硫黄岳の強い風 2012年3月30日(日)

行者小屋・テント撤収赤岳鉱泉赤岩ノ頭硫黄岳(2760m)…赤岩ノ頭赤岳鉱泉北沢堰堤広場美濃戸山荘美濃戸口・入浴―(アルピコタクシー)―茅野駅・昼食―(中央本線)―八王子駅・新宿駅・解散



本日は春期合宿の最終日です。事故の無いよう最後まで気を引き締めて取り組みましょう。朝4時に起床し、朝食を食べテントを撤収し、6時過ぎに行者小屋キャンプ場を出発しました。行者小屋から赤岳鉱泉への道のりは、しっかりとした踏み跡がついていました。



私たちは、テントの本体や寝袋などをフライングシートにくるみ、赤岳鉱泉に置いて、硫黄岳の頂上を目指しました。上の方から、ビュービューと風の音が聞こえてくるので、「頂上は、凄い風が吹いているのだろうな。」と思いながら登りました。



赤岩ノ頭の直下で樹林帯から抜け出ました。ここから、赤岩ノ頭までの木のない斜面は、積雪期によく雪崩が起きる所です。



スコップで雪面を掘り、高橋先生が雪質と積雪の状態を視る方法を部員たちに解説しました。「今日は雪崩が起きないだろう。」と判断しました。



赤岩ノ頭に立つと、そこは硫黄岳の頂上に続く広々とした稜線です。蓼科、横岳、赤岳、阿弥陀岳など八ヶ岳の山々が良く見渡せました。



硫黄岳頂上まで続く緩やかな登り道を、部員たちは元気に駆け登りました。硫黄岳の頂上は、横殴りの風が吹いていました。積雪期の八ヶ岳の風はもっと凄いのですが、部員たちにとっては今日の風も目も開けていられない程でした。時折、富士山で練習した耐風姿勢で凌ぎました。



赤岩ノ頭に戻って、行動食を食べ、北アルプスや南アルプスの山々を眺めながら一休みしました。



硫黄岳とは僅かな高度の差ですが、赤岩ノ頭の方がゆっくり休める程度の風でした。



赤岳鉱泉まで一気に下りました。赤岳鉱泉で、テントや寝袋をザックに詰め込み、美濃戸口を目指しました。途中、堰堤広場を越えたあたりで、アイゼンを脱ぎました。雪や氷の上を登山靴で歩く練習をしました。結構滑りました。



美濃戸口で風呂に入り着替えをしました。ここで、高橋先生が、茅野で気象予報の仕事をしている知り合いの方に電話をしました。

高橋先生の他、日本の登山家がヒマラヤなどに遠征に行く時、誰もが頼りにする敏腕気象予報士です。今回の春期合宿も、この方に気象予報をお願いし、その予報を頼りに阿弥陀岳や赤岳に登りました。



高橋先生が「お陰様で、無事に美濃戸口に戻りました。」と下山報告をしたら、「茅野で、ちょっとの間お会いしましょう。」ということになりました。

茅野駅前のレストランで会い、食事をしながら貴重な体験談などをお伺いしました。中央大学山岳部のOBで、最近の大学山岳部の取り組みなどについてもお話してくれました。

部員たちは、「高校生で阿弥陀北陵に行く元気があるのなら、明治や中央の山岳部に入って頑張ってほしい。」と言われました。

昼食が終わると、私たちは気象予報のお礼をし、中央本線に乗りました。茅野駅から小淵沢駅までの間、車窓に見える八ヶ岳山容を眺めながら、無事に登山をできたことに感謝をしました。

今回の春期合宿では、細かな反省点が幾つもありました。しかし、今回の八ヶ岳登山を通じて、部員たちが少し逞しくなりました。この体験を今後の登山に生かしましょう。



春合宿の感想 高1B ユウ

今回の春合宿は最初、阿弥陀岳南稜から、入山する予定でしたが、重い荷物を背負ってバリエーションルートから登るのは危険だ、ということで今回行くバリエーションルートは、阿弥陀岳北稜だけになりました。最初は少し残念でしたが、阿弥陀岳北稜も自分からすると、決して簡単なところではなさそうだったので、いつも以上に気合いを入れて美野戸口を出発しました。美野戸口は昨年とは違い、雪がとても少なく感じられました。そのため比較的暖かく、せっかくつけた日焼け止めが大量の汗と一緒に流れ落ちてしまいました。美野戸口から赤岳山荘までの間の反省点は、ショートカットコースを使わなかったことです。ショートカットコースがある場所に気づいてはいましたが、そこが本当にショートカットコースなのか解らなかったため使いませんでした。でも、一度来たことのある場所だったので、覚えていなかったのが残念でした。美野戸口からは、南沢小滝に向かいました。しかしここでは、はっきりとした踏み跡があったのにも関わらず、南沢から滝に向かう道に気が付きませんでした。誰がみても解るような踏み跡だったので、少し自信を失いました。初めて訪れた場所なのでよくわかりませんが、先生曰く、今年の滝の状態はとてもいいそうです。テントを張る場所を決めた後、先生がリードをし、ロープを2カ所に張りました。まずは先輩が左側から登り始めました。少し苦戦したものの割とあっさり登ってしまいました。次は僕が同じところを登りました。僕は先輩が少し苦戦していたところを確保しながら見ていたため、少し楽に登れました。この日はこれでアイスクライミングを終わりにし、テント設営を始めました。この日の夕食はクリームシチューとα米でした。初めてのペミカンとα米です。クリームシチューの方は作り方を教えてもらったため、量が少し多かったものの割とおいしくできました。しかしα米の方はうまく説明できないと言われ、こちらのテントは自分たちで考えてやることになりました。そしたら、見事に焦がしてしまいました。それだけでなく、作っているときにテントマットの上に鍋を置いてしまい、テントは無傷でしたがマットに穴が空いてしまいました。とても大きな反省点です。クリームシチューの方はおいしかったです。



二日目の朝はトマトソースとα米です。α米は前回より焦げが減りましたが、前回よりまずくなりました。トマトの方はまずくはなかったけど、量が多かったため食べるのがつらかったです。その後は昨日の続きでアイスクライミングをやりました。まずは右側を挑戦しました。昨日少しやったからか、かなり楽に登れました。しばらく練習した後、先生がやっていた右端に挑戦しました。このコースは本当に辛く、すぐに腕が張ってしまったため、下で確保している先輩に少し上に上がったら、すぐに張ってもらうように頼みました。しばらく一段目にすら上がれない状況が続きましたが、先輩が頼んだ通りにやってくれたため、なんとか少し上ることが出来ました。そこからはなにもしないでいたら、すぐに疲れそうだったので、気合いで上りました。腕がとても張ってしまいましたが、汚い形であれ登れて良かったです。しばらくしてからテント撤収に入りました。段々雪がひどくなってきました。気づくとテント周辺に雪が積もっていて、少し怖くなりました。撤収した後は行者小屋に向かう道を雪が降る中、黙々と歩き続けました。アイスクライミングの疲れもあるせいか、結構疲れました。それは僕だけではなかったみたいで、行者小屋でのテント設営は、グダグダな空気がありました。そのため、先生にとても怒られました。そこからは気合いを入れ、テント設営をしました。本当はすぐに埋没訓練をする予定でしたが、天気が荒れていたため、少しテントの中で待機してから始めることにしました。外では雷もなっていました。南稜に行かなくて良かったと思いました。少し天気が回復してから、埋没訓練を開始しました。ビーコンをロープと一緒に雪の中に埋め、それをビーコンを使い、二人で探す訓練です。十五分以内に見つけないと死亡率が高くなるそうです。テント班ごとに一回づつ行いましたが、僕たちのところだけ十分以上かかってしまったため、もう一回やりました。なかなか難しかったですが、今回の練習はかなり達成感があり、楽しかったです。この日の夕食はカレーとα米でした。カレーの方はすばらしいおいしさでした。しかしα米の方は、また焦がしてしまいました。



三日目の朝は醤油ラーメンでした。いつも伸びてしまうので、早めに茹でるのをやめました。なかなかのおいしさでした。この日は今回の合宿のメインです。気合いを入れて登り始めました。しかし歩き始めて早々に沢との分岐を間違えてしまいました。地図で確認したら結果的に北稜に出ることは確認できましたが、予定とは違うため引き返しました。沢にはいると雪が少し深くなってきたため、ラッセルを開始しました。すぐに疲れてしまうので交代制で行いました。特に辛かったのが、沢から一気に尾根にはいるところです。雪崩が起きないようにまっすぐ登らなければなりませんでした。そのため最初は辛かったけど、振り返ると今までの自分たちの作った道が見えていて、感動しました。そのため段々楽しくなってきました。稜線に出てしばらくすると、急になってきたため、岩場までコンテで向かうことになりました。早速ロープを結び始めましたが、なぜかここでコンテのやり方をど忘れしてしまいました。当然先生にはとても怒られました。自分でもなぜ忘れてしまったのかよくわかりませんでした。コンテでしばらく進むと、岩場が出てきました。ここから先輩と先生がリードしながらロープを張って進みました。ここで僕は確保をしたわけですが、なんとここでもロープワークを忘れてしまい、とても怒られました。あんなに何回も練習したのに、肝心なときに忘れてしまい、とても悔しかったです。何とかちゃんとした形にした後、ようやく先輩と先生が登り始めました。その後先輩と先生が僕たちのことを確保してから、僕たちは登り始めました。しかし、アクシデントはすぐに起きました。なんと上でロープが絡まっていたため、潜ったり跨いだりを繰り返すことになってしまいました。下からは簡単そうに見えていましたが、アイゼン、ピッケル、荷物が着いているため、下からより難しく感じられました。ここをリードしていった先輩と先生はすごいと思いました。時間をかけてようやく一つ目の岩場が終わりました。途中足場が抜け落ちていて怖いところがありましたが、特に問題なく進めました。二つ目の岩場でセルフビレーをとった後、また先輩と先生がリードで進みました。前から悲鳴が聞こえてきました。ナイフエッジにいるのでしょう。しばらくして自分たちの確保をしてもらい、自分たちも登り始めました。ナイフエッジにさしかかりました。



右側が雪庇になっています。なぜ悲鳴が聞こえたのか解りました。確かにここは、ロープが上からでも怖いです。でもここまでくれば頂上は後少しです。元気良く頂上まで登りました。頂上に立ったときは本当に感激しました。なんと無風、快晴、360度の絶景です。今まで登ってきた山の多くがここからすべて見えていました。本当にすばらしかったです。頂上で少しゆっくり休憩してから、赤岳に向かいました。危険なところが先にあるので、まだコンテで行くということになりました。その危険なところはすぐに出てきました。一般道ではありますが、阿弥陀岳からの下りはかなり急な上、雪質も悪く、アイゼンに雪がすぐにくっついてしまい大変でした。前を向いた方が速いので本当は前を向きたかったのですが、それだと落ちそうなので、仕方なく後ろを向いておりました。かなり怖かったです。ここまで来ると気持ち的に少し楽になりましたが、まだまだ油断はできません。ちょっと歩いたら中岳の頂上に着きました。中岳の頂上で少し休んでいるときに先生から、「一時までに文三郎の分岐に着かなかったら赤岳登頂を考える」と言われました。自分のせいで遅れたこともあるので、それを聞いてからがんばって、できるだけ速く分岐につけるよう、がんばりました。結果としては何とか一時を切ることができました。分岐で少し休憩した後、赤岳まで一気に登りました。結局この日は、赤岳鉱泉まで行くのを諦め、行者小屋でもう一泊することにして、時間に余裕を作ることになりました。赤岳からの景色も非常に良かったです。赤岳の頂上までとても疲れたため、頂上でつららを食べました。かなりおいしく感じられました。少し休憩した後、地蔵の頭まで歩きました。この道は、少し急でしたが、阿弥陀岳の下りと比べれば割と楽に降りられました。地蔵の頭からは地蔵尾根を使って行者小屋に向かいました。地蔵尾根は序盤非常に怖いところがありましたが、特に問題なく通ることができました。そこからは割りと快適に降りられました。樹林帯の手前から雪質が悪くなってきたため、アイゼンなどをとりました。そこから少し進んだところがまた、あまり雪質が良くありませんでした。少し注意しようと思った瞬間、足下が崩れ滑落してしまいました。落ちているとき、冗談でなく本当に死ぬかと思いました。でも、落ちてから割とすぐに滑落停止ができた上、木にいい感じでぶつかったので減速できました。おかげで無傷でしたが、とても怖かったため、止まってからしばらく歩けませんでした。そこから行者小屋までは特に問題なく進めました。行者小屋では、僕が滑落したことに関して先生から注意がありました。いい教訓になったかなと自分でも思います。この日の夕食は、ビーフシチューとα米です。今回のα米は先生に直接見てもらったため全く焦げていませんでした。ビーフシチューの方もなかなかのおいしさでした。



四日目の朝は、塩ラーメンでした。こちらも醤油ラーメンと同じぐらいのおいしさでした。テント撤収を終え、一気に赤岳鉱泉まで行きました。とても速く感じられました。団体装備をおいてから硫黄岳に向かいました。序盤少しペースを上げすぎたため、途中で下げました。樹林帯は休憩をせず黙々と登りました。樹林帯を抜ける手前で弱層テストを教わりました。雪崩の危険性を知るテストです。今回のテストでは行くことに決まりましたが、これも判断が難しそうだと思いました。硫黄岳頂上は、気お付けなければ飛ばされてしまいそうな風でした。でも曇っている割に頂上はきれいでした。余り長くいるわけにも行かないのでさっさと赤岳鉱泉におりました。赤岳鉱泉で団体装備を回収した後、美野戸口に向かって下山しました。美野戸口までの間、僕と部員一人が転倒しました。僕の方は今回、注意はしていましたがアイゼンを手前で取ったため転倒してしまいました。結構痛かったです。美野戸口では温泉に入りました。そこからは茅野駅までタクシーで行き、特急で帰りました。茅野駅では今回の山行の天気を教えてくれた山岳気象予報士の、猪熊さんがわざわざ自分たちに会いに来てくれました。先生からは陽気な人だと聞いていました。確かに明るい感じの人でしたが、いきなりかかってきた携帯で印象が大きく変わりました。阿蘇山にいる方からの電話らしいのですが、標高を聞いただけで、余り考えることなく、これからの天候をその方に説明していました。そこからはずっと緊張していました。食事中もみんないつも以上に静かでした。でも、下界での食事は非常においしく感じられました。猪熊さんと別れた後はまっすぐ帰宅しました。

今回の山行は今年の総決算ということできたわけですが、個人的には、多くのことを学べて楽しかった反面、ミスが多く少し残念でした。でも、全体としてはすばらしい山行だったと思います。特に、北稜でリードをした先輩はすごいと思います。この先輩は今回でリーダーが終わりになります。この先輩には、入学から今まで様々な面で頼ってきました。今まで本当にありがとうございました。まだ部にはいることになると思いますが、ひとまず、お疲れさまでした。今回は天気に恵まれて本当に良かったと思います。