いつか二人で

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こんにちは、あるいははじめましてかな?
ふふふ、まあ私にはどちらも同じ事ですがね
さて、前回のお話はちょっといつもとは違ってましたね〜(終わり方はいつもどおりでしたけどね)
信二君を追っていた謎の男はあの後どうしたんでしょうかね〜。
ふふふ、その辺りは皆さんのご想像に御任せしますよ。
信二君も信二君のお父さんも最終的にはあれで良かったのかもしれませんね。
でも、もしかしたら?
ふっふっふ、この世には色々な可能性がありますね〜。
では、今回もちょっとした不思議な体験をしていって下さい。
さて、今回はどういったお話でしょうね〜・・・・・・・
では、本編の中でお会いしましょう
ふっふっふ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「はぁ、はぁ、やった。俺はついにやったんだ!」
黒いバックを抱えながら男は走っていた。
男の名は本田 徹。
つい一時間前に銀行から金をGETしてきた男だった。
バックのなかには一億円もの大金が入っていた。
そのバックを大事そうに抱えながら徹は走っていた。
(この金があればあいつにもっと良い暮らしをさせてやれるんだ)
徹は一件の店の前で立ち止まった。
そして、その店の中にバックを投げ入れると、一目散にその場から逃げていった。
「なっなんの音?」
店の二階から一人の女性が降りてきた
そして、黒いバックを見つけた。
「まっまさか、徹君なの?」
バックを開けると中には大量の紙幣と、封筒が一通入っていた。
女性は封筒の封を切って中身を取り出した。
中には一枚の写真と手紙が入っていた。
『いきなりこんな事をしてごめんよ。でも俺はお前にもっと良い暮らしをして欲しいんだ
 この金はその為に使ってくれ。俺はしばらく旅に出るよ。じゃ、元気でな。徹より』
「徹君・・・・・・」
この女性の名は吉田ゆかり。
徹とは小学校からの付き合いだった。
高校に入ってからはあまり話さなくなってはいたが家がすぐ隣なのでよく顔を見掛けてはいた。
最近変だな〜と感じていた矢先の事だったのでゆかりにはとても不思議に思えて仕方なかった。
(すぐに帰ってくるよね。きっと・・・・・)
しかし、テレビを点けた時ゆかりの思いはすぐに否定された。
『臨時ニュースを御伝えいたします。本日、朝6時、〇〇銀行で何者かによる現金強奪事件が発生しました
 早朝という事もあって目撃者はまったくおらず。警察の犯人捜索は難航している模様です。
 なお、監視カメラに少しだけ犯人の姿が映っていたという事です。
 警察は唯一の手がかりとして現在解析を急がせております。なお・・・・』
(そっそんな、まさか・・・・徹君が?)
ゆかりは呆然とした。
しかし、そう考えればあの大金の説明もつくし、旅に出るという意味もうなずけるのだった。
(だっ駄目だよ。徹君・・・・)
ゆかりは店を飛び出し、徹が行きそうな所を探し回っていた。
パチンコ店、ゲームセンター、競馬場・・・・・しかし、どこにも徹の姿はなかったのだった。
探す所が無くなってしまったゆかりが最後にきたのは小さい頃二人でよく遊んだ神社の境内であった。
しかし、ここにも徹はいなかった。
(徹君、どこに行ったんだろう。もう心当たりは・・・・)
境内に立ち尽くしていたゆかりは不意に人の気配を感じて後ろを振り返った。
「ほっほっほ、お嬢さん。誰かを探しておるのかな?」
そこには、一人の老人が立っていた。
「いっいえ、何でもないんです。失礼しました」
ゆかりが立ち去ろうとした時、老人が意外な事を言った。
「ほっほっほ、徹と言う若者を探しておるのか。なるほどの〜。その思いが時空を超えたのか」
「おじいさん徹君の居場所を知ってるんですか?」
ゆかりがもう一度振り向いた時、世界が反転した。
神社の境内にいたはずのゆかりと老人が謎の一室にいたのだった。
「ほっほっほ、恐がる事はない。ここは時空の狭間。お前さんの思いが時空を超えてわしに届いたという事じゃな」
(時空の狭間?思い?)
いきなりの事でゆかりは混乱していた。
「まあ、混乱するのは当たり前じゃがな。ここではあらゆる選択をやり直せる。
 高校に行かずに中学卒業で就職した世界。小判でも掘り当てて良い思いをするなどという事も可能じゃ
 ただしルールが有っての。未来は見れぬ決まりなのじゃ。さて、お前さんはどんな世界が見たいのじゃ?」
(選択をやり直す?未来はみれない?どういう事?)
ゆかりはますます混乱していたがとにかくなんとか理解しようと必死に整理していた。
「えっと、全ての選択がやり直せると言う事は徹君が銀行強盗をしないという事も可能なんですか?」
ゆかりがやっとの思いでそれだけを口にした。
「ほっほっほ、もちろん可能じゃよほれ、そこの窓から覗いてみなされ。」
窓の外には確かにいつもと同じ光景が映っていた。
(いつもの徹君があそこにいるんだわ)
「おじいさん、これって見る事しか出来ないの?」
「もちろん体験する事も可能じゃよ。では、この世界で良いのかな?」
「はい、徹君と一緒に生きられる世界が私の望みです」
老人は持っていた杖をくるりと回した。
すると、一枚のドアが空間に現れた。
「このドアをくぐれば向こうの世界じゃよ。ここでの記憶は完全に無くなるがその方が良かろうて・・・」
ゆかりはドアを開けた。そして、そこでふと思い出したように老人の方を向いた。
「そう言えばおじいさんの名前を聞いていませんでしたね」
「わしか?わしは志朗というものじゃよ。まあ、すぐに忘れてしまうはずじゃがな。ほっほっほ」
「ありがとう、志朗さん」
ゆかりはそう言ってドアをくぐっていった。
ドアは自然に閉まりそして、消えていった。
「ふふふ、面白い娘だったな〜・・・忘れるのに名前を聞くとはね」
そこに立っていたのは老人ではなく一人の青年だった。
「さて、次に客が来るのは何年後かな。次の客も面白いと良いがね」
そういうと、青年はまた、老人の姿に戻り闇の中に消えていった。

がんがんがん!
店のシャッターを叩く音でゆかりは目を覚ました。
「はぁ〜〜い。誰ですか〜・・・・・」
まだ眠い目をこすりながらゆかりはシャッターを開けた。
「よ!おはようゆかり♪といってももうお昼だけどな」
そこにはお隣さんの徹が立っていた。
「えっ?何言ってんのよ〜・・・・まだ、八時じゃないの〜・・・・」
ゆかりは時計を確認して徹にそう言った。
「太陽が真上にきてるのを八時と言うのなら否定はしないぞ」
ゆかりが外に出ると、まぶしい太陽が頭上にきていた。
「その時計って三日前から止まってなかったか?」
そこまで言われてゆかりは思い出した。
「そうだったわ〜!まだ直してなかったんだった〜!どうしよう・・・・すぐに開けないと」
ゆかりが慌てて準備に取り掛かった。
「やれやれ、俺も手伝ってやるよ」
「お願い!今日は色々届けないといけなくて大変なのよ〜!」
慌ただしく動き回るゆかりを見て徹は安堵感を覚えていた。
(やっぱりゆかりはこうでなくちゃな)
「徹君!これ三丁目の安藤さんの所まで届けてきて〜!」
「へいへい、他にいく所はないのか?」
「えっと、二丁目の青木さんと、国分さん、三丁目は安藤さんだけよ」
「了解。じゃ行ってくるよ」
「いってらっしゃい。なるべく早く帰ってきてね他にもやる事あるから」
わかったと答えて徹は配達にいってしまった。
その光景を見ていた近所のおばさんが近寄ってきた。
「ゆかりちゃんの彼氏かい?良いわね〜若いっていうのは。あ、これとこれ頂戴ね」
「え!いっいえ、その、かっ彼氏っていう訳じゃ、その、あの・・・・べっ別に徹とはその・・・」
しどろもどろになるゆかりを見ておばさんはにこにこしていたのだった。
「でっですから、その・・・・ああ!えっと、よっ四百円です。」
次々来る客に徹の事を聞かれるたびにしどろもどろになるゆかりであった。

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