JR東日本の通勤電車を製造する新津車両製作所   2011年8月5日(金)

ドーミーイン新潟…新潟駅―(信越本線)―新津駅…(20)…新津車両製作所・取材…(20)…新津駅―(信越本線)―長岡駅―(上越新幹線)―越後湯沢駅―(上越線)―水上駅―(上越線)―高崎駅―(湘南新宿ライン)―新宿駅・解散



 今日は、夏期合宿の最終日、JR東日本の新津車両製作所を取材する日です。部員たちは、朝早くからホテルのロビーに集結しました。早速、新潟駅へ行き、新潟駅で夜行電車の「きたぐに」などを撮影しました。その後、信越本線に乗って、新津駅へ行きました。



 新津車両製作所は、新津駅から歩いて20分ほどの所にあります。製作所の入り口に着くと、「待っていました」と新津車両製作所の方々に、本部事務所に案内されました。早速、新津車両製作所の概要について説明をして下さりました。



 新津車両製作所は、新潟支社が所管するJR東日本の鉄道車両製造工場です。1999年に西武鉄道が直営する西武所沢工場が車両製造を終了したので、新津車両製作所が日本で唯一の鉄道事業者直営による鉄道車両製造工場となりました。



 鉄道事業者の傘下にある日本の鉄道車両メーカーならば、東急車輛製造東京急行電鉄)、近畿車輛近畿日本鉄道)、日本車輌製造JR東海)、軌道向け車両を製造するアルナ車両阪急阪神ホールディングス)などがあります。



 JR東日本は、車両の計画から設計、製造、運用、保守、廃車後のリサイクルまで「車両トータルマネジメントの実現」を目標に、1994に、新津車両所電車の新造工場に改組転換し、東急車輛製造から技術を供与し電車の製造を始めました。自社生産は、車両調達コストを抑え、車両生産の技術の向上にもつながるそうです。



 車体となるステンレス板を加工するところから生産を行い、台車も当所で製造しています。CAD・CAMやロボットを活用した生産を行っていて、稼働日の生産量は11両、年間の生産能力は250両にもなります。2011年現在の累計生産両数は、3611両です。



 私たちは、車両製作所の概要について学んだ後、工場の中を見学しました。最初に加工工場を見学しました。まずは、台車を加工する所です。三次元レーザー切断機を用いて、台車の素材となる板を加工していました。薄い板はレーザーで、厚い板はガスで切断します。次にレーザー溶接とパレットパンチプレス。レーザーのヘッドを斜めにして台車の溶接をしていました。素材に穴をあける作業で、完全な丸はパンチ、複雑な形の穴はレーザーであけます。1両を組み立てるのに必要な素材は、プレスブレーキロボットにより自動で搬入されます。ストレッチフォーマーにより、車体の屋根上の垂木を組み立て、側柱を引っ張りながら曲げ形を整えます。1両につき約40本の側柱が必要です。



 次に加工組立工場と構体工場を見学しました。車体を引っ繰り返した状態に固定し、側の骨組みに側を溶接していました。屋根と側の6面体を組み立てる行程を行っていました。電車の部品が大きいので、青い門形の機械が自動で動き、抵抗溶接、スポット溶接、アーク溶接を駆使して車体に様々な部品を取り付けていきます。3基の10t天井走行クレーンが稼動していました。



 次に自動艤装工場を見学しました。車体をほぼ完成される所です。車体に窓ガラス、配線、床下機器、屋根上機器を取り付けます。完成した車体の配線検査なども行います。手作業の部分が多い工場です。そして、台車工場を見学しました。溶接技能が重要な工場です。五面加工機で精度の高い機械加工を行います。



 台車入れ工場で、最終工程を行います。リフティングジャッキを用いて、台車の上に車体を乗せます。各車輪に均等に車重がかかっているかの輪重測定などの検査を行います。外装は先頭車の前面のみ塗装で行われ、他の部分はスピールをつけます。



 完成した車両は、新津車両製作所構内の試験線で編成検査が行われます。その後、新津駅と羽生田駅間で試運転が行われます。120km/hでの1分間の走行が可能か、その時に非常ブレーキをかけて600m以内の距離で停止できるか、走行中の車軸の温度などを確認します。



 工場を見学してから、本部事務所へ戻り、現在の新津車両工場の取り組みについて伺いました。今、山手線のホームドア設置に向けての準備をしています。山手線11両編成の中に連結されている6扉車を全て4扉車に置き換えるのです。山手線の先頭車、乗務員室の付いている1号車と11号車は、他の山手線中間車両と違い、乗務員室に近い扉の位置が若干ずれています。中間車の中でも10号車の扉の配置のみ、いずれ先頭車に改造工事が出来るように、先頭車と同じ配置に準備工事を施しています。



 E231系とE233系の違いは、機器の二重系化が進められたことです。例えば、ドアユニットが故障しても、隣に設置されたもう一つのドアユニットがバックアップをし、隣の駅まで運行できるようになっています。予備のパンタグラフも設置されました。また、今後展開される相互乗り入れに備えて、小田急電鉄4000系と同じ使用のものを導入しています。相模鉄道の車両との共通使用も計画中です。常磐緩行線と小田急電鉄では、小田急電鉄の路線の方が車輌の断面を狭くする必要があるので、機械を搭載するスペースの確保が難しいとのことでした。特に、地下鉄千代田線を走るので、法律に基づき先頭車の前面に扉を設置しなくてはいけない。各社ごとに、無線装置、ATS、保安装置が異なるので、各社専用の機器を乗せなくてはならない。ただし、京葉線や横須賀線場合、地下線断面の面積の違いから特例が認められ、先頭車前面に扉を設置しなくても良いことになりました。



 E233系からは、踏切でのダンプカーとの衝突事故を想定して、先頭車にサバイバルゾーン、先頭の下部にクラッシャブルゾーンを設けて、客室と運転室を保護する形になりました。車種が代わる時、最初に実力の高い東急車輛に試験的に製作してもらいます。出来上がった車両の問題点を確認してから、新津車両製作所で本格的に製作を開始することにしています。東急車輛は手作業で製作する部分が多いが、新津製作所は機械による自動化進んでいるので、製作を始めてから問題点が明らかになると、機械の設定を変更するのにたいへんな手間がかかるのです。



 山手線車両の製作が終わってからは、東海道本線車両の製作に集中するそうです。現在、工事が進められている、上野駅と東京駅を結ぶ東北縦貫線の開通に備えてのことです。



 新津車両製作所は、JR東日本各支社、各車両センターと電車区、提携先の東急車輛製造と、専用回線による情報ネットワークが構築されていて、設計情報などを共有しながら設計と製造を行うことが可能です。JR東日本東京横浜八王子大宮千葉の各支社からユーザー情報、東京総合車両センターから改造工事に関する情報、長野総合車両センターから部材調達に関する情報、各車両センターと電車区からは車両履歴と故障情報、部外の車両メーカーからは設計と製造に関する情報が送られてきます。今後、南武線の車両の製作も予定されています。各車両製作工場の年間製造数が限られています。どのメーカーが製造するか、今後各メーカーと連絡を取り合って決めるそうです。



 今日の取材は、新津車両製作所の方々が新設に対応して下さったお陰で、JR東日本の通勤電車の製造について詳しく学ぶことが出来ました。部員たちは、良い取材が出来、たいへん喜びました。今年度の学園祭に多いに役立てたいと考えています。



 取材の後、新津駅に戻り、上越線の普通電車を乗り継いで新宿駅を目指しました。途中集中豪雨の影響で電車が不通となり、代行バスを出している区間がありました。時刻表で確認すると、代行バスに乗った場合、新宿駅までうまく電車が接続しないことが分かりました。長岡駅―越後湯沢駅間のみ上越新幹線に乗りました。越後湯沢駅から水上駅までの間、部員たちは大清水トンネルのループ線の景色などを興味深めに眺めていました。高崎駅で、湘南新宿ラインに乗り換え、無事に新宿駅で解散しました。