ある夜から

 

激しさの夜を覚えているかい?

立ち止まる君はうすい雨に濡れていた

月が照らしてた

灰色の月がそっと


流れゆく雲は魚の群れのよう

風の音は映写機のようにまわり続けて

吐く息は花のように咲いていた


立ち止まる君は突然泣き始めて

この動く夜を止めたんだ

全てをただの闇に

ただの黒い色に


君の見つけてもらいたい小さな心が

このまま恒星のように夜ににじんで

いつか、誰にも知られず消えていくことが

悲しかったんだね


「無理なら願望を聞いていて」

立ち止まる君は唄うようにそう言って

笑いながら僕の手を握った

歩き出す二人は夜のように深く、より深まっていく。