相模鉄道 かしわ台工機所 2002年8月9日(金)
明大前駅―(井の頭線)―下北沢駅―(小田急電鉄)―海老名駅―(相模鉄道)―かしわ台駅…かしわ台工機所・取材…かしわ台駅・解散
本日、鉄道研究部は、かしわ台工機所にて相模鉄道の電気機関車や電車の整備点検、車両の性能、工機所の設備について学びました。機械の洗浄、車輪の旋盤などを見学しました。
以前、相模鉄道の車両検修施設は、星川駅に隣接して星川工機所が設けられていました。沿線の急速な発展に伴う車両数の増加に対して、拡張するには地形的な限界に達していました。
そのため、1967年9月1日にかしわ台に検車庫を新設、続いて1971年12月15日には修車工場が完成し、星川の車両検修施設が全て移転し、1972年1月16日より現在のかしわ台工機所が新しく発足しました。その後、車両数の増加と10両編成運転に備えて、1981年4月22日に検車庫(2線延伸)、艤装職場などの施設を増築しました。
現在、かしわ台工機所は、敷地面積19059.2u、建物面積は工場棟が11255.9u、最大検修能力176両/年の施設です。主要業務は、鉄道車両の検査、故障修理、改造工事、各種試験、鉄道部品の修理、新造・改造車の取引検査、請負工事の監督などです。
検査の種類は、電気車に対する、その種類と運行状況に応じて6日以内に1回行う列車検査、車両の使用状況に応じて各部の状態や機能について3ヶ月以内1回行う月検査、重要な装置の主要部分について4年または走行距離60万km以内の期間に1回行う重要部検査、8年以内に1回車両の主要部分を取外して行う車両の最高検査である全般検査、製作時、改造時、重大事故発生時に車両の一部または全般にわたってその状態や作用について行う臨時検査などです。
検修作業の基本方式は、以下の通りです。全般検査作業と重要部検査作業は検査内容が異なるため、作業を完全に分離し、作業が円滑かつ均一に流れるように考慮されています。
車体の移動にはトラバーサー方式を、部品着脱には車体定置方式を採用しています。トラバーサー方式は、クレーン方式に比べ建築費が低く、専任者も不要であり、車体定置方式は、車体移動方式に比べ比較的小規模な建物ですみ、特殊な車体運搬動力も不要です。
検査中の車体は、リフティングジャッキや油圧昇降仮台車により自由に上下させ、作業姿勢が立ち姿勢か腰掛姿勢で、なるべく下向き作業に統一しました。
フォークリフトを使用して出し入れ可能な棚を設置し、主電動機、MG、CP、主制御器、MRなどの予備品や、要検修部品を立体的に格納して、床面積の利用効率を上げ、部品の出し入れの能率を向上させました。
運搬距離が最短になるように職場を配置し、機器、器具の運搬作業には、天井クレーン、トラバーサー、フォークリフトなどの機械力を増強して、作業時間を短縮しました。
台車自動洗浄機、部品自動洗浄機、回転機、電気機器、空制部品などの気吹き用集塵装置を設備して、作業の安全性向上と機械化を図りました。
台車自動洗浄機は、全自動温水ジェット式で、水洗、薬洗、仕上洗が約20分で完了します。台車枠以外にも車輪、モーター鏡蓋などにも使用できます。
部品自動洗浄機には、部品を洗剤中で上下に揺動し、液を攪拌して洗浄する揺動式洗浄機と、超音波により洗剤中の部品を洗浄する超音波洗浄機、噴射式洗浄機が設置されています。
検車庫内での気吹作業などで発生する塵埃は、集塵機により処理されます。
塗装職場の排気装置には、塗装吹付時に発生する有機溶剤を活性炭吸着による脱臭装置を設け公害防止に努めています。
輪軸着脱用に400tの油圧プレスを設置し、車輪、車軸の保守交換を行っています。
車輪の踏面は、フライス切削する方法の車輪転削盤で、車輪を削正しています。
車軸、台車枠、台車部品などの細かい傷の検査には、磁粉探傷機が用いられます。
10tクレーン2台、2.8tクレーン3台、2tモノレールホイスト1台、0.5t2台を設置し、安全な作業と作業効率の向上を図っています。
台車と車体を所定の作業場へ移動させるために10t台車トラバーサーと50t台車トラバーサーが設置されています。
検査作業時、台車交換時の車体昇降用に、12基のリフティングジャッキを使用して、作業性の向上と効率化を図っています。
台車の分解、組立用に特別製の台車作業台を作成して、作業の安全性と合理化を図っています。
新7000系車両です。昭和から製造車両が80両に達しましたので、1985年の増備車から7000系を一新しイメージチェンジした車両です。現在、湘南台方面を中心に走っています。在籍車両は140両で、そのうち40両がVVVFインバータ車両です。新7000系、8000系、9000系には、自動窓、空気バネ、アルミ車体を導入しました。
8000系車両です。1990年に前面モデルチェンジした大型車体と大容量G.T.Oサイリスタを採用し、1台で150kWの交流誘導電動機8台を制御します。車内は、ロングシート車とセミクロスシート車があります。車内には、大画面LED客室案内表示器が設置されました。
9000系車両です。1993年に登場したアルミ製の塗装車体です。現在、7編成70両が導入されています。5両目、8両目がセミクロスシート車です。
10000系車両です。2100系や新6000系の置換え用として10両編成で登場しました。JR東日本E231系をベースにして製作されました。10両1編成で従来車両は約13億円でしたが、10000系は約10億円で製作されました。今までアルミをベースに車体が製造されていましたが、10000系はオールステンレス車です。軽量化による電気使用量や騒音の軽減をはかりました。今までの車両は直角カルダン方式でしたが、平行カルダン方式を採用し、メンテナンスの簡略化を図りました。また、床面の高さを9000系より2.5cm低くし、ホームと車両の段差を減らしました。
新6000系電車です。1970年から1974年にかけて70両が製造された車両です。6000系の16次製造分以降に当たります。車体や走行機器類が大きく変更されたことから、新6000系と呼ばれて旧6000系と区別されます。相鉄では本系列製造中に初代5000系電車や2000系電車などの旧型車両を軽量なアルミ車体に載せ替える改造を行い、アルミ車体の優位性が確認され、本系列は70両で製造が打ち切られました。その後は本系列とほぼ同じ設備を有するもののアルミ車体の7000系電車の製造へと変更されました。
ED10形直流電気機関車です。貨物列車牽引に使用されていたモワ1形電動貨車を本来の旅客電車に復元し、その後継車として1952年にED11が東洋電機製造によって製造されました。1953年にED12が、1954年にED13が、1965年にED14が製造されました。外観は箱型のデッキ付きの新製された車体ですが、台車や主電動機は電車の部品が流用されました。最盛期にはセメント、砂利、一般雑貨輸送の他に在日米軍の燃料を輸送しました。
本日は、相模鉄道かしわ台工機所の方々が丁寧に工機所の設備と役割、検査の手順について詳しく教えて下さりました。お陰で、学園祭に向けて貴重な資料を得ることが出来ました。