遠い記憶

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一人の青年が電車に乗っていた。
その青年を乗せた電車は北に向かって疾走していた。
この青年の名は安藤正樹。
彼は、遺跡の発掘などをおこなっている考古学者であった。
今迄にも、数々の発掘を手がけており、若干26歳で考古学会では知らないものはいない!
というほどの人物であった
いつもは、助手が一緒についてくるのだが今回は一人だった。
そんな彼が、なぜ一人で電車に乗っているのかというと・・・・話は数日前にさかのぼる。

その日、いつものように大学を出た彼は、家に向かって真っ直ぐ帰っていた。
家につくといつものように留守番電話を確認するのだった。
いつもは何も入っていない留守電だったがその日は一件だけ入っていた。
何かの請求だろうと思って再生してみると、同級生だった加藤早苗の声が入っていた。
「お久しぶり、正樹くん。実はお願いがあるんだけど、明後日福島まで来てくれないかな?
 郡山駅の前で待ってます。」
何の事だかさっぱりわからなかったので、その日は気にしなかった。
次の日、大学でいつものように発掘品の調査をしていると、東北地方にゆかりのある品だという事がわかった。
発掘品といい、昨日の電話といい気になってきた正樹は、早速東北に向けて出発していたのであった
電車の中でも正樹は発掘品についての調べ物をしていた。
「ふ〜む、どうやら、東北地方でも、主に会津地方に関系がありそうだな」
正樹は会津に行く必要があると考えていた。
あらかた調べ終わった頃、電車は郡山に着いていた。
正樹はまず、電話をくれた加藤早苗を探していた。
しかし、最後に合ってから、もう5年も立っていたので正樹は顔を忘れていた。
その時、一人の女性が声をかけてきた。
「正樹くん?正樹君でしょ?ひさしぶりね」
「あっ!加藤か?久しぶりだな〜元気だったか?」
少し、暗い顔をしてから加藤は元気だったよと答えてくれた。
「ところで、あの電話は何だったんだよ?訳がわかんないぞ」
もっともな質問だと思ったのか早苗は話しはじめた。
「家の裏にちょっとした山・・・というか丘見たいのがあったでしょ?
 そこに、今度住宅地ができるらしいんだけど何か変なものが出てきて工事が止まってるのよ
 何かの遺跡らしいんだけどどの学者が見てもわからないんだって。
 そこで、貴方に、見てもらおうと思って呼んだのよ」
「あのな〜。他の学者が見てわかんないものを俺にわかるはずがないだろ?」
「良いでしょ。それにこんな事でもないと、貴方は帰ってこないでしょ?
 今夜は同窓会も兼ねてたのよ♪」
ちゃっかりしてるな〜と思いながらも正樹は感謝していた。
確かに、こういう機械でもない限り故郷に戻ってくる事はないだろうし、久しぶりにみんなの顔も見たかったのであった
「遺跡は明日にして、今夜はたっぷりと付き合ってもらうからね♪」
早苗がそう言った時、正樹は今日は眠れないなと覚悟した。
・・・・正樹の予想は的中した。
なんと、同窓会の出席率は100%だった。
仕事などで誰かは休むものなのだが早苗のあの手腕によって全員参加していたのだった。
そんな訳で久しぶりに会ったという事もあって朝まで飲み明かそうという流れになったのであった。
正樹は、明日は朝早くに遺跡を見に行こうと考えていたので密かに逃げ出そうとしていた。
いざ!逃げ出そうとしたその時、早苗が隣に座りこんできた。
手にはビールが握られていた。
この時、もう少し周りを見ておけば良かったと後になって反省した。
「はい、正樹くん。もっと飲もうよ♪」
早苗は空になっていたグラスに持っていたビールをついでいた。
正樹はあまりアルコールには強くはないのだが一本くらいなら飲めるので、一本だけ付き合う事にした
ようやく、一本のビールを飲みきったのでそろそろ帰ると言おうとしたその時、
またしても、早苗がビールを持って現れた。
「さっ♪正樹くん。次の持ってきたよ♪」
まるで、こちらのタイミングを読んでいるかのような鋭い動きにとうとう、正樹は朝まで付合わされたのだった
次の日、正樹たちは全員二日酔いに苦しんでいた。
だが、早苗ただ一人はけろっとしていた。
(なんで、あいつはあんなに元気なんだ?)
二日酔いのため、がんがんする頭で昨日の事を思い出していた。
(・・・・思い出した。あいつは他人に飲ませるだけ飲ませて、自分は飲んでないんだ・・・・
おそるべし、加藤早苗)
そこまで考えて、正樹は倒れた・・・・・

遺跡の本格的な調査を開始したのは同窓会があった日から、三日後に開始した。
理由は簡単、正樹が二日酔いではなく三日酔いに発展していたからであった。
「う〜ん、まだ頭が痛いような気がする」
正樹がうなっていると元気な声が聞こえてきた。
「先生〜ひどいですよ〜私をおいていくなんて〜・・・・・」
その声は、正樹の背後から聞こえてきた。
「本田くん!どうして君がここにいるんだ?」
正樹が振り替えると、そこには本田瑞希が立っていた。
「酷いです〜・・・・私をおいて行くなんて(T-T)私は先生の助手ですよ」
そう、この人物こそ正樹の助手にして、発掘の天才本田瑞希であった。
瑞希は自分一人でも、十分遺跡の発掘ができるだけの知識と行動力を持っているのだが
なぜか、正樹の元で助手をしているのであった。
正樹にとっては、遺跡の発掘をする時、欠かせない人物であった
「いっいや、本田くん。これには日本海溝より深い訳があってだな・・・」
「その日本海溝よりも深い訳というのは何です?」
正樹は返答に困っていた。
今回彼女を連れてこなかった訳は、色々あるのだが一番の理由は
クラスの奴等に彼女の存在を知られるのが恐かったからなのであった。
何かと噂話が好きな面子がそろっているのでどんな噂を立てられるかわからなかったのであった。
「正樹君。誰かきたの?」
打ち合わせのため早苗も現場に来ていたのだった。
二人がばったり出会ってしまい最悪の事態になったと思った時には、既に遅かった。
早苗はすぐに携帯電話を取り出し、知人にどんどんと話して行ったのは言うまでもない事であった。
・・・・・・二時間後・・・・・
正樹は彼女を連れてきていた等の噂を聞きつけた面子がそろっていた。
その人数は、この間の同窓会の時より多くなっていた。
「・・・・・やっぱり・・・こうなるんだよな(T-T)」
正樹の嫌な予感は結構当たるらしかった。
・・・・・質問攻めから解放されたのは夕方になってからだった。
「結局今日は何も調べられなかった(T-T)」
正樹が落ち込んでいると、瑞希が隣にやってきた。
「先生のお友達ってすごいですね」
つかれきった顔で瑞希が話し掛けてきた。
「・・・ああ。五年ぶりに帰ってきたからな。珍しいんだろう」
正樹は瑞希の質問にはいつも答えてくれる。
その辺が、瑞希がずっとくっついている理由なのかもしれなかった。
「・・・ねえ先生はこっちにいる時どんな感じだったんですか?」
瑞希が珍しく過去の事を聞いてきたのでちょっとびっくりしていた。
正樹は、少しの間黙っていたが、徐々に話しはじめた。
「・・・・俺は高校生になるまで、あいつらと話した事すらなかった」
正樹が言うあいつらというのは先ほどまでここに人たちの事だろう。
「俺は昔から本を読むのが好きでね。ちょっとした暇さえあればすぐに本を取り出して読んでいたよ
歩きながらも読んでいたくらいだからね(苦笑)」
正樹の話を瑞希は黙って聞いていた。
「ある日、近所の崖にアンモナイトの化石を見つけた時は驚いたね。しかも見つけた連中はそれがなんだかわからなかったほどだったよ
 今思えばあれが考古学者を目指したきっかけだったのかもしれないな。
 まあ、それをみつけたのがあいつらだったというわけさ。」
正樹が話していると、いつのまにか後ろに早苗も来ていたが二人はまったく気がつかなかった。
「それからは、結構一緒に遊んだっけな。ゲームセンターに行ったりカラオケに行ったり
それまでの私には想像できないほど遊んだよ。」
だんだんと話が違う方向に流れている事に気づいた正樹は、 「・・・・話がそれたな、えっと、まあ本が好きな無口な男だったよ」
と言い、その場を終わらせようとした。
その時、二人の後ろで聞いていた早苗が不満を言った。
「あら?もうおしまいですか。私との出会いとか、学校の文化祭の時の話とか色々あるでしょう?
話してあげたらどうです?」
早苗にそう言われてすんなりと話すような性格の正樹ではなかったが、
早苗と瑞希の二人に無言で迫られ仕方なく話し出した。
・・・・・正樹の話が終わったのはもう真夜中だった。

次の日、正樹と瑞希は遺跡の調査を行った。
色々、調査したがこれと行って珍しい物は何もなかった。
「やはり、何もないか・・・・」
正樹は少し期待していただけにショックが結構大きかった。
正樹があきらめて調査を終わろうとした時瑞希が、息を切らして走ってきた。
「せっ先生・・・・大変!・・・すごい!・・・物が・・・はぁはぁ・・・」
「落ち着いて話してくれないか?さっぱりわかんないぞ?」
瑞希は話すより物をみてもらおうと正樹を遺跡の外れまで連れて行った。
それを、見た時正樹は驚きのあまり声が出せなかった。
そこには、地下に通じる穴があった。
「先生、中に行ってみてよすごいから!」
瑞希はよほど早く見て欲しいのか先頭に立って正樹を引っ張っていった。
穴はそれほど広くはなく、人一人やっと通れるくらいの大きさだった。
しばらく進むと、少し広いところに出た。
道はここで終わりのようであった。
「いったいここに何があったって・・・・」
正樹が瑞希に聞こうとしたときそれは正樹の視界に飛び込んできた。
「こっこれは!すっすごい.完全な形の卵の化石は始めてみた」
正樹たちの目の前に広がっていたもの、それは、恐竜の化石だった。
しかも、すべてのものが完全な形で残っていたのだった。
「先生、こっちに文字が掘ってあります。」
瑞希が壁に彫ってあった文字を見つけていた。
(さすがによく気がつくものだ)
正樹は感心していた。
文字を見てみると、かなり古いものだった。
「え〜と、『この地に足を踏み入れし者に太古の記憶を授けるものなり』って書いてあるね」
正樹は文字を読み終わるとふー、と一息ついた。
「先生、太古の知識って一体?」
瑞希がもっともらしい質問をしてきた。
「・・・・・私にもわからないけど恐らくこれらの化石なんかを調査すればわかってくるんじゃないかな
 まあ、私たちの仕事はここまでだね。後は地元の研究チームとこの土地の持ち主に任せるさ」
正樹はそう言うと部屋から出るために出口に向かっていた。
瑞希も不満そうだったが黙って正樹の後について行った。

地上では早苗達が心配そうな表情で待っていた。
正樹と瑞希が中に入って行ってもう3時間も立っていたのだった。
そして、4時間が経とうとした時、正樹が戻ってきたのだった。
正樹は中に何があったのかを詳しく早苗達に報告した。
話を聞いた人々は驚きの余り声が出せないかった。

「じゃ、俺はもう行くわ」
正樹が地下の探索から戻ってきた後、旅館に戻る最中に早苗にそう言っていた。
「えっ?もう行っちゃうの。まだ化石の調査とか残ってるんじゃ?」
「大丈夫さ、化石の調査なら地元の研究チームでもできる。それに俺はこれから会津によって行きたいんだ」
「・・・・そう、わかったわ。みんなは私から言っておくは」
それから旅館まで二人は何も話さなかった。
旅館に戻った時、瑞希は既に、帰り支度をしていた。 「ほら、先生早く大学に戻りましょうよ」
瑞希に急かされて支度をしていた正樹は会津に行く事を瑞希に話しておこうと考えていた。
「・・・なあ瑞希、俺大学にはもうしばらく帰れないんだ」
正樹の言葉に驚いた瑞希はすぐに問いただしてきた。
「なんでですか?講義とか色々やる事あるじゃないですか!」
「俺、これから会津に向かうんだ。もともとここに寄ったのも会津に行くついでに寄っただけだからな」
正樹と瑞希の間に沈黙が流れていた。
その沈黙を破ったのは正樹だった。
「・・・・・・なあ、瑞希も一緒に会津に行かないか?」
その台詞を待っていたかのように瑞希の目が輝き出した。
「もちろん!私は先生が行くとこならどこでも一緒に行きますよ♪」
次の日に出発する事を決めた二人はその日は早めに眠りについたのだった。
次の日、始発の電車に乗り、会津に向かっていた二人の目に見たこともない光景が現れた。
それは、朝靄に包まれた静かな森だった。
「きれい・・・・」
瑞希の一言に正樹も同じ気持ちだった。
「50万年前の景色を見ているようだね」
正樹はぼそっとつぶやいた。
瑞希は無言でうなずいていた。
「さて、会津にはどんな歴史が待ってるのかな〜!」
二人を乗せた電車は会津に向かって走っていった。
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あとがき
う〜んこの先どうしよう〜(T-T)
はっ!もうあとがきではないか。
(ちょっと身なりを整えてる作者)
コホン。
え〜皆さんお久しぶりです。『遠い記憶』お楽しみいただけましたでしょうか
この作品を作るきっかけになったのは私の趣味です。(きっぱり)
私は小さい頃から化石やお城、神社などの歴史的なものが好きでした。 そして、この趣味に関する話しを一度書いてみたいと思いついたので今回の話しになりました。
結構、私としては良い感じにまとまったと思うんですけどね(笑)
まあ、これを読んでくれた方で化石とかに興味を持った方がいらっしゃったら面白いですね♪
(まあ、相変わらずの構成力の無さは勘弁してくださいね)
さて、タイトルについて話しましょう。
私は、化石とか、歴史的建物とかって昔の遠い記憶の一部を持っていると考えています。
そんな訳で、今回のタイトルに遠い記憶と言う名前をつけました。
謎の男「なんてもっともらしい事言ってるけど、本当は主人公の正樹が記憶喪失になっていたという設定があったんだよね」
作者「わ〜!せっかくかっこよく終わろうと思ったのにばらすな〜!」
謎の男「おやおや。これはすみませんでしたね。では、僕はこの辺で」
作者「くっそ〜。一体だれだ?皆さんそんな事は全然無いですよ♪」
通行人A「いやね〜、自分のミスを適当な理由でごまかすなんて」
作者「・・・・お前らな〜いいかげんにしろ〜!」
ナレーション「ま、そんな訳で次回の作品も楽しみに待ってて下さいね♪」
作者「こら〜ナレーション勝手に閉めるなぁぁぁぁ・・・・・・・」

がんばれ作者。次の作品をみんなが待ってるぞ!
・・・・・・多分ね
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