軽歌劇
軽歌劇
まぶたのうえで
めぐるいろめき
変わっていく街を映すように
踊らなくてもまわっている
黙っていても弾んでいる
このきららかな大円盤で
揺籃のなかの赤子も
葡萄を踏む女たちも
睡魔に傾く雪眉の手杖さえ
遠いリズムに応えている
風がとおりすぎて
花の雨を噛むときは
大切な手を握りたくなる
より高く跳べそうと想うから
軽やかに浮くハート型を追いかけて
星の影がのびて
夜がうすまるときには
微熱で溶かす、まるいまるいたましい
バターボールの甘みに似た気分を
大事に包んだ
これを、いつか食べさせたいと願う、
声にならない歌声
高らかに響く
ほの暗い、
ひとりぼっちの舞台から。