第二話 校外学習という名の親睦会
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「テステス、あ〜後ろのもの聞こえるか?」
藤林先生のマイクテストに答えるように列の後ろにいる生徒が聞こえてま〜すと返事を返す。
「おはよう。さて貴様らに嬉しいお知らせだ。本日遅刻しているものが2名いる。もし出発までに来なければ連帯責任で全員このまま学校で授業だ!」
ええ〜! と全員の口から不平不満が溢れ出た。
当然である。今日は校外学習という事でなぜかテーマパークへ行く事になっているのだから。
なんでも、最新の設備を見学しつつ、現在の技術はこういう制御が出来るのだということを自分の目で確認するため。
というお題目があるが、結局の所は生徒同士の親睦を深めるというのが目的らしい。
そんな素敵な行事を突如中止にしようというのだ。不平不満が出るのは当然。
「……と教頭は主張してきたのだが、そんなのはトイレにでも流してやれ! 貴様らはこれから3年間苦楽を共にする戦友だ。その戦友との親睦を深める機会を奪うなど断じて許さん! 昨日も言ったが遅刻した奴は自己責任だ。そいつらは授業でも何でも受けろ! 俺たちは遊びに行くぞ!! いいか野郎共! 今日は目一杯遊ぶぞ! 返事はどうした〜!!」
「「サー! イエッサー!」」
「ふざけるな! 声が小さいぞ!!」
「「「サー! イエッサー!!」」」
始まった……朝からテンションMAXだよ皆して。
隣でキラキラと目を輝かせている香織ちゃんが羨ましい。
(しかも人一倍声でてるし)
入学して一ヶ月もたつけど私は未だにこのノリについていけない(T-T)
周りの皆はノリノリでついていってるようだけど。
ちなみに鈴木君と佐々木君も困った顔でこちらを見ている。
どうやらあの二人もついていけてないようだわ。
となると私たちのグループで生き生きしてるのは隣の親友ただ一人か(^^;
「それでは、貴様らに課せられる任務の説明をしよう! 谷口先生よろしくお願いします」
藤林先生からスピーカーを受け取り現れた先生は現代国語の谷口先生。
ほんわかした雰囲気で皆を和ませてくれる先生で、
無類のゲーム好きとして早くも有名人である。
なにせ人気ソフトの発売日は決まって病欠というすばらしい先生だからね〜。
もちろん休んだ次の日は疲れきっててきちんと自習になるというのもお約束だね。
あんなんでクビにならないのかしら。
「それでわ皆さ〜ん。今日の目的ですが〜、一応最新の電子機器制御技術を学ぶと共に〜現在の技術ではこういうことも実現できるんだな〜ということを体感してくる〜といったものになってますがこれは建前です〜。藤林先生が言ったように〜思いっきり遊んできてくださいね〜」
「「「は〜い♪」」」
建前って……先生が自らそれ言っちゃだめじゃないの?
「なあ、栞。先生が自ら率先してあんな事言っていいのか?」
「私も同じ事思ってたけど、私にそれを言われても……」
鈴木君と二人でう〜んとうなっていると、
「良いじゃないか、遊びと割り切って思い切り楽しもうよ」
「その通りよ栞! 何を迷うことがあるの。遊びは全力よ〜><」
「そ、そうだよね。さすが松井さん良い事言うね」
「徹君ったら香織で良いっていつも言ってるのに」
「あ、あはは、と、ところで松井さん今日は……」
「栞〜、まずは占いの館からいくわよ!」
佐々木君ったら、タイミング悪いな〜
なるほど、朝からちらちら香織ちゃんを見てたのはそういうことか。
これは鈴木君が何か言ったわね?
そう思って鈴木君を見るとばっちり視線があった。
軽く片目をつぶったしぐさをみて私の考えがあってることを裏付けていた。
(まあ、お似合いの二人だと思うから私も協力するけど)
はてさて、どうなる事やら……
その後、注意事項や、時間厳守です! などの諸注意を受け、いよいよ出発の時間が迫ってくる。
「いよいよ出撃の時が来た。今この時をもって貴様らは蛆虫を卒業する。貴様らは……」
「大佐殿!予定時間をオーバーしております。このままですと全作戦に影響が出る恐れがあります!!」
「む! 松井二等兵か。うむ、時間は黄金より貴重だ。よし! 全員直ちに乗車だ! 急げ!!」
「Year!」
一体どこの軍人さんですか! と突っ込みたくなる答え方をしつつ、びしっと敬礼する我が親友。
(松井さんナイス!)
周りからの声に軽く手を振ってこたえる余裕すらあるのが素敵だわ。
朝から謎の軍人モード全快の藤林先生に引きずられるように皆のテンションも一気にMAXになったようだ。
かくいう私もぐんぐんテンションが上がってきている。
さあ、楽しい一日になりそうだわ。