絵日記

 

あったかくて親密な壁との対話に

身体の内部が地震になるほど

たましいがふるえすぎて沈んでいたんだ

そろそろ何か、雌豹なムードを求めたくて

つっかけ履きで捨鉢気分で

買い出しっぽく突然外へ抜け出すのさ


失礼します、そんな卑しい気持ちを込めて

世界をつなぐこの果てしない交通に参加したんだ

衛星カメラに探知されない荒れた路地を

わがもの顔やわけしり顔で練り歩いていく

七色のハイウェイを女の子の手作りバスで

強引に突き抜けていく夢想を抱きながら


瓦礫から予兆に満ちた蜥蜴が顔を出し

上空に憂鬱な雲が厳かに集いはじめる

空地では千切れたリボンの斜眼の少女が

菌の繁殖した冷蔵庫に見とれている

恐竜展の終わる日をなぜか覚えているように

記憶の片隅にそのあどけない表情が残り続ける


冷ややかな雨が弱った身体に降り注ぎ

狂った生命の愛しさに半身痺れているんだ

祈りに似た熱っぽい感情で、自分自身泡立ちながら

地面を覆う粒子の輝きと反発を踏みしめていく

足元のタブロオに身体中の色をだらだらと垂らして

ちっぽけで汚れた絵日記を夢中に描き続けるのさ。