居てる
居てる
転がる木の実を
堅いパンで打ちかえす
坂下の小児科前
高台の鉄塔から
赤い陽がこぼれる
地面がざらつく
砂と血の味
長い影が旧道へ伸びて
雑木林の闇を深くする
待つでも休むでもなく
冷気に浸って、居てる
遠い峠のカーブでは
延々と工事車両の切り返し
サイドミラーがきらめく
狙撃手が潜むように
つむじ風が舗装路をすべりいく
灯りのない家並が軋み鳴いている
カット&パーマの店で
しめやかに廻るサインポール
町を覆う送電線が力なく揺れている
君が居てても居なくても
もう少しここに、居てる
何の思い出もない地に浸って、居てる。