霧の中の小さな思い出


こんにちは、『時空案内人』の志朗です
またお会いしできましたね〜。
貴方はとても運が良いのでしょう。
それとも、悪いのかな?
ふふふ、まあそれは貴方が決める事です。
私にとっては嬉しい事ですがね・・・・
さて、前回のさとし君と、京子さんはその後どうなったんでしょうか?
あのまま、病院の生活を続けていればもしかしたら?
おっと、またしても『もしもの世界』が出来上がってしまいましたね〜
では、今回もしばしの間、不思議な体験を行って下さい
それでは、運が良ければ、もしくは悪ければまたお会いしましょう
ふっふっふ・・・・・・
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『ひろゆき君。また、また会えるよね?絶対会えるよね?』
『うん!絶対また会おうね』
(君は誰だ?どうして僕の事を知ってるんだい?)
ひろゆきはこれが夢であるという事を既に認識していた。
自分の子供の頃の夢を見ているのだという事も知っていた。
だが、最近は同じ夢ばかり見ているのだった。
(どういう事なんだ?いつもいつも同じ夢だ。あの子は一体誰なんだ?)
必死に考えてみたものの、結局いつもと同じようにわからないまま夢が終わってしまうのだった。

「ひろゆき〜。朝ご飯出来たわよ〜」
台所から母の声が聞こえてきた。
「わかった〜。今行くよ〜」
ひろゆきは返事をしてからベットからおり、着替えを済ませた。
(おっと、今日から夏服だったな)
夏服に袖を通した時、涼しい〜と感じたが一瞬の事だった。
台所に行くと、父が朝食の目玉焼きと格闘していた。
「今日の目玉焼きはなかなか手強いな」
「父さん何やってんの?」
「見ればわかるだろう。目玉焼きを食べようとしてるんじゃないか。」
目玉焼きに苦戦する父を不思議に思いながらもひろゆきは朝食を食べはじめた。
もくもくとご飯を食べていたひろゆきだったがふと、先ほど見た夢が気になりはじめた。
ひろゆきは父の仕事の都合で今迄2回ほど転校しているのだった。
最近は一戸建てをGETしたせいもあってか、転勤はなくなったらしい。
「ごちそうさま。じゃ俺学校行ってくるね」
「いってらっしゃい」
両親に見送られてひろゆきは学校に向かった。
登校の最中も夢に出てきた少女の事を考えていた。
(一体、誰なんだろう?どこかで会っているような気がするんだけどな〜)
「おはようひろゆき。今日は国語の市川休みらしいぜ。らっきーだよな〜」
親友の松井浩二が話し掛けてきていたがひろゆきは考え事に夢中で気づかなかった。
「おい!ひろゆき。聞いてんのか?」
「あっ?おっ浩二おはよう。今日も良い天気だな」
「・・・・・聞いてなかったようだな」
浩二はなんとも不思議な会話をしたような気分になっていた。
「まあ良いや。さてと、じゃな〜俺は今日はへきちゃんのコンサートなんだ♪」
「おお〜い!学校はどうすんだ〜!」
浩二はそんな事はおかまいなしに走り去っていた。
(???なんなんだ一体。へきちゃんって誰なんだろう??)
ひろゆきの中にまたしても疑問が出てしまったがこの件はすぐに忘れてしまった。

なんとか、一日の授業を終えたひろゆきは、下駄箱で靴を履き替えて家路につこうとしていた
そのひろゆきの前に二人の下級生が現れた。
「あっあの、ひろゆきさんですよね?これを浩二さんに渡していただけませんか?」
そう言って、一つの紙袋を差し出してきた。
(はぁ〜、またかよ)
ひろゆきはため息をついた。
実は浩二はかなりの人気者だった。
その親友という事でひろゆきはしょっちゅうこういう事を頼まれるのであった。
「ああ、いいよ。あいつに渡せば良いんだね?」
いつものひろゆきなら断るのだが、今日はなんとなく引き受けてしまった。
「はい。お願いします」
嬉しそうにその場を去っていった下級生を見送ってひろゆきはちょっと悲しくなっていた。
(はぁ・・・・俺の春はいつ来るんだろう。)
ちょっと落ち込んだもののここにいても仕方ないので帰ろうとした所、さっきの下級生が一人残っていた
「?どうしたんだ?帰らないのか」
その下級生はひろゆきをじっと見つめていた。
(なんなんだ?俺の顔に何かついてるんだろうか?)
ちょっと心配になったひろゆきではあったが気にせずに帰る事にした。
家に向かって歩き出したひろゆきの後ろをさっきの下級生はついてきていた。
「ねえ、俺に何か用でもあるのか?」
ひろゆきは振り向いてそう質問した。
「いっいえ、ただなんとなくどこかで会ったような気がしたものですから」
(変な事を言う奴だな〜)
等と思っていたひろゆきではあったがそう言われるとどこかで会ったような気がしてきた。
家についたひろゆきはさっきの下級生の事を必死に考えていた、
(夢であった少女に似ているような気がする)
名前を聞いておけばよかったとちょっと後悔もしていた。
そこまで考えた時浩二から電話がかかってきた。
「ようひろゆき♪やっぱりへきちゃん最高〜♪今度はお前もつれてってやるぞ〜」
そんな会話をしていた時、ふと視界が闇に包まれた。
だんだんと浩二の声も遠くなっていき、手に持っていた受話器もいつのまにか消えてしまっていた。
「なっなんだここは?一体どうしたんだ?」
辺りを見回すひろゆきの前に一人の老人がすうーっと現れた。
「ほっほっほ、最近変な登場ばかりをするの〜」
老人が笑いながらそうもらしていた。
「あの〜、貴方は一体?それにここはどこです?」
ひろゆきが老人に質問をした。
「わしの名は志朗。時空の案内人をしておるものじゃ。お前さんは時空の狭間にあるこの空間を見つけてしまったわけじゃ
 しかし、最近の若い者は変わった所でこの空間を見つけよる。前回はたしか夢の中じゃったな。」
(俺は電話をしてたんだよな?それがいきなりなんでこんな事に?)
「ほっほっほ。お前さんの電話をかけるという行為が偶然ここの空間を探し出すという選択肢と結びついたのじゃろう。
 この空間はあらゆる選択をやり直せる場所じゃよ。ここでは、全ての可能性が現実となる。
 今の自分とはまったく違う人生、男でははなく女としての自分の人生などというのも可能じゃ
 ただしルールが有っての。未来は見れぬ決まりなのじゃ。さて、お前さんはどんな世界が見たいのじゃ?」
ひろゆきは少し考え込んだ。
(あらゆる選択が可能?人生をやり直せる?一体何の事だ?俺にはさっぱりわかんないぞ?)
実際の時間ではほんの少しではあったがひろゆきにはかなり長い時間考えこんだようだった。
「えっと、爺さん。悪いが俺は今の人生で満足している。やり直しはしなくて良いや。
 ただ、一つだけ気になってる事があるんだ。俺の夢に出てくるあの少女って一体誰なんだ?
 さっきの話だと過去の記憶を見るとかは出来そうだよな?できればその辺りを見せて欲しいんだ」
ひろゆきの答えに志朗は驚いていた。
「ほっ。この空間にきてやり直しを望まないものがおるとはの〜。驚いたわい。
 さて、過去の話じゃったな。よかろう、ではその窓を覗いてみるがよい」
ひろゆきは言われて通りに窓から見える景色を覗いた。
そこには、幼い頃の自分と、いつも夢に出てくる少女の姿があった。

『ひろゆき君。また、また会えるよね?絶対会えるよね?』
『うん!絶対また会おうね』
『約束だよ!さつき忘れないからね♪』
『うん!僕も忘れないよさつきちゃん。また絶対会おうね』
(そっか、あの子はさつきって言うのか、あっ!思い出した。
そうか、やっぱりあの子だったんだ!)
ひろゆきは窓を見るのをやめて志朗の方に向き直った。
「なあ、元の世界に戻るにはどうすれば良い?」
志朗はすーっと後ろのドアを指差した。
「あのドアを出れば元の世界じゃよ。しかし、本当にやり直しを選択しなくてよいのか?
 今ならまだ間に合うぞ?」
ひろゆきは首を横に振った。
「いいんだ。俺はあの世界でも十分幸せなんだ。それにそういう事はもっと必要な人がいるはずだろ?
 少なくとも今の俺にはさっきの映像だけで充分だよ。じゃ、爺さん元気でな」
そう言ってひろゆきは出口のドアを開けて出ていった。
「ほっほっほ、変った若者じゃ。じゃが、珍しい種類の人間じゃったのう〜。」 そう言った後、志朗は闇の中に消えていった。

次の日の朝ひろゆきは昨日渡された紙袋をもって浩二の所に向かっていた。
「浩二〜。起きてるか〜」
「なんだよ。今日は学校休みだろ?ゆっくり寝かせてくれよ〜。」
眠そうな顔をして浩二が玄関から顔を出した。
「これ、昨日渡されたんだ。お前に渡してくれってな。じゃあ、渡したぞ。」
「あっ!おい待てよ。これなんなんだ〜!」
後ろの方で浩二が叫んでいたがひろゆきは気にしなかった。
(俺には行く所があるんだ!)
そう、ひろゆきは夢の中で約束した場所に走っていた。
時空の狭間の事はすっかり忘れていたがなぜか夢の中の場所だけはしっかりと覚えていたのだった
(あの場所に、きっと彼女はいてくれるはずだ!)
ひろゆきがようやく辿り着いた時にはもうお昼をすぎていた。
周りを確認していると一人の女性が近づいてきた。
「あの、もしかしてひろゆき君?」
「えっ?ああ、そうだよ。君はもしかしてさつきちゃんかい?」
その様子を志朗はすべて見ていた。
「ほっほっほ、久しぶりに良い話を見せてもらったの〜。しかしm奇跡に近いかも知れんな
 次はどんな人物がどんな物語を見せてくれるのかの〜楽しみじゃわい」
10年の時を越えて再びであった二人を志朗は暖かく見守っていたのだった

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