病か恋か!


こんにちは、『時空案内人』の志朗です
またお会いしましたね。
貴方はとても運が良いのでしょう。
それとも、悪いのかな?
ふふふ、まあそれはどちらでも良いでしょう。
さて、前回のあきら君達はその後はどうなったんでしょうか?
それは、きっと、彼らのみが知っているのことでしょう。
美香さんにとっては幸せかも知れませんが、あきら君にとっては不幸だったかも知れまえんね
では、今回もしばしの間、不思議な体験を行って下さい
それでは、運が良ければ、もしくは悪ければまたお会いしましょう
ふっふっふ・・・・・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「俺も、もうすぐ死ぬんだよな・・・・・」
さとしはテレビを見ながらそうつぶやいていた。
さとしが見ているテレビ番組では中学生飛び降り自殺!いじめが原因といった感じの番組が放映されていた
「何を言ってるんですか。早く元気になって学校に行きましょうね」
看護婦さんがそう言ってテレビを消した。
この少年、本名を『神岸さとし』と言う。かれこれ五年もの間入院しているのであった。
病名は癌であった。周りの人間は必死に隠していたが本人はうすうす気づいてはいたのだった。
(俺は癌でもうすぐ死ぬんだ)
そんな事を考えていた時、一人の少女が部屋に入ってきた。
「さとし君、こんにちは。具合はどう?」
「ああ。今日は気分が良いんだ」
さとしは努めて明るく振る舞った。
この少女は、『佐藤京子』といって、さとしとは中学の時同じクラスになった事もあるのだった。
さとしは、京子にたいして密かな思いを持っていたのだった。
だから、いつもこの時間のさとしは気分が良いのだった。
「ふふふ、さとし君の元気の素も来てくれたようなので私は消えるわね♪
 京子さん何か有ったらそこのボタンを押して下さいね」
そう言って、看護婦は部屋から出ていった。
京子はいつも言われている事なのでもう慣れたようだが、さとしはいつも恥ずかしそうに顔を背けるのだった
京子はそう言った時のさとしの表情が好きだった。
さとしが京子と知り合ったのは三ヶ月前だった。
その日は担任の先生がクラス代表の京子と一緒にお見舞いに来てくれたのだった。
その時はあまり興味を持たなかったし、学校なんかと思っていたので気にもしなかった。
だが、それから数日後、今度は京子一人でお見舞いに来てくれたのだった。
その後はもちょくちょく京子はお見舞いに来てくれるようになり最近では、ほぼ毎日学校の後に立ち寄ってくれるのだった
「なあ、なんでそんなにちょくちょく来てくれるんだ?」
さとしは、いつも感じていた疑問を聞いてみようと思った。
「う〜ん・・・・どうしてかな〜?私にもわからないよ。」
ちょっと意地悪そうな笑顔を見せながら京子はそう答えてくれた。
「私がくると迷惑?」
「いっいや、ぜんぜんそんな事ないよ!来てくれると俺も嬉しいし・・・その・・・」
さとしが必死に弁解しているのを聞いて京子は嬉しそうにしていた。
「あっ、今日はもう帰るね。じゃ、またね」
「うん。気をつけてね」
そう言って京子は病室から出ていった。
(やっぱり良いよな〜)
さとしはそんな事を考えていたら眠くなってきたのでそのまま眠りについたのだった。

京子は今日も幸せな気分で家に帰ってこれた。
(あしたはお休みだし何か作って持っていこうかな♪)
うきうきしている自分にちょっと恥ずかしくなりながらもあしたのことを考えると楽しくてしょうがなかった
「あっ!いけない、彼の好きなもの聞いてくるの忘れちゃった。」
今日の目的の一つにさとしの好きなものを聞いてくるという項目が入っていたのだがすっかり忘れてしまっていた。
(あした聞けば良いよね)
クラスでは誰とも上手く付き合えない京子だったがさとしとはとても仲良く話せるのだった。
京子にとってさとしと話している時が一番楽しい時だったのであった。
実は京子もさとしに恋していたのだった。
もちろんお互いの気持ちはわからないままではあったが・・・・
(おやすみ、さとし君)
京子は明日のことを考えながら幸せそうに眠りにつくのだった。

「ほっほっほ、ようこそ、時空の旅人よ。」
そこには見知らぬ老人が立っていた。
「貴方は誰?」
さとしの記憶にこの老人はいなかった。
「わしの名は志朗。時空の案内人をしておるものじゃ。お前さんは時空の狭間にあるこの空間を見つけてしまったわけじゃ」
(空間を見つけた?たしか俺は寝てたよな?)
「そう、おぬしは眠っておった。夢の中でこの空間を見つけたものはお前さんが初めてじゃよ」
さとしの考えに対する答えを老人は先に出してきた。
さとしはびっくりしたがこれは夢なんだと考えた。
(夢なら何でもありだよな♪)
「ほっほっほ。そうこの空間はあらゆる選択をやり直せる場所じゃよ
 ここでは、全ての可能性が現実となる。世界中から核が無くなった世界、月に人類がすんでいる世界などなんでも実現可能じゃ
 お前さんの言う通りなんでも有りの世界が見れると言う事じゃ。ただしルールが有っての。未来は見れぬ決まりなのじゃ
 さて、お前さんはどんな世界が見たいのじゃ?」
志朗の話を聞いているうちにさとしの脳裏には一つの場合が浮かんでいた。
(もし、俺が病に犯されてなくて元気に学校に行ってたら)
と言う想像がさとしの中で広がっていた。
「ほっほっほ。なるほどそれがおぬしの希望か。ではそこの窓を覗いてみるが良い」
さとしはいわれるままに窓を覗きこんでいた。
そこには、クラスメイトと楽しそうに遊んでいる自分の姿があった。
そこでの自分は病院とは縁の無いような健康的な少年だった。
しばらくその光景をじっくりと見ていたさとしだったが、見るのを止めて志朗に向き直った。
「爺さん。あの世界が現実になる事はないのか?」
「ほほほ、いや、ちゃんと有るぞ。おぬしをあの世界に送る事は可能じゃ。じゃがこっちの世界にはもどってこれなくなるぞ?
 それでも、良いのかな?」
さとしはしばらく考えていた。
(戻ってこれない?つまりこの世界から俺と言う人物がいなくなると言う事か?)
「ほっほっほ、そうではない、あくまでこの世界を感じる事が出来なくなると言う事じゃ
 まあ、気分的には何も変わる事はないじゃろうて・・・・」
難しすぎてよくわからなかったさとしであったが気分的に変わらないと言うのなら良いだろうと言う結論に達していた
「頼む、俺をあの世界に」
そう言った時さとしの前に一枚の扉が現れた。
「それをくぐればあの世界に行けるじゃろう。じゃが、戻っては来れないぞ」
さとしはためらう事無く扉をくぐっていった。
「やれやれ、向こうの世界でも京子という子と上手く行くとは限らんのにのう〜
 まあ、本人が望んだ事なんじゃしよしとするか」
そう言った後、志朗は闇の中に消えていった。

「さとし!朝ですよ。起きなさい〜」
母親の声に起こされてさとしはベットから飛び起きた。
時間は既に7時50分。遅刻してしまうような時間だった。
さとしは、急いで着替えを済ませて家を飛び出した。
学校のチャイムが鳴りはじめた。
このチャイムが終わる前に教室に入らなければ・・・
チャイムの終了と同じにさとしは教室に駆け込んでいた。
「やっやった・・・・今日も・・・遅刻は回避したぞ・・・」
息を切らせながら自分の席に着こうとした時京子と視線が合った。
その時、さとしは何かを思い出しそうな気がした。
(あれ?今何かがふと思い浮かんだような?)
少し気になっていたがすぐに忘れて、周りの友人と楽しそうに話しはじめていた。
七年後、京子が結婚したのを風の噂で聞いていたのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー