箱根ロープウェイ 早雲山・姥子        2008年8月20日(木)

早雲山駅・緊張装置・見学―(箱根ロープウェイ)―大涌谷駅・検査ピット・見学―(箱根ロープウェイ)―姥子駅・運転指令所・原動機・見学−(箱根ロープウェイ)―早雲山駅−(箱根登山ケーブルカー・箱根登山鉄道)―小田原駅・解散

 箱根ロープウェイは、早雲山駅・大涌谷駅間と大涌谷駅・姥子駅・桃源台駅間の2路線に別れて運転されています。複式自動循環式(フニテル)を採用しているために、風速30mまで安全に運行できます。通常は、三相交流誘導電動機を用いて支えい索を動かしているが、故障や停電の時にはディーゼルエンジンを使用します。利用客の混雑により、3m/s・4m/s・5m/sの速さで支えい索を動かします。各ゴンドラと運転司令室は、無線で連絡できます。

 フニテルの語源は、フランス語のFuniculaire(鋼索鉄道)とTeleferique(架空索道)の造語といわれています。(箱根ロープウェイのHPより)


写真は、箱根ロープウェイの早雲山駅です。写真の上側に写っている肌色のレールが、駅構内のロープウェイの索道です。右奥へ行く索道がついています。その奥がゴンドラの格納庫になっています。写真の手前が、索道の切替えポイントになっています。索道が回転して、本線から格納庫へつながる仕組みです。


 箱根ロープウェイに始めて乗りました。知らない事ばかりでした。たとえば輸送量が世界一位ということや、沿線が特別地域に指定されているため、大涌谷駅でゴンドラを乗り換える体制になったことです。取材では、すごく分かりやすい説明を受けました。ありがとうございました。


写真は、索道や滑車を検査するための検査用ゴンドラです。ロープ・支柱に付いているローラーの検査を、夜間に発電機で照明をつけています。ゴンドラ、握索機の検査や走行輪の検査は月に1度行われます。2002年6月に早雲山駅−大涌谷駅間、2007年6月に大涌谷駅−桃源台駅間で、複式単線自動循環式(DLM)フニテルの運行を開始した時、索えい索を設置するのに6ヶ月かかりました。最初に細いロープを滑車に乗せ、次に中くらいの太さのロープをつないでロープを回しながらロープを付け替え、最後に直径48mmの支えい索(ゴンドラを吊るして動くロープ)に付け替えました。現在支えい索の交換は、4〜5年に1度行われます。その時には営業を休止し、4日で行います。

写真は、ゴンドラの上部に付いている握索機です。ゴンドラが駅を出発する時、この握索機が支えい索(駅間をぐるぐる回っているロープ)を強い圧力で握り、ロープの流れに乗ってゴンドラが次の駅に向かいます。ゴンドラが駅に到着した時、この握索機が開きロープを放し、ゴンドラが駅構内の索道に吊り下がり停車します。


写真は、姥子駅にある運転司令所のモニターです。駅、原動機、緊張装置、支柱の様子が映っています。混雑の状況を見て、ロープのスピードを4m/sから5m/sに上げたりします。なるべく乗客に景色をゆっくり見てもらうために、スピードの調整は慎重に行います。支柱の監視については、他にロープとローラーの間にセンサーがついていて、ロープが走行中に滑ったり浮いたりすると、RPD制御盤(ロープ位置検査装置)が作動して、ロープが脱索する前にロープウェイが停止します。


写真は、姥子駅の運転指令所にある観測機です。大涌谷など最も風が強い地点での風速データが送られてきます。風速30mになる前に営業を中止します。かつては年間1ヶ月は強風により営業を中止する日がありましたが、フニテルになってからは営業中止の日数は1/3に減りました。運転指令所の隣、別室にインバータ制御方式の速度制御装置がありました。硫黄ガスの影響を避けるために空調設備を整え、年間の室温を26℃に保っていました。


写真は、運転指令所の隣にある別室にインバータ制御方式の速度制御装置です。硫黄ガスの影響を避けるために空調設備を整え、年間の室温を26℃に保っていました。



写真は、箱根ロープウェイの支えい索(ロープ)をまわす原動機です。下の写真は、停電などの非常事態の時に作動するディーゼルエンジンです。1m/sのスピードでロープを動かし、ゴンドラを駅に回収します。


写真は、姥子駅にあるロープ(支えい索)をぐるぐる回す原動機です。直径4mくらいの大きな2つの円盤が、姥子駅と早雲山駅の間に2周に張られたロープを動かし、ゴンドラが屋根についている握索装置で並列している2本のロープを強く握り、各駅を行き来する仕組みです。運転速度は毎秒5m、輸送量は毎時1440人です。1つのゴンドラに18名が座って輸送できる設計になっています。ギネスブックでは、世界一多くの乗客を輸送したロープウェイ、年間2010059人と認定されています。現実には乗客の多くが箱根フリーパスを用いて1日に何回か乗っているので、延べ利用客数では年間360〜370万人になります。部員たちは、この巧みな仕組みに大いに興味を示しました。

 箱根ロープウェイは、早雲山駅から桃源台駅までを結んでいます。途中、大涌谷駅で桃源台駅方面へ乗り換えます。かつてはゴンドラが直通で行きましたが、今は行きません。その理由は、ロープウェイの沿線が特別地域第一種に指定されているため、直通運転ができるように支柱と支えい索を配置できませんでした。早雲山方面が上り、桃源台方面が下りに区分されています。輸送力は1440人/時です。年間輸送人員は、ロープウェイとしては世界最大でギネスブックにも登録されています。フリー切符の利用者を換算すると年間360〜370万人が利用しています。早雲山駅と大涌谷駅の高低差は287mあります。フニテルは、風速30mまで営業できます。姥子駅にゴンドラの検査ピットがあります。その検査ピットで各ゴンドラを2ヶ月に1回ずつ検査しています。検査線では索道にゴンドラを吊り下げて人力で動かします。検査ピットと本線との間にロープウェイの切替え装置(電車でいうポイントレール)があります。切替え装置は、索道がゴンドラを吊り下げたまま回転する仕組みです。姥子駅には運転指令所があり、天候や風をチェックしています。停電で原動機が停止した場合、予備のディーゼルエンジンを使って支えい索を動かします。(鉄研部員 中2C 快速登戸)

箱根ロープウェイの支えい索を引っ張る緊張装置は、早雲山駅、大涌谷駅、桃源台駅にあり、運行するゴンドラの数や利用客の数によって、ロープウェイの支えい索がたるまない様に作動しています。写真は、早雲山駅にある緊張装置です。1本6000mの支えい索を100t、942KNの力で引っ張っています。この装置がかなり大掛かりなものだったので、部員たちは、機械の動きとその轟音に圧倒されました。


 ロープウェイの真下の道路には、屋根が備え付けられています。これは、ゴンドラの落下に備えてのものではありません。乗客がゴンドラから私物を落とした時に備えてのものです。

今までに何度もロープウェイやケーブルカーに乗ったことがありましたが、その仕組みが良く分かりませんでした。今回の見学で、分かりやすく説明していただきました。次回、また別のロープウェイも見学してみたいです。今日はお忙しい中、見学させていただきありがとうございました。たいへん分かりやすい説明で、とても良い取材になりました。(鉄研部員 中2C カワマタユーキ)


写真は、ゴンドラの中から見た大涌谷駅です。左側に写っている白い建物がかつての大涌谷駅です。右側に写っている赤い建物が新しくできた大涌谷駅です。

 今回箱根ロープウェイを取材して、疑問に思っていたことが分かりました。一つは、早雲山駅から桃源台駅まで、なぜゴンドラを直通に運行する仕組みにしなかったかです。今回の取材では、直通運行の計画があったのですが、以前のロープウェイ早雲山駅・大涌谷駅間を営業運転しながらフニテルを設置すること、ロープウェイの沿線が特別地域第一種に指定されていることから、旧大涌谷駅の隣に新駅が設置され、大涌谷駅で乗り換えることになった事を知りました。このことを聞いて、「そんな事情があったんだ」と感じました。この他にもロープウェイの支えい索のことやゴンドラの構造についても見学でき、ロープウェイの仕組みについて全てが分かるような取材となりました。(鉄道研究部 高校部長 高1B サイトー)