扉の向こうの世界 第五話
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異世界の扉へようこそ。
貴方のためにこの扉を開けるのは5回目。
かなりの回数を開いたつもりだったけど、まだ5回だったのね。
ふふふ、さて、今回はどの辺の物語が見れるかしらね。
さあ、異世界の扉を開けてあげる。
いってらっしゃい。

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『扉の向こうの世界5』 −護衛−

『指令!例の本の解読が完了しました!!』
シェティスからの通信が入る。
『今から資料をもってそちらに向かいますが、よろしいですか?』
『ええ、了解したわ』
通信を終えたミリシャの表情に先ほどまでの軽い笑みは無くなっていた。
「みんな、突然だけど次のミッションみたいよ」



「・・・で?本の内容についての話はどこにいったんだ?」
豪華な料理に、豪勢なホール、静かに、だが厳かに流れるBGM。
そこかしこに気色の悪い笑顔を振りまいている奴ら。
「そして、なぜ俺はこんな奇妙な部屋にいるんだ?」
『甲斐君、文句言わないんだな。ご馳走にありつけてるんだから良いじゃないか!』
『そうよ〜、こっちは寒いさむ〜い外で見張りなんてつまんない仕事してるんだから』
俺の独り言はチームであるグランズ(牛)と鳳ノ花にも聞かれていたらしい。
まったく最近のマイクは拾音性が高くて困る。まあ、いいことではあるんだが・・・
「うっせ〜よ牛に鳳ノ花!何なら今すぐ代わってやるからこっちにこい!」
俺は会場のやつらには聞こえないようにぼそっと二人に文句を言う。
そう、文句の一つも言いたくなるってものだ。

あの日、例の本の説明を聞くために資料室に向かう俺たちに緊急特別ミッションが発生した。
それは、組織のスポンサーにして、表の代表である人物の護衛である。
組織として機能するためには資金が大量に必要。それを出してくれる人物の護衛である。
さすがに、そんな重要人物の護衛を脇に置いといて、というわけにはいかない。
そこで、ミリシャはすちかと奈菜穂の二人を護衛にと言ったのだが、先方が俺を名指しでご指名してきやがった。
「甲斐那君を護衛によこさないなら資金出さないからね!」
・・・まったく困った話だ。
といった経緯があり、俺は今ダンバートン市内のとあるビルの25階にあるパーティー会場に来ている。
「はぁ・・・なんで俺がこんな目に」
俺は、普段はかけないメガネを中指でくいっと直す。
今回の護衛をするにあたり、変装用にと渡されたものだ。
・・・なぜか俺の視力ぴったりに調整されており、普段つけているコンタクトより快適だ。
さらには目を防護するためにとレンズは防弾性になっているらしい。
(このメガネ、このミッション終了時に貰えないか交渉してみるか)
先ほど、メガネをかけた時のあいつの顔を思い出す。
恐らく交渉もさして難しくは無いだろう。
追加報酬の可能性も非常に高くきわめて美味しいミッションのはずなのだが、それでもやはり不満が顔に出てしまう。
「わ、私と一緒じゃ不満なのか!」
俺の隣で膨れ面を見せているのが今回の護衛対象にして、組織の代表者(表)である月の環の宮だ。
世界一の大財閥『月の環家』61代目当主にして、世界経済のキーマン。
彼女の行動一つで世界の経済バランスが変わるという大人物だ。
本人はそんな大人物だという自覚はまったくなく、誰にでも笑顔で優しく振舞っている。
・・・俺以外には!!
なぜか、俺にだけは態度が違うのである。
素の表情を見せているのだろうか・・・それとも、別の理由があるのだろうか・・・。
名指しで指名してくる辺りを考えると嫌われてはいないようだが・・・さてさて・・・。
「せ、せっかく久しぶりに会えたのに、そんなつまらなそうな顔しなくても・・・良いじゃないか」
怒ったかと思えばいきなりしょぼんとさせてしまった。
俺が何をしたんだ〜><
「いや、そんな事はない。ただ、俺のいる世界とは別の世界だからなここは。正直居心地が悪い」
「そっか、そうだよね。私とじゃつまらないよね」
更に落ち込ませてしまったようだ・・・
はぁ・・・しょうがねえな〜
「つまんなくねえよ。ったく、いつも変なことで落ち込みやがって。いつものかわいい笑顔を振りまいてろよ。
 お前が笑ってないと・・・俺もつまんねえよ」
「え?」
しまった、少しリップサービスが過ぎたか・・・
「な!きゅ、急に何言ってんのよ。そんな、か、かわいいだなんて・・・でも、本当?そう思ってくれてるなら私・・・えへへ☆」
・・・確かに笑顔を振りまけとはいったが惚けたような笑顔を見せろとは言ってないんだがな〜
見方によってはまあ、かわいいか・・・って俺は何を考えてるんだ?
「えへへ〜、甲斐ったら〜・・・もう!だめよ〜こんな所で〜」
なにやら危ない妄想が彼女の中で再生されているようだ。
にしても、こんな場所でこんな惚けた顔してていいのか?
こいつは大財閥の当主だってのに・・・
『おうおう、甲斐君も言うね〜』
・・・しまった、無線をオフにするのを忘れていた・・・。
俺としたことが痛恨のミスを!
『素敵なことを言うわね甲斐ったら、私も言ってほしいわ〜』
『いけ!そこだ!ぶちゅ〜と一発かますのだ!』
「牛、貴様は殺す。後で絶対に殺す!」
『も”〜、相変わらずシャイボーイなんだから。甲斐君は』
『ふふ、それが甲斐のいい所なのよ。邪魔しちゃだめよ』
『おや?ほの君は随分理解があるようだね〜』
『私は見てて面白いからね。狙撃銃ってスコープあるから拡大で見れるのよ』
『お!良いね〜良いね〜、後で俺にも見せてくれよ』
『大丈夫よ、ちゃんと録画機能もついてるから』
「なんで狙撃銃のスコープにそんな機能があるんだよ!」
『おお!後でよろしく!』
「よしわかった、お前ら二人まとめて殺してやる。今すぐに!」
『む"〜、甲斐君はうるさいな〜お仕事はきっちりやってるんだし文句言わない!』
『そうよ〜、こんな寒い中待機してあげてるんだからそれくらいの娯楽はよこしなさい』
「うっせ〜!何でお前らの娯楽に俺がネタにされなきゃなんね〜んだよ!」
『そういう宿命なのよ、っとそろそろ宮様を元に戻さないとまずくない?』
『他の財閥関係者の手前もあるんだから、早く元に戻してあげないと。・・・俺の筋肉でも見せるか?』
「おう!見せにこいや!そして、俺に殺されるが良い!!」
というチームメイトとの心温まる会話を行ってる間も宮は元に戻らずいまだ妄想の世界を彷徨っていたわけで。
(やれやれ、こいつが本当に世界一の金持ちなんだろうか・・・)
とりあえずそういった諸々の疑問は置いといて、
「おい、宮?お〜い、かえってこ〜い」
「・・・!!、か、勘違いしないでよね!私はいつでもかわいいんだから!!」
俺の呼びかけにどうやら正気に戻ったらしい。
にしても、この謎のパーティ何時まで続くんだ?
しかも護衛必要か?これ。
「なあ宮、ものすごい疑問を感じてしまうんだが・・・護衛必要なのか?これ」
「え?も、もちろんよ!なんせ、私を狙う輩は星の数ほどいるんだから」
とてもそうは見えないんだが・・・
「まあ、手を出してきた場合報復はきっちりするけどね♪」
「そうだな、お前なr!? 宮!伏せろ!!」
そんな軽口を叩いていた時、扉の向こうから俺は明確な殺気を一つ感じ取った。
その瞬間、俺は宮に飛びつき床に倒れこむ。
と同時に今まで宮がいた地点を銃弾がすり抜けていった。
「ち!やつは護衛か!単なる秘書かと思って甘く見た!」
そう言いながら銃を宮に向ける犯人。
だが、やつから次の銃弾が発射されるより早く窓の外から正確無比の一撃が飛来。
やつの銃だけを狙撃するという離れ業を披露してくれた。
続く第2射目にて利き腕を打ち抜き、第3射にて右足を打ち抜いていた。
「おいおい、どんだけ離れてると思ってんだ?」
『え?たかが1キロちょいでしょ?余裕よ余裕』
なんとも頼もしい相棒だな。
狙撃の名手鳳ノ花の華麗な一撃で目の前の馬鹿野郎は沈黙。
「く、なぜ会場に俺だけしかいないんだ・・・」
手と足を打ちぬかれた犯人が苦悶の表情でそう漏らす。
「その答えは簡単だ。他のやつは俺のチームが潰したからな。正確には俺のチームの一人が・・・だがな」
「な!20人からいたはずだぞ!うそを言うな」
俺もうそだと言ってやりたいんだがな〜
俺は無線のイヤホンをそっと外し犯人に聞かせてやる。
『はっはっは、この筋肉の前にはマシンガンなど無駄無駄無駄〜!あ〜っはっはっは!』
『なんなんだ!この化け物は!こっちの銃がきかねえ!ちい!』
『無駄無駄無駄〜俺を倒したいならロケットランチャーでももってこんか〜い!』
『だ!だめだ、てっ撤退するぞ!』
『逃がすとお思いで?ほの君、タイヤをよろしく!』
『わかってる』
バーン!
逃走用に用意していたのだろう車のタイヤが鳳ノ花の狙撃によってパンクさせられる。
これでは、車を使うことが難しい。
『タイヤをやられた!?』
『さて、す〜ぱ〜おしおきタイムだ☆』
『ぎゃ〜!あ、暑苦しい!ぎゃわわ〜!!筋肉が、筋肉が迫ってくる〜〜〜〜』
あいつらは何やってんだか、特に牛・・・遊びすぎだ
状況を聞かされた犯人は呆然としている。
そりゃそうだわな〜。

さて、こいつから雇い主を聞きだすか。
俺は床に手を突いて立ち上がろうとする。
その時、事件は起こった。
ふにょん。
妙に床が柔らかかった。
それに暖かく、感触も実に良い。
(はて?ここの床ってこんなだったか?)
ちょっと指を動かしてみる。
もにゅ、もにゅ。
・・・実に良い感触だ。
「・・・んぁ・・・ちょ、ちょっと、甲斐?」
もにゅ、もにゅ、もにゅ。
おや!なにやらとがった物件が・・・?
「・・・い、いつまで触ってる気だ〜!!」
どがん!と俺の頭にものすごい衝撃が走る。
そ、そうだった・・・俺、宮をかばって・・・
「はぁ・・・はぁ・・・どうやら、死にたいようね甲斐那〜」
「ま!まて誤解だ!不可抗力だ!!」
「問答無用〜!!」
ずがん!
先ほどの衝撃を上回るほどの威力を持った一撃が俺を襲う。
薄れ行く意識の中、俺は先ほどの手の感触を思い出していた。
(さ、最高だったぜ!)

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あとがき
作者 :無事に第5話完成〜♪
すちか:ちょっと待ちなさい
作者 :なんです?
すちか:前回で解析された本の話はどこへ言ったわけ?
作者 :作者の都合で闇に消えました。
すちか:闇にって・・・
作者 :いっそ、あの本の話とかは無かったことに・・・でもいいかな〜
すちか:良い訳ないでしょうが!
すちか:それに、今回のこれは一体なに?
作者 :組織のボスである月の環の宮さま登場の話ですが?
すちか:世界観がまったく変わっちゃったじゃないの!!どっちかというと学園編っぽいわよ、ノリが!
作者 :ほら、組織って事だし、やっぱり社交界じゃないけど、こういったお金持ちのパーティーとかの参加は絶対にあると思うんですよね。
すちか:まあ、・・・あるでしょうね。
作者 :そうなると、それなりの地位の人がほしいじゃないですか!それに世界中飛び回る必要があると思うし!!
すちか:ん〜、確かにそうかもしれないね〜
作者 :で、そうなるとミリジャ様は動けないって設定にしてるから無理じゃないすか!なので代わりが欲しかったんですよ。
すちか:なるほど。
作者 :ちょうど宮様の出番を!って声もあったし、これだ!って事です。
すちか:私が言いたいのは、話の雰囲気よ!前回までちょっとシリアスモードだったのに。今回完全なギャグものじゃない!!
作者 :前回までもギャグです!!
すちか:・・・ま、まあ・・・確かにそういった部分はあったけど・・・こう・・・シリアスっぽい部分が大目だったじゃない?
作者 :今までのがおかしかったのです。私の本来のノリはこれです!
すちか:・・・(言い切ったわね)
すちか:ま、まあその辺は良いわ。で、最後のちょっとピンクモードはなに?
作者 :甲斐さんですから!!
すちか:なんでもそれで済ませようとするな〜!!!
作者 :一応宮様ご希望のめがねクイッシーンも入れましたのでこれで良いのです!!
すちか:良いのか?あんなワンシーンを最後に入れても・・・いいのか?
作者 :次回以降、甲斐さんは常時メガネ着用になるからいいのです!
すちか:あ、っそ・・・それならまあ・・・OKか?いや、何かが根本的に違う気が・・・
作者 :さてさて、あとがきが妙に長くなってしまったのでこの辺で〜
すちか:次回もお楽しみに〜って次回あるのよね?
作者 :今回の話番外編って事にして終わらせることも可能です・・・
すちか:不吉なこと言わんと、きっちり書かんか〜い!!
作者 :ひぃぃぃぃぃぃぃ、え、え、鋭意努力いたします!はい!!