土地

 

空と土地がある

荒れた土くれと錆びた鉄屑、

瓦礫が風に耐えている


影の大部分を失って

陽光があふれかえる

容赦ない時間が過ぎていく


この土地は眠り続けている

満天の星に何度も撫でられて

深い深い夢を見ている


雨も雪も静かに受けとめ

その跡はやがて消えて

何事もなかったって顔をする


季節を知らせる草木はない

地肌はいつも同じ色

滅びた町に小さな区画があることを

守り続けるように


そう、この土地には名前がある

名前の主は死んでしまった

遠くの海でたゆたう登記簿の

日本語の美しきこと


ただいま、と一声かけて

踏みしめてみる

しびれるような一歩から、

奇跡が創造されるのだ。