第三話 移動のバスは大騒ぎ♪
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「Hey、DJ! かませ Yeah!Yeah!Yeah! 気分上々の〜♪」
バスに乗って10分。なぜか始まるカラオケ大会。
皆好きだな〜。私はカラオケは苦手なんで聴いてるだけなんだけどね。
「栞〜あんたも歌いなさいよ〜」
クラスのお友達が私が歌っていないのを目ざとく見つけて歌本をもって迫ってくる。
え〜ん、私は歌は苦手なんだよ〜><
「あはは、私は良いから皆で歌ってよ」
「栞!それは許されないわ!今日は親睦会なのよ。というわけで次は栞ね!これ確定!」
どうやら逃げられないようだ。
「もう、わかったわよ〜じゃあ、ちょっと本貸してくれる?」
仕方ない……唯一まともに歌える曲でもやろう。
「みんな〜次は栞が歌うわよ〜謎に包まれていた美少女は果たしてどんな歌を披露してくれるのか!」
「おお!ついに栞さんの歌が聞けるのか!俺楽しみだったんだよね!!」
「楽しみだ〜俺はこれが楽しみで今日のイベント参加したようなもんだ」
「おいおい、他に楽しみねえのかよ!」
「他にもあるが、とりあえずこれも楽しみだって事だよ」
「というわけで皆聞くように!」
「ちょ!勝手にあおらないでよ〜><」
なにやら大変なことになっちゃったような(^^;
こうなったら由香ちゃんに助けを!
「栞〜いつもの奴でしょ?入れといたよ〜♪」
……す、すばやい。
こ、こうなったら佐々木君に!
だが、助けを求めた佐々木君はバス酔いをしたらしくぐったりしている。
え〜い!こうなったら鈴木君だ〜
鈴木君はそんな佐々木君を介抱していた。
(く〜そろいもそろって役に立たないやつらめ〜)
もう、こうなったら覚悟を決めて歌うっきゃない!
イントロが流れ出す。
(え〜い!やっちゃうからね!)
「とま〜らない〜未来を〜目指して〜♪」
し〜んとなっている車内。
ああ、皆さんごめんなさい私は皆さんの期待に答える事が出来ませんでした〜(T-T)
「光にかざそう〜♪」
歌が終わった後もし〜んとなっている車内。
(こ、ここまで外しちゃった?これはこれでショックだな〜(T-T))
ささっと自分の席に戻りやっぱり歌わなきゃ良かった〜と後悔していると、
「す、すげ〜!何?今の何?本物の歌手が歌ってるの?」
「やべ〜!すげ〜の聞いちまったよ俺」
「栞さん!最高です!!もう一曲行きましょう!!!」
「く〜、栞ったらこんな良い隠し玉持ってるなんて〜」
なぜか大盛り上がりの車内。
「一緒にカラオケ行っても小笠原さんったら歌わないから気づかなかった〜!もったいない事した〜!」
え?え??どういうこと??
「まあ、こうなるのは分かってたんだけどね〜」
隣の由香ちゃんが得意げにしている。
「……どういうこと?」
「あんたの歌、ものすごいのよ。声は綺麗だし。容姿も良いしね。本物の田村直美が歌ってるのかと思えるほど綺麗な声なのよ」
「由香ちゃん、おだてても何も出ないよ」
「おだてかどうかはクラスの皆のこの反応見ればわかるでしょ?」
なぜかアンコールの声が聞こえてくる。
「こうなっちゃったら、とまらないわね〜がんばれ栞」
「もう!由香ちゃんのが歌うまいでしょう!私はもう歌わないからね!!」
そういうと私は座席を少し倒して寝たふりの体制に移行する。
ぇ〜!!というクラスからの不満の声も全部無視だもん!
「栞さ〜ん。もう一回歌ってよ〜」
クラスの男子の声も無視するもん!
私は寝たんだもん!!
「あちゃ〜、こうなっちゃったらしばらくはだめだね。しょうがない。じゃあ変わりに私が一曲行くよ」
歌いたくてうずうずしてたくせに。
勿体つけるのは昔から変わってないんだから由香ちゃんは。
そして、私は由香ちゃんがとっても上手なのを知っている。
それこそ歌えない曲は無いってくらいなのだから。
「じゃ、いっくよ〜!」
「この番組ではみんなの〜リクエストをお〜まち〜しています〜♪」
ああ、ミュージックアワーか。私も好きな曲だね〜
またしても静かになる車内。
由香ちゃん上手だもんな〜
「この夏〜は例年よ〜り〜騒々しい日が続くは〜ずさ〜♪」
そして、歌い終わり、またしても拍手喝采の嵐が巻き起こる。
「なんなんだこいつらは〜><」
「う、うめ〜!プロの集まりかこいつら!!」
「なんなの!なんなの〜この二人は〜」
「ゆ、由香さ〜ん!アンコ〜ル〜!!!」
うん、これは容易に想像できた。やっぱりこうなるよね由香ちゃんなら。
私の方でおかしい現象になったのは見なかったことにしよっと。
「いっそ由香さんと栞さんの二人で歌ってもらうってのはどうよ!」
「それだ!伊藤、ナイスアイデアだ!」
なんか話の方向性が私に関連してきてるような(^^;
しかも、なんかやば〜い予感が(^^;
「さて栞。寝た振りもそろそろ限界みたいよ?いい加減あきらめなさい。ほら私も一緒に歌ってあげるから」
にやにやと楽しそうな由香ちゃん。
くぅ、この展開読んでたわね?絶対にそうでしょう〜!!
「……由香ちゃん、はめたわね?」
「な〜んのことかな〜♪」
「明日からご飯作ってあげないからね」
「げげ!ま、ま、良いじゃない。親睦会なんだしぱ〜っと行こうよ!ね♪」
「はぁ、しょうがないな〜ここで断ったらクラス皆の恨みかいそうだし」
うんうんとクラス一同がうなずく。なんなんだこの連帯感は!
「よくやった松井二等兵!クラスの連帯感をこの上無く高めた功績は大である!よってこの功績を称えて少尉に昇進だ!」
「は!ありがたき幸せ!」
今まで静かにしていた藤林先生が急にそんなことを言い出す。
なんでも、生徒の親睦は生徒同士で深めるものである!教師は口を出すべきではないとか何とか……
それにしても二等兵がいきなり少尉に昇進ってありえない昇進だな〜(^^;
さらに、あろうことかこの先生、
「実は俺は田村直美の大ファンなのだ!というわけで栞少尉!もう一曲たのむ〜!!!!」
なんだかな〜、しかも少尉とかなってるし!
いつの間に尉官になったんだろう(^^;
「よし!栞いつものやつ行って見ようか♪」
「いよっしゃ〜!良いぞ〜松井さん!」
「由香さん素敵です〜」
移動のバスの中は私と由香ちゃんのカラオケオンステージに豹変したのだった。
私、歌苦手なのに〜(T-T)
「今更逃げは許さないわよ栞〜♪」