あの時の青空倶楽部 第九話
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『あの時の青空倶楽部9』 −ドッキリコーヒー−

「これは……酸味も苦味も良くわからない。どちらかというとまったく違った味が……
 味わうたびに不快感しか沸きあがってこないこれは……これ、なんだろう……」
味の表現を言葉にする事はとても難しい。
単純に表現するなら、美味しい、美味しくないで良いのだろうがそれでは芸が無さ過ぎる。
聞いてる人が、味のイメージをしやすいように伝えてこそ評論家となれるのだ。
……まあ、別に評論家になりたいわけじゃないんだけどね。
「ねえ、すーちゃん。一言まずいって言えばいいんじゃないの?」
表現に苦悩する私をジト目で見ながらお姉さまが助言をしてくださる。
だが、その助言は私には不要のもの!
なぜなら、先ほど言ったようにそんな一言では芸がなさすぎるのであ〜る!!
あ、ちなみにお姉さまというのは、一挙手一投足全ての行動が他の生徒を魅了してやまない我が部の部長にして稀代のカリスマ生徒!
そのお姿は神々しいまでに輝いておられるロンディネラお姉さまの事ですよ〜。
「実際、そのコーヒー香りからしてすでにまずそうよ?」
そう、本来コーヒーの香りはとても良いもののはずなのだ。
だが、今回独自にブレンドしたこの『すちかブレンド(試作品)』は香りからして何かおかしいものになってしまっていた。
「う〜ん、何がいけなかったんだろう。昨日の配合と豆の種類は一緒なんですよ〜。配合比率を変えただけなんですよね〜」
私には理由がさっぱりわからなかった。
昨日4:6で作った時は結構良い味だったのだが、今日試しに比率を逆転したらこうなったのである。
配合率を逆転したくらいでは味が大幅に変わる事は基本的には無い。
せいぜい、酸味と苦味が逆転した。位のはずだ。
まったく違った味になるなんて……理由がわからない。
「すちかさん、もしかして棚の上にあったモカ豆使いました?」
窓辺で読書をしていたシェティ先輩がそう聞いてくる。
「ええ、棚の上に置いてあったのを見つけたものですから、使っちゃまずかったですか?」
妙に納得した顔のシェティ先輩。
はて?どういうことだろ??
おや?お姉さまも笑いをがまんしてるようだぞ?
理由を聞こうとしたとき、部室のドアが開き、甲斐さんが元気に入ってきた。
「ち〜す、鳳ノ花いる?今日こそ決着つけてやるぜ!」
いつも負けて勝負無しにしてるのは甲斐さん。貴方ですよ?
なのにその自信満々の表情はどこから来るんです??
「いらっしゃい甲斐さん。鳳ノ花ちゃんは今日は対局日よ」
「あ〜そうだったか、今日こそとおもったんだがな〜、お?コーヒー入れたの?俺にもくれ」
サイフォンにコーヒーが入っているのを見つけた甲斐さん。さすが報道部員。めざといね〜
まあ、甲斐さんコーヒー好きだからな〜。見逃すはずも無いか。
でもこれは失敗作。人に出していいものではない。なので、
「ああ、はい。インスタントで良いですか?すぐ作りますね」
「そこにあるじゃん、それでいいよ。つか、レギュラーコーヒー目の前にしてなんでインスタント飲まないかんのよ」
もっともな話である。
私だってそうするだろう。普通ならね。
しょうがないのでこれは失敗作なんですと説明しようとした所、
「甲斐さん、砂糖とミルクは?」
お姉さまがさっさとカップに注いで甲斐さんにもって行こうとしていた。
「そのままでいいよ。どれ……なんか変わった匂いだな〜。こんなコーヒーはじめてだよ」
そりゃそうだ……それは失敗作なんだから……
妙にわくわくした顔で今か今かと見ているお姉さま。
あきれた顔でそれを見ながらも止める気はまったくないシェティ先輩。
味の正体を暴いてくれるかもと期待している私。
皆結構ひどい人だよね(苦笑)
「どれ……ぶは!なんじゃこりゃ〜!!」
一口飲んだ瞬間にぶはっと吐き出す甲斐さん。
その姿を待ってましたと大笑いするお姉さま。
あ、シェティ先輩も本で隠してるけど笑ってるみたいだ。
「ひっで〜味だなこれ。ソースと醤油と……たぶん塩だな。後は……チョコか?」
ソースと醤油って……なぜそんなものをコーヒー豆に(^^;
塩とチョコってのはありえなくない組み合わせな様な気もするけど。
「さすが甲斐さん、ぴたり正解よ。ドッキリ用に作っておいたんだけどまさかすーちゃんが使っちゃうとは思わなかったわね」
ニコニコしてるお姉さま。
そういう事は早く教えてくださいね。
「ところで、誰に対するドッキリだったんです?」
ドッキリなら標的があるわけで、それが一体誰だったのか私は非常に気になった。
「それは……内緒にしておきましょう。さて、そろそろ下校時間よ」
こうしてドッキリの標的は謎のままになってしまった。
ただ、なんとなく私だったんじゃないだろうかと……
そんな嫌なイメージだけが頭に残ったのであった。
ちなみに、帰りに皆で喫茶店により、お姉さまのおごりで美味しいコーヒーを飲んだのは言うまでもない。
もちろん甲斐さんも一緒ですよ。
メガネを直しながら、
「このコーヒーは、モカ3にキリマン5にブルマン2かなかなかマイルドな配合だな」
と相変わらずの絶対味覚を発揮してました。
すごいよね。私もコーヒー好きだけどここまではわからないな〜。

補足ですが、私とシェティ先輩はケーキセットにしたのでそちらも堪能してきました。
シェティ先輩にいたってはケーキ単品を2個も追加してたし……ケーキ好きってのは本当だったんだな〜
私も1個追加しで注文しちゃった♪(てへw
「おごりってなると遠慮しないわねあんた達は……大体シェティは共犯じゃない!同罪よ〜!!」
と叫ぶお姉さまと対照的に終始ニコニコと笑顔だったシェティ先輩。
その笑顔の前にお姉さまは涙を流しながら4人分の会計を済ませたのでした。

おしまい。

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あとがき
すちか:お久しぶりです。すちかです。
作者 :え〜作者です。
すちか:今回のはまた脈絡も何も無いいきなり唐突どっか〜んな話ですね。
作者 :ええ、私が飲み会時にやられた事をそのままネタにしてみました。
すちか:ソースと醤油と塩とチョコなの?
作者 :いえ、ソースと醤油はあってますが、塩とチョコじゃなくて、ケチャップとレモンでした。
すちか:いじめ?
作者 :酔っ払いのする事ですから……。
すちか:ベースになったのはコーヒーなの?
作者 :いえ、イチゴミルクってカクテルです。
すちか:それはまたなんとも……。
作者 :本文中の甲斐さんと同じく一口で吐き出しました。(T-T)
作者 :そのお店、空グラスと交換でおかわりだから大変でした。
すちか:の、飲みきったの?
作者 :いえ、店員の目を盗んで捨ててきました。
すちか:でしょうね……。
作者 :仕返しに飲ませまくって潰しましたがね。
作者 :次の日二日酔いで苦しんだそうですよ。
すちか:なんとまあ……。
作者 :さてさて、文中に出てきたコーヒーのブレンドですが、実際これで作るとどうなるか私は知りません。
すちか:知ってる豆を適当に出しただけなのね。
作者 :その通りです。なのでマイルドじゃないぞ!って反論は受け付けませんのでよろしく。
すちか:確かめてみてからネタとして使いなさいよ。
作者 :確かにコーヒー豆はちょくちょく買いに言ってるけど、全部集めると結構なお金がかかるのよ!
すちか:ブルマンのストレートが高そうだね〜。
作者 :200gで3000円します。高級品です。
すちか:モカは今年不作で出物がないんだっけ?そういえば。
作者 :ええ、モカ好きな人は多いですから結構痛いですよね。
すちか:ん?普段何飲んでるんだっけ?
作者 :温泉珈琲。
すちか:そういう種類があるのね?
作者 :ありますよ〜飲みやすいのでぜひぜひ!
すちか:そのうちね。さて、そろそろ〆ない?あとがきが本編の量超えるわよ?
作者 :そうですね。では今回はこのへんで〜。
すちか:次回をお楽しみに〜。