製作年度:2010年 スペイン・メキシコ合作映画 配給:ファントム・フィルム
出演:ハビエル・バルデム マリセル・アルバレス 監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
2011年7月 映画館にて鑑賞
バベル以来久々にイニャリトゥ作品を観た。嫌いな人には全く退屈な映画なのだろうが自分としては、「バベル」も「21グラム」も「アモーレスペロス」もわりと好き。毎回奥深くて考えてしまう。いつものようにストーリーが群像劇でそれぞれの登場人物の心の浮き沈みを巧みに表現してきたのと違い今回は末期癌の男一人に焦点を当てた映画となっている。ただ結局は脇役に中国人違法業者とかシングルマザーとか出てきて群像っぽくなってしまうのだが、主人公はあくまでもハビエル・バルデム。主役を一人にしたことにより今まで以上に濃くて重たい2時間半。1人に減ったのに時間は2時間超えと前半は眠くなりがちだがここを踏ん張れば、後半話が動き出してからは目が離せない。ストーリーが暗いとか以前に生活環境がすでにもうなんか過酷。なんだかよく分からない食事。アシッドな街並み。舞台どこ?南アフリカとかメキシコか?と思っていたらスペインでしかもサグラダファミリアが見える距離での出来事ときたから驚き。外交官がやってきて「Time To Say Good Bye」歌いながら観光地を荒らす映画とは別世界のよう。でも舞台は同じ。素朴な生活の田舎町だけどもみんな陽気というイメージはなく、こうもラテンの活気を体感できないスペイン舞台の映画も珍しい。ハビエル・バルデムは「ノーカントリー」で観た時は演技派というよりは、ウィレム・デフォーやスティーブ・ブシェーミといったどちらかというと怪優のジャンルに入ると思っていたがしっかりとヒューマンな路線もこなせる。次はラブコメとか観たい?役柄自体は子供達に「Beautiful」の綴りも満足に教えてあげられないダメっぷりであるが、なんとか命尽きるまでに何かをしてあげたいと奮闘する姿は感動できる。おむつ姿には泣く。最後の方はスピリチュアルな感じになっていて不思議な余韻が残る。