夏鍋

 

1DKで二・二で夏鍋

くつろぎ感優先の部屋キャンプ

ポスト実家的居場所キープ感も満喫

甘美な真似事、擬似家族


風鈴も煮えそうな業火の責め苦に

パパ役(部屋主)エコ強調で一家激励

ママ役“ain't my bitch”有機野菜投入で援射

兄役(たぶんオレ)パピコ食べたい

妹役は一番年上


都市の末端に建つマンション

 そこは途上でありながら世界の終わり

 コンクリート外壁に沿って

 305号室がどろり溶けていく


声をあわせて「いただきます」

キラキラ汗まみれ夢中になって

ちょっと団欒、ちょっと戦争

記念写真撮りまくり「後で送るね」

……それっていつなの?


翌朝、パパは独りで後片付け

ママの口紅ついた吸殻かなしや

妹は知っている「来年は誰もいないよ」

夏鍋はもう一生できない。