あの時の青空倶楽部 第七話
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『あの時の青空倶楽部7』 −日常の風景−

「王手!」
元気な鳳ノ花さんの声が部室に響き渡る。
対面に座る甲斐さんは腕を組みながらむむむ・・・とうなっている。
今日も甲斐さん負けてるみたいね。
お茶でも持っていってあげようか・・・
と言うわけで、お茶の用意をしましょう。
昨日はコーヒーだったし今日は紅茶〜。オレンジペッコ〜♪
鳳ノ花さんはお砂糖一つで、甲斐さんはレモンだったっけね。
冷蔵庫からレモンを取り出し2ミリほどの厚さでカット。
お砂糖を一つ入れてからレモンをカップに浮かべる。
うちの部、レモンティが好きな人多いんだよね。
またレモン買ってきておかないとな〜。
とりあえず、用意した二つのカップのうち一つを鳳ノ花さんにそっと差し出す。
「ありがとうです」
「今日も完勝ですか?鳳ノ花さん」
「ん〜、どうだろうね〜。あ、すちかさん今日も美味しいですよ〜☆」
「ありがとうございます」
さてさて、今回の勝負はどうなのかな。
盤上を見てみる。
・・・
甲斐さん・・・飛車、角取られてますね。金銀も・・・
でも、これって。
「(こそっ)鳳ノ花さん、これって・・・」
「(こそっ)あ、気づきました?実は、勝ち目を残してあるんですよ〜」
「(こそっ)やっぱり・・・」
まだ、甲斐さんにも逆転のチャンスがある。
甲斐さんの長考はおそらくその手を探っているためだろう。
さすが、甲斐さん。チャンスがあることに気づいてるんだ。
とりあえず、盆の上にのっているカップを甲斐さんにも渡す。
「お茶どうもです。むむ〜、何か手があるはずなんだ・・・何か!」
「見えるんですか?」
「いや、感!でもこの感が大事なんだよ!お、いいねこの紅茶。ご馳走様」
「どういたしまして」
真剣に考え込んでるみたいだし、これ以上邪魔しちゃいけないよね。
(がんばれ甲斐さん!)
私は心の中で応援をしておいた。



今日も部室はいつもどおりの雰囲気。
お姉さまが読書して、アツシさんが静かなBGMを奏で、シェティ先輩とゆに先輩がいちゃついてて、
甲斐さんと鳳ノ花さんが将棋を指してて、奈菜穂さんが素振りしてる。
一部ちょっとどうしてくれよう・・・って所もあるけど何時も通りの風景というか、状況というか。
にしても、シェティ先輩のファン倶楽部は恐ろしい。
ゆに先輩という彼氏が出来たにも関わらず、いまだ硬い団結力をもって、存続してるという。
すごい情熱だね〜
ただ、シェティ先輩ファン倶楽部の女性ファンはちょっと減ったみたいだけど。
隙を逃さずニルシェ先生がGETしていったとかいかないとか・・・
まあ、その辺は私は見なかった、聞かなかった、知らなかったということで〜(^^;
そうそう、お姉さまのファン倶楽部は女性ばかりですよ〜
こちらは変動無しみたい。
ニルシェ先生もこちらのファンは切り崩せないみたいです。
一途な子が多いのかね〜(^^;



「お〜い!甲斐君いるか〜い?」
あれ?この声は、グランズさん?珍しい・・・
「お、いたいた。甲斐君がこの前探してた限定品が隣町のトイショップに売ってたぞ」
「なに!!それは、もしかして限定50セット、幻のレッドザック〜1/32の事か!角つきの!!」
「んむ。まさにそれだ。2個あったからまだあるんじゃないかな」
「ナイス情報だぜ牛!悪い鳳ノ花、勝負は預けた!!俺は隣町にダッシュするぜ〜」
言うが早いか、荷物を抱えダッシュで部屋から出て行く甲斐さん。
「ああ!!また?もう〜、負けを認めてから行きなさいよ〜!!!」
甲斐さん、いつもながら見事な勝負踏み倒しですな〜(^^;
今日の賭品は確か・・・
「む〜、私のイチゴサンド〜!!」
購買部で人気No1のあれですか。
入手難易度がS+ですよ(^^;
私は裏コネがあるから楽にGETできるんですけどね♪
今度鳳ノ花さんに持っていってあげよう。
「そういえば、すちかさんこの続き、見えてましたよね?」
「え?ええ、多分ってLVですけど」
「じゃあ、続きからやってみてくれていいかな?」
「良いですよ。じゃ、3二玉です」
「お!やっぱりそうくるか〜」
パチパチパチと駒が進むにつれ、鳳ノ花さんの飛車が落ち、角が落ち、状況は変化していく。
「さすが、すちかさん。良い手を打ってきますね。でも」
鳳ノ花さんの次の一手は私の予想外の手だった。
でも、それは状況を読みきった最善の一手。
「あ!」
この一手が決定打になり、結局私の負け。
う〜ん・・・将棋は難しいね〜
「参りました。そっかその手があったのか〜。読めなかったな〜それは」
「でも、すちかさんも良い線いってますよ。3手前に4四飛を打たれてたら私の負けでしたよ」
「ああ、あそこか〜実際5三香打ちと迷ったんだよね〜」
「そっちだと守りの手になっちゃいますから、展開が遅くなるんですよ」
「なるほど。でも、飛打ちだと先の展開が難しくなるんだよね〜」
「そこは、将棋の醍醐味、読みの世界じゃないですか」
わいわいと将棋談義で盛り上がる私と鳳ノ花さんであった。
「へえ〜、すーちゃん将棋も得意だったの?」
そんな私達のやり取りを見てお姉さまがひょいと混ざりこんでくる。
「いえ、得意ってわけでは・・・実際負けましたし」
「ほのちゃんはプロ棋士だもん、負けて当然でしょ」
「プロって言ってもまだ駆け出しですから・・・」
そう、説明が遅れたけど鳳ノ花さんは先月プロ棋士になったのです!
すごいよね〜
でも、棋士の世界では学生でプロになる人は珍しくないんだって。
すごい世界だね〜
「駆け出しでもプロはプロ。その人相手に指せるなら十分よ」
「・・・お姉さまのが上手でしょうに・・・」
「ですよね〜・・・私、一度も勝ったこと無いですし」
「偶然よ?偶然」
と言っているけど、このお方。
10歳の時にプロの人と対局して勝ってるんですよね〜
プロの人が手加減してくれたのよとの事だけど。
それにしても・・・勝っちゃうのはすごい。
実際、ここでも鳳ノ花さんとたまに対局してるの見るけど。負け無しというんだからさあ大変!
「そうそう、ほのちゃんにお願いしたいんだけど・・・。
ミリシャちゃんにもうスカウトに来ないでくれって言っといてくれない?」
「あ〜、師匠はまた来ましたか?」
「ええ、ほのちゃんがいるんだからもう良いでしょ?ってちゃんといっといてね」
「言うのは構いませんけど、多分聞きませんよ?師匠、部長にぞっこんですから」
「ったく、ミリシャちゃんは・・・龍王戦まじかだろうに」
「多分部長が入門してくれるなら龍王戦捨てても良いと思ってますよ」
タイトル戦を捨ててもいいって・・・どれだけほれ込んでるんだろう。
さすがお姉さま。何をやらせてもすごい!
「はぁ・・・とにかくミリシャちゃんには言っといてね」
「わかりました。でも、期待はしないでくださいね?」
「わかってるわよ。さて、そろそろ下校時間だし。みんな上がるわよ〜」
お、もうそんな時間になってたのね。
さて、カップを洗って。
片付けてっと。
戸締り良し!
さあ、帰ろう。明日も良い一日になりますように♪

おしまい。

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あとがき
作者:と言うわけで、あの時の青空倶楽部第7話をお届けしました〜
すちか:今回も特にイベントなんかがあったわけじゃない放課後って感じね。
作者:こっちのシリーズは、何時もの日常的風景ってことで、特に何も無いそんな日常を書いて行こうと思いまして。
すちか:日常的に甲斐さんは負けてるわけね?
作者:鳳ノ花さん、プロ棋士ですから
すちか:で、日常的に負けを無かった事にしてると・・・
作者:甲斐さんですから(^^;(おや〜?)
すちか:で、私はなぜか将棋が強いと
作者:主人公ですから!
すちか:ロン姉はさらに強いと
作者:ロン様ですから!!!!!!!!!!!
すちか:まあ、ロン姉に関しては否定しないけどね
作者:ほんとはシェティさんとゆにさんのラブぶりも書きたかったんだけどね〜
すちか:なんで書かなかったの?
作者:いや〜、なんか、これ書いちゃうと色々と余波がきそうで・・・
すちか:余波?
作者;それについては、後でお酒でも飲みながらゆっくり話しましょうか
すちか:ふむ・・・なんとなくわかったわ
作者:学園編もだんだんと固まってきたわね〜登場人物とか、場面とか。
すちか:煮詰まってきたって事?
作者:日常の風景を書くって事ですからね。毎日がイベントって人もいないでしょう?
すちか:異世界編は毎日イベントっぽいけどね
作者:向こうはアクション系ですから。でもアクション系はどうも苦手です・・・
すちか:苦手意識克服のためにもがんばって続きを書きましょうね。
作者:そうですね〜、一応続きは考えてはあるのでそのうちにってことで(苦笑)
すちか:まあ、無理しない程度にね。
作者:わかりました。と言った所で今回はこの辺でお開きです。
すちか:次回もお楽しみに〜♪
作者:あれば・・・ですが(苦笑)
すちか:そういうこと言わないの・・・