニア文芸 | 1967年8月 | |||
暗い夏のおわりに | 小説ジュニア | 1967年9月 | |||
雪の降る町で | fair lady | 1968年2月 |
収録短編集の欄の『沈黙の家』は、光文社文庫版の同書(表題作は長編)に併載されていることを示す。短編集ではないので、表記を変えているものであり、ご注意いただきたい。
下部は、ジュヴナイル(中高生以下の読者向けの作品)である。乱歩賞を受賞する前に童話を執筆していた(仁木悦子と同様、本名での著書もある)、という事情もあったのか、こちらの作品も多い。中には、明らかにミステリーではないものも含めれているが、それらははずしていない。
ご覧の通り、一般向けの作品だけで150編を超える。1980年代に入っても、僅かではあるが作品を発表しており、最後の作品は平成に入ってからのものだ。
当時の常として、雑誌も様々である。恐らく、私の知らない媒体もあっただろうから、これ以外にも作品があるだろう。そうはいっても、調べられた範囲だけでもこれだけの作品を執筆してきたが、ミステリーの著書は、(生前のうちは)10冊しかない。うち、長編が7冊で(うち、書き下ろしの6冊は、上のリストには入れなかった。ここにタイトルだけを列記すると、『危険な関係』、『バック・ミラー』、『朝はもう来ない』、『青子の周囲』、『沈黙の家』、『女の顔』――となる)、短編集はわずか3冊しかない。そのせいかどうか、今回久しぶりに刊行された『名も知らぬ夫』も、“昭和ミステリールネサンス”というシリーズでありながら、単行本未収録の作品の方が多いのだ……。
当時、著書には恵まれなかった新章だが、それがただ面白くなかったから、かどうかは分からない。むしろ、最近流行りの“イヤ・ミス”のある種の先駆として、むしろ現在の方が好んで読まれる可能性も感じたりする。まあ、この辺りは、実際に読んだ人が判断するのだろうが――。
とりあえず、もし新章作品を面白いと思った人がいたら、まだまだ沢山読めますよ――というのを、ここでのまとめとしておきたい。
とりあえず、上げるだけあげますが、随時直して行きます。
こんなリストでも、多少は何らかの参考になると信じて……。
戸田和光