広島電鉄 千田車庫 2017年8月2日(水)
広電本社前・千田車庫・取材―(広電貸し切り電車)―広島駅
広島電鉄本社にある千田車庫を取材しました。広島電鉄には、千田車庫・江波車庫・荒手車庫の3つの車庫があります。千田車庫は、1912年(大正元年)11月23日の開業時に設置された車庫です。所属車両の日常検査や、江波車庫と荒手車庫に所属する車両の全般検査なども行っています。
私たちは最初に、交番検査や日常検査を行うピットを見学しました。ピットは合計4線あり、屋根上機器や床下機器を検査できる様になっています。電車の屋根上にはクーラーの室外機や補助電源装置が設置されています。
広電の全車両にクーラーが設置されています。日冷房車にクーラーを設置する時には、車体の補強工事もしたそうです。夏の暑い日に全車両でクーラーをつけて走行すると、一日の電気消費量もだいぶ違うそうです。補助電源装置は、架線から受け取った600Vの直流電源を200Vの交流電気に変換し、電車の空調や室内の電源に使用します。
3000形電車。もともとは、1953年に西日本鉄道の北九州線に導入された1000形です。福岡市内線の第1次路線廃止が行われた1975年より広電に移籍し始めました。譲渡された車両の中に元1001形はなく、1101形は5編成あったうちの2編成が譲渡されました。1201形は9編成のうち8編成が譲渡されました。1301形は6編成のうち2編成が譲渡されました。
次に、重要部検査や全般検査が終了した電車を見学しあした。この検査の時に、車体の凹みなどをパテで直して、塗装をし直すそうです。神戸市電、西鉄、京都市電など、広電移籍前の塗装が施されているのは、鉄道ファンにとっては有り難い事です。移籍した当時、塗色を変更する費用を節約して移籍前の塗装のまま使用していたのが、今日に至ったとのことです。
次に、350形訓練車を見学しました。起動線運転手の免許を取得するための訓練車です。5100形低床車を見学しました。2002年に営業を開始した5000形は、ドイツ製100%低床の5車体連接車でした。低床化を実現するために車軸の無い車輪が採用されました。5100形は、近畿車輌・三菱重工業・東洋電機の3社によって開発された5車体連接車です。一部部品で国産化出来なかったものがありますが、初の国産100%低床車といわれています。座席数の少なさや通路の狭さなど、5000形での課題を解決し、日本の風土に合う様な冷房装置の改良が行われました。
5100形電車。2004年に登場した、愛称はGreen mover max(グリーンムーバーマックス)という車両です。2005年にグッドデザイン賞を受賞しました。近畿車輛・三菱重工業・東洋電機製造・広島電鉄の4社がU3プロジェクトで共同開発した、国産初の100%フルフラット超低床電車です。U3とは Ultimate (究極の)、Urban (都会的な)、User friendly (利用しやすい)を意味すします。メーカではJTRAMと呼んでいます。構造は5000形(GREEN MOVER)に引き続き5連接車で、広島港方からA・C・E・D・B車(荒手車庫所属である5101号は、宮島口方からB・D・E・C・A車)です。2004年に江波車庫に搬入され、組み立てを行った後、宮島線・市内線で試運転が行われ、2005年から営業運転が開始されました。現在は10編成あり、主に1号線(宇品線)で使われ、朝夕ラッシュ時は5号線(比治山線)でも運転。5101号は2号線(本線・宮島線)で運用されています。千田車庫所属の車両も、厳島神社の初詣や宮島水中花火大会などで臨時便として宮島線を走行します。2007年から5101が広島観光インフォメーション電車となり、広島平和記念公園と原爆ドーム・縮景園・広島城・宮島の大鳥居と厳島神社などの写真がラッピングされ、車内に観光地や文化施設の案内板が設置されました。広電5000形と同様に、車内に次の停車駅等の案内表示器が設置されました。連結部上部に1行分のLEDパネルが設置されています。
次に、1960年に製造された旧神戸市電の582号車を撮影しました。旧神戸市電の塗色とあって部員たちが喜びました。
570形電車。1971年に神戸市電の500形を譲り受けた電車です。570形の元となる神戸市電500形は、最後まで残っていた車体更新車18両(571〜580・583〜587・590〜592)のうち、事故廃車された583号を除く17両が広島電鉄に譲渡されました。これらの車両は、神戸市電全廃後に広島に輸送されました。車番が571〜587に整理されました。元大阪市電の750形と共に13m級大型車として重用されました。前面方向幕の大型化改造の後、3両が冷房化されましたが、元々車齢が高かったので、他の14両は改造されず廃車されました。冷房改造された車両は、587が2003年、584が2006年に廃車され、現在は582のみが残っています。本車は1924年製の元神戸市電J車で、改造を繰り返していますが、車齢は90年以上となりました。現役最古の鉄道における冷房車両です。
次に工場棟の台車作業所で、車輪から車軸を引き離す装置や整備されている3000形の台車枠を見学しました。
車輪の直径は660mm、低床車であれば600mmです。車輪にタイヤを焼き嵌めする方式です。タイヤに傷がつくと、旋盤機械でタイヤを完璧な円形に削ります。
8年程度たつと、タイヤが薄くなり、交換をします。宮島線を走る車両は、走行距離が長いが直線が多い、市内線を走る車両は走行距離が短いが曲線が多いので、タイヤの摩耗はどちらも同じくらいです。
車輪1枚が100kgもの重さがあるので、台車作業所にも大きなオーバーヘッドクレーンが設置されていました。
モーターの検査も見学しました。かつては直流モーター車が多かったのですが、新型車両は全て交流モーター車です。交流モーターは、メンテナンスの負担が少なく、速度の微妙な制御が可能で、よりスムーズな走行を実現できるそうです。
750形電車。1965年に登場した電車です。1960年代の広島電鉄市内線は、150形や400形など、戦前からの4輪単車が使用されていました。750形は、輸送力の小さい単車を置き換え、輸送力増強を図るために導入されました。広島電鉄では、これら旧大阪市電の13m級車両3形式を導入する際、1601形(1600形と呼ばれることもある)1651形(1650形と呼ばれることもある)1801形(1800形と呼ばれることもある)をすべて750形として統合し、形式順に連番としました。車齢の古い元1601形は、先に廃車され、しばらく留置されていた車両も解体されました。導入当時は広電標準色のクリームとグリーンでしが、その後旧神戸市電や旧大阪市電2601形(900形)導入の際、経費節減から塗り替えずに使用されたことが、観光客等に電車博物館と呼ばれて好評となり、本形式も大阪市電色のクリームと茶色に戻されました。廃車された一部車両のモーターや機器は、700形へ流用されました。
2016年6月に、768号をイベント電車「TRAIN ROUGE(トランルージュ、フランス語で「赤い電車」)」に改造し、路面電車まつりで披露されました。外部デザイナーを一切通さず、メーカー(大阪車輌工業)と協議を重ねた上で製作されました。車内はテーブル席26席と、走行時の揺れに対応したビールサーバー、スワン形のドラフトタワー、冷蔵庫、映像・音響機器を設置しました。2016年7月1日からビアガーデン電車として運行しています。2016年、広島東洋カープのセ・リーグ優勝記念列車にも使用されました。
3700形電車。1984年に登場した、「ぐりーんらいなー」という愛称の3500形に次ぐ連接車です。3500形と異なり、抵抗制御・平行カルダン駆動方式です。市内線と宮島線を直通運用できる車両です。3700形より行先方向幕に英文併記を始めました。投入時は毛筆文字の方向幕を装備していた3500形と比べてイメージが近代化しました。この車両がきっかけで、当時減少していた乗客が持ち直しました。
宮島線と並行する当時の国鉄では、3700形が投入される前の1982年より広島地区に導入されていた列車本数の多いフリークエンシー型ダイヤ(当時、東京・大阪以外で初めてであった)を強化し、宮島線に近接する新駅の設置などの対応策が採られました。2015年3月の段階では、3701,
3702編成が市内線(主に1号線、ラッシュ時には5号線にも)、3703・3704・3705編成が宮島線(2号線)を走っています。
最後に、653号車の車内を見学しました。653号車は、原爆投下70周年を迎えた時、運用離脱後江波車庫にて保管されていた被爆電車を昭和20年当時の塗装に復元し、車内で被爆者による当時の証言やその後の復興の歩みを紹介する地元テレビ局とのタイアップ企画が実施された車両です。
2015年6月13日から、広島電鉄653号車を使用した特別運行が広島駅―広電西広島間にて土日に2往復運転されています。
650形。1942年に広島電鉄に新製配置、在籍中の路面電車車両です。1945年8月6日午前8時15分、広島市への原子爆弾の投下で全車が焼損と全半壊しつつも、3両が走り続ける被爆電車です。
半鋼製のボギー車で、1942年に651―655の5両が製造されました。両端の扉は1枚引戸、中央の扉は両開扉、客用窓は2段式です。内装は木造ニス塗りで整備され、客用扉、窓枠が木製です。制御方式は、直接制御式で両端の運転台にKR−8形制御器、制動は直通制動のSM−3を搭載しています。台車はブリル77Eを装着しています。
今日の取材では、広島電鉄の方々に親切に案内をしていただき、路面電車について詳しく学ぶことが出来ました。有難うございます。
高1D組 リョー 千田車庫
千田車庫は広島電鉄の車庫で、場所は広島電鉄の広電前(広電本社前停留所)のすぐ近くです。広電で1番古い車庫で、所属車両の日常検査に加え、江波車庫と荒手車庫に所属する車両の全般検査なども行っています。日常検査は3〜4年、全般検査は6〜8年に1回行うそうです。