傭兵王カインの冒険


こんにちは、『時空案内人』の志朗です
またしてもお会いしできましたね。
今回は少し長く開けてしまったようですね。
まあ、私にも夏休みというものがあったと思って下さい
ふふふ、まあ、その辺は関係ないですから気にしないようにして下さい
さて、今回のお話は今迄のものとはまったく違うものです。
今迄のものよりは『時空の覇者』に近いものになってますよ
更に今回は、私も頻繁に出る予定ですよ
まあ、読んでいただければすぐにお分りいただけますよ
では、今回もしばしの間、不思議な体験を行って下さい
それでは、運が良ければ、もしくは悪ければまたお会いしましょう
ふっふっふ・・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕焼けがとてもきれいに見える小高い丘。
そこに、一人の男が立っていた。
「ちきしょう〜、明日論文の発表かよ。かったり〜」
男は、丘の上から自分の通っている学校を見つめながらつぶやいた。
男の名前は、武田勇輝といった。高校二年生なのだがそうは見えないほど幼い顔つきをしていた。
しかし、顔つきと話し方はまったく別物だった。
「しかし、何だってこんな所にいるんだ、俺は?」
その日、勇輝はなぜかこの丘に足が向いてしまったのだった。
普段から何気にこの丘には来ていたのだが今日はどこかいつもと違うような気がしてならなかったのだった。
せっかく来たのだからとうろうろしていたその時!
何も無い空間に勇輝は顔面を強打してしまった。
「いって〜!!なんだ〜?何にぶつかったんだ??」
不思議な事に勇輝の前には何も無かった。
いや、目に見えない壁が存在していたのだった。
「くっそ〜今日はほんとについてないぜ!さっさと帰って寝るか」
勇輝が家に帰ろうとした時ふと気になるものを見つけた。
『それ』は、ほんとに不思議なものだった。
どこをどう見ても十面体のサイコロだった。
普段なら気にもしないはずだが今日に限ってはものすごく興味が湧いてしまった。
勇輝は何気に『それ』をつまみあげ転がしてみた。
サイコロの出た目は0だった。
(ほう、0が出たか。これで配役は決まったな)
突然不思議な声が聞こえてきた。
「だっ誰だ!」
勇輝は辺りを見回したが辺りに人の気配はまったく無かった。
気のせいだったのか?と思ったが、背後に人の気配を感じ、振り向くとその人物はそこに立っていた。
まるで最初からその場に立っていたようなそんな不思議な雰囲気を持った若者だった。
そう、確かに最初に見た時は20代位の若者のはずであった。
だが、その人物は次の瞬間には老人に変貌しいたのであった
「ほっほっほ、わしの名は志朗。普段は案内人をしておるのじゃが今回は少し訳ありでの〜
 まあ、おぬしには関係ないのじゃがな。さて、おぬしは『運命のダイス』で0を出してしまった
 長い冒険の始りじゃ」
志朗と名乗った老人がそう言い終わると同じに勇輝の周辺の空間が歪みはじめた。
「こっこら、じじい!俺はまだ何も納得してねえぞ!」
「ほっほっほ、全ての旅が終わったら謎はすべて解けるじゃろう。まあ、がんばるのじゃな」
「てめえ〜じじい!覚えてろよ〜〜!!!」
勇輝の絶叫が聞こえなくなった次の瞬間妙にたくましくなった勇輝が空から落ちてきたのだった。
その姿は、つい先程消えた時とはまったく違う格好をしていたのだった。
「おお!志朗様無事に送り出したのですな。」
「ああ、今向こうに送ったよ。後は彼しだいじゃな。そなたと同じ道を進むかどうかはわしにもわからんからの〜
 今のおぬしも無数にある可能性の一つに過ぎんということじゃ。あの者はどういう道を進むのかの〜」
そこまで話した後、二人はすぅーっと消えていったのだった。

「ちっ!またあのときの夢か。あのじじいめ!今度会った時は覚えてろよ!」
勇輝はそんな悪態を口に出していた。
あれから、既に5年の月日が経っていた。
最初は何がなんだかわから無かったが今ではすっかりこちらの世界に慣れてしまっていた。
そう、この世界は地球とはまったく違った世界だった。
なぜか変な化け物がいる。なぜか俺が狙われる。なぜか助けが入ってくれる。
それで、何でか知らないが一緒に旅するはめになる。
(ここまでお約束どおりだとさすがにやる気もうせるというもんだよな〜)
勇輝の脳内ではそんな思考がぐるぐる回っていた。
「…イン、おい!カインなにやってんだ置いてくぞ!」
連れの一人に急かされて勇輝は走って追いついてきた。
連れの名はアベルと言った。
この世界では結構有名な傭兵らしいという事くらいしか勇輝は知らなかった。
ちなみに、この世界だと勇輝はカインと発音するらしく、そう呼ばれていた。
「さて、結構稼いだし次はどこにいく?北か?南か?東はさっき行ったからな〜」
「そうだな、北の戦いはしばらく続くのだろう?なら北に行ってみようぜ」
勇輝のその一言で次の目的地が決まった。
目指すは北の大地にあるアルゼン王国であった。

ここ北の大地ではリルベイン国とアルゼン王国が対立していた。
リルベイン国はこの世界有数の大国であったのに対して、アルゼン王国は小さな国だった
圧倒的にアルゼン王国側は不利のはずだった。
しかし、3年もの間互角の戦争を続けていたのだった。
その理由は傍観をしている他国の影響であった。
両国ともに疲弊し、国力が弱体化するのを待っている国が多数存在していた。
その為、リルベイン国は大規模な軍事行動が取れずにいたのであった。
事態の打開の為にアルゼン王ガイス三世はリルベイン国と同盟を結ぼうと決意していたのだった。
「ルカ!ルカはおるか」
ガイス三世は娘を探していた。
ルカ姫とリルベイン国の第一王子の婚礼が一週間後に予定されていたのだった。
「お父様。何の御用でしょうか?」
ルカは自分の部屋からひょっこりと顔を出していた。
「ルカ……お前は一国の姫なのだぞ。もう少し気品というものを…まあ良い、そなたの結婚が決まったぞ
 相手はリルベインの第一王子だ式は一週間後じゃ」
それを聞きルカは驚いた。
「お父様!私そのような話は聞いておりません!」
「もう決まった事じゃ!この戦争を終わらせる為なのじゃ。この国の平和の為なのじゃ!」
国王は一気にそう言い放つとすたすたと玉座に戻っていった。
『ほっほっほ、国王よそれでほんとに良いのか?』
謎の声がどこからとも無く聞こえてきた。
「だっ誰だ!」
国王は周りを探したが別段変った事もなく誰もその場にはいなかった。
「きっ気のせいか?」
そう思った時、目の前の空間が歪み出したのだった。
しばらくその様子を見ていると一人の老人と若い騎士が現れた。
「ほっほっほ、お初にお目にかかるわしの名は志朗。このものはわしの護衛役のカインじゃ」
カインと呼ばれた青年はぺこりと挨拶をした。
「さて、国王よいわれるままに娘を差し出して良いのか?このままではリルベインの支配を受ける事になるぞ
 それでも良いというのならわしは別に止めはせんがの〜」
ガイスは反論できなかった。
そう、娘を人質同然に渡してしまっては支配を受けているのと同じなのだ。
それについては既にガイスにはわかっていた。
わかっていてもどうしようもなかったのであった。
「ほっほっほ、そうか、そなたも気づいてはおったのじゃな。では、一つ助言をしよう。
 明日、この城に二人の傭兵が訪れるはずじゃ。この二人を味方にするがよい。そうすればこの戦争どうにかなるかも知れんぞ」
ガイスは志朗の言葉を聞き疑問に思った。
(たった二人の傭兵でどうやって戦争に勝つというのだ?)
「まあ、信じる事じゃでは、さらばじゃ」
老人と若者はまるで空気にとけるように消えていった。
ガイスはしばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。

次の日、ガイスは驚きの連続であった。
昨日の老人の言葉が頭から離れないガイスの前に二人の傭兵が現れたのだった勇輝とアベルである。
しかも、その片割れが昨日老人の隣にいた若者とうりふたつなのであった。
更に驚く事に名前まで同じだというのだからガイスは驚いた。
ガイスはすぐにこの二人を雇い、リルベインとの勝負に決着をつけるべく行動を起こした。
よもや攻撃してくるとは予想もしていなかったらしく、すんなりと本国まで攻め入る事に成功したのだった。
(まさか、こんなにももろい国だったとは。大きさばかりにだまされていたは!)
ガイスはそんな事を考えていた。
出陣前に雇った傭兵はすばらしい活躍をしていた。
「お〜い、カインよ〜なんか敵が弱すぎねえか?この敵なら一年もあれば余裕で全滅出来ただろうにな」
アベルが戦闘中にも関わらず余裕たっぷりでカインに話かけてきた。
「そうだな、おおかた敵さんの巨大な国にだまされたんじゃないのか?」
勇輝も敵の剣を軽くかわしながらアベルと会話していた。
リルベインの兵とは打って変わって味方のアルゼン王国の兵は屈強だった。
見事な統率力で、三倍の兵力差をものともせず戦況は味方に有利な展開だった。
その光景を見詰めていた志朗は少し意外だった。
「ふ〜む、ここまでリルベインが弱いとはの〜これなら御主一人で大丈夫だったんではないのか?」
背後に控えていたカインに向かって志朗がそう聞いた。
「そうですね、出来なくは無いですが確実に滅ぼす為にはやはりあの国の力が必要ですよ」
「じゃが、これではアルゼンの力が強大になりすぎてしまう。どれ、少し戦力を落すとするか」
志朗がやれやれといった表情で何やら不思議な言葉を紡ぎ出した。
「雷よ!炎よ!氷よ!」
立て続けに雷が乱れ飛び、炎が森を焼き尽くし、氷のやりが両国の兵をなぎ払っていった。
瞬く間に全軍の2/3を壊滅させてしまった。
「うむ。少しやりすぎてしまったようじゃ。久しぶりじゃったからの〜」
志朗の後ろでカインがため息をこぼしていた。

「なんだ?何がおこったのだ?ひっ被害状況は」
両軍ともに何がおこったのかわからずにいた。
それもそのはず、全ては一瞬だったのだから。
「おいおい。一体どうなったんだ?」
アベルが勇輝のそばにやってきてそう聞いた。
「魔術だ。それもその辺にいるようは奴とはレベルが違う。これほどの事が出来るのはそう多くないはずだ」
「まあ、確かにこんな事が出来る奴がごろごろいたら大変だわな」
勇輝とアベルの周りにはなぜか被害は出ていなかったが部隊の大半が全滅しただろうという確信はあったのだった。
「よし!俺は兵の同様を押さえる。ここは頼んだぞ!」
勇輝はすぐに兵士を集めると士気の回復に努めた。
両軍ともに混乱に陥っていた場合先に統制を立て直した軍に勝機があった。
アルゼン王国には勇輝やアベルといった指導者がいたがリルベインにはそういった指導者はいなかった。
この瞬間に勝敗は決定していた。
リルベインの兵士達は我先にと逃げ出したのであった。
今ここに、北の大国であったリルベイン国が小国に過ぎないアルゼン王国に敗北し、その長い歴史に終止符を打ったのであった
「カイン、そしてアベルよそなた達の活躍はすばらしいものであった。
 特にあの混乱をまとめてくれた事には感謝の言葉も無い改めて礼を言わせてもらおう。」
国王ガイス三世に礼を言われると照れくさそうに勇輝がそっぼを向いた。
「さて、ものは相談だが勇輝よルカの婿になる気はないか?ルカもそなたの事はたいそう気に入っておるようだしの
 わしももう年じゃ。息子に王の座を渡して隠居したいのじゃがの〜」
「いえ、私に、そうのような大役は勤まりません。その役是非ともアベルに」
「俺はいいよ。あの戦いで活躍したのはお前だ。お前なら国民も納得するさ」
二度、三度と断っていたのだが周りの熱心な説得に折れ、ついに勇輝はアルゼン王国の王についたのだった。
相棒のアベルは参謀として勇輝の補佐にまわった。

「ほっほっほ、ここまではそなたと同じ道をたどったの〜。
 この先はそなたは無難に国を治めていたが果たしてあいつはどうのような道を進むのかの〜」
カインは志朗に言われてふと足元を見下ろしていた
(懐かしい景色だ、だが、ここで俺は内政に力を入れたのがまずかったんだ。勇輝よこの国を頼むぞ)
カインは自分と同じ道だけは進まないでくれと祈っていたのだった。

勇輝が国王になってから早一年が過ぎようとしていた。
その間に、周りの国との戦闘も少しはあったが平和な日々が続いていた。
(やはりここは内政面に力を入れるべきか。だが、例の国の行動も気になる。ここで読み違えるとまずい状況になる)
参謀達の意見は真っ二つに分かれている。
最終的な判断は勇輝に一任されていたのだった。
「ほっほっほ、お困りのようじゃの。」
「そっその声は!まさか、じじいてめえか!ずいぶん探したぞ。いままでのうらみ思い知れ!」
勇輝が剣を抜いて志朗に切りかかった時志朗の横にいたカインがその剣を止めたのだった。
「ほっほっほ、相変わらず血の気の多い男じゃ。せっかくこのわしが助言をしてやろうというのに」
志朗の話よりの自分の剣を止めた相手の方が気になるのか勇輝はカインの方をじっと見ていた。
「そう言えばまだ、紹介しておらんかったな。このものはカインという」
(カイン、俺のこの世界での呼び名と同じだ。それに……似ている。俺にそっくりだ)
勇輝はしばらくカインを見つめていたが志朗の存在を思い出し志朗の話を聞く事にした。
「で、じじい俺にアドバイスしてくれるそうだが…」
「……今わしの存在を忘れておったな?まあ良い。この先そなたは内政重視で行くか『あの国』をどうするか悩んでおるはずじゃ。
 そこでじゃ、わしからのアドバイスじゃが。どちらを選んでも大事な人がいなくなるじゃろう。慎重に選ぶのじゃな」
志朗はそう言った途端に消えていった。
「こっこらじじい!アドバイスになってないぞ!」
『ほっほっほ、自分で考えろよいか、良く考えて答えを出すのじゃぞ』
(大事な人を失うか……)
志朗の言葉が頭から離れないまま勇輝は会議室に戻った。
「カイン国王。そろそろ御判断を。」
アベルにそう急かされてしまった。
「内政は後でも大丈夫だ。先にあの国の動きを止めておこう。皆のもの準備にかかってくれ」
勇輝の命令で戦の準備が整えられた。
「出撃!」
アルゼン王国の行動は迅速であった。
勇輝が懸念していた通り敵国は戦争準備を行っていた。
後一年遅くなっていたら間違いなくアルゼンは滅びていただろう。
それほどまでに強力な兵がいたのであった。
なんとか敵をせん滅できた時事件はおこった。
「…まさか、こんなに早く気づかれるとは……だが、一人では死なんぞ!」
傷ついた敵兵が弓のねらいを勇輝につけていた。
放たれた矢に気づいたのはアベルだけだった。
「勇輝〜!」
勇輝をかばうようにして飛び出してきたアベルの胸に一本の矢が深々と突き刺さった。
「アベル!」
勇輝が駆け寄った時にはすでにアベルの意識はなかった。
勇輝の相棒にして、片腕だったアベルはあっけなく息を引き取ったのだった。
この時を境に勇輝は変っていった。
世界を統一する為に覇王の道を歩き出したのだった。
無数の小国が存在していた北の大地を僅か2年で統一し、南の大国ガイランを滅ぼし、
ついには世界最大の軍事大国になったのだった。
北の大地を統一してから僅かに5年たらずで勇輝は世界を統一してしまったのだった。
勇輝の死後もこの統一国家は続きはては、宇宙までも統一しようとするのであった。

一部始終を見ていた志朗はため息をこぼしていた。
「やれやれ、どちらの道を選んでも最後にはここにたどり着いてしまうのか。」
「そのようですね、統一までにかかる時間が違うだけでしたね。
 しかし、あそこでアベルが死ななければ違う世界になったのでは?」
志朗の隣でやはり同じように状況を静観していたカインもため息をつきながらそう聞いてきた。
「いや、あそこでアベルが死ななければ生き残りの兵がルカ姫と息子の命を奪ってしまう。
 そうなると結果はそなたの時と同じじゃ。統一まで3年じゃよ」
「そうですか。私の時と……しかし、私の時は息子はいなかったはずですが?」
「その辺がそなたとのちがいじゃとわしは思っておるよ。やはりどんな可能性も実現できると言っても
 大まかな流れは変える事はできんのかも知れんな。
 わしの一存でこれ以上この世界に関わる訳にはいかん。この実験はこれでしまいじゃな」
カインが頷くのを確認すると志朗は持っていた杖を一降りした。
その途端、今まで見えていた景色はすべて闇の中に消えていったのであった。
「さて、これでわしの方の実験は終わった。そなたもわしの護衛ごくろうじゃった。
 元の世界に戻す事も可能じゃがどうする?」
カインは迷わなかった。いや、既にその答えは決まっていたのだった。
「先ほどの勇輝を元の世界に戻してやって下さい。私は貴方の護衛を続けましょう」
カインの答えを予想していたように志朗はにっこりと微笑んだ。
「あの者ならば既に返えしたよ。では、行くとするかの」
志朗に付き従ってカインは闇の中に消えていった。

「ちきしょう〜、明日論文の発表かよ。かったり〜」
男は、丘の上から自分の通っている学校を見つめながらつぶやいた。
そこには、異世界に行く前の勇輝が立っていた。
「さっさと帰って論文を終わらせるとするか」
そう言って帰ろうとした勇輝の足元に一つのサイコロが転がっていた。 だが、勇輝は気にも留めずに家に帰っていた

「ふむ、これで全ては元通りじゃの。これでよかったのかもしれん」
全てを見ていた志郎はそうつぶやいた。
後ろに控えていたカインも嬉しそうな悲しそうな複雑な表情をしながら見守っていた。
全てがいつもどおりの時間が流れて行ったのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー