扉の向こうの世界 第三話
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あら、もう見終わったの?お帰りなさい。
なかなかかっこよかったでしょ?え?そうでもない?
脅威のスキルを見せられて私はかなりびっくりしたわよ。
でも、その後のことの方が、私には衝撃だったけどね。
その時の話をみせましょうか?
ボスの脅威の能力の一部が垣間見れるわよ。
さあ、今回もちょっとだけ異世界の扉を開けてあげる。
いってらっしゃい。

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『扉の向こうの世界3』 −ボス−

気絶したグランズさんを医務室へ運ぶように甲斐さんに指示した後、私は鳳ノ花さんと二人で訓練室の中に入っていった。
彼女の実力は報告で聞いてはいたが、実際この目で見ておきたかったと言うのがその理由。
まあ、後はテストですね、形だけですが。
「さて、鳳ノ花さん。得意レンジは連距離狙撃・・・でよろしかったですよね?」
「ええ、一応近接戦の心得もあるけど、狙撃の方が得意なのは間違いないわ」
うんうん、資料どおりだね。
となると、彼女でいっか。
「でわ、ちょっとしたテストをしましょう。すちかさん」
「はいは〜い、待ってました〜♪」
私の呼びかけに答え、ライフルを2丁手にしたすちかさんが現れる。
「一応うちのスナイパーとしては上位にランクする子です。この子と狙撃勝負してもらいますね」
ルールは、まあ競技ルールでいっか。
簡単にルールを説明し、試合開始。
「ひっさ〜つ!アローリボルバー〜」
5発の銃弾を連続で発射するスキル。彼女の持ち味の一つだ。
しかし、銃弾なのにアローってのは・・・一体なんでなんでしょうね〜
・・・結果はまあまあって所ですね。まだまだ集弾が甘いのが難点ですが。
「次は私の番ね?アローリボルバーを使わないとだめなのかしら?」
「得意スキルなのであれば、使って構いませんよ?別に使わなくてもOKですが」
「そう、じゃあ、使わないで撃つわ」
速度と言う点で劣るのかと思われたが、妙に照準が早い。
的までの距離は同じはずなのに、照準速度は桁違いだわ。最後の1発だけは妙にゆっくりしてたけど。
・・・結果は5発中4発がワンホールショット。1発だけちょっと横にずれたのはご愛嬌って所かしら。
「1発ずれましたね。でも、すちかさんの集弾率に比べればかなり上です」
「集中力が切れちゃったのよ。今日は色々あったからね」
「なるほど。あのスキルは連続使用は出来ないってのが欠点みたいですね。4発分が限度と・・・」
鳳ノ花さんの特殊スキル『空間掌握』。
一部の関係者の間では有名なスキル。
効果は、相手と自分の距離感を0にする。だったかしら。
「・・・抜け目無いわね。ばれてたの?」
「ええ、これでもこの組織のボスですから。部下の能力把握は最重要事項です」
「私としては貴方の能力を見てみたいわね」
「良いですよ?何をお見せします?近接?狙撃?魔法戦?ご希望なら全てでも」
「じゃあ、私達と同じ狙撃ね」
「わかりました。すちかさん、銃を貸してもらえます?」
銃を受け取り、弾を込める。ん〜狙撃は実に久しぶりだな〜
「ちょっと、久しぶりなんで1発だけためし打ちしてもいいですか?」
「良いわよ」
でわでわ、試射っと・・・
・・・OK。
「それでは行きますね」
鳳ノ花さんに負けずに5連射。
・・・結果は満足の5発全てワンホールショット。
「っと、こんな所でいかがです?」
鳳ノ花さんが呆然としてる。あれ?なんかまずったかな?
「あの、どうかしました?」
「・・・この距離で・・・何の能力も使わずに?・・・ありえない」
何かぶつぶつつぶやいてますが、まあ良いでしょう。
「すちかさん、銃ありがとうね。ちゃんと手入れされてる良い銃ですよ」
「ありがとうございます。でもさすがミリシャ様ですね」
「え?なぜです?」
「だって、的までの距離、その銃の射程外ですよ?どうやって当てたんです??」
「・・・はい?」
試射の時には何の問題も無かったような。
実際に撃った時は気にしてなかったけど、確かに今見るとちょっと遠くなっている。
「鳳ノ花さんから言われたんですよ〜、試射の後距離をぎりぎり射程外にするようにって」
「・・・すちかさん、後で説教部屋に来るように。あと、今月の給料1割カットです」
「うぞ〜ん!!!ひどい〜!横暴だ〜!」
泣き言をほざく子はほっといて。さて、次に行きましょうか。
「さて、鳳ノ花さん、次は近接格闘の能力を見せてもらいましょうか」
「え?あ、は、はい」
さて、次は近接っと・・・グランズさん・・・は気絶中か。
となると・・・私がお相手しますか。
「グランズさんが適任だったんですが、あの方気絶中ですし。私がお相手しますよ」
「・・・狙撃だけじゃなく近接格闘も出来るの?」
「先ほど言いましたように、私はどのレンジでもいけますよ。能力的には・・・まあお察しくださいではありますがね」
ちょっと謙遜しておこうかしらね。
実際、特化の人には勝てないのよ〜私は
「・・・接近戦は苦手なんだけど。まあ良いわ。いくわよ!」



「ふ〜、重かった。何でこんなに重いんだこいつは」
種族『ジャイアント』は体格的にでかいから重い。
にしても、ミリシャが直接に施設の案内をしてたってことは・・・
今頃、鳳ノ花がミリシャのテストを受けてるころかな?
あれ結構しんどいんだよな〜。
てか、ミリシャは人なのか?オールレンジで最強って反則だろ。
一応俺もオールレンジタイプだが、奴にだけは勝てる気がしねえ。
「鳳ノ花、ぼろぼろになってなければ良いんだが」
「それは無理だと思うな。ミリシャの能力はありえない」
俺の独り言に気絶中のはずの牛が答えてくる。
「・・・牛、てめえ何時から意識戻ってた?」
「見くびってもらっては困るな〜訓練室出てすぐに決まってるでしょ?」
「ほう?そうすると、俺が運んでる間ずっとおきてたと?」
「楽だった〜、ご苦労甲斐君。って、まて!その銃をおろしたまえ」
「ゼロ距離からのマグナムリボルバー・・・さすがのお前でも耐え切れまい。今度は実弾でいくぜ?」
「ごめんなさい。僕が悪かったです。なので、勘弁してください」
ち、まあこいつをやるのにまた銃をだめにはしたくねえしな。
俺はしかたなく。そう!しかたなく!!銃をおろす。
代わりに一つ質問をする。
「ミリシャと鳳ノ花。狙撃はどっちが上だと思う?」
「ミリシャ」
即答・・・
「鳳ノ花にはあれがあるぜ?」
「それでも、ミリシャだな。なにせ、基本スペックが段違い」
実際の所、俺は鳳ノ花のスキルをみたことが無い。
噂にしか聞いた事が無いのだが、効果はまさに伝説になるほどのものだ。
それでも、俺もミリシャの方が上だと思う。
「近接戦闘に関しては・・・まあこれは聞くのも無駄だな」
「間違いなくミリシャ。奴は笑顔でこの俺をフルボッコにした奴だ」
「・・・まじで?」
「まじ!」
近接に関しては組織No1だと思ってた牛を余裕でぼこる・・・
組織のボスは伊達じゃないってことか・・・
そんな事を話していると医務室のドアが開き、鳳ノ花を抱えたミリシャが入ってくる。
「あら、グランズさん目が覚めたのね?傷の方は大丈夫ですか?」
「達磨さんは元気いっぱいだよ。で、そっちはどうしたのかな?」
「ああ、ちょっと加減を間違えまして、良い所に入っちゃったんですよ〜。
 で、ちょ〜っと息して無いんでロンさんに蘇生を頼もうかと」
・・・はい?
加減を間違えた??
息して無い???
ちょっとまて・・・それって
「・・・なあ、ミリシャ。それって。殺ったってことか?」
「え〜と・・・ま、まあそうなるのかな〜。大丈夫!まだ1分たってない!」
「ば、ばっかやろう。そういう問題か!せっかくの貴重な戦力を!!!」
「も”〜甲斐君。うるさいぞ〜。3分以内なら余裕余裕」
「お前ら落ち着きすぎだ!先生はどこだ〜!!ロンディネラ先生〜」
大声で叫ぶと、隣の部屋から面倒くさそうに白衣をまとった女性が登場。
「もう、うるさいな〜。今寝たばかりだってのに、何よ〜あんた等なら勝手に治療すればいいでしょう?」
寝起きらしく、目をこすりながら対応するのは組織の専属医にして、俺が知る中では世界最高の医者
彼女の手にかかれば、死者すら元気によみがえる。
「あ!ロンさん、ちょっと手違いがあって、蘇生を一つよろしく!」
「ミリシャちゃん・・・あれほど訓練で殺すなっていっておいたでしょ?」
「いや、あはは・・・久しぶりにやりがいのある子だったもので」
「どれ・・・ああ、これならこの薬飲ませてほっとけばOKよ」
さっと見たあと棚から白い飲み薬を取り出す。
その後、なれた手つきで口をあけさせ無理やり流し込む。
「ほい、おしまい。じゃ、あたしは寝る。昨夜は遅くまでゲームしてたから眠いのよ」
ゲームのし過ぎって・・・
う、腕は良いんだこの医者。
さっきまで息すらしてなかった鳳ノ花の顔にもちゃんと赤みが差してきてるし。
呼吸も安定して、眠ってるようにしか見えない位に回復してる。
だが、色々問題がな〜・・・なにせ手術中に寝落ちするくらいだしな〜・・・
これで、手術失敗数ゼロってのもいまいち納得が行かんが。
「で、鳳ノ花は合格か?」
「そりゃ〜、当然。これだけの人材落とすわけ無いでしょ?」
まあ、当然か・・・
俺がボスだったとしても絶対に手放さん。
「で、甲斐さんのパートナーって事で登録するからね、後、グランズさんも甲斐さんと組んでね」
「まて・・・鳳ノ花はともかくなんで牛まで?」
「チームにしといた方が私の管理が楽なんです。任務の依頼もしやすいしね」
「・・・まて!更にきつい任務割り振る気じゃねえだろうな?」
「え?もっちろん。だって、うちの組織の最強チームですよ?最前線でバリバリ働いてもらいますよ」
「ミリシャ、俺組織抜けるわ。理由は一身上の都合って奴でよろしく」
「却下します。どうしても!っていうなら私を倒せたら許可しますよ」
く・・・こいつは・・・
絶対に勝てねえ〜のはわかってる・・・
だが、だがしかし・・・万が一って事も・・・
「あ、一応言っておきますけど。手加減無しでお相手しますので訓練室じゃなくてAフィールドで勝負ですから」
・・・
だ、だめだ・・・あのフィールドは奴の庭。
何も出来ずに一方的になぶられる。それこそ、姿すら確認できずに落ちる事間違いなし。
「はっはっは、甲斐君照れるなよ。そんなに俺と一緒なのがうれしいのかい?」
「照れてねえよ!嫌がってんだよ!!」
「はっはっは、仲良くやろうな」
「嫌だ〜><」
こうして、俺達のチームが誕生するのだった。

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あとがき
作者 :祝!第三話〜♪
すちか:おめでとう〜♪
作者 :今回はミリシャ様に焦点を当てた内容にしてみました〜
すちか:設定ではむちゃくちゃな強さになってるね
作者 :はい!最強です。ですが、前線には出ません
すちか:なんで?
作者 :その辺の理由は徐々に明かされる予定です
すちか:主人公の甲斐さんが影薄い気もするよ〜?
作者 :今回はミリシャさんの強さと、鳳ノ花さんの特殊能力。
作者 :それにすちかさんとロンディネラさんの登場となってまして・・・
作者 :甲斐さんの話まで入れちゃうと文字数が大変な事に(^^;
すちか:そうそう、私とロン姉様が登場してましたね
作者 :すちかさんはスナイパーとして、ロン様は軍医としてです
すちか:ちょい役っぽいけど?
作者 :レギュラー化はあまり考えてません。
作者 :このシリーズは甲斐さん、鳳ノ花さん、グランズさん、ミリシャさんがメインですから。
すちか:それがいいかもね。増やすと大変だから
作者 :スポット参加はするとは思うので、今後もどうぞよろしく
すちか:こちらこそ〜。しかしそうなると青空面子は皆出るかも?
作者 :そうですね。可能性はありますね。
すちか:なるほどなるほど。さて、そろそろ時間みたいだよ
作者 :ですね。それでは皆さん、次回までごきげんよう〜><
すちか:次回もよろしくお願いします。