ころびね
ころびね
昼下がりの
小上がりは
薄い陽が浮き
濃い影が沈む
四畳半の中央の
円卓の中心に
三角紋の丸皿
盛られた五色豆が
別の星のようにある
床の暗がりでひらいた
童話の挿し絵の樫の木に
息をひそめて隠れている
ただ寝ているだけにみえて
洗濯物の山が
書架の前にそばだつ
台所は終わった
流し台にかけられた
布巾の白色がはにかんで眩い
磨りガラスがガタガタゆれた
遠い玄関の戸の隙間から
ぬるい風がしのんでいる
睡郷の森の中まで。