コンサートレポート

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2006年 1月〜6月


 

No.021

木下尊惇/菱本幸二/クラウディア・ゴサルベス・コンサート

06/06/14 中目黒「楽屋」

   

一年ぶりに、パーカッションの渡辺亮さんとの、ジョイント・コンサートを楽しみにしていた。ところが・・・亮さんが体調を崩して入院、急性肺炎だとのこと。菱本ご夫妻にお願いして、急遽トリオでの演奏となった。

日頃のレパートリーに加え、ムユムユ・ギターを初めて弾いた。ムユムユ・ギターは、カブールの考案した楽器で、ギターの両面に弦が張ってある。二本のギターが、背中合わせにくっついているようなもの。片側が6弦のナイロン、もう一方はスチールの12弦で、必要に応じて楽器を「回しながら」演奏する。見た目には、かなり面白い(chistoso)。どう考えても、冗談としか思えないこの楽器を、まさか自分が演奏することになるとは・・・。


今秋のツアーがかなり具体化したころ、カブールからのメールが届いた。「お前はコンサートで、普通のギターを弾くか?それとも、ムユムユ・ギターを弾いてみるか?」「とりあえず、ムユムユ・ギターも練習しておくから・・・」と、返事をしたものの、楽器がない。注文したりしているうちに、5月のボリビア行きが決まり、直接受け取ったのが、帰国の数日前のこと。


ムユムユ・ギターの練習は、手品の練習をするような面白さがある。一瞬にして楽器を回して、何事もなかったかのように弾き始めなければならない。曲の途中で、なんどもくるくるクルクル・・・その名の通り「めまいがする」楽器である。


「初めてムユムユ・ギターを目にする人は、必ず我が目を疑う。事情がのみ込めるまで、しばらく時間がかかる。そして間違いなく笑い出す。そして演奏が始まれば、その目と耳は、演奏者に釘付けさ・・・。」カブールの言うとおりの反応に、内心ちょっと嬉しいのである。


06/08/23


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No.020

ロス・クアトロペスカドーレス・コンサート

06/06/06 足利「市民文化会館」

ここ数年、足利の「ロス・クアトロ・ペスカドーレス」のコンサートにお伺いしている。ゲストで出演する、私の最年少の生徒さん、中村雄一くんのチャランゴを伴奏するためであったのが、今や私がゲスト出演者のようである。


800人規模の大ホールを舞台にして、その観客の多さに驚かされてきたが、今年はまた特別に満員である。立ち見のお客さんもいるほどの盛況ぶり。これが12年も続いているのだから、すごいことである。メンバーの4人ともが学校の先生、今の職場はバラバラだが、かつては同じ中学校にいらっしゃったと聞く。そしてその時の生徒たち、同僚の先生たち、また現役の生徒たちからなる、スタッフの働きもすごい。みんなの力で成り立っているコンサートである。


2年前から、皆さんが、グループレッスンを受けに東京まで来てくださる。楽しげに熱心である。メンバーの中のギタリストは、毎週のように個人レッスンにいらっしゃる。本当に熱心である。その熱意は、きちんと音となり、聴いて下さる人たちに、ストレートに伝わるのである。


今年も楽しい一日を過ごさせていただいた。


06/08/09


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No.019

木下尊惇&菱本幸二コンサート

06/06/06 南会津「タンボロッジ」

タンボロッジの屋根裏部屋の窓から、細く空に向かってのびたいくつもの木々が、風に揺られて、その葉を擦り合わせる音を聴く。のんきに、柔らかく体を揺らしながら、なにごとか話しかけてくれているようである。


日が落ちた窓からは、明るい月夜の空がこちらをじっと覗いている。間近に迫った山の端の、黒々とした影の向こうに、深い藍色の空が、すべてを包み込んで座っている。


南会津舘岩村にあるタンボロッジは、自然の音を聴くために、自然の息吹を感じるために、とてもピッタリの場所である。ゆったりと流れる時間の中に、心地よく身を委ねれば、自分がどこにいるのかさえ、忘れることが出来るのだ。2年前、のびのびと、生き生きと音を楽しむことが出来たので、今回は菱本夫妻を誘っての、2度目のコンサートを企画していただいたのである。


演奏の後、自然食材によるベジタリアン・ペルー料理に、舌鼓を打ちながら、オーナーご夫妻と笑談する。まさに時を忘れるようなひととき。今度は是非、雪に埋もれてしまうような時期に訪れたい。その時には、暖炉に何をくべようか?・・・


06/08/09


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No.018

「ルス・デル・アンデ・コンサート」

06/05/16 La Paz「Teatro Munincipal」
06/05/18 Oruro「Casa Munincipal de la Cultura」

8年ぶりのルス・デル・アンデは、思い出深いTeatro Munincipal(ラ・パス市立劇場)で、永い眠りから覚めた。劇場の3階席まで埋め尽くした聴衆、舞台の下手には、仲間の音楽家達の顔が並ぶ。雪どけの頃の、春を迎える喜びのように、胸の中には、感動が満ちあふれていた。メンバー皆、気持ちは同じである。


アルバム「Pheska Patac Marat...(五百年の後)」と、「Suite Ecologico SER(組曲/いきとし生けるものへのために)」から抜粋した第一部。喜びと感動と緊張とで、カチカチになりながらも、すごく熱くなる。どの曲を演奏しても、熱狂的に受け入れてくれる聴衆がいる。第二部の後半、我らのヒット曲が並ぶと、音楽と歓声が交錯して、劇場全体がうねりを上げた。


オルーロでの演奏は、それこそ何年ぶりであろう。昼間にテレビやラジオのハシゴをしたばかりなのに、楽屋や舞台袖は、メディア関係の人達でいっぱいである。インタビューやら取材やらで、開演が50分も遅れてしまった(30分遅れくらいが普通である)。


ラ・パスに比べて、オルーロの夜は恐ろしく寒い。足下から上がってくる寒さである。しかしそんな寒さも忘れさせてくれるような、熱い演奏、熱い聴衆・・・。最後はスタンディングオーべーションであった。後日、オルーロ市文化庁から表彰されたことにも驚かされた。


ボリビアのフォルクローレ事情は決して良くない。形だけのチープなフォルクローレが蔓延して、多くの音楽ファンは行き場を失い、路頭に迷いかけているのだ。そんな中で「組曲/いきとし生けるものへのために」が、高く評価されていることを実感して、本当に嬉しく、そして感動した。


「ボリビアの音楽界はおまえの仕事を必要としている・・・」ある音楽ジャーナリストからのひと言は、音楽家として、身を引き締めるのには十二分である。「8年間はムダではなかった」・・・大きな大きな、8年ぶりのボリビアであった。


06/06/09
(今回のボリビアーツアーは、別欄でレポートを掲載の予定です。)

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No.017

「木下尊惇&菱本幸二 ウェンズデイ・コンサート」

06/05/10 東京「晴海トリトン」

2月に続いて、晴海トリトン二度目のライブ。昼の部は、前回と同じロビーの特設ステージで、そして夜の部は、水のステージという野外の会場である。


トリトン・スクエアの敷地内は、今がちょうど花盛り。空き時間にぐるりと一周、春を満喫した。水と磁器・陶器のコンビネーションが素晴らしい庭である。草木や花が、本当に気持ちよさそうに咲いている庭である。


夜の部はあたりが薄暗くなった頃、二灯の明かりに照らされて始まった。向かい風が強い。海の湿気をたっぷり含んだ風が、かなり強く吹きつける。


演奏中、いくつかフラッシュが焚かれた。写真を見せてもらうと、これが素晴らしいシチュエーションなのだ。バックの石壁に、水面に映った光がゆらゆらと揺れていた。


06/05/10


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No.016

「チャチャぷぅま一周年記念・木下尊惇コンサート」

06/04/08 館林「チャチャぷぅま」

「チャチャぷぅま」・・・数年来からの知人橋本さんご夫妻が始められた、パン屋の名前である。一昨年、とあるコンサート会場で、「パン屋を始めるので、『CHACHA PUMA』という名前にしようかと・・・」とおっしゃっていたのを思い出す。


ログハウスの建つ敷地にはいると、木立の中に、さわやかな空気を感じた。アットホームなパン屋さんの階上には、天井の高いフリースペース。ともに、優しい優しい空間である。天井近くの壁には、アイヌの彫刻家、故「ビツキ」さんの作品が並ぶ。


一周年のお祝いに、多くの人達が駆けつけた。ご近所から、ご家族から、音楽仲間から、そしてみんながみんな「チャチャぷぅまパン」の大ファンである。


フランスパンをいただいて、食べてみた。素朴な味覚に、しっかりとした歯ごたえ。噛むほどに滋味が増してくる。ボリビアで最も人気の高い「marraqueta」に良く似た美味しさである。


来年も、再来年も、笑顔と笑いと美味に満ちた「開店記念」が続くこと、間違いなしである。


チャチャぷぅま

06/04/10


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No.015

「木下尊惇ネオ・フォルクローレ・クアルテット」

06/04/07 赤坂「november eleventh」

トランペットとシークの倍音、そしてチャランゴの高音とコントラバスの低音、この二つの組み合わせを試してみたくて結成した特別ユニットの響きが、意外にも非常に面白く、場所も同じ「november eleventh」での再演となった。


音量も音域も、これほどまでに違う楽器のための編曲は、ともすれば、訳の分からないものになる可能性がある。ややもすれば、マニアックな響きに終始してしまう。各演奏家の音楽テリトリーもまちまちである。それぞれの演奏家に、自由に遊んでもらいながら、結果的に、フォルクローレの軸に吸引されてゆくというのが、私の理想である。・・・そして「重たく」ないこと。


H.Villa-Lobosの「ギター協奏曲」がヒントをくれた。ポイントは、「協奏」という事である。「迎合」ではなく「協奏」である。


前回の反省を踏まえて、いくつかレパートリーを差し替えたが、コンセプトは変わらぬ「協奏」である。クラウディアのPlatillo(シンバル)が、Diabladaに花を添えてくれた。


またも、創作意欲が高まったことに間違いはない。


    菱本幸二: quena siku bombo   渡辺隆雄: trumpet flugelhorn
    Mark Tourian: contrabass    Claudia Gosalvez: violin platillo

06/04/10




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No.014

「菱本幸二フォルクローレ・コンサート」

06/04/02 東京「スタジオ433」

関東フォルクローレ連盟の例会コンサート、菱本&クラウディア・デュオのサポートとして呼んでいただいた。


伴奏とは、スペイン語で言うAconpa~namientoである。そのまま訳せば「付きそう・同伴する」という事。私がボリビアで学んだのが、まさにこのAconpa~namientoなのである。Aconpa紡miento最大の役割は、空間を作ることにある。それは、ソリストが自由に自分を表現できるための、スペースを開くという事である。そしてソリスト(共演者)の呼吸を読み、時折刺激をあたえ、 共に音楽を楽しむのである。そう、必要以上には目立たぬように・・・。しかし、決して腰を引かないように。


今回は、原調の「EL OLVIDO」や菱本オリジナル作品群が、特に面白かった。菱本作品は、とても正直な響きがする。作曲においては、とても大切なことである。


リハーサルの合間に、神田川まで花見に行ったのも良い思い出となった。


06/04/10




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No.013

「木下尊惇&菱本幸二フォルクローレ・コンサート」

06/3/26 横浜「エンクエントロ」

国道一号線沿いにあるのに、まったく騒音が気にならない、不思議なお店である。目には車の流れが映るのに、ガラスの外は、映像だけが流れているような、そんな感じがする。


デュオの演奏においては、呼吸を探り合うのが、最も面白い。菱本さんの演奏は、その呼吸が、とても音楽的であり、そして自然なのである。ボリビア音楽のビートが、的確に脈打つのと同時に、日本的な、東洋的な呼吸が、別の次元で営まれている。菱本さんとの二重奏は、いつも刺激的な体験に溢れているのだ。そして、創作意欲をそそられる。


最近入手した「GERHARD J.OLDIGES/La Garza」を初めて使った、記念すべきコンサートにもなった。


06/04/10




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No.012

「木下尊惇ソロ・ライブ」

06/3/9 六本木「ノチェーロ」

2006年の「ノチェーロ」は、ソロ・ライブでスタートした。2〜3ヶ月に一度の訪問なのに、空気が目に馴染んでいるのが不思議である。


ライブ・ハウスでのソロ演奏は、ホールでのコンサートとは、また違った難しさがある。私の場合、不器用さの現れなのだろう、どんな場所で演奏しても、「コンサート」の雰囲気が出てしまう。これは、良くも悪くもである。サラッと聞き流したいお客さんには、気の毒であろう。


三部構成のため、比較的短めのプログラムに、起承転結を施すのも難しい。そういった意味で、私にとっての「ノチェーロ」は、厳しい場所である。しかし、厳しい場所で自分を試すのも、大切である。


最近ちょっと、「ノチェーロ」でのコツが掴めてきたような気がする。


06/04/10




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No.011

木下尊惇フォルクローレ教室「第一回 発表会」

06/2/29 音羽生涯学習館・多目的ホール

個人レッスンを中心とする私の「教室」には、いろいろな立場の方々がいらっしゃる。年齢、職業はもちろんのこと、レッスンに期待するもの、習得しようとするもの、そしてそれを応用する場面。みんなそれぞれ、千差万別である。なかには「内緒で・・・」習いに来る方もいるようである。そうした生徒さんたちを出演者とする「発表会」は、もとより私の教室計画の中には、組み込まれていなかった。しかし、数人の生徒さんたちの中から、「発表会」を望む声があがり、「それではひとつ」と考え始めてから、簡単に一年が過ぎてしまった。


アマチュア演奏家にとっての舞台は、良い目標、よいきっかけでなければならない。「舞台に立つ」という結果より、そこに至るまでのプロセスが大切である。・・・発表会などの舞台では、特に心して、それらを実践せねばなるまい。


生徒さんひとりひとりの意志を確認して、レパートリーを決め、それぞれのためにアレンジをする。日頃はいろいろな舞台に立っている人たちも、「ソロは初めて」という方がほとんどである。5ヶ月の準備期間が、長いか短いか、いろいろな意見があるであろうが、専業音楽家でないのであれば、一曲に費やす時間として妥当な長さであったと思う。


舞台の上は、緊張する場所である。緊張すべき場所である。演じる方も、観る方も、真剣である。今出る音は、今しか聴けないのである。同じ立場におかれた人たちは、それをとても良く知っている。・・・出演者全員、最高の音で演奏が出来た。緊張感のある優しさが、ホール全体に満ちていた。


長い間、私自身の課題としてきた「発表会」が、無事終了した。会場に助けられ、生徒さんたちに助けられ、スタッフに助けられ、そして何よりも音楽に助けられ、これでまた、次の課題へと力を注げそうである。


06/03/10




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No.010

「ソロ・コンサート 〜ボリビアの情景〜」

06/2/9 東京「ルネこだいら」レセプション・ホール

西武線小平駅にほど近い「ルネこだいら」は、様々な催しを、積極的に主催している、元気の良いホールである。会場に着いた私たちを、「山海塾」の大きなポスターが出迎えてくれた。


レセプション・ホールは、客席数150名の「小ホール」。毎月コンサートを企画しているとの事。床が絨毯敷きなのにもかかわらず、素直な音が、最後列まで響くのが、不思議な感じすらする。ギタリストにとって、とても弾きやすいホールであった。


満員のお客様を集めての120分、ボリビアの古典曲と、オリジナルとを取り混ぜ、ギター、チャランゴ、弾き語りを披露した。休憩時間、ボリビアの手織物と人形で飾られたテーブルに、「どうぞご覧下さい」と、木彫りとアルマジロのチャランゴを残してきた。相当に、みなさんの興味をひいたようだ。


今回のコンサートは、「ルネこだいら」からいただいた企画だが、それにしても10月に発売されたチケットが、僅か四日で完売(!)という、少なからぬビックリ仰天の、ちょっとうれしいおまけ付きだった。

06/02/14




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No.009

「木下尊惇&菱本幸二 バレンタイン・コンサート」

06/2/6 東京「晴海トリトン」

東京・勝ちどきにある、巨大なオフィスビルでの、メインロビー・コンサート。時節柄「バレンタイン・コンサート」と銘打って、昼と夜二回の演奏である。この「晴海トリトン」でのロビー・コンサートは、初の試みということで、スタッフも演奏者も、様子を探りながら12時の開演となった。


時ならぬ生演奏の出現に、ロビーを往来する人たちの足が止まる。その前を、普通に通り過ぎる人たちもいる。まさにここはストリートなのである。外の出来事に気を止めないように、演奏に集中する。顔を上げた時には、もしかして誰もいないかもしれない事を覚悟して・・・。 主催者の意向で、「愛の讃歌」もアレンジした。なんだか照れくさいながらに、ちょっと面白かった。


私たちのコンサートが好評だったせいか、このロビー・コンサート、毎週開催の方向で企画進行中だそうである。

06/02/14




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