時空の覇者 外伝 第四話 夜景のきれいな丘

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ここは、フォックス大陸でも、標高の高い山が連なるアルス山脈。
別名、フォックス大陸の屋根と呼ばれている山脈である。
その山脈の一つであるキラ山には一つの村があった。
その村は、今では伝説の種族となった人々がすんでいたのだった。
この物語は、そんな村の出身であるたっきーのお話である……

「ふ〜…里帰りも結構きついんだよな〜、なんで俺の村ってこんな山の中にあるんだろう」
たっきーは文句を言いながら必死に登っていた。
「ふふふ、でも私昔から山登りって好きでしたからそんなに嫌じゃないですよ」
たっきーのすぐ後ろにいた瑠璃は嬉しそうに登っていた。
(やれやれ、急に俺の生まれ故郷が見たいとか言い出すんだもんな〜……)
話は、三日前の事だった。
「たっきー様!私、たっきー様の生まれ故郷が見たいです。連れていって下さい」
「なっなんだよ、いきなりどうしたんだ?」
瑠璃の勢いに押されてしまいたっきーは少し後ずさりしながらそう聞き返していた。
「だって、私の故郷は見ましたよね?でも、私はたっきー様の故郷をまだ見てないんです
 これって、不公平だと思いませんか!?」
よくわからない理屈ではあったが、瑠璃の勢いに負けてしまいたっきーはコクコクと頷いていた。
「じゃ、さっそく行きましょう♪で、どの辺なんですか?」
「今からだと、暗いから明日向かうとしよう」

といった感じでたっきーの故郷を目指して旅してきたのであった。
(あれ?そろそろ村が見えてきても良いはずなんだが……)
そろそろ、村が見えてきても良いはずだったが一向に視界が開ける様子がなかった。
不思議に思ったたっきーは遠見の術を使い、村があるであろう場所を探してみた。
だが、村の姿は見つからず、森の木しか見えなかったのであった。
「むっ村がない?どういう事だ?」
たっきーが驚きの声を上げると後ろにいた瑠璃が何かの気配を感じたようだった。
「たっきー様、異様な魔力が充満していますが?この辺りはいつもこうなのですか?」
そこまで瑠璃に指摘されてたっきーは思い出した。
「ああ!そうだった、村にいくにはあれが欲しかったんだ。なんだ、そうか驚いた〜」
「たっきー様?」
たっきーは一人で納得していた。
そして、なにかの呪文を唱えはじめた。
瑠璃は黙って見守っていたが、次の瞬間大気中の魔力が一段と強くなり、眩い光が瑠璃達に降りかかった。
光が収まり、そっと目を開けた瑠璃の前に驚くべき光景が映し出されていた。
そこには、魔物と人々が一緒に暮らす村があったのだった。
「ここが俺の故郷『エデン』さ。魔物達も住んでるから普段は結界の中にあるのを忘れてたよ」
たっきーがすまなそうな顔でぺこりと頭を下げた。
瑠璃は周りをじっくりと見回した
魔物の子供と一緒に人間の子供も駆け回っているのだった。
それはとても不思議な光景だった。
そして、ふとこの光景こそがこの大陸の未来の姿なのではないだろうかと思うようになっていた。
「なあ、一通り見たら早い所立ち去ろうぜ」
たっきーはあまり長居したくないような感じだった。
瑠璃は理由を聞こうとしたが、なんとなく聞かない方が良い気がしたので黙って頷いたのだった。

たっきーに案内されて村の中を一通り見終わった時、空から一匹の魔物が舞い下りてきた。
「たっきー兄ちゃん!久しぶりだね♪。あれ?隣の子は誰だい?まっまさか!?」
その魔物は手の所が鳥の羽のようになっていた。
魔物は両手をはばたかせて急いで飛んでいってしまった。
「まっまずい!瑠璃!はやくこの村からでるぞ!」
瑠璃の返事も聞かずにたっきーは瑠璃の手をつかみ結界の外に向かって走っていった。
「ちょっ、ちょっとたっきー様?どうしたんですか〜」
「いいから!早くしないと……」
結界まで後少しという所でたっきーは愕然とした。
「ふっふっふ、高木!逃がさないぜ♪」
さっきの魔物が結界の所に立っていたのだった。
「くっ、ハーピィーか。やはり遅かったか……だが」
たっきーは魔力を溜めはじめた。
「おっおい!正気か?」
「いくぞ!必殺『エスケープ』」
たっきーの渾身の魔術は逃げのための空間転移魔術だった。
二人が消えた後を呆然と見つめていたハーピィーだったがはっと我に返った。
「しっしまった。逃げられたか、しかし、出口はここだけだ……
 そうか!あそこに逃げたな。よし、俺が追うからお前らはここにいろ」
ハーピィーは一人飛び去っていった。

転送に成功したたっきーと瑠璃は村外れの馬小屋の中にいた。
大きな魔術を使用した事によってたっきーは体力回復を図っていたのであった。
「…あの、たっきー様。お聞きしたい事があるのですが」
「ああ、あいつらの事か?」
「いえ、それもあるんですがそれよりも気になってる事があるんです」
てっきりハーピィー達の事を聞かれるものだと思っていたたっきーは少し意外そうな顔を見せた。
「あのですね、高木ってどなたですか?」
その質問を聞いた時たっきーは倒れてしまった。
「……あっあのな〜、最初にあった時自己紹介したよな?俺の本名が高木なんだよ。たっきーっていうのは愛称さ」
「ああ、そう言えばそうでした…すっかり忘れていましたわ」
瑠璃の答えを聞いてたっきーはすこし落ち込んだ。
「あの…ごめんなさい。いつもたっきー様と呼んでたもんでそれが本名なのかと…」
瑠璃のフォローになってないフォローで少しはたっきーも元気が出てきた。
「さてと、あいつらについてちょっと話そうか…
 あいつらは俺が昔この村にいた時の遊び仲間さ。
 得に羽の生えたやつ、ハーピィーって言うんだけどこいつが良いやつでな〜
 よく一緒になって悪ふざけしたもんだよ」
たっきーの話を神妙な表情で聞いていた瑠璃を見てたっきーは少し恥ずかしくなった。
「そっそんなにまじまじと聞かないでくれよ」
「え?あっ。すいません。それで、そのハーピィーさんと何かあったんですか?」
「いや、別に何も。今でもお互いに気のあう友達だと俺はと思ってるよ♪」
「は〜……。じゃっじゃあ、私たちを追いかけてくる理由は?」
「そっそれは…つまり…その……なんと言うか」
核心に触れようとした時たっきーは口篭もってしまった。
よほど話したくないのだろうと瑠璃は思ったがそうなるとどうしても聞きたくなってしまった。
思い切って瑠璃が問い詰めようとした時、馬小屋の屋根から一つの人影が落ちてきたのだった。
「よう、やっぱりここだったな。お前は昔からここにしか逃げ込まないからな〜♪」
人影の正体は先程話に出てきたハーピィーだった。
「はっ…ハーピィー…今回はやけに早いな」
「当たり前だ。お前が女を連れてくるなんて初めての事だしな。で、これがお前の女か…」
ハーピィーがまじまじと瑠璃を見詰めてきた。
「こんな奴でも結構良い奴なんだ。まっよろしく頼むぜ」
「え?ええ、それはわかってますわ」
「おい!こんな奴はないだろう?」
「いや〜それにしても久しぶりだな〜…で、世界を救った気分はどうだ?」
「ふっ、俺にかかれば造作もない事よ。といってみたいが実際の所俺は何もしてないよ
 全て志朗がやってくれたんだ。俺はその手伝いを少ししただけさ」
たっきーのその答えが意外だったのかハーピィーは驚きの表情を見せていた。
「なんだよ。そんなに変な事いったか俺?」
「ああ!昔のお前だったらもっと自慢していたはずだ」
「余計なお世話だ!」
急に馬小屋の中に和やかな空気が流れ出した。
瑠璃は呆然とハーピィーとたっきーのやり取りを眺めていた。
しばらくして、言い合う事がなくなったらしく二人が急に笑いだした。
なんとなく居場所がないような気がした瑠璃は外に出てみた。
外はもう夕暮れらしく、夕日がとてもきれいだった。
「きれいな夕日。きっと、星もきれいなんだろうな〜」
そんな瑠璃の後ろ姿にたっきーは見とれていた。
「おい、あの子と上手くやれよ♪じゃ俺はそろそろ帰るぜ鳥だけに夜目はきかないんでね」
ちょっとした笑いを取った後ハーピィーは飛び去っていった。
ハーピィーがいなくなって一人馬小屋に取り残されたたっきーは瑠璃の隣にきていた。
「もう暗くなってきたし今日はこの村に一泊しようか?ここは星もきれいに見えるよ」
「ほんとですか?よかった。私星空も見たいなって思ってたんですよ」
「じゃあ、ちょっと宿の手配をしてくるよ」
たっきーが宿をとるためにいなくなったと同じにハーピィーが舞い下りていた。
「やあ、瑠璃さんだっけ?俺の名はハーピィーって言うんだよろしくな」
「ええ、先程伺いました。よろしくお願いしますね」
「高木のことなんだけどあいつほんとに良い奴なんだ。だからよくへまするけどよろしく頼むな
 それだけを伝えたかったんだ。じゃまた会おうな」
そこまで言ってハーピィーは星空の海へ飛んでいった。
(夜目がきかないっていうのは嘘だったのね。良い人だな〜)
っとそんな事を瑠璃は考えていたら自然と笑みがこぼれていた。
「おまたせ、宿の方しっかりとってきたよ。あれ?どうかしたの?」
「いえ、たっきー様は良い友達を沢山もってますね。さあ、部屋にいきましょう」
部屋にいこうとした瑠璃をたっきーは呼びとめた。
「部屋にいく前に見せたいものがあるんだちょっとついてきてくれよ」
そういうとたっきーは宿とは別方向に歩き出した。
瑠璃も黙って後についていった。
二人は一言も話さずにすたすたと歩いていった。
どの程度歩いただろうか。視界が急に開けたのだった。
「ここだよ、この景色を君に見せたかったんだ」
そこは村全体が見下ろせる展望台だった。
空には無数の星空。眼下には村の光がとてもきれいな場所だった。
「きれいですね」
瑠璃は静かに感動していた。
「気に入ってもらえて良かったよ。ここが俺の一番のお気に入りなんだ」
少し照れながらたっきーはそうつぶやいた。
「……なあ、この村を見てどう思った?」
いきなりの質問で瑠璃もすぐには答えられなかった。
「う〜ん…まだ、そんなによくわからないけど。私は好きよ。だって……」
そこまで言った後瑠璃はたっきーの方を向いた。
「だって、貴方の生まれ故郷なんだもん。私、もっとこの村の事を知りたいな」
「え?それって…その」
「なんだかちょっと冷えてきたね。宿に戻ろうよ」
辺りが暗いので見えなかったが瑠璃はほほを赤らめていたのだった。
「私先に村に戻ってるね。貴方も早く戻ってきてね」
瑠璃は来た道を走りながら帰っていった。
「あ!まっまってくれよ夜道はあぶないって!俺もいくよ〜」
瑠璃を追いかけてたっきーも走っていったのだった。
その様子を空から見ていたハーピィーは嬉しそうにうんうんと頷いていた。
「あいつにも春が来たんだな〜…俺にはいつくるんだろうな…(T-T)」
自分でいってちょっと悲しくなってしまったハーピィーであったが誰も彼に気づくものはいなかった。
だが、翌年彼にも春が訪れると言う事をまだ知らないハーピィーであった。

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あとがき

は〜い。どうも〜皆さんお久しぶりです♪
ほんとに久しぶりに『時空の覇者』の外伝を作ったな〜とか思ってますよ(笑)
さて、今回のお話『夜景のきれいな丘』いかがでしたでしょうか?
私個人では結構良い感じだな〜とか思ってますけどね〜…………
こんな感じの恋愛って良いですね〜(でも、実際こんな話ないよな〜(T-T))
このお話、時空の外伝にしようか、別物にしようか最後まで悩みました。(本当です)
でも、たっきー様とか瑠璃様のお名前を使用したので時空の方に決定しました。
今回の新キャラはハーピィー様です。
この方は私のよく行くHPの代理人様です(ページ名は)ACADEMY SAYです♪
ここにある小説は面白いです♪ページもきれいですのでぜひ一度お立ち寄りください
私の所からのリンク集にも入ってますよ〜♪
いや〜……ハーピィー様希望どおりのキャラにならなくてすみませんでした〜
結構悩んだんだけどこのキャラの方がしっくりきたんでこっちにしました〜♪
しかし、最近暑いですね〜♪
私は暑いのが嫌いですが仕事場はエアコンが効いてて良い感じだ〜♪
ただ、最近ちょっと残業がきついぞ〜・・・・(T-T)
まあ、良いんだけどね・・・・・・・・(T-T)
さて、今回はこの辺でお開きにしましょう♪
また次回作でお会いしましょうね♪

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