大阪市交通局森之宮検車場 2010年8月18日(水) |
今回の夏期合宿では、大阪の鉄道を見学しました。初日の午前中は大阪市営地下鉄の森之宮検車場を見学させていただきました。森之宮検車場では、中央線、谷町線、千日前線の車両の全般、重要部検査を行う工場部門と月検査、列車検査を行う検車部門に分かれています。工場には、車体と台車を切り離す時に使うクレーンがありました。(鉄研部 中3B モッティー) |
検査の工程は、まず、4年間の汚れを落とします。それから、台車と車体を切り離し、車体はその場で整備します。台車は、まずモータを取外します。それから洗浄機で台車の汚れを落とします。部品の手入れは、手作業でしています。最後に点検をして。車体と台車を合体して、試運転をして、完了です。森之宮検車場は5年後工場部門を緑木検車場に統合します。なぜかというと、緑木検車場の方が効率が良く作業ができるそうです。森之宮検車場がとても広くてビックリしました。(鉄研部 中3B モッティー) |
写真は、大阪市営地下鉄中央線と森之宮検車場を結ぶ出入庫線です。大阪市営地下鉄は、日本初の公営地下鉄として、1933年に御堂筋線の梅田駅-心斎橋駅間が開業しました。現在、1~8号線の8路線が営業中です。路線網は、此花区、西淀川区を除く大阪市22区と守口市、吹田市、東大阪市、堺市北区、八尾市、門真市に広がっています。日本最大の公営地下鉄です。民営・第三セクターを含めても、東京地下鉄に次ぐ路線数、営業距離、駅数です。 |
大阪市営地下鉄は、都市計画道路と一体的に整備するという市政方針上、全線が軌道法による軌道線区として建設、経営されました。ただし、大阪港トランスポートシステムから移管された区間は、鉄道事業法による鉄道線となっています。線区は、「高速電気軌道第○号線」という呼称を例規上用いています。 |
信号所の近くにあるポイント切換スイッチです。ここで、営業線を走る電車の運転士と森之宮検査場の中を運転する運転士が入れ替わります。運転室から操作が出来ます。LPB方式を採用しています。ここで、入りたい線路を選択しスイッチを押すと、その線路までのポイントが全て切り替わります。 |
電車が急停止をしたり、線路に乗っている異物を踏むと、車輪の踏面、線路に乗る部分にフラット、傷が入ります。車輪の踏面に傷が入ると、騒音や振動の原因となります。各車両、2年に一度は、こちらの車輪転削場にて、車輪の旋盤を行います。 |
自動車輪転削装置です。2年たたなくても、異常な騒音や振動があると、傷が入っていないか確認し、こちらで車輪を転削します。 |
傷の入った車輪の踏面を回転させながら削り、正しい踏面形状に戻します。 |
車輪の変形や傷を削ってなくし、車輪を完璧な円形にすることによって、騒音や振動を減らします。 |
少しずつ車輪を回転させながら踏面を削り、車輪が一回転したら完成です。 |
削られた鉄屑は、車輪転削場の外のドラム缶に集められます。転削を繰り返すことにより、車輪の直径が少しずつ短くなります。車体の高さは、台車により調整されます。 |
電車の床下の機器や台車に付いたホコリは、列車集塵棟で落とされます。 |
気吹き装置により、電車の足回りのホコリを除去します。 |
電車から集められたホコリは、一箇所に集められます。 |
電車を少しずつ動かしながら、列車集塵装置による清掃作業が行われます。 |
前後検査棟です。こちらで、電車の全般検査や重要部検査の準備をします。 |
検査ピットにて、台車と車体を切り離す準備をします。 |
検査棟の入場口です。全般検査や重要部検査は、各車両の装置を取外して精密な検査を施すので、電気は切った状態で各車両が検査棟に入れられます。電気の入っていない車両を、小型のアントが牽引します。 |
第三軌条方式の地下鉄は、架線のない分小さい地下道、安い費用で建設されます。地下道が小さい分、冷房装置の室外機が、その条件に対応できる平型の物が必要になります。 |
天井走行クレーンで、車体と台車を切り離し、それぞれ別々に検査をします。 |
車体は、台の上に乗せられます。車体の床下に天井走行クレーンのアームに乗る受と台に乗る受けが付いています。 |
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台車の重量は7t、車体の重量は20tです。直線の線路上であれば、台車を一人で押し動かすことが可能です。 |
直線の線路上であれば、電車も6両編成ぐらいなら鉄道研究部員9人で押せば、動かせるそうです。ところが、線路がちょっとでも曲がっていると、何人がかりでもびくともしないそうです 。 |
検査棟にて、車体と台車が別々に検査されます。車体の各部品が外されて、各部署で検査されます。 |
台車を運ぶトラバーサーです。 |
台車を70℃の温水で洗浄する装置です。 |
写真は、自動揺動洗浄装置です。各ボックスごとに違った洗浄剤が入っていて、車輪の滑らかな回転に必要なベアリングを洗浄します。 |
台車を塗装場です。中に、台車を塗装する産業用ロボットが入っています。 |
駆動車の台車です。 |
台車に備え付けられたブレーキシューを付ける装置です。電車が停車している時、ブレーキシューが車輪に押し付けられ、電車を動かない様にします。 |
台車の横に備え付けられた集電装置です。突き出た板が第三軌条に接し、電流を電車に電気を供給します。写真の右上に写っているポンプは、ブレーキシリンダです。圧縮空気の力で、ブレーキシューを車輪に押し付けます。 |
この台車には空気バネが備え付けられていて、車内の乗客数が変っても、または多くの乗客が著しく偏って車内に座っても、車体を常に同じ高さに水平に保ちます。 |
写真の左側が交流モーター、右側が駆動装置、ギアケースです。モーターとギアケースの車軸が反対向きに回る構造になっています。 |
写真は、洗浄された車輪です。車輪の直径は、860mmです。ゴム製の防音リングが備えられています。 |
車体から各装置が取外され、精密な検査が行われます。 |
界磁枠自動気吹洗浄装置です。圧縮空気でモーターのほこりを飛ばします。 |
検査棟にて、台に乗せられた車体です。 |
乗務員室に備え付けられる扉開閉スイッチです。 |
電車の床下から外された遮断器です。 |
車体の床下に装備されている作用装置と試験用空気栓です。 |
小物を洗浄するコーナーです。 |
電磁便の自動検査器です。 |
空制部品自動試験装置です。 |
VVVFインバータ装置の働きを検査しているところです。 |
森之宮検査場の南側にある検査棟を見学しました。こちらでは月検査や列車検査が行われています。私たちは、1984年に中央線に導入された20系車両を見学しました。 |
20系は、大阪市営地下鉄で一番最初にVVVFインバータ装置を導入した車両です。 |
第三軌条方式の鉄道としては、日本で初めて交流モーターを搭載した車両です。 |
月検査場にあった新20系です。20系と比べて外装のデザインが一新されました。車体構造も、アルミ合金からステンレス鋼に変更されました。 |
北側の車両保存庫を見学しました。路面電車とトロリーバスが保存されていました。 |
801形路面電車です。大正10年に製造さました。1932年に木造大型ボギー車の1001型の電装品と台車を利用して鋼体の小型ボギー車となりました。1964年に廃車となりました。 |
801形の車内です。左右非対称の窓配置を採用し、車体中央には自動戸開閉装置を備えた幅1500mmの両開き扉を設置しました。当時としては画期的な設計だったそうです。 |
2201形路面電車です。1954年に大阪市電の近代化のさきがけとして導入された電車です。台車に弾性車輪を採用し、騒音と振動を和らげました。 |
2201形の車内です。1965年には、ワンマンカーに改造されました。 |
車内に掲げられた大阪市路面電車案内図です。 |
200形トロリーバスです。大阪市のトロリーバスは、1953年に神崎橋―大阪駅前間で営業を開始しました。市電よりも建設費が安く済んだので、1963年には、134台が38kmの路線を、一日平均18万人輸送するようになりました。 |
トロリーバスの運転席です。架線の制約があるトロリーバスは、自動車が混雑すると、時間どうりに運行することが難しくなり、1970年に廃止となりました。 |
トロリーバスの車内は、外から見た感じよりは広々としていました。 |
保存庫には、マスコンや路面電車の構造を説明する模型もありました。 |
1960年に大阪市営地下鉄に導入された50系電車です。 |
50系電車の台車に付けられた集電装置です。 |
50系電車の車内です。 |
50系電車の運転室です。 |
1969年、ちょうど大阪万博の開催の頃、阪急千里線と堺筋線の相互乗り入れに備えて導入された60系電車です。阪急電鉄との乗り入れのため、架線方式の電車です。 |
60系の運転室です。写真の右手前に写っている箱は、阪急線内を走るときに必要な装置です。この電車が普通か急行かを阪急線内の各踏切に伝達し、遮断機を閉めるタイミングを調整します。 |
乗務員室の扉開閉スイッチが阪急仕様になっています。 |
この日、森之宮検車場を訪れたら、検車場の入り口にある守衛の方が、「今日は凄く暑いので、こちらで待つように」と私たちを冷房の効いた守衛室に入れてくださりました。その後、案内の方が迎えに来てくださり、会議室へ招かれました。会議室で、森之宮検車場の概要について教わり、詳しく見学させていただきました。資料も沢山いただきました。忙しい中、親切に対応していただき、たいへん有意義な取材となりました。部員一同、感謝しております。 |