《別冊小説〇〇》を整理してみる

 《別冊小説現代》について、先日整理してみたが、そのタイミングで私が初めて知った「別冊≠ナない別冊=vは、実は他の小説雑誌にもあったことがすぐ確認できた。――つまり、この形態は、極めて普通だったようだ。単に、私が無知だっただけだが、せっかくだから、同じ例について、紹介しておく。


 該当するのは、《別冊小説新潮》である。
 《小説新潮》は、もともと昭和22年9月に創刊された。新潮社には、もともと《新潮》という純文学雑誌があったから、それとは別なジャンルの小説の発表の場として刊行されたものだろうが、当初は推理小説は余り載っていなかった気がする。従って、私は余り気にしていなかったのだろう。……
 《別冊小説新潮》は、昭和24年4月に創刊されている。当初は不定期刊行だったが、昭和29年から季刊(年4冊)となる。ただ、約10年間は、別冊≠ニ云いながら、巻号は本誌と共有されていた。つまり、「増刊」に近かったと考えられる。それとも、当時は別冊≠ニ増刊≠ニを、余り区別する習慣がなかったのだろうか――。(私が《宝石》・《別冊宝石》・《増刊宝石》という雑誌名に毒されているために、認識がおかしくなっている可能性は否定できないが)
 昭和35年10月になって、本紙から分離され、《別冊小説新潮》を正式名称とする雑誌が誕生する。その後、昭和55年まで刊行された後、一旦《小説新潮スペシャル》に改題するも、昭和57年に休刊となった。
 その後、間をあいて、《小説新潮》の別冊として、平成19年に《YomYom》が創刊される。こちらは、平成29年5月に電子雑誌に移行したが、同名の雑誌は、今も続いている。
 また、平成20年から22年にかけて各年5月に刊行された《Story Seller》も、《小説新潮》の別冊と考えても良いかも知れない(こちらはむしろ、増刊≠ノ当たる気もするが)。

 なお、この間(昭和60年から平成19年まで)には、《小説新潮》の増刊号が不定期に発行されている。7冊に渡って刊行された《Mother Nature》など、小説とは全く関係ない企画も多いのだが、それを除いても、多い年には年に3冊出たこともあったようだ。
 「灰谷健次郎まるごと一冊」など、小説とは云い難い企画も多いが、書誌マニア的に避けられないのが、書き下ろし小説が並んだ「ミステリー大全集」などの「大全集」と銘打たれたものだろうか。これらこそ、別冊≠フ刊行が続いていたら、そちらで出ていた企画だった気がする。


 本題はこれで終わりだが、ついでに、他の中間小説誌についても、別冊℃柾を確認しておく。

 まずは、《オール読物》。
 《オール読物》には「別冊」と名乗った媒体はなさそうだが、それに代わるものがある。《別冊文藝春秋》だ。単純に読めば、《文藝春秋》の別冊≠ネのだが、内容だけ見れば、間違いなく《オール読物》の別冊≠ニして良いだろう。……戦後間もない昭和21年12月に創刊され、ほぼ季刊ペース(年4冊ずつ)の刊行が続いた。その後、平成14年から隔月刊に変わり、平成27年6月には電子雑誌に移行したが、同名の雑誌は、今も発行が続いている。王道中の王道とも云える別冊≠セろう。
 《オール読物》では、このほかに、増刊号は時折発行されている。不定期の刊行で、多い年で年に3冊出たこともあったようだ。何らかの企画があったときに、発行されたと思われる。
 ただ、「鬼平犯科帳の世界」や「昭和のエンタテイメント50選」といったものが多く、新作小説が掲載されたものは殆どなかったような気がする。このため、書誌マニアには余り関係がない――とも思っているが、見落としている可能性はもちろんあるだろう。

 次いで、《小説宝石》。
 この雑誌は、創刊されてから定着するまでの雑誌名称が極めて分かりにくく、それだけを見ていると、混乱してしまう。とりあえず、本筋の前に、そちらを整理しておこう。
 推理小説専門紙だった旧《宝石》が休刊となり、昭和40年に、タイトルだけ引き継いだ総合誌《宝石》が光文社から刊行されたあと、翌41年8月に《別冊宝石》というタイトルで、小説雑誌も創刊される(つまり、この時点では、総合誌《宝石》の別冊≠セった。従って、今回の考察にも関係しない)。不定期刊行されていたこの雑誌は、42年8月に《別冊小説宝石》と改題されるが、同じ年の11月には更に《小説宝石(宝石別冊)》という題名に変わる。このように短期での改題を繰返した末、最終的に翌43年11月に《小説宝石》となった。つまり、この間に別冊≠ニ銘打たれた雑誌が2種類発行されているけれど、いずれも実質的には《小説宝石》本誌にあたる――と考えるべきだろう。
 実際の別冊である《別冊小説宝石》は、昭和46年2月に刊行される。毎年4回の刊行を目指していたと思われるが、実質的には不定期刊行だったようだ。これが、昭和51年に《かっぱまがじん》と改題の上、再創刊された(隔月刊)。ただ、翌52年には、すぐ《別冊小説宝石》に戻り、年3回程度の不定期刊行が定着した。その後、平成11年に休刊となる。――面白いのは、《かっぱまがじん》の6冊は、《別冊小説宝石》の巻号にカウントされていないが、この前後の《別冊小説宝石》については、巻号が連続していることだろうか。つまり、《別冊小説宝石》の巻号だけ見れば、途中約1年間の休刊期間があるように見えるが、この間は、別タイトルの雑誌がその役目を果たしていたのである。
 《小説宝石》でも、何冊か増刊号が刊行されたようだが、数が少ない上に、小説とは無縁なものの方が多かったようだ。
 むしろ、宝石ザミステリー≠竍Jミステリー≠ェ別冊=i増刊)に近い内容に思われるのだが、これらはいずれも図書扱いでの刊行になっている。雑誌編集部が作成したものを、書籍として刊行しているようだ。刊行頻度を上げる予定がないのであれば、この方式の方がラクなのかも知れない。今後増えてゆく可能性はあるのだろうか。

 最後に、《問題小説》。
 《別冊問題小説》は、昭和50年4月に創刊され、季刊ペースで昭和52年7月まで刊行されるが、休刊となる。昭和55年夏には、「問題小説special」というサブタイトルのもとに、《瑠伯》が季刊として創刊されるが、これも翌年には休刊となった。内容的には、長編一挙掲載などもあって、きちんとした別冊≠セった気もするが、他のものよりも印象が薄いのは何故だろうか……。
 他に、本紙の増刊もいくつかあるようだが、例えば「赤川次郎読本」が問題小説SPECIAL ルパン≠ニして刊行されている(従って、これは《問題小説》の増刊ではない)など、発行形態や巻号の扱いは一定していないように思われる。まともに調べると、思わぬ見落しがある可能性もあるが、このようなものを確実に調べる方法を認識していないため、これ以上の確認はなかなか厳しいかも知れない。


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戸田和光