裏銀座笠が岳コース
日時 1993年7月24日〜7月29日
コース 七倉〜烏帽子小屋〜野口五郎岳〜水晶小屋〜鷲羽岳〜
三俣蓮華岳〜双六岳〜笠が岳〜新穂高温泉
第1日(7月24日) 晴れ 七倉山荘泊
第2日(7月25日) 曇り後晴れ 烏帽子小屋まで
6:00 山荘の前にタクシーが並んでいる。許可車両しか入れないので、
順番に乗り込み高瀬ダムまで入る。
6:30ゲートが開きいよいよ登山開始である。
毎度の事ながらのんびり周囲を眺めたりしているうちにほとんどの人が
行ってしまう。2つのつり橋を渡りいよいよブナ立尾根の急登に取り付く。
さすがに天下の三大急登だけあり、なかなかのものである。
樹林の中を整備された道を登っていくが応える。
右手に白茶けた不動岳が見えてくると
植生もブナに変わり権太落としの岩に着く、大勢休憩している。
樹林がブナから針葉樹にかわり尾根を岩や木の根の間を行くと
三角点に着く10:15.丁度半分と聴き元気が出る。
ダケカンバやナナカマドの道を尚も登り形の良い
大きなナナカマドが見えると周囲は明るくなり稜線の近いことが分かり、
ほっとする。 間もなく少し下り今日の宿烏帽子小屋の前に出でる。
12:20宿泊手続き。荷物を置き烏帽子岳に行く。
庭園状の平坦な道を南沢岳や裏銀座の山々を眺めながら
のんびり歩く。偽烏帽子を過ぎ20分ほどで山頂に出る。
天気良し360度の展望。
裏銀の山は勿論立山や剣が手に取るように眺められる。小屋に戻る。
小屋前にオーナーが丹精した大きなこまくさの株があり満開に咲いている。
正に高山植物の女王である。写生している人写真を撮っている人
とさまざま休憩している。小屋も混まずゆっくり休める。
第3日(7月26日) 曇り時々晴れ 水晶小屋まで
今にも降り出しそうな空模様。5:45出発。
何時もながら出発が遅く後ろに3人組みのパーテーのみ。
今日は北アルプスの真ん中の景色の良い稜線歩きのはずだが
ガスが濃く足元の花しか見えない。
お花畑を横切りひょうたん池を下に見て三つ岳へ登っていく。
砂礫の登りを頑張り8:45野口五郎岳に着く。
すっかりガスが立ちこめ視界利かず。
休憩し小屋で聞くと「大丈夫」との事なので出発する。
間もなく野口五郎岳を通過するが何も見えず残念。
真砂岳に差し掛かるころは、風が強くなりガスは晴れてくる。
竹村新道の分岐を過ぎ東沢乗越に着く。
一緒に出発した三人組と会い言葉を交わす。水晶岳の登りに備え休憩。
いよいよジグザクの登りとなり岩屑と崩れかかったやせ尾根を登る。
途中でお知り合いとなった単独行の女性のTさんがすでに稜線に
いて大きな声で励ましてくださる。慎重にやっとの思いで稜線に出る。
12:50水晶小屋着。宿泊手続きを済ませ遅い昼食とする。
風は強いが雨の心配は無さそうなので、水晶岳に行く。
今日歩いてきた道を振り返ったり、明日行く道を眺めたり。
正面の名前の通り山肌の赤い赤牛岳や雄大な薬師岳を眺めながら、
のんびり まさに北アルプスのど真ん中を歩く。
山頂は風が強く立てないほどである。
ガスが飛ばされると360度の眺め。
時折温泉沢の方から硫黄の匂いがしてくる。非常に寒くなり小屋に戻る。
小屋は小さく今日の泊まりは16名満員。
夕食後車座になり山の話で盛り上がる。
初心者の私たちはコースの情報や持ち物や、
山で事故に会わないための注意 など教えてもらう、貴重な時間である。
夜半風雨強く小屋ごと飛ばされそうな勢いだった。
第4日(7月27日) 曇り時々晴れ 双六小屋まで
昨夜の雨も6:00には止みガスがあるものの強い風で晴れ間が出る。
Tさんに山名を教えていただく。
彼女は大学で登山をやっていたので、知識、技術、経験そして若さがあり、
その上控えめで素晴らしい女性である。
年齢は不詳だが私たちの息子位の感じである。
親切に私たちに付き合ってくださる。とても心強い。
小屋の前から白馬や鹿島槍の後立山連邦、
前には薬師や雲の平そして大きな鷲羽と見飽きることがない。
6:15出発。30分ほどで岩苔乗越に着く。
そこは雲の平への分岐で早い人は帰ってくる。
先日ブナ立を一緒に登った人も帰ってきた。雲の平の様子を聞く。
Tさんも友達と会うことになっていると待っていた。
おしゃべりをしながら暫く待つ。記念にと写真を撮り出発。
急な登りを風を受けながらワリモ岳を過ぎ鷲羽岳に着く。
山頂の眺めは最高で裏銀座の山々は勿論、後立山槍ヶ岳を移す鷲羽池、
そして眼下には三俣山荘や双六小屋が見える。
ガスが多いので槍が見えたり隠れたり
なかなか写真が撮れないと皆が嘆く、
砂礫の道をジグザクに三俣山荘目指して下りる。
9:20山荘の喫茶室でおいしいコーヒーを頂きながら
硫黄岳から槍穂高・双六三俣の展望を堪能する。
中道と稜線の道があるが稜線を行くことにし10:00出発。
沢山の高山植物の花に見送られ三俣蓮華の山頂に出る。
残念ながら見通し悪くかすかに黒部五郎や薬師双六が見えるのみ。
大したアップダウンもなく双六山頂。同じく見通し悪し。
野球場まで下り休憩しながら槍が顔を出すのを待つが、期待はずれ。
中道の鞍部に下る。道が険しい上にかなりの雪がある。
スプーンカットされているが、
雪が苦手の私はかなり苦労する。
一段落すると下の鞍部でTさんが待っていて声を掛けてくださる。
ベテランの彼女に声を掛けていただくと、安心して歩ける。感謝感謝!!
ナナカマドの中を一下りで今日の宿双六小屋に到着。2:30宿泊手続き。
小屋は双六岳の麓、鷲羽を目の前に、樅沢、笠に囲まれ水の豊富なきれいで
ゆったりした小屋である。
裏銀の小屋はどこもゆったりし割合空いているのがうれしい。
第5日(7月28日) 雨・強風 笠が岳小屋まで
ついに最悪の天気。樅沢から西鎌を登る予定だったが小屋で止められる。
暫く様子を見る。
大学のワンゲル部の学生が飛ばされそうになりながら列を作って
登っていくのを見ると、危険を感じる。
諦め新穂高に下りることにする。同じコースを予定してきたTさんが
「笠が岳に行きませんか?」と誘ってくださる。
西鎌ほどの危険なところはないからと言う。
去年も来たとの事。
コースを調べてないので不安はあるがTさんにお話を聞くと安心してしまう。
地図でコースタイム等確認し取りあえず出発する。弓折岳迄登る。
風雨強く立ち止るのも躊躇する。社の周りを一回りして先を急ぐ。
鏡平分岐を過ぎ大ノマ乗越でTさんが待っていて下さり、
下山はここが最後の分岐と教えてくださる。
雨が小降りになってきたので笠が岳に行くことに決定する。
その旨Tさんに伝え道の確認をして、Tさんには先に行って貰い、
マイペースで行くことにする。かなり急な道が続きやっと秩父平に着く。
雪田あり高山植物多く、花々が露に濡れまさに楽園の感あり。
少々休む。雨もほとんど止みほっとする。間もなく雪の急斜面に出る。
大した距離ではなく紅ガラでコースははっきりしている。
予期しなかった雪の登りで緊張したが、登りきると稜線で、
左にうっすらと穂高連邦
右に黒部五郎を見ながらの最高の稜線歩きである。
誘ってくださったTさんに感謝!
抜戸岳を過ぎ、新穂高への分岐を過ぎるとようやく笠が岳のキャンプ場に出る。
大きな岩と雪の中を行くのは疲れた足にはとても辛い。1:30山荘着。
とてもきれいな小屋で、その上空いているので
あまり天候に恵まれない中ロングコースをやってきた身にはとてもうれしい。
すでにTさんは片付けも済み、食事の支度に取り掛かっていた。
宿泊手続きをし、濡れたカッパなど片付け遅い食事を取る。
山荘のコーヒーの美味しかった事!!
夕方10分ほどの山頂に行く、天気も回復し360度の展望。
小さなケルンがいくつもあり正面に穂高連邦がどーんと控えている。記念撮影。
Tさんのお陰でこんなに素晴らしい山にこられて感謝感謝!!
初心者の私たちでは行こうとも思わなかった山なので本当にうれしい。
夕日を眺め小屋に戻る。食後ストーブを囲み明日のコースの様子を聞く。
12:30の直通松本行きのバスに間に合うように下りるとよいとの事。
私たちを気にせず先に行ってもらうようお話して9:00消灯。
第6日(7月29日) 晴れ 新穂高温泉から松本から帰宅
5:40出発。相変わらず最後の出発。のんびり歩く昨日夢中で歩いた道だが、
天気が良く穂高連邦や裏銀座の山々を眺めながらの
稜線歩きはとても気持ちよい。
間もなく杓子平への分岐につく。今日一番の難所である。
先に出発していった人々が数珠繋ぎになり、
岩や鎖を頼りに下りていくのが見える。慎重に下りる。
杓子平はお花畑で水もありゆっくり休憩。さらに岩のごろごろした急下降が続く。
正面の穂高や足元の透かしゆりなどに
目をやりながら尚も下る。ようやく樹林帯に入りほっとする。
小さい流れを右左とわたりながらようやく笠新道入り口の看板が現れ
今回の山行も終わりに近づく。40分ほどの林道歩きで新穂高温泉である。
ほっとすると同時に急に足が重くなる。12:05バスターミナル着。
すでに松本行きのバスが来ていて皆温泉で汗を流しさっぱりしている。
Tさんにお礼とお別れの挨拶をし、平湯温泉での宿泊先を探す。
適当なところが見つからず、
結局無料のアルペン温泉で汗を流しバスを乗り継ぎ松本へ出る。
今回の目的だった西鎌は悪天候で登れなかったが、Tさんとお知り合いになり、
お陰で笠が岳に登れ、最高の山行だった。