虹の向こうに

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「う〜ん今日は晴れたわね。」
昨夜から降っていた雨も明方になると完全にやんでしまい今は青空が広がっていた。
「今日は久しぶりにお部屋の御掃除でもしようかな♪」
本棚の整理をしていると昔のアルバムがでてきた。
「これって高校の時のアルバムだわ。懐かしいわね〜」
しばらくぱらぱらと見ていたのだが、ふと空を見るときれいな虹が出ていた。
そう、あの時見た虹もきれいだったな〜と学生の時に見た虹の事を思い出していた。


雨上がりの朝、空にはきれいな虹が出ていた。
「虹の向こう側ってどこにつながってるんでしょうね」
一人の女生徒がそうつぶやいていた。
「香織〜何してんの?遅刻しちゃうぞ〜」
「ごめ〜ん。すぐにいくよ」
香織と呼ばれた生徒は走って学校に向かっていた。
学校からもしっかりと見えるきれいな虹に香織は今日は良い事がありそうだと感じていた。
「ねえ、香織は誰にプレゼントするの?」
ぼ〜っと虹を見ていた香織は目の前の友人の話を聞いていなかった。
「えっ?ごめん聞いてなかった」
慌てて謝る香織をみて、周りに笑われてしまった。
「だから〜香織は誰にチョコ送るの?隣のクラスの青木さん?」
「青木さんには朝岡さんがいるじゃない。」
「ええ〜やっぱりそうなの?私ちょっと狙ってたのにな」
「同じクラスの志朗君は?」
「あの人は、萌さんと仲が良いから」
香織の周りで勝手に盛り上がる友達にちょっと押されぎみな感じで話を聞いていると、
「でも、やっぱり香織の本命が聞きたいわよね」
と、誰かがいった時視線は香織に集中した。
「わっ私好きな人なんて・・・・」
返事に困った香織はとっさにそう答えていた。
その時休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴ったのだった。
(ふ〜助かったわ・・・)
心の中でそうつぶやいていた。
授業中も、友達に言われた事が気になっていた。
(香織の本命って誰なの?)
自分は誰が好きなのかを考えていて、授業には集中できなかった。

一日の授業が終わり下校時刻になった。
また、質問攻めに合うのを恐れて早々と学校を出ていた。
帰る途中、本屋さんに寄った。
今の時期にふさわしくどの雑誌もバレンタイン特集をやっていた。
「今年は、私も作ってみようかな・・・・」
「へえ〜誰に送る気なんだ?」
突然後ろから声をかけられたので香織はびっくりした。
恐る恐る後ろを振り返ると何とそこには香織がチョコを送ろうとした相手、高田健二が立っていた。
「たっ高田君!いつからいたの」
「えっと・・・・香織がその雑誌をぱらぱら眺めてた辺りから」
恥ずかしくなった香織はその場から逃げ出したい気分になった。
「なあなあ、誰にチョコ送るんだ?」
学校のクラスメートのように執拗に聞いてくる健二にたいして、香織は何も言えずただ真っ赤になるだけだったのであった
(私があげたいのは高田君よ)
香織はここの中ではそう言っていた。だが実際に言葉には出せなかった
あまりしつこく聞くのも悪いと思ったのか健二は聞くのを止めた。
「たまには一緒に帰らないか?」
健二の誘いに応じて香織は一緒に帰る事にした。
実は、香織も一緒に帰りたいと思っていたのであった。
あまりの嬉しさに帰り道で話した事もあまり覚えていなかった。
この事が後でちょっとした事件になるのをまだ香織は知るよしもなかった。

なんだかんだ言っているうちに2月の14日になった。
今日は、みんな気合が入っているようなそんな雰囲気がクラス中にいや、学校中に広まっていた。
バレンタインに屋上で告白したカップルは幸せになるというジンクスがこの学校にはあったのであった
昼休が勝負!とばかりに全員が狙っていた。
さて、そんな雰囲気の中。香織は一人で悩んでいた。
(どうしよう、渡そうかな)
そう、香織は健二に渡す予定のチョコを持ってきていたのだった。
だが、今日に限って健二を探しても見つからないのであった。
放課後もう一度探してみようと香織は決心した。
さて、お昼やすみになった。
昼食もそこそこに、屋上に走っていく生徒が続出した。
クラスに残っているのは相手がいない方や、時間帯をずらしているなどの方々であった
「朝岡さんと青木さんがついにくっついたそうよ」
「そうなんだ。一時間めの授業をクラス全員でサボって覗きにいったらしいわよ」
「なんか生徒会長も見にいったんですって」
「これで、全校生徒公認の仲になったわけですわね」
香織はいつもながらの情報の速さに感心していた。
彼女たちにしてみれば普通の事なんだろうが香織にはすごい事に思えて仕方がなかった。
「みんな情報が早いわね〜」
香織の一言に全員が一斉にそんな事ないよといった。その声が見事にはもっていたので笑いが生まれた。
(悩んでもしょうがないわね)
決心はしたもののいまだに渡すべきかどうか悩んでいた香織はどこか吹っ切れたように思えた。
「そう言えば香織〜、あんた今日チョコ持ってきてるでしょ?」
ぎくっとして香織はみんなの顔を見まわした。
視線は集中している。
今日は逃げられないなと覚悟した香織は話しはじめた。
「・・・・高田君にあげようと思って」
香織の話を聞いた一同は大きく頷いていた。
「やっぱりね。そうじゃないかとは思ってたんだ」
香織は恥ずかしそうに下を向いていると、
「あれ?でもさっき高田君屋上に向かっていったような・・・」
「えっ?高田君が屋上に?」
(そっか・・・・・・もう相手がいたんだ)
ひどく落ち込んでいる自分に気がついた時香織の目から涙がこぼれていた。
その、香織の涙と同じ時に外でも雨が降りはじめていた。
その雨は、昼休の終わりと同時に止んだ。
その後の授業は出ずに香織は早退していた。
いつもの癖で本屋さんにより、色々な本を眺めていた。
その時、後ろから声をかけられた。
「・・・・やあ」
その声は健二であった。
「けっ健二君!午後の授業はどうしたの?」
「・・・・午後の授業より俺は君に聞きたい事があるんだ」
真剣な眼差しで香織を見つめていた。
「なんで、昼休に屋上に来てくれなかったんだ?あの日約束したじゃないか」
あの日?約束?何の事だかわからない香織は健二に逆に聞いていた。
「ごめん、いつの約束?」
その一言で健二はひどく落ち込んだようだった。
「・・・・そっか。君にとってはその程度の約束だったんだね」
後ろを向き出口に向かっていく健二を香織は呼び止めていた。
「まって高田くん!ちょっと時間ある」
不意に言われてきょとんとしていたが健二は頷いていた。
「じゃ一緒に帰りましょう」
香織は家ではなく学校に向かっていた。
そして、迷う事なく屋上に向かっていた。
屋上についた時香織は初めて健二の顔を見ていた。
「これ、バレンタインデーのプレゼント。受け取って下さい」
かばんから出した小さな包みを健二に向かって差し出していた。
健二は最初こそ戸惑っていたがしっかりと受け取っていた。
「ありがとう。お昼の約束は忘れてたみたいだけどこっちは覚えててくれたんだね」
健二がいうには、一緒に帰ったあの日、今日のお昼にチョコをあげるという約束をしたらしいのであった
だが、香織はあの時嬉しさのあまり覚えていなかったのであった。
香織の説明を受けて健二の顔に笑顔が戻った。
「改めて俺と付き合ってくれませんか?」
香織は答えるかわりに健二に飛びついていたのだった。
空には、お昼に降った雨が残したきれいな虹がかかっていた。

「ふふふ、そんな事もあったわね♪」
アルバムを閉じた時、健二が寝室から起きてきた。
「おはよう香織。今日は良い天気だな。何やってんだ?」
「高校の時のアルバムを見てたの。」
懐かしそうに健二もアルバムを見はじめていた。
「ねえ、あの日のバレンタインの日。覚えてる?」
「・・・・えっ?ああ、覚えてるよ」
健二は、恥ずかしそうに顔を背けた。
今も空には、あの日に負けないくらいきれいな虹が出ていた。

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あとがき
皆さんこんにちは作者の梨りんです。
「虹の向こうに」お楽しみいただけたでしょうか?
今回の作品は、「時空の覇者 外伝 アサの密かな恋心」の舞台と同じ所です。
まだ、読んでない方はぜひそちらも読んで下さいね♪
今回の話しは外伝の外伝って感じですね。
では、人物紹介と行きます。
香織・・・・・・・・時空の覇者で登場させようと思っていたキャラです
  出す機会が無くてそのままボツになってしまっていたキャラです
  設定とかすべて構想が出来ていたので使いやすかったです

高田健二・・・・今回無から誕生させた新キャラです(笑)。
  とりあえず思いついた通りに出したら結構良い感じになったと思うんですけど
      一応この話しの主人公!(多分(^^;))

とこんな感じでした。
この話しも一応恋愛物という感じで作って見たんだけど
前回同様バレンタインネタだったね〜
次はホワイトデーネタにでもしてみようかな(笑)
さて、今回の話しをもちましてしばらくお休みいたします
理由は、ネタ切れです(T-T)
またネタがたまってきたら長編物でも書こうと思っていますのでその時はまたお付き合いください
では、その時まで元気でね〜。
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