扉の向こうの世界 番外編
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お帰りなさい。
ボスの力を垣間見た感想はいかが?
さすがの私もあの時は、大きな川のほとりにたたずんでたわよ。
ボスはあれだけの力を持っていながらなぜ前線に赴かないのかって?
それには理由があるのよ。
そう、ボスがあの島から長時間離れられないわけ・・・
今回はその話を見せましょうか。
さあ、いつものように少しの間だけ異世界の扉を開けてあげる。
いってらっしゃい。

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『扉の向こうの世界 外伝』 −ミリシャ−

この世界は一見平和に見える。
こうして届けられる町の情報を見ても平和そのものだ。
けど、実際は違う。
過去のとある時点で歴史は大きく歪められた。
それまで、自然の調和にあった形で村が作られ、人が増え、バランスの良い世界だったものが、
人を中心とした、人がすごしやすい、そして、
人以外のものには過酷な世界に変貌してしまった。
歴史を歪めた人物。
いや、その存在を人物と言っていいのだろうか・・・
奴らのリーダーにして、神と呼べる存在。
あの、白き羽を持つキホールがこの世界を歪めた張本人だ。
奴の目的はすでにわかっている。この世界の崩壊だ。
この世界が崩壊すれば全ての均衡が崩れる。神々の住まう地への侵攻に必要な混沌を作り出せるのだ。
私は奴らの計画を阻止するためにこの島に移り住み、この組織『あの時の青空(英語にしようと思う)』を結成した。
組織を補佐するシェティスのおかげで、優秀な人材は瞬く間に集まり対抗勢力として陣容は整ったと思われる。
だが、決定的なものが足りない。
それは、私の変わりに前線にて敵と戦える人材がいないと言う点だった。
私はこの島を出る事が出来ない。
私の代わりの人材がどうしても必要だった。
そんな私の前に現れたのが甲斐那とグランズだった。
彼らなら、私の代わりが出来る。
グランズが近距離、甲斐那が中距離をこれに遠距離を出来るものを加えれば・・・
そんな贅沢な悩みを解決してくれる存在が鳳ノ花さんだった。
これで、前線でのアタッカーチームが出来た。
後は、私がこの地を守りきれれば・・・
『まだ我々に対しての抵抗を諦めていないのか?』
「・・・キホールの使い?」
黒いローブを身にまとったブラックウィザードが突如私の部屋に現れる。
奴らはいつも不意に現れるからやっかいだわ。
「レディの部屋に入る時はノックしてドアから入ってきてもらいたいものね」
『この世界の何が不満だ?皆幸せに暮らしているではないか』
確かに今この瞬間を見た限りではみな幸せそうに暮らしている。
だが、
「そうね、見た限りはみんなそうね」
『ならば・・・』
「でもね、あんた達が歴史を歪めた結果、その歪みが大きくなり、世界を崩壊させようとしてる。
それに気づいちゃったら、抵抗するしか無いわよね?」
『・・・やはりそのためにこの地に来たか・・・』
「私がこの地にいれば、歪みを押える事が出来る。世界の崩壊なんて絶対にさせないわ!」
『やはり、ここでも貴様は最大の障害になるのか』
「ここでも?それがどこの事か知らないけど。私と貴方達はよっぽど縁があるようね」
『ふ、まったく嬉しくない縁だがな』
「同感ね」
『・・・よかろう。でわ、貴様の命。ここで貰い受ける!!』
「無理よ、貴方じゃね。私を殺したいならキホールをつれてきなさい」
『我らが主がなんで貴様如き・・・』
これ以上こいつと話してても意味はない。
私は腰に下げていた剣を抜き、目の前の敵に切りかかる。
この間わずか0.3秒。敵も自分が切られた事には気がつかない程の速さだ。
これでも、ちょっと手加減したのよ?
『ば・・かな・・・』
「だから言ったでしょ?貴方じゃ無理よ」
現れた時と同じく消える時も跡形も無く消えていく。
まったく、こいつらは一体何なのかしらね。
しかし、一体だけ?
そんな疑問を打ち消すように通信が入る。
「ミリシャ様、AとBフィールドに敵です。今アタッカーチームが迎撃に出ています」
通信係りの子が敵の襲撃を伝えてくる。
いつもの手だけど・・・ここにも現れた所を見ると。
「AとBの方の戦力はどれくらい?うちのチームで対処可能?」
「敵数はAが8、Bが9確認されています。現在Aフィールドへはsutika隊を、Bフィールドへは桜蓮寺隊を送っています。
 彼我の戦力差を考えるに十分対応可能です。念のため、奈々穂隊を遊撃部隊として待機させてあります」
うんうん、なかなか上出来な指揮ですね。さすがシェティス。
さて、そうなると私はっと、
「そっちは任せるわ。私は敵主力の来るCフィールドに向かう。ああ、増援とかはいらないけど、
 討ち漏らしがあるとまずいからフィールド入り口に誰か待機させておいて」
「え?Cフィールドですか?そっちは何もいませんけど?」
「私の感よ。いなかったらそれはそれで良いじゃない。AとBは任せるわよ」
「は、はい、了解しました」
さて、私の感だと恐らく20〜30って所かな。
1分もあれば十分ですね。



Cフィールドについて見れば案の定敵の襲撃があったわ。
全員、対監視魔法用装備とは恐れ入る。
「よっぽど私を消したいのね」
ざっと見た所35体って所かしら・・・1分は言いすぎだったわ。2分に訂正。
『ミリシャよ。おとなしくこの地を去るなら命までは取らぬが?』
おやおや、戦闘指揮官のダークナイト様ご自身での出陣とは恐れ入りますね。
『我も元は人。殺めるのは忍びないのだ』
「ありがたいお言葉です事。でも、貴方に私が殺れて?」
言い終わると同時に私は二本の剣を両手に持ち的のど真ん中に突っ込む。
「ふふふ、まとめて吹き飛びなさい!!」
必殺のウィンドミルで敵中央に空白地帯を形成。
そこから、間髪いれずに北側の敵にスマッシュを叩き込む。
そんな調子で当たるを幸いに敵を屠って行く。
1分15秒・・・残るはダークナイトただ一人。
『あ、あれだけいた手勢が全滅?2分ともたずに?』
ひゅんと剣を一振りし、剣についた血を吹き飛ばす。
こちらのダメージは・・・うん、かすり傷が一つあるわね。
私も鈍ったものだわ。今度グランズさんが戻ってきたらとことん近接修行に付き合わせましょう。
「さて、後は貴方だけみたいだけど・・・どうする?やる?やるなら容赦しないわよ」
『く・・・』
「部下を全員引き上げさせなさい。そうすれば見逃すわ」
『な、なめるな〜!!』
逆上して突っ込んでくる。ちょっとした挑発に乗るあたり青いわね。
こちらはカウンターで待機してるってのにね。
『死ね!!』
待ってましたとカウンターで撃退!
即死は避けれたみたいだけど、瀕死みたいね。
さて、情報の聞き出しでも・・・
『・・・さすがミリシャ。4英雄の一人というのは伊達ではありませんね』
白い羽を羽ばたかせる圧倒的な存在感。
そして、この圧迫感は・・・
「キホール!」
『久しぶりですね。相変わらずの強さ。見事です』
「・・・何しに来たわけ?決着をつけに来たなら受けて立つわよ?」
『ふふふ、今の私の力では貴方に勝てないのは十分承知。所詮影ですからね』
『私がここに来たのはその男を引き取りにですよ』
『キホール様、もうしわけありません』
『何、ミリシャ相手では仕方ありません。と言うわけで、引き渡してもらえると助かるのですがね?』
「はい、そうですか。と私が渡すとでも?」
『取引といきましょうか、ここにブラッククロニクルを読むためのヒントがあります。これを渡しましょう』
あの、世界の秘密を記した書を?
そんな重要なものと引き換えにするこの男・・・よほどの人物か?
『手に入れたは良いが、解読できなくて困っていたのでは?』
こちらの手の内を読んでいる様ね。
確かに解読作業は行き詰っていた。何せ手がかりがないのだ。
その手がかりが手に入るのならこれほどの好条件は無いのだが・・・
何かが引っかかる。
だが、今はあの書の解読を優先した方が良いわね。
「・・・わかったわ、勝手につれて帰りなさい」
『ふふふ、助かりますよ。それでは、我々はこれで』
ふっと消えていくキホールとダークナイト。
残ったのはブラッククロニクル解読のヒントを記した一枚の紙。
とりあえず、敵の襲撃は撃退できたと思ってOKよね。
一応通信で確認。
「もしもし、こっちは片付いたわよ?そっちの状況は?」
「AとBどちらのフィールドでも敵を全滅させました。こちらの被害は負傷1、死者0です」
負傷者が出たのか・・・
しかし、あの程度の襲撃ならさして大きくはないだろう。
でも、一体誰が・・・
「ちなみに、誰が負傷したの?」
「え〜と・・・sutika様が・・・その」
ん?通信の子が言いよどんでる?まさか・・・
「あ〜、まさか銃の弾切れに気づかずにAR発動させて途中で弾が〜とか叫んだんじゃないでしょうね?」
「・・・はい、まさにその通りです。3発目が撃て無くて敵の接近を許して一撃を・・・」
あ・・・あの子は!!
「治療はとりあえず優先的に他の子をあてなさい。あと、来月の給料1割カット!と伝えておいて」
「わかりました(^^;」
やれやれ・・・
まあ、今回は死者もでなかったし良かったわね。
「私がこの地を守って見せるから、甲斐君。頼んだわよ?」
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あとがき
作者 :なぜかこのタイミングで番外へ〜ん♪
すちか:ありえな〜い♪
作者 :良いのです!
すちか:で、なんでこのタイミング?
作者 :ミリシャさんの設定は3話を書いてる段階である程度は固まってたんですが
作者 :メモしようと設定を書き出してたらなんか、興が乗っちゃって
すちか:で、一気に書き上げたと・・・?
作者 :まさにその通り!!勢いって怖いよね〜
すちか:そうね。どど〜んと作れる時は作っちゃってストックしとくといいわよ
作者 :まあ、今回は主役の3人が出てきてないので外伝って形にしてみました
すちか:ミリシャ様かっこよすぎですね
作者 :ミリシャ様はいつでもかっこいいですから
すちか:あと、今回シェティスさんと奈菜穂さんも出てるわね
作者 :名前だけ・・・ですがアツシさんも出てますよ〜
すちか:みんな出てくるのもそう遠くなさそうね〜
作者 :ですね〜
すちか:さて、外伝の今後のストーリーは?
作者 :外伝ですからこれで終わりです。
すちか:あら?そうなの?
作者 :はい、別の外伝を書くことはあってもこれの続きは無いです。
すちか:なるほどね
作者 :っと言った所で今回はこの辺で〜
すちか:次回作でお会いしましょう♪