あの時の青空倶楽部 第三話
--------------------------------------------------------------------------------

「ちぃ、もうちょっとで裏が取れるんだが、今週は無理か?」
甲斐は少し焦っていた。
明後日の校内新聞に載せるためには今日中に裏を取り、構成を終え、入稿しなくてはいけない。
だが、後一歩が届かない。
記者にとっては、その一歩を超えられるかが腕の見せ所。
(仕方ねえ、あの手を使うか)
舌打ちをひとつしたあと、彼はとある部室へ向かうのだった。

↑の部分は全てカットしましょう。
(記者の話じゃなくなってるんだもん・・・(^^;)


『あの時の青空倶楽部3』−え?ドラマ?フィクションだよね?これ−


「いよ〜し!絶好調〜♪」
先日、鳥インフルエンザにかかっていた私ではあるが、脅威の回復力を発揮し
なんと一日で治ってしまったのだった。
お医者様もありえない・・・と言ってたけど。
お姉さま効果だろうな〜と思わなくも無いけど、そこはそれ。
「さあ!今日もがんばるぞ〜・・・あれ?あれは甲斐さん?」
張り切って部室に向かおうとした私の視界の隅っこに写ったものは紛れも無く甲斐さんだ。
なにやら探し物をしてるのか、地面をきょろきょろと見回している。
(はて?どうかしたのかな・・・なんか探してるようだけど、手伝ってみますかね)
トコトコと甲斐さんの近くへ行き声をかける。
「ふっふっふ、お困りですか?お困りですね?」
「うわあああ!って、あ、ああ、すちかさんか。やあ!こんにちわ」
妙に慌ててるな〜、甲斐さんにしては珍しい・・・
「何か探してるんですか?私も手伝いますよ??」
「え?いやいやいや、何も探してないよ、大丈夫大丈夫!さ、さて俺も行こうかなっと。じゃまたねすちかさん」
そそくさ〜とそして胡散臭そうにその場から消えていく甲斐さん。
怪しさ爆発だね〜。
(変なの・・・ん?なんだろこれ・・・鍵?)
私の足元に錆びが浮かんでいる古い鍵があった。
まさか甲斐さんの探し物はこれ?
「まっさか〜。どこのドラマ的展開よ。きっと誰かが落としたのが錆び錆びになっただけよね」
必死に探していた人が見つけられず、協力した人があっさり見つけるなんて、そんなお約束な展開はないない。
でも、もしかしたら・・・と思わないこともないのよね〜
と言うことで、私はこの鍵を拾っておかないと行けないと思うわけよ。
うん!そういうことなので、私はこの鍵を拾います。

「錆びた鍵」を手に入れた。
(ぴろりろ〜ん♪)

「さて、お約束のBGMもなったし、早いとこ部室にいこっと」
この後、ドラマ的展開のこの話が実際に起こるとはすちかには思いもよらなかった。
そして、そのためにちょっとした事件に巻き込まれることを・・・
知るよしもなかった・・・

第一章 また鍵?

部室に着いた私はまず、いつものように部屋の掃除を始める。
昨日できなかった分今日はきっちりやろう!と思い、ばん!と元気に窓を開ける。
(お掃除〜♪お掃除〜♪)
掃除は実は嫌いじゃないすちか。むしろ結構好きな方。
掃除、洗濯、家事と家庭的な事が好きなのだが、なぜかもてない。
(所帯じみてるのかしらね〜)
家庭的な子はもてる!と言うのは世間的な妄想ってやつである。
現実とはかくも厳しい。
(まあ、まだ学生の身で結婚まで考えるのはどうかと思うけどね〜)
といった毎度おなじみの思考で掃除を続けていると、『かちゃり』と何か金属の物体が床をすべる音がした。
なんだろう?と見てみるとそれは緑のテープが張られた鍵。
「はて?何の鍵だろう。部室にあったところを見ると部員の落し物かな?」
しかし、形状に見覚えがまったく無い。
ロッカー、南京錠、自転車、バイク(校則違反だが)どれとも違っているような気がする鍵だった。
強いて言うなら先ほど拾った錆びた鍵と似ている気がする。
?マークが頭上に浮かんではいたが、とりあえず部室の入り口の棚に落し物と書いておいておくことにした。
そうこうしていると、お姉さまとシェティ先輩がそろってご登場!
ああ、この二人のツーショットはいつ見ても良い!!
「あら、すーちゃん。今日は出てこれたのね?」
「はい、昨日はお見舞いありがとうございました」
「すちかさん、病み上がりなんですから無理しないでくださいね」
「はい!シェティ先輩もありがとうございました」
「シェ・・ティ・・・先輩・・・?」
あれ?シェティ先輩が不思議な顔をしてるぞ?
私変な事言ったかな??
と、とりあえず謝っておこうかな。
「えっと、ごめんなさい。私、変なこと言いましたか?」
はっ!として勢い良く首を横にぶんぶんと振るシェティ先輩。
め、珍しい光景だな〜(^^;
「いいえ!ただ、先輩とか呼ばれたの初めてだったんで。ちょっとびっくりしてしまいました」
なるほど、確かに普段周りからはシェティス様とかシェティ様とか呼ばれてたみたいだし。
「良いですね。先輩・・・良い響きです。これからもそう呼んでくださいね」
「はい!」
そんな私とシェティ先輩のやり取りをにこにこ笑顔でお姉さまが見つめていた。
そんなお姉さまの視線が、
『昨日言ったこと守ってくれたのね。ありがとう』
と言ってる様に思えた。
私は笑顔でこくりとうなずいて答えておく。
なんだか、より一層お二人と親密になれた気がした。
「あ、お茶入れますね」
三人分入れたお茶はいつものものよりとても美味しかった。
お茶受けにって出してきたお姉さまの手作りクッキーは微妙な味だったけど(苦笑)。

「あ、そういえばお姉さま。その鍵に見覚えあります?」
私は落し物としておいておいた鍵をお姉さまに確認する。
「鍵?ああ、この緑のやつね?・・・ん〜ん、私に心辺りはないな〜シェティは?」
鍵をひょいとシェティス先輩にほおる。
それを両手でしっかりと受け取ってじっと見、
「私の物ではないですね。にしてもこれはなんの鍵なんでしょう?金庫・・・とも違うみたいですし」
「・・・それは図書館の奥に入るために俺が探していた二つの鍵の一つだ」
部室の入り口から不意にそんな答えが返ってくる。
私たちは一斉に入り口を見る。そこにいたのは・・・


第二章 何でこんな鍵が?

「・・・それは図書館の奥に入るために俺が探していた二つの鍵の一つだ」
部室の入り口から不意にそんな答えが返ってくる。
私たちは一斉に入り口を見る。
そこには、甲斐さんとアツシさんの姿があった。
二人ともなぜか息を切らしてはぁはぁ言っている。
「まさか、ここにあったとはな。だが助かった。それがあれば・・・」
「とりあえず二人とも入って休みなさいな。すーちゃん、お茶二つ。温めで入れてあげて」
「あ、はい」
パタパタとお茶を用意する。温め温めっと。
温め?ああ、ぐいっといけるようにか。ならいつもより多めに入れて、二杯目の用意もしておこうっと。
予想通り、一杯目をぐ〜っと飲み干した二人。
ふ〜と長い息を吐いて、少し落ち着きを取り戻したみたい。
すかさず私は二杯目を机に用意。今度は熱めにしてゆっくりと飲めるように。
「さて、お二人さん。話を聞きましょうか」
お姉さまが話を促す。
うまいな〜。タイミングばっちりだ。
「ああ、俺はちょっとした不思議事件を追っててな。その捜査途上で図書館の奥の部屋に入る必要が出来たんだよ」
あちち、と用意した紅茶を一口。
ちょっと熱くしすぎたかしら・・・(苦笑)
「で、入るための鍵を探してたんだが、正規の鍵は職員室にあってな。生徒には貸しちゃくれないんだと」
ちっと舌打ちをしてそっぽを向いてしまう。
「で、だ・・・俺は噂で聞いたシークレットキーに望みを託したってわけだよ」
シークレットキー?なぞの鍵?
一体何のことなんだろう・・・
「その鍵については僕がお答えしますよ。僕たち吟遊詩人クラスには昔から伝わる話が多いんです。
その内の一つにシークレットキーについての伝承があります」
ポロン♪
アツシさんはいつも抱えているマンドリンを奏でながらその伝承を歌いだす。
「すべての扉を開けし鍵、すべての錠をはずせし鍵よ
それを求めし者達の、末路は決まって皆同じ
求めてはいけない謎の鍵、触れてはいけない謎の鍵
されど求める謎の鍵、求めし鍵はかの地に眠る
赤き鍵は火と闇が交わりし静かな地に、
緑の鍵は美と日常が交わりし賑やかなる地に、
二つの鍵がそろいしとき、求めし鍵は現れる。
だが、求めし者にはけして見つからぬ二つの鍵、
求めざるものの手にて見つけられる二つの鍵、
求めし鍵、用が済めばかの地に戻る。
かの地に戻りし鍵を、再び求めることなかれ
鍵を使いし代償、それは・・・」
ポロロン♪
「といった内容です。本来はこの続きがあったらしいのですが今は失われてしまい、残念ながら不明です」
・・・
「まあ、そういう訳で俺はその二つの鍵を探してるんだよ」
「興味深いわね。でも、求めてる人には決して見つけられない鍵なんでしょ?それ」
お姉さまが面白いネタを見つけた!と言わんばかりのニコニコ顔でそう聞いていた。
シェティ先輩も表面上はやれやれといった感じではあったが、瞳の輝きが自分も興味深々だと物語っている。
私はというと・・・ポケットの中の錆びた鍵を握り締めていた。
(・・・錆び・・・って赤錆ってもいうし・・・もしかしてこれが赤い鍵?ま、まさかそんな・・・
そんなドラマみたいな話って、ある?無いよね。うん。無いよありえないよ)
私は困惑した表情で立ち尽くしていたのだった・・・



第三章 求められし鍵

そんな私の状況にいち早く気づいたのは甲斐さんだった。
「すちかさん、もしかして赤い鍵も見つけてるんじゃないか?」
皆の視線が私に集まる。
「すーちゃん?大丈夫?顔色悪いわよ??」
「え、ええ・・・大丈夫です。赤い鍵・・・と呼べるのかわかりませんが、さっき甲斐さんとあった所でこれを拾いました」
ポケットから先ほど拾った錆びた鍵を取り出し皆に見せる。
二つの鍵を比べてみると、やはり形は同じような鍵。
これが、赤いかは不明だけれど・・・
先ほどの伝承の通りだと
「これが・・・さっきの場所にあった?とすると俺の予想通り、日と影が交わる場所ってのはあそこだったわけか。
だが、俺には見つけられなかった。やはり、求めし者には見つけられないのか?」
甲斐さんが鍵を見ながらぶつぶつつぶやいている。
やっぱりあれが赤い鍵なのかな〜・・・
「いや〜、さすがすちかさん。お見事ですね〜。しかし、これが赤い鍵なんですかね〜
僕には錆びた鍵としか思えないですけど・・・おや?この二つの鍵、まったく同じ形ですね」
アツシさんが二つの鍵を重ねてみたところぴたりと一致した。
これは・・・二つを重ねて使うって事なのかしら?
「二つを重ねて使う・・・ありきたりな鍵ね〜。でもこれがそうなら試しに部室のドア開けてみれば?」
お姉さま・・・目が生き生きしてますよ。
「そうだな、試してみるか」
そっと二つの鍵を合わせてもち、部室の外から鍵をかける甲斐さん。
ばたん、がちゃ。
・・・鍵がかかってしまった・・・
「・・・かかったわね・・・鍵」
「かかりましたね」
「伝承は真実だったんだね〜」
皆それぞれの感想を言葉にして驚いてるようだ。
私はと言うと、言葉を出せずにただ事態を眺めているだけだった。
「すまんが・・・鍵を開けてくれないか?」
外から甲斐さんがあけてくれと言ってくる。
はて?鍵を使えば良いんじゃないのかな??
とは思ったものの、一番近くにいた私が鍵を開ける。
がちゃ、
再び部屋に入ってきた甲斐さんの表情は青ざめていた。
目的の物を手に入れたって言うのにどうしたんだろう・・・
「甲斐さん、どうしたんです?顔色が悪いですよ?」
「シェティさん・・・」
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ、今はまだ大丈夫。でも、この鍵は・・・使っちゃいけ・・な・・・」
ばたん。
そういった後甲斐さんは意識を失ってその場に倒れこんでしまった。
私たちは慌てて甲斐さんを保健室へと運ぶ。
しばらくして意識が戻った甲斐さんの口から驚くべき内容が飛び出してきた。
「・・・あれを使うための代償が何なのかわかった。あれの代償は命だ」



第四章 伝承は真実だった

「・・・あれを使うための代償が何なのかわかった。あれの代償は命だ」
「命?」
「ああ、たぶんな。部室のドアに鍵を差し込もうとしたとき急に鍵の形が変わっていったんだ。
そして、形が変化してる間、体中から何かを吸われていった気がしたよ」
なるほど、それで鍵を開けて入ってこなかったのか。
そんな物騒なものを何度もためしで使うわけにはいないよね。
「ねえ、甲斐。それ、本当に使う気なの?興味あったから私も黙ってたけど事情がわかった今それを使うのは薦められないわよ?」
重苦しい沈黙が部屋に流れる。
確かに、命が代償とかでは私もちょっと・・・と思う。
それに鍵事態は職員室にあるんだし、無理に使わなくても・・・
「・・・確かにこの鍵はやばい。だが、俺は・・・今どうしてもあの部屋を見なくてはいけな・・・」
ポロロン♪
甲斐さんの独白にも似た言葉をさえぎるようにアツシさんのマンドリンが響き渡る。
「甲斐さん、ここは皆の意見に従うべきです。職員室にある鍵を合法的に手に入れましょう」
「しかし!どうやって・・・生徒には貸出しは出来ないとの事だ。忍び込むにしてもあの部屋は・・・」
うちの職員室・・・セキュリティー万全だしね〜不法侵入者は処刑!ってなってるし。
(実際処刑された人も多数・・・物騒な話だよね)
ポロン♪
「甲斐さん、生徒には貸せないんですよ。生徒には」
はっ!と気づいた甲斐さん。
「なるほど、そういう事か。そういえばちょうど良い人物がいたな」
「ええ、甲斐さんのちょっとしたコネを使えば断れない人がいますよ。身近にね」
「そうかそうか・・・その手があったじゃないか。ふっふっふ」
「むしろ、なぜ最初からそっちに気づかなかったのか私は不思議でしょうがないですがね。・・・伝承の確認が出来たので私はOKですがね」
「ちっ、気づいてたなら最初に言えよな」
「言ったでしょう?伝承の確認が出来たんで私はOKだと」
なにやら甲斐さんとアツシさんの二人で意思疎通は完璧。
二人して不適ににやついています。
まあ、私にも何のことかは大体予想つくんですがね。
「あの、甲斐さん、アツシさん。一応うちの顧問なんで、あんまり無理難題はふっかけないでくださいね」
どうやらシェティ先輩も気づいてるみたい。
私が気づくくらいだし当然か。
「大丈夫。ちょっと協力してもらうだけだからさ」
「ええ、ちょこっとですよ。ちょこっと」
「ま、あの先生にはちょうどいい薬かもね〜」
「自業自得とはいえ、なんだかな〜」
皆の頭の中に浮かんだ人物は一人だった・・・
コネというのも、どうせ女生徒との・・・だろう。
やれやれ、わかりやすいってのは困ったものだね〜
「よし!そうと決まったらさっそく探しに行くか」
元気にベットから飛び降りた甲斐さんに私は、
「ところで、鍵はどうするんです?」
と聞いていた。
こんな物騒な鍵はその辺にぽいっとは出来そうに無い。
かといって、二つに別けてもとの場所においておくわけにも行かないし。
ぽろろん♪
「ああ、それなら心配いりません。伝承は正しかったのですから、用が済めば勝手に消えますよ」
実際その通りだった。
甲斐さんのポケットに入っていたはずの鍵はいつの間にか消えてなくなっていた。
なんとも不思議な鍵だな〜
「ここまで引っ張っておいて実は使いませんでしたってのも・・・話としてどうなんだろうな」
甲斐さんの独り言が妙に私の胸に刺さる。
ぐさぐさ・・・いたた・・・
私が悪いんじゃないんです〜(T-T)



第五章 暗闇の図書室の奥

さて、気を取り直してまずは職員室へ。
お目当ての人はコーヒー片手にPCをいじっていた。
さて、どうやってこちらまで来てもらうのかしら。
「じゃ、すちかさん。呼び出し役よろしく♪」
はい?甲斐さん・・・なぜに私?
私はあの方の狙いからは外れてるんですよ?
「すーちゃん、がんばってね〜」
お姉さままで・・・ってか、お姉さま、なぜにここに?
「楽しそうだからですよ。すちかさん。確認しなくてもわかってるでしょう?」
ええ、そうでした・・・面白いことがあれば絶対に飛びつく人でしたからね。
とほほ・・・じゃ、ちょっと話にいってきますか・・・
てくてくてくてく、
「あの、ニルシェ先生、ちょっといいですか?」
「あん?なんだすちか、どうかしたのか?」
「えと・・・ここではちょっと」
「なんだ?愛の告白ならすまんが、受けられんぞ?」
急に職員室内がざわざわしだす。
違うんです!私にそんな気は無いんです〜><
ああ、廊下で甲斐さんやお姉さまが大笑いしてるのが目に浮かぶようだわ。
「と、とりあえずここでは何なのでちょっと一緒に来てください!」
「ったく、今良い所なんだが・・・まあいい、5分だけだぞ?」
がたっと席を立つニルシェ先生の机を見る。
PC画面上には別に変なところは無い。ワードの画面が見えてるだけ。
だが、タスクバーを見てみると・・・
Mabinogi・・・の文字が・・・先生・・・学校でMMORPGはやばいですって・・・(^^;
「すちか、今見たことは忘れろ。そして早く用件を言え!」
あ、やばい。急がないと。
さてさて、ニルシェ先生を連れてやってきました部室。
そこでは、甲斐さん、アツシさん、お姉さま、シェティ先輩がずらっと待ち構えていましたとさ。
「は・・・はかったな、シャア!」
「君は良い友人だったが、君のお父上がいけないのだよ・・・って何を言わせるのよ」
さすが、お姉さま。知識の範囲が広い広い。
「ヤア、ニルシェ先生イラッシャイ。ジツハオネガイガアリマシテ」
妙な片言で甲斐さんが話し出す。
怪しい・・・怪しいですよ?
「イエイエ、ナニモムズカシクハナインデスヨ。チョットカギヲヒトツモッテキテクレレバ」
あ、アツシさんまで・・・
この二人・・・怖い・・・かも・・・
「か、鍵?何の鍵だ??」
「図書室の奥の部屋に入る鍵です」
「資料室の?そんな鍵は誰でももっていけるだろう?なんで俺に頼む?」
「ニルシェ先生、ごまかしは無しにしましょう。俺が入りたいのは図書室の奥の部屋、禁書の間ですよ」
「!?」
奥の部屋ってしか聞いてなかったけど、部屋の名前があったのね。
禁書の間ね〜・・・禁書?
なんか響きが怪しいような。
その部屋の名前が出たところで、部屋の空気が変わった。
いつもふざけた感じを漂わせていたニルシェ先生の雰囲気が変わったせいだ。
「甲斐、なぜあの部屋の存在を知っている?」
「俺はこれでも諜報部の人間なんでね。ある程度は調べも済んでいるさ」
「・・・ミリシャ率いる影の諜報部のメンバーだったのか貴様。道理で・・・」
おや?諜報部?報道部じゃなくて?それに今ミリシャ先輩のお名前が出てきたような。
ここに来て新メンバ登場とか・・・まとまるの?この話・・・



第六章 黒歴史?どっかで聞いたような・・・

「ミリシャが動いてるとなると、狙いはブラッククロニクルか」
「ご明察」
「あれは、世に出てはならぬ代物だぞ?それでも、見たいのか?なんのために?」
「こちらにも色々と事情がありましてね。さて、ニル先生返答は?」
「さっきも言っただろう。NOだ」
とはっきり言い切った後、すぐに両手を横に上げ、
「とは言っても断ると俺の立場がさらにまずくなるのは明白だ。良いだろう協力してやる。
ただし、あれを見るのは甲斐一人だけと約束するならな。他のメンツには見せないと約束しろ」
「もちろんだ、あれは誰の目にも触れてはならないもの・・・だったはずだからな」
え〜!ここまで来て見れないの?
そんな〜がっかり・・・
お姉さまも抗議の目をしてるけど、雰囲気に呑まれちゃってて何もいえないみたい。
ぽろろん♪
「まあ、僕たちが見れないのはしょうがないですね。それより急がなくて良いのですか?」
時計を見ると16時半。辺りは薄暗くなってきている。
生徒が校舎に残っていて良いのは17時まで。後少ししかない。
「他のメンツは帰宅しろ。甲斐、お前は残れ。鍵を渡してやる。見つかるなよ?」
そういうと、ニルシェ先生は職員室に引き返していった。
鍵を取りにいったんだろう。
「さて、皆ありがとう。おかげで何とかなりそうだよ」
甲斐さんが笑顔でそういってくるが誰一人納得してる様子は無い。
もちろん、私だって納得してない。
「え〜と・・・まあ、やっぱり納得はしてくれないよな。さて、どうするか」
「クロニクルって事は歴史書よね?一体何が書いてあるわけ?」
お姉さまが真っ先に質問をする。
「さすがロンディネラさん、鋭い所を突いてくる・・・。仕方ない。簡単に説明しますよ」
甲斐さんが言うには、
その本には、誕生から滅びまでのあらゆる歴史が書かれているらしい。
その歴史は何度も繰り返しているのだが、ある時その流れが歪に歪められた。
現時点での私たちの世界の歴史はすでにその本のものとは違っている。
その原因となった事柄を知るために、本に書かれている本来の歴史を知る必要がある。
「というわけ。原因を知って何をするのかは、俺のような下っ端にはわからんよ。ある程度予想はできるけどな」
ふ〜とため息を吐く甲斐さん。
「諜報部ってのは一体なんなんです?報道部とは違うんですか?」
「諜報部ってのは裏の組織の名前だ。俺はそこに所属する諜報員だな。同時に報道部にも席を置いてるけどね」
諜報部か〜なんかスパイみたいだね。
多分そうなんだろうな。
「何で、そんなに簡単に色々話す気になったの?」
「皆をこれ以上巻き込む気は無いんだ。だから、ある程度の話をして納得してもらおうと思ってね。まあ、後は時間稼ぎかな」
「時間が無いってさっきいってなかったっけ?」
「うん、無いね。俺が稼ぎたかった時間はこの部屋にガスが充満するまでの時間だよ。
後は、組織のメンバーで記憶を操れるやつがいるからね。皆の記憶をちょこっといじらせてもらうだけさ」
え?
と思ったときには私の意識は闇の中に落ちていった。
「ありがとう、君たちの協力が無ければたどり着けなかった。助かったよ」
そういう甲斐さんの言葉が最後に聞いた言葉だった。



第七章 お約束の夢オチですか

「・・・ちゃん、すーちゃん、朝だよ〜。お〜い」
軽く体をゆすられている。
ゆさゆさ・・・
ん〜頭が重たいよ〜痛いよ〜、のども痛いよ〜
「起きないとちゅーするぞ〜」
え?この声は・・・
がば!
「あ、やっと起きたね。おはようすーちゃん。今朝の調子はどう?」
勢い良くおきたは良いが、頭痛はひどく、全身がだるい。
昨日の鳥インフルエンザはまだ治ってないようだった。
「ぁぅ〜やっぱりだめみたいです〜ふにゃふにゃです〜」
「あらら、まあ無理しないでゆっくり休むと良いよ〜今日は私が看病してあげよう!」
「えええええ!!!なななななぜに??ほわ〜い??」
私の聞き間違いだろうか?今お姉さまが看病してくれるって・・・
え?なんで??学校は??
「さっき、すーちゃんのお母さんから娘をよろしくって言われたわよ?」
「・・・あの、うちの両親はどちらに?」
「日帰り温泉ツアーだって、ご近所の奥様方と行くって言ってたわよ?」
・・・あの親は娘が苦しんでるときに遊びにいくのかい!!
しかも、お姉さまに看病を押し付けて・・・
「ゆっくり休みなさい。あ、おかゆ作ってあるけど食べられそう?」
「えと・・・少しもらえますか?」
「OK、持ってくるから横になってなさいな」
ああ、お姉さま何て優しいんだろう。
ところで、なんか変な世界にいたような記憶があるんだけど・・・あれは完全に夢だったのかな・・・
あ〜、思考がまとまらない〜
熱のせいかな。
「はい、すーちゃんおかゆ持ってきたわよ〜ちょっと熱いからふーふーしてあげるね」
はい?お姉さま何言ってくれてますか?
お姉さまはおかゆをすくって、それを冷ますようにふーと息を吹きかけている。
ん〜、なんていう光景でしょうか・・・
で、こうくると次にくるのは
「はい、あ〜ん♪」
ああ、やっぱりね。
「あ〜ん、ぱく。うん、美味しいですね」
「・・・」
つまらなさそうにしているお姉さま。
ふふふ、そんなべたなのは予想済みですわよ!
勝ち誇った顔をしたのが悪かったのか、お姉さまがにやりと笑う。
う・・・ミスったかしら
もう一度おかゆをすくい、ふーと冷ます。
その後、ぱくっと自分の口に含むお姉さま。
猛烈に嫌な予感がする・・・まさか・・・まさか・・・
「ん!」
や・・・やっぱりですか〜!
そうきますか〜!!
「お、お姉さま。それはさすがに・・・まずいですって」
「ん!!」
いや・・・そんな強調されても・・・
も、もう、しょうがないな〜
「だだだだだめですって!お姉さまの口移しなんて!!!そんなもったいない」
ご希望通り慌てて見せる。
すると、ちょっと満足したのかごくんと飲み込み。笑顔を見せてくれる。
「ちょっとわざとらしかったけど病人をこれ以上からかっちゃまずいよね。さて、横になって休みなさい」
「は〜い。じゃ、ちょっと失礼しますね」
「さくっと治して明日は学校で遊びましょうね」



最終章 そして歴史は繰り返す?

「いよ〜し!絶好調〜♪」
昨日のお姉さまの手厚い看病もあってか、無事に鳥インフルエンザも治った〜♪
「さあ!今日もがんばるぞ〜・・・あれ?あれは甲斐さん?」
張り切って部室に向かおうとした私の視界の隅っこに写ったものは紛れも無く甲斐さんだ。
あれ?この光景確か前にも・・・
なにやら探し物をしてるのか、地面をきょろきょろと見回している。
(はて?どうかしたのかな・・・なんか探してるようだけど、手伝ってみますかね)
「ふっふっふ、お困りですか?お困りですね?」
「うわあああ!って、あ、ああ、すちかさんか。やあ!こんにちわ」
妙に慌ててるな〜、甲斐さんにしては珍しい・・・
ん〜、やっぱりさっきから何か覚えのあるやりとりなんだよな〜
「何か探してるんですか?私も手伝いますよ??」
「え?いやいやいや、何も探してないよ、大丈夫大丈夫!さ、さて俺も行こうかなっと。じゃまたねすちかさん」
そそくさ〜とそして胡散臭そうにその場から消えていく甲斐さん。
怪しさ爆発だね〜。
(変なの・・・ん?なんだろこれ・・・鍵?)
私の足元に錆びが浮かんでいる古い鍵があった。
・・・何か非常に嫌な予感がというか、変な気分に。
これを拾っちゃいけない気がする。
うん、そう思う私の直感を信じよう!
私はその謎の鍵をスルーした。
さてさて、部室に行こう。今日は何があるのかな〜。

それは、歴史の流れがちょこっと変わった一瞬でもあった。
だが、変わったことを認識できるものは誰もいない。

---------------------------------------------------------------------------
あとがき
作者:ここまで読んでいただきありがとうございます。
すちか:今回は妙に変な展開ね。
作者:火曜サスペンスに影響されてちょっと謎物を作ろうと思ったんですが・・・
すちか:無理だったと・・・?
作者:途中で収集つかなくなったんで急遽路線を無理やり変更させました。
すちか:行き当たりばったりで作ってるからそうなるのよ。
作者:面目ないです。
すちか:最後は既視感オチ?
作者:夢オチにしようと思った辺りで最後のは決めてました。
すちか:まあ、それなりの形にはなったんだし、いいんじゃないの?
作者:ありがとうございます。
すちか:で?次の話の構想は出来てるの?
作者:うっすら、ぼんやり。霧がかかってます。はい。
すちか:何にも決まってないって事ね
作者:だって〜いつも行き当たりばったりで作ってるんだもん!
すちか:自慢にならないわよ・・・もっと計画的に作りなさい
作者、それでも何とか形になってるから良いのです!
すちか:そうなのよね〜まあ、毎回一話読みきりみたいだから出来る芸当よね
作者:ふっふっふ、まあそんな訳で次回もお楽しみに〜♪
すちか:次を待ってる人がいればいいわね〜
作者:(どきっ)